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第三十話 威風堂々


 女王リヒルと俺たちを乗せた馬車は、神精錬によって王様の健康状態を向上させるべく、その足で早急に王都の中心部にある宮殿まで向かうこととなった。


「シェリー、大丈夫か?」


「あっ、ハワード様……そ、それがしなら、だっ、大丈夫である……」


「……」


 大丈夫とか言ってるが、さっきからずっとシェリーの様子がおかしい。馬車酔いというよりこの国の副女王が近くにいるってことで緊張のあまりそうなってるのか、女王顔負けの青白い顔で黙り込んでいた。


「「くー、くー……」」


 ハスナとシルルが肩を寄せ合って仲良く居眠りしてるのとはあまりにも対照的だ。


「シェリーとやら、私は副女王、以前にただの人間ゆえ、そこまで緊張、しなくてもよい……」


「はっ、はははっ、はいいっ……!」


「……」


 女王の優しさには感服させられるが、シェリーの緊張は余計に高まってしまったみたいだ。よし、俺がこっそり神精錬で叩き折っておこう。


「ふう……な、なんだか楽に。これもリヒル様が声をかけてくださったおかげかとっ」


「そう、か。ならばよかった……」


 女王の穏やかな微笑みを見て、俺は心が三段階くらい精錬されるような気さえした。やっぱり彼女は神か……。




「――しばし待たれよっ! これはこれは、女王様ではありませんかあっ……!」


「「「「「……」」」」」


 宮殿に到着し、さあこれから王様の寝台へ向かおうというときだった。大臣と付き添いの男――グレック――がこっちに威風堂々と歩み寄ってきたかと思うと、ひざまずいてきた。


 グレック……やっぱり間者の件はあいつの仕業だったか。それにしても、大臣の用心棒みたいなことをやってるとは思わなかった。まさか、勇者パーティーを辞めた……? いや、強者に媚びるのが上手いこいつのことだ。ただ単に美味しい話に乗っかって兼任してる格好なんだろう。


 今、俺たちは女王と騎士のシェリー以外変装してるから気付いてないだろうが、まさか俺がここにいるとは夢にも思うまい。


()()()()()()()()()は、一体なんなのでしょうか、女王様っ!」


「……大臣、そなたには関係のない、こと……」


「いえっ、断じて関係ないことではありませぬっ……! 女王様ああぁぁっ!」


 誰もが振り返るほど、大臣の大声が周囲に響き渡る。なんとも大仰な感じで不快感もたっぷりあるから神精錬で折りたくなってくるな。こいつ自体を折れたら最高なんだが。少なくとも音量くらいは。


「それに大変恐縮ながら、これは女王様の問題だけではありませぬ。現国王の寝台につながる道を参られるとなれば、主治医の選任を預かっている立場からすれば、決して見逃せぬことっ……!」


「……大臣、そなたはこの私を、疑っている、のか……?」


「いいえっ! 滅相もございません、女王様あああぁぁっ!」


 大臣が地面に頭を激しく擦りつけ始めた。己のやり方を通すためならここまでやるのか……。


「私めはぁ、心を鬼にしてえぇ、こういう立場だからこそ訴え出ているにすぎないのでございますうぅっ! これもすべては国王陛下、並びに副女王リヒル様の身の安全のためなのでございまするううぅぅっ……!」


 まもなく、なんだなんだと人の目が集まってくるのがわかる。これによって女王といえど拒否し辛い空気を作り上げてるんだ。この男、大臣なだけあって中々強かだな……。


「では、わかった。確認するが、いい」


「おおっ、ありがたき幸せっ……おいグレック、この連れの者たちの中に女王様や国王陛下に害する者がいないかどうか、いち早く確認するのだっ!」


「はっ……!」


 女王とシェリーを除く、フードやマントで身を隠した俺たちの顔を、一つ一つじっくり確認していくグレック。やがて俺の番がやってきたが、やつはいかにもつまらなそうに舌打ちするとともに大臣のほうを向いた。


「念入りに調べましたが、怪しい者は見当たりませんでした、大臣……」


「何いっ!? そんなバカな……!」


 今度は大臣自ら血眼で調べ始めたが、最後のほうになるとやはりグレックと同様の反応だった。


「むっ、むううぅ……」


「彼らは、私の友人たち、だから、案ずるでない。では……そろそろ、行ってよいだろう、か? 大臣」


「は、ははあっ……!」


「「「「「……」」」」」


 俺たちはほっとした顔を見合わせつつ、先を急いだ。


 ちなみに、俺たちの変装は神精錬を使ったものだからかなり気合が入っていて、ハスナはなるべくオーガの角が目立たないように髪の毛を精錬したし、シルルには化粧を施した上にその完成度を精錬し、俺に至っては見た目年齢を精錬しまくって、まさにただの老人と化したんだ。さすがにここまでやったら俺がハワードなんて気付くやつは味方以外、誰もいないだろう……。

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