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第五三話 強い衝撃


「――かっ……!」


『コオオオオォォッ……』


 崩れても崩れても立ち向かってくる髑髏に対し、俺も同じように何度も何度もすれ違いざま心鎚を行使する。


 やつが弱ってる兆候はまったく見られないが、今の俺にはまったく関係なかった。ひたむきに鉄を叩いていたあの日々を克明に思い出すくらい、ただがむしゃらに打ち込んでいく。


 もうとっくに数なんて数えていないしその必要もない。コアを叩きのめすというより、最早自分との戦いだったからだ。これから一千万回だろうと飽きずに叩いてみせる。それこそが何よりも代えがたい鍛冶師の魂であり、矜持なんだってことを相手の心身にも刻みつけてやる……。


『――オォォ……』


 コアは明らかに弱っていた。不思議なことに、いつの間にか立場が入れ替わっていて、自分のほうが化け物になって相手に恐れられているかのように感じ始めていた。


 なんだ、もう終わりなのか……? そう思えるほどに、俺は物足りなさによる苛立ちさえ覚え始めている。一方でコアのほうはもう戦いたくないとばかり、俺の心鎚で崩れたあと再生するまでの時間が徐々に伸びつつあった。


 もうすぐコアとの……己との戦いが終わってしまうのは明らかだ。まだまだ楽しみたいっていうのに……。だが、枢機卿のシュラークのことを考えると、手加減するわけにもいかない。


「「「ハワード――!」」」


「――っ!?」


 ハスナたちの声が聞こえてきた瞬間だった。再生したばかりのコアと対峙する格好になっていた俺は、()()()()を背中に受けるのがわかった……。




 ◆ ◆ ◆




「もうすぐ、もうすぐよ……。ハワードもコアも間違いなく弱ってきてるから、私が合図を出したらほぼ同時に仕留めるのよ……」


 顔を紅潮させて興奮した様子で話す魔術師ルシェラ。


 彼女のすぐ前に分厚い氷の壁が作られており、その中心には剣で抉られたような小さな丸い空洞があって、そこに向けてグレックが弓を構えているという状況だった。


「わかってるさ……クソッ。緊張で手が震えてきやがった……」


「グレック、頼んだよ! コアもハワードもなんか気味悪いし、確実に両方とも仕留めてくれよっ!」


「そうだよぉ。グレックお兄ちゃん、ランデルお兄様の言う通りい、どっちもチャチャッとぶっ殺しちゃって!」


 後ろで応援するランデルとエルレだったが、グレックの手の震えは収まるどころか逆に増すばかりだった。


「……ち、畜生ぉぉ……言われなくても……俺はわかってる……わかってるってんだよおおぉぉ――!」


「――今よ、グレック……!」


「う……う……うわあああああああああああぁぁぁぁっ! ぶっ殺してやるううううううううううううううううぅぅぅっ……!」


 雄叫びを上げたグレックから矢が放たれ、それは手元で一瞬だけ大きく跳ねるような動きをしたあと一直線にハワードへと向かっていった。


「やったわっ! これで殺せる!」


「ざまあみろっ! クソ無能ハワード!」


「きゃっきゃ! クソハワード、残念賞ーっ!」


「はぁ、はぁ……だ、()()()――」


「「「――えっ?」」」


 勝利を確信した様子のルシェラ、ランデル、エルレの三人だったが、グレックの言葉通り、弓矢はハワードに命中せず、それを庇うように飛び掛かった蜘蛛の少女の胴体に命中していた。


「な、なっ……!? てか、グレック、何ぼんやりしてるの! 早く二発目を打ちなさい! ほんっと、どうしようもない役立たずなんだからっ!」


「や……やりゃあいいんだろう。やりゃあっ……!」


 グレックが前方に向かって再び弓を構えてみせるも、その手はそれまで以上に震えていた。


「……お、おおっ、俺は……俺は……たまに()()()()()()()に言われるんだ。お前はなんにでもなれる男だと……。だから……ハワードみてえに無能なんかじゃねえってんだよおおおおおおぉぉぉぉっ!」


 グレックが次に放った弓矢は、ハワードのいる方向からは大きく逸れることになった。


「むぐっ……!?」


 弓矢が突き刺さった自身の脇腹を信じられないといった様子で見つめるルシェラ。


「……グ、グレック、お、お前っ、一体なんてことをっ!」


「……グ、グレックお兄ちゃん……? 嘘だよね……?」


「……あ、あ……」


 弓を落とし、真っ青な表情で後ずさりするグレック。


「グ、グレックウウウゥゥ……わかってるわよねぇ……?」


「……ち……違う、んだ。ルシェラ、さん、ブ、ブレたんだ、手元が、狂った……」


「もういいわ。これ以上何も言わせない……」


 グレックが酷く怯えた表情のまま、ルシェラの得意とする氷魔法によって一瞬にして氷漬けになる。


 ――ガシャンッ!


「「「はっ……!?」」」


 まもなく背後の氷の壁が崩れ、ランデルたちがはっとした顔で振り返る。


「うがっ……これ以上、悪い人間たちに好き放題させないです……」


「ひぐっ! あたしたちがぶっ倒してやるのおぉぉ!」


「うむっ、それがしたちが相手だっ……! 覚悟はよいかっ!? 鬼畜外道の勇者パーティーめっ……!」

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