第89話『開戦!』
歳下に歳下と勘違いされて歳下扱いされた歳上の作者。
「ここが健也が言ってた理事長室の落とし穴か」
天ヶ屋率いる警察の特殊部隊が理事長室の落とし穴を発見した。
「皮肉だな。俺達の人生を狂わせた荒覇芭木の研究を火盧理が続けてたなんてよ……健悟郎、お前大丈夫か?」
今回の作戦には火盧理の夫でもある健悟郎も参加していた。
「正直に言いますとショックです、けど今でも火盧理ちゃんを愛してます。だから彼女を絶対に一人にさせない為に僕も同行したのです。覚悟はできてます」
強がってはいるが、手が震えている健悟郎を見て天ヶ屋は健悟郎の肩を軽く叩いてから励ました。
「口先だけでも強気に出れるなら上出来だ。今回の作戦のキーマンはお前だ健悟郎。恐らくこれが荒覇芭木との因縁に決着を付ける最後の戦いだ。気合い入れて行くぞ!」
「はい!」
天ヶ屋、健悟郎、そして数名の武装した警察官がロープを使って地下へと降りて行った。
○ ○ ○ ○ ○
「さーやってまいりました! 第一回荒蒔健也争奪戦をスタートします! 司会は私『田中 ルーガ』と!」
「えー解説は『鈴木 ゴッドマン』でごわす」
「レフェリーは『茶島 リキュール』がお送りしますネ」
警察が裏で動いてる間、校庭では健也争奪戦がスタートしていた。
と言うか今紹介された三人、健也は知ってる。
健也が組織に居た頃から顔と名前ぐらいは知っている。
つまりかつては枯葉坂の組織の構成員であり、去年秋歌を暗殺しようとした五人の内の三人だ。
現在は美娃の実家である小院瀬見財団に籍を置いている。
一応三人の簡単な特徴を伝えておこう。
ルーガは黒人の元気な若い女性。
ゴッドマンは寡黙で白人の筋肉モリモリマッチョマンの大男。
リキュールは痩せ気味の中国人のおっさんで髪がない。
ちなみに全員偽名だ。
「では先程くじ引きで決まったトーナメント表を開示します!」
ルーガがそう言うと、会場の大きなモニターにトーナメント表が現れた。
第一回戦最初の組み合わせは……。
「一回戦の初戦は荒捜 月名子vs霧神 菜烙だぁぁぁ!!」
ワァァァァァァ!!
と、観客達が盛り上がる。
月名子はこの学校では有名人らしいので、人気者の月名子が一番手で現れたことによって会場の熱気は早くもヒートアップしていた。
「随分な人気だな、おい」
皮肉まじり言う霧神に月名子は睨み付けた。
「なぁ、お前まだしてないよな?」
「何をだよ」
「謝罪」
「いつの話だぁ?」
「去年2回もアタシに危害加えたじゃないか、今は味方らしいが、アタシはまだお前から謝罪の言葉を聞いてないぞ?」
「いちいちいちいち過去の事を蒸し返しやがって、んなの水に流せよ、器小さぇなぁ」
早くもいがみ合う二人。
今回の大会は一戦ごとに競技が異なるので、基本的には学校の生徒や教師達が書いた競技名が書かれた紙を抽選で決める方式となっている。
「ではでは、抽選はゴッドマン氏にお任せしますね!」
「了解でごわす」
ルーガに促されたゴッドマンの巨大な手が抽選箱の中へと入っていき、その中から一枚の紙を取り出した。
「ゴッドマン氏、記念すべき最初の競技はなんですか?」
「……『拳銃野球』でごわす」
全然聞いた事もない競技が出てきた事に困惑する会場。
しかし解説役のゴッドマンが冷静に解説してくれた。
「拳銃野球。簡単に説明するとピッチャーが野球ボールではなく拳銃を撃ち、その放たれた弾丸をバッターがバットで打つだけのシンプルな競技でごわす。なお、今回は本物を使うのは危険である為エアガンを使用し、勝敗はピッチャーがスリーストライクを取ればピッチャーの勝ち、バッターはエアガンの弾をバットで当てる事ができただけでもバッターの勝ちとするでごわす。それとピッチャーはバッター本人に弾を当てるのは禁止とするでごわす」
