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第二一話 一石二鳥


「ひぐっ。そ、そんなことが……むぅう、勇者パーティーめえぇ、恩人のハワードさんに対してなんて酷いことをするのっ……」


 泣き終わったシルルにこっちの事情を話したわけだが、またしても頬を涙で濡らす羽目になってしまった。こっちのほうは悔し涙って感じだが。


「もちろん、俺たちだってあいつらにいいようにやられたまま泣き寝入りするつもりもない。これから勇者パーティーや迷宮術士をやっつけに行くところだ。よかったらシルルも来るか?」


「来るです?」


 いくら俺が自分の腕に絶対的な自信を持ってるとはいえ、敵は勇者パーティーだけじゃない。異次元の力を持つとされる迷宮術士に加え、やつが作り出す強力なダンジョン群を相手にしなきゃいけないわけで、なるべく仲間はいたほうがいいのも確かだ。


「あ、あたしもついていっていいの? お裁縫とかお料理くらいしかできないけど、それでもいいならっ……」


「嗅覚は?」


 俺がシルルに期待したのは主にその部分だ。呪いによるものとはいえオークの姿になっていたわけだし、その嗅覚はハスナの眼力のように役に立つはず。


「あ、うん! 匂いにも凄く敏感だよ。食べ物とかもそうだけど、争いが今にも起こりそうなときとか、そんな不吉な臭いとかもわかるの! ひぐっ」


「へえ……」


「やるです……」


 こりゃ予想以上に期待できそうだな。ハスナのように二重の役割を兼ねているし、緊急時にはオーガの角のようにオークの鋭い牙も使える。さて、そろそろコアを見つけるために出発するとしようか。






「――ダメだったか……」


「ですね……」


「うん……はあ、ふう……」


 あれから俺たちは町中を歩き回ったわけだが、いるのは人に擬態したモンスターくらいで、結局何も見つけることはできなかった。


 周囲が暗くなってきて、出発地点の裏路地までループしたこともあってそこで休むことに。


 コアに対する距離を心敷に置いてへし折る、なんていう突飛な考えも浮かんだので試しに実行してみたんだが、迷宮術士の作る異次元なダンジョンであるせいかそれはやはり通用しないどころか数値さえ出なかった。ヒントを出すことすら許さないってわけだ。なんとか自力で探すしかない。


 人の姿にしても、最初のほうで見た連中が勇ましかっただけなのかあれ以降姿がなくて、ほとんどの人間が家の中に引きこもってるのが見て取れた。


 まあダンジョン内だしモンスターがうろついてることを考えれば当然か。それでもその中の誰かがコアの可能性が高いわけで、かといって強引に侵入して調べ回るわけにもいかないし、今の状況というのは前に進むことも後ろに退くこともできない、かなり苦しいものであるのは間違いなかった。


 町の住人たちが自分の意思でおのずと外に出てくる方法はないだろうか。騒ぎ立てるようなことをすれば逆に混乱させて被害を拡大しかねないしなあ。なんか頭がフラフラしてきた――


「――うがぁ、お腹空いたですね……」


「あ、あぁ、そういやそうだな」


 よく考えたらまったく食べてなかったんだからフラフラするのも当然か。なんとかしたいが、いくら神精錬でも何もないところから食料を作り出すようなことはできないんだよな。どうしようか……。


「ひぐっ。それなら、あたしが何か近くにないか探すねっ。すんすん……」


 お、シルルが立ち上がってフラフラとどこかに歩き出した。早速自慢の嗅覚を生かして食料を探してくれてるっぽいし、あとを追いかけてみよう。


「――すんすん、すんすんっ……この辺に何かあるみたいっ!」


「「おおっ……!」」


 シルルが指定した雑草まみれの場所を掘り返してみたわけだが、なんとも立派な芋たちが次々と顔を出してきた。


 こりゃ食べ応えがありそうだな……って、待てよ? まさに一石二鳥というべきか、これで腹ごしらえできるだけじゃなく、芋づる式にこの膠着状態を打開できる方法まで浮かんできた……。

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