第95話『君が好きだ!』
去年の冬。
クリスマスデートの時だ。
ワタシは告白すると将来結ばれる事はない場所に健也を誘い込み、そこで告白してフラれた。
そう、そこで健也と枯葉坂を会わせるようにしたのは、このワタシ杠 秋歌によるものだ。
健也と枯葉坂が出会ったのは偶然なんかじゃない。
そうするように指示されたからだ。
火盧理さんにそう言われたんだ。
ワタシの命を狙った枯葉坂を一緒に倒そうって、でも枯葉坂が死ぬとは思いもしなかった。
あの優しそうな火盧理さんが枯葉坂を自害させるように仕組んだなんて今でも想像できない。
しかも今、この大会の裏で警察と火盧理さんが戦ってるのを考えただけで胸が苦しくなる。
なんで、こんな状況になったんだろ?
○ ⚫️ ○ ○ ○ ○ ○
「そうですか、やはり秋歌が火盧理さんの共犯者だったわけデースね。でも共犯したのはあくまで、健也さんを公園へ誘導しただけですよね? そこまで気に病む必要が秋歌にありますか?」
秋歌とアヤナはステージを降りて、秋歌からそのような事を聞いていた。
「それと、これはワタシの推理と言うかほぼ妄想デースが、曰く付きの公園を選んだのは秋歌本人ですね? 大方、枯葉坂の組織に命を狙われた自分は、これから先ずーと健也さんに迷惑かけ続けるだろうなぁとか、そう言ったネガティブな思考に囚われて、敢えて秋歌の希望でその公園を選んでフラれて、これから先ずっと健也さんとは結ばれない道を選んだ……で良いですか?」
「……はぁ、ワタシ、が、言いたい、こと、全部、言うな、本当に、空気が、読めん女、だな。お前の、その妄想はほとんど合ってる、よ、でも、やっぱり、諦めきれ、なく、てな、だから、この大会が、茶番だと知ってても、本気で、勝つつもり、だった、まぁ負けた、がな」
秋歌がアヤナに背を向けた。
「どこに行くデースか?」
「ワタシは、敗者、だ、それに、火盧理さん、とも、共謀した、だから自首する」
「それはダメだ!」
と、いつの間にか健也がやって来た。
「秋歌ちゃんは何も悪くないだろ! こんな状況になったのも、母さんが変貌してしまったのも、元はと言えば全部枯葉坂のせいじゃないか! 俺も一度大きく人生を狂わされた。なんで俺は誘拐されて2年間も過酷な戦場に出されたのか理解できなかった。でも、こんな事言うのは変だけど、俺はその2年間で変わったんだ」
「健也が、変わった?」
「10年前、もうすぐ11年経つけど、初めて秋歌ちゃんと出会った時の俺を覚えてる? 当時の君から見たらキラキラ輝いた白馬の王子様に見えたかもしれないけど、当時の俺は心が荒れてたんだ。もう醜く荒れてた。表面上は良い顔をしてたとしても、内側は酷かった。そんな俺でも、2年間死にそうな目に遭って、そして元の生活に戻った時、俺は多くの人間に心配されてた事を知った。それから真奈ちゃん、美娃ちゃん、秋歌ちゃんの三人と出会って、俺は心の底から人を好きになる事を知った。だから秋歌ちゃん! 君が好きだ! 俺の目の前から居なくなるな!」
健也は心から思った事を口にして、秋歌は赤面した。
「な、は、け、健也、そんなこと、こんな、多勢の、前で、言うな、恥ずかしい」
「え? は!?」
健也が周囲を見渡すと、健也の言葉を聞いていた観客達から黄色い声援が飛び交った。
「うわー!? 今のなし! いや、秋歌ちゃんが好きなのは本当だけど……ぐわーどうすればー!」
○ ○ ⚫️ ○ ○ ○ ○
「うるさ……」
ステージの上でポツリと呟いた美娃の対戦相手である時骸 六波は不機嫌そうにしていた。
「おーほほ! 新参者の貴女には健也とワタクシ達の間に付け入る隙はないのですわよ! だからさっさと辞退しなさいな」
「はぁぁぁ、小院瀬見 美娃。何か勘違いしてるみたいだけどさ、貴女達が私より健也さんと出会ったのが早かっただけであって、別に貴女が特別とかじゃないんだけど? 健也さんって今三人の女の子を同時に好きになってるんでしょ? ならチャンスはまだあるじゃん。この試合で貴女を叩き潰して、他の女共を蹴落とせば楽勝じゃん」
大人しい雰囲気の六波だったが、意外と好戦的であった。
いや、普段は大人しい子なんだろうが、好きな相手に複数の女が群がってる事が気に食わないのだろう。
ある意味、女らしい少女である。
「あーら、ワタクシから見たら貴女はモブ庶民の一人にすぎないですわ〜、軽〜く捻り潰してあげますわ」
「誰が庶民だ。踏み潰すぞ」
両者、試合が始まる前から仲が悪かった。
「中々ヤル気満々ですね。ではゴッドマン氏、抽選をどうぞ!」
実況のルーガの指示で、再びゴッドマンが抽選箱に手を突っ込んだ。
(お父様が何を企んでるか知りませんが、どんな勝負でも勝ってみせますわ!)
そして箱から紙を一枚取り出した。
「……次の競技は『オマハ』でごわす」
「? オマハってなんですか?」
「ポーカーの一種でごわす。ルールをざっくり説明すると、まず各プレイヤーに四枚の手札が配られ、その後に4回のベッティングラウンド(お金を賭けるラウンド)があり、4回目でテーブルの上に合計五枚の表向きのカード、これをコミュニティカードと呼ぶでごわす。そして四枚の手札から必ず二枚、五枚のコミュニティカードから必ず三枚を選んで、合計五枚のカードで役を作るゲームでごわす。なお、今回はローゲーム、一番弱い役を作った者を勝者とするでごわす。それと対戦は一回だけにするでごわす……ん?」
またもや黒服の男が現れてゴッドマンに耳打ちをした。
「……何と言うことでしょう。日本でのポーカーは基本ノーレート(お金がかからない)で対戦するのですが、今回は本物のお金を使用するでごわす。チップは両選手の全財産でごわす!」
またもやルールの変更だろうか、また会場が騒つく。
「あら、ポーカーはなんとなく知ってますが、ローゲームというのは初めて聞きますわね〜」
本物のお金を使用すると言うのに美娃は全く動じてない。それは六波もそうであった。
「なんだ、全財産か、安いですね」
六波の口振りからして、美娃は察した。
「なるほど、六波さん。貴女もお嬢様のようですわね。でも親の金で生まれつきのお嬢様には厳しいゲームじゃなくて?」
「生まれつき? 何のことだか。確かに私はお嬢様ですよ。小院瀬見財団程の規模は有してませんが、でも私から見たらお金なんて何もしなくても湧いて出る物ですから、勝っても負けても何とも思いませんが、だけど負けたくないですね。小院瀬見如きに!!」
こうして、二人のオマハローゲーム対決が始まった。
今人気のテキサスホールデムポーカーは何度もプレイしたことあるのですが、オマハは経験ないです。