「な、なるほど、ちなみに何故バッターは弾をバットに当てるだけで良いのですか?」
「だってエアガンの弾なんてボールより遥かに小さすぎるし、肉眼で捉えるのは困難を極めると判断した為でごわす」
いきなり謎の競技で戦う事になった月名子はバットを持ち、霧神はエアガンを持って、両者打席に立った。
「……ちっ、ムカつくな、まさかオレに勝てると思ってるのか?」
「うるさいなぁ、勝てる勝てない以前に、アタシはお前なんかに負けたくない、それだけだ! アタシが勝ったらちゃんと今までのこと謝れ! いいな!」
「あーはいはい、そうしますよー」
両者の準備が整ったのを見て、レフェリーのリキュールが開戦のコールを上げた。
「レディ……ファイト!!」
パンッ!
と、開始と同時に渇いた音が響いた。
「ストライク!!」
「は?」
何が起こったか分からず月名子は後ろを見ると、後ろの壁にぶつかったエアガンの弾が地面に転がっており、レフェリーのリキュールがストライクと叫んでいた。
パンッ!
「ストライク2!!」
「え、は?」
あっさり二振を取られてしまった。
それを見ていた健也は冷静に観察していた。
(上手い、完全に虚を突いた。人は行動を移すのに0.5秒のタイムラグが発生する。つまり開始の合図から0.5秒以内にエアガンを打てば確実に一振は取れる。しかも月名子ちゃんはスポーツマンとは言え一般人、いくら常人離れの動体視力があっても0.5秒の間に撃たれたら反応できない、しかも何が起こったのか理解できない瞬間を見逃さずにニ振目を取られた。月名子ちゃん、君は兵士じゃないけど、ここが本物の戦場だったら君は確実に2回は死んでたかもしれない)
補足すると、何より恐ろしいのは霧神の早撃ちであった。早撃ちに関しては達人クラスである。
「あ、あっという間に2ストライクです! 月名子選手は一回もバットを振ってないように見えたのですが、ストライクで良いのでしょうか? 解説のゴッドマン氏、お願いします!」
「ええ、先程も申した通り、今回の競技はバッターに有利すぎると判断したので、今回は特別にバットを振る振らない関係なしに弾がバットに当たらなかった時点でストライクとなるでごわす」
「それを先に……!?」
月名子が抗議しようと思ったが、抗議する余裕は無さそうだ。
また気を抜いてスキを突かれたヤバい、ストライクを2回も取られたのだ。もう後がない。
月名子がようやく気を引き締めたのを見て霧神は不敵な笑みをこぼす。
それを見た月名子は逆上しそうになったが、ここで冷静さを失ってはいけないと判断し、怒りを心の奥底へと沈めた。
ここからが本当の勝負。霧神は引き金に力を入れ、月名子はバットを強く握る。
パンッ!
三発目の弾。
今度こそ見え……?
「あれ?」
弾が、飛んで来ない?
「バーカ、空砲だよ、騙されてやんの」
霧神の策にハマった月名子は反射的にバットを振って空振りをしてしまった。
それを見逃さずに、霧神は本当の三発目を撃った。
パンッ!
「ぐ、お、おおおおおお!!」
月名子は叫んだのと同時にレフェリーのリキュールが大声を上げた。
「ゲームセット!!」
拳銃野球なんて実在しません。メッチャ適当に考えました(笑)
このように争奪戦編では実在しない競技が次々と出てきます。
それと拳銃野球はやったことないですが、たぶん危険ですので真似しないで下さいネ。




