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10「図書室」

「なんなのよ! きょうのりんかは!」


 昼休み。

 図書室に呼び出された子龍は桃花にもの凄い剣幕で詰め寄られていた。


「いやあ、なんなんだろうな」


「なんなんだろうじゃないわよ? あきらかに距離感がおかしいでしょうがっ。クラスのみんなもドン引きよ! りんかはアンタのママなの?」


「白石は俺のお母さんだった……?」

「なわけないでしょ!」


「白石は俺のお母さんじゃなかった……?」

「そうだよ! ってかなんであたしがツッコミ入れてんのよ」


「いやあ、佐藤は今日もキレッキレだったぞ」

「違うって――あ、あかん。こやつのペースに惑わされるな、桃花。こんせんとれーしょん、こんせんとれーしょん」


「で、用件がそれだけなら俺はもう教室戻っていいかな?」


「よくないっ。まだ、なんの話もしとらんっ。そもそも、アンタとりんかはど、どどど、どういう仲なのよ!」


「そういうそっちこそ白石とはどういうご関係なんだよコノヤロー」


「あたしはりんかとは幼稚園の頃からの幼馴染みよ。どうっ」


 エッヘンと桃花は胸を反らすがぺたんとしているので子龍は面白みがないと思った。


「どうって、言われてもな。他人ジャン、としか言いようがないな」


「他人じゃない。幼馴染み! つまりは子龍よりずっと長い絆が構築されてんの。いわば、もう魂の姉妹みたいなっ」


「そうなのか? 白石はそんなこといってなかったが」

「う、うぞっ!?」


「嘘じゃないぞ。まあ、そういうお互いの人間関係を話し合うほど俺と白石の関係は深くないから当然っちゃあ当然だが」


「紛らわしいこと言わないでよ。で、本題よ。あたしがちゃんと言ったんだから、子龍も質問に答えなさいよ」


「何気に名前呼びだが……まあ、いいか。その質問に答えてやろう」


「ごくりっ」

「席がお隣さん?」


「ばかあっ。ふざけないでよ。りんかは金曜日帰って来なくて、あたしもりんかのママもずーっと探してたのよ。土曜の朝帰って来たからいいものの」


「……」

「なによ、そのゲッていう顔は。やっぱ心当たりあるんじゃないの」


「ないっス」


「怪しすぎるわね。だいたい、りんかもメイドのコスプレみたいな服着て、帰ってきてもひとっことも口利かず寝ちゃうし。夕方起きたときは、なんにも覚えていないとかしらばっくれて。子龍、あんたもしかしてりんかに――」


「ちょ、ちょっと待った」

「催眠術でもかけて、りんかを、ど、どどど」

「どれみふぁそらふぁ、み、れ、ど」


「違うわっ。奴隷にでもしたんじゃないのって言いたかったの!」


「あ、アホか……だいたい、どうやって人さまに催眠術かけるんだよ」


「そーいうアプリがあるんじゃないの? 催眠アプリみたいなの……」


「ンなもんあるかっ。近ごろのスマホはそこまで高機能じゃないっての」


「で、でも、あたしのお兄ちゃんが催眠アプリだ。りんかちゃんは催眠アプリでなんかエロいことされたんやって、ずっと言ってたもん」


「佐藤。おまえのお兄ちゃんはおかしなゲームのやりすぎだ。カウンセリング受けさせたほうがいいぞ。このままだと近い将来人格が歪むが十中八九性犯罪を起こす」


「え、まじ……?」

「まじまじ」


「って、また話逸らそうとしてるじゃない。実際、子龍はりんかと一緒にいたのよね」


「その質問は党に持ち帰って協議の上でしかるべき場所において、最善を尽くした結果をご報告できるよう努力を」


「政治家みたいな答弁しないでよ。まじで質問に答えて」


「――悪く取るなよ? 本当のことを言うぞ。まあ、俺と白石は、金曜の夜から明け方まで、同時刻、同地点にいたかもしれないが、特にやましいことはないので親御さんや教師には絶対黙っていないとおまえの身に不幸が襲いかかるぞ」


「後半脅してるじゃないのっ」

「見解の相違だ」


「むつかしい言葉で言っても無駄よ。あたしはりんかでそういうの慣れてるんだから」


「特に偏った言葉で会話をしているつもりはないんだが。白石は違うのか?」


「あの子のおじいちゃん漢学者だったのよね。それで、りんかも子供のころからちょくちょくむつかしい故事成語とかそういうの使うんで、まあ、あたしは慣れてるから問題ないけどね」


 そういって「えっへん」と胸を張る桃花の知能指数はそれほど高くなさそうで子龍はどこか安堵した。


「どうでもいいけどここは談話室じゃなくて図書室だ。もうちょっと声を抑えろよ」


「う……アンタがあたしを熱くさせてるからじゃないの」


 桃花は自分の身体のあちこちを抑えながら、もじもじと身をよじった。


 ――なんかエロいな。


 その仕草をどことなく卑猥だなと子龍は感じたが、これ以上話をややこしくしたくないので黙っていた。



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