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第二三話 奇妙な病


 俺たちは炊き出しを一旦中止し、シルルが不吉な臭いを感じたという女性を密かに追うことにした。


 とはいえ不吉といっても色んな種類があるだろうし、コアは一切関係なくてモンスターに襲われるだけの可能性もあるが、それはそれで彼女を助けることができるわけだから問題ない。


「――あの女、一体どこへ行くつもりなんだろうな?」


「用心深すぎですね」


「あたし、疲れちゃった……」


 ハスナとシルルも大いに参ってる様子。それもそのはずで、女はかなり警戒しているのか色んな場所に寄り道してはまた歩き始めるということを繰り返していた。


 かなり距離を取っているとはいえ、この状況で気付かれずに追うのはかなり根気のいる作業だってことで、俺たちは気配の数値を『-10』まで折って慎重に尾行していた。


 それにしても、あそこまで油断も隙もないならそこら辺にいるモンスターに襲われる心配もなさそうだし、そうなるとコアが絡んでる可能性はかなり濃厚になってきたな――


「――あっ、ハワード」


「どうした、ハスナ?」


「あの人、今急にどこかに駆け出しましたです」


「不吉な臭いも強くなってる!」


「となると、いよいよコアに近付いたっぽいな。急いであとを追うぞ!」


「「はいっ!」」







 迷路のように複雑に入り組んだ細い路地、シルルの嗅覚を頼りにして進んでいくと、やがて微かな話し声が聞こえてきた。近くにいるのはもう間違いない。


 落書きだらけの壁の横から声がした場所をそっと覗き込むと、そこは袋小路で例の女がひざまずき、前には壁を背にしてぐったりと座り込む髭面の男がいた。


「オルフ様、どうか、これを食べて力をつけていただきたい……」


 オルフだって? 確か孤児から騎士団の副団長まで上り詰めた男で、人格者として評判がよくて人望も大いに篤かったはず。それがなんでこんなところに……。


「……シェリー、ありがとう。だが、もういい……ごほっ。ごほっ!」


「オルフ様!?」


「この通り……俺は数日前から《《奇妙な病》》のせいで呼吸も苦しく、足も動かない状態だ。あの世へ旅立つのも時間の問題だろう……」


 奇妙な病、か。その割りに顔色がいいのは妙だな。むしろ活力で溢れているとすら感じる……。


「そ、それならば、それがしがハワード様に頼めばなんとかしてもらえるかと!」


「何? ハワードどのだと? あの方もここにいたのか。しかし、俺と同じように追放されたと聞いたが。力を失ったことが原因とかで……」


 なるほど、話が読めてきたな。オルフはなんらかの理由で騎士団を追放されてこの町に住んでいたが、ダンジョン化したことで部下の女が助けようと飛び込んできた格好か。


「それが噂とは大分違うらしく、一瞬でモンスターの群れを倒したそうで。しかも炊き出しまで催して民を助けておられました。鑑定士同行で難易度の低いダンジョンばかりを攻略している勇者パーティーとは真逆の姿勢。あの偉大なるお方ならオルフ様の病も治せるかと……」


 へえ、そうだったのか。勇者ランデルが果敢にダンジョンを攻略していると聞いたがそんな絡繰りがあったんだな。いかにもあいつらしいやり方だ。


「さすが、神鍛冶師ハワード。だが、いくらあの方であってももう無理だろう」


「オルフ様……?」


「俺にはわかるのだ。最早体中が病に侵され、どうしようもなくなっているということに――ごふっ、ごふっ!」


「オ、オルフ様!? どうかお気を強くお持ちください!」


「……」


 あの男、妙だ。言動とは裏腹に目が鋭くなってきている。


「よく聞け。おそらく俺はコアだ」


「え……? な、何をバカなことを……」


 だが、女の反応とは逆に俺は確信していた。あの男は紛れもなくコアだ。既に異変を感じ取ったのかハスナとシルルも緊張した様子で黙り込んでしまっている。


「……まだ人間としていられる間に、お前と大事な話がしたい。シェリー……」


「オ、オルフ様……?」


 あの女も薄々気が付き始めたようだ。オルフという男から放たれる、尋常じゃないくらいの不吉なオーラに……。

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