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第三七話 闇の神殿


「まあ、綺麗ですねえ――あらあら……?」


 袖に青い十字のラインを施した、ゆったりとした白衣に身を包む女性が、神殿の庭の外に咲いている一輪の花に手を伸ばしたときだった。見えない壁のようなものに弾かれ、彼女は不思議そうにオッドアイの瞳をまたたかせた。


「まあまあ、なんだか変ですねえ。どういたしましょう……?」


『『『グオォォォ……』』』


「きゃっ……?」


 女性を囲むようにして現れたのは、頭から白い布を被った一見信徒姿の者たちであったが、前に伸ばした両手は爪が異様に伸び、緑色に変色しているのが見て取れた。


「あらら、信徒さんたち、一体どうしたのです……?」


「ユミル様、伏せてください! 消えろっ! 化け物どもめっ!」


『『『グガアァァッ……!』』』


 ロングメイスを手に持ったビレタ帽の男が登場すると、あっという間に異形の者たちを叩き伏せていき、ぽかんとした顔の女性の前でひざまずいた。


「ユミル様、ご無事で何よりです……」


「あら、シュラークさんではないですか。助かりましたけど、信徒さんたちは死んでしまいましたねえ。ちょっと気が立っていたのでしょうか……」


「いえ、あれは信徒などではありません、化け物です」


「あらあら……? ここは神殿だというのに、どうして化け物さんがおられるのでしょう……?」


「それが、残念なことにここはもう……」




 ◆ ◆ ◆




「な、何っ……」


 使者によってもたらされた()()()()()()により、女王リヒルが血相を変えて玉座から立ち上がる。


「……ユミルの神殿、が迷宮術士に、よって……ダンジョンにされてしまった、というのか……コホッ、コホッ……」


「はっ……残念ながら、教皇様も枢機卿様も信者共々閉じ込められてしまったとのことです……」


「なんという、ことだ。私の友、ユミル、シュラーク……絶対に死なせるわけ、にはいかない……コホッ、コホッ……うっ……」


「リ、リヒル様っ……!?」


 虚ろな表情ながらも強い口調で語る女王リヒルだったが、直後に崩れ落ちるように倒れ込むのであった……。




 ◆ ◆ ◆




「えー、()()の難易度についてですが……んーむ、歳のせいかブレが生じましたので、もう少々お待ちくだされい」


「「「「……」」」」


 勇者パーティーが後ろで見守る中、灰色に染まったユミルの神殿に向かって、しきりに目をしばたたかせる老翁がいた。


「――ふうむ……多分、『+50』から『+150』までの間でしょうな」


「ちょっ……! 鑑定士のおじさんさあ、めっちゃ大雑把だよね、それ!?」


「勇者様、そう言われましてものう……歳のせいもありますが、要求されている短時間の鑑定ではこれくらいの精度が限界ですゆえ……」


「まあいいわ。それで充分よ」


「ありがたや。では、どうも失礼いたしますですじゃ……」


 ルシェラに硬貨の入った小袋を受け取り、よろよろと立ち去る鑑定士の老人。


「ル、ルシェラ、あれは一体なんなんだよ。もっといい鑑定士がほかにいるんじゃ?」


「ランデル……あなたね、孕ませちゃったファリアのことをもう忘れちゃったわけ……?」


「あ、あれはっ……僕は追放するつもりなんてなかったけど、将来王様になる予定の僕の子が産まれたらややこしくなるからって、ルシェラが一方的に追い出したんじゃないか……」


「それはそうだけど……元はといえばランデル、あなたの火遊びが根本的な原因なわけでしょ? とにかく鑑定士なんてあれくらい適当でいいのよ。難易度が確定しちゃったらあなたは挑戦を躊躇しちゃうもの」


「そっ、そりゃそうだよ。だって死ぬのは怖いもん……。ねえ、グレック、エルレ?」


「あ、あぁ、命は一つしかねえしな。ランデルの気持ちもわかるし、ルシェラさんも許してあげなよ」


「グレックお兄ちゃんの言う通りだよぉ。ルシェラお姉様っ、なんたってランデルお兄様は将来の王様なんだよぉ?」


「そんなの、あなたたちに言われなくてもわかってるわよ、グレック、エルレ……」


「「ひえっ……」」


 腕組みしたルシェラに凄まれて青ざめるグレックとエルレ。


「とにかくチャンスなんだから、四の五の言わずに行くわよ。どうせハワードがしょうもない正義感振り回して突入するのはわかりきってるんだし」


「で、でも、ルシェラ、今回はやめとこうよ……ね? だって上限が『+150』って半端ないじゃん……。もしそこに近かったら、僕たち本当に死んじゃうかもしれないんだよ……?」


「だから、ハワードを利用すればいいのよ。この前久々に会ってみてわかったけど、怪我してるのは間違いないとして目は死んでなかったから、そこそこやれると思う。あの男を盾にして、傷ついたコア共々壊しちゃえばいいだけの話よ。ふふっ……」


「「「……」」」


 ルシェラの冷酷な微笑みにランデルたちが口元を引き攣らせる。


「で、でもさ、ルシェラ……もしコアが教皇のユミル様だったら……? 確かリヒルちゃんと凄く親しい人らしいよね? いくら迷宮術士の作ったダンジョンを攻略することが名誉だっていっても、リヒルちゃんの親友を殺しちゃったら元も子もないんじゃ……」


「そのときはそのときで、ハワードに任せればいいだけのことでしょ。あいつ一人に泥を被せて処刑まで追い込んでやればいいのよ……」

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