第85話『約束再び』
ちょっと諸事情により、この時間帯に投稿します。次回からはいつも通り土曜日の21時〜21時半の間に投稿します。
意思男と火盧理失踪から月日が流れて4月。
新しい事が始まる季節がやってきた。
真奈達がアヤナから、健也は死んだ枯葉坂のAIから、それぞれが邪悪の正体を突き止め、お互い情報共有をして、健也は真奈達と共に意思男と火盧理を捜索することにした。
火盧理は分からないが、意思男はどうやら闇市に売られてしまったらしい。
火盧理がアヤナから枯葉坂の情報を聞き出す対価としてアヤナに差し出したのは、なんと意思男本人であった。
正確に言うと、荒覇芭木の最高傑作である意思男の肉体を人身売買が盛んな闇市に高値で取引されてしまったそうだ。
意思男が火盧理と激突した時の詳細を言うと、まず意思男は火盧理に返り討ちにあってしまい。
そのまま意識不明の状態で、その場に潜んでいたアヤナによって誘拐され、そのまま売られたらしい。
アヤナを問いただしたが、もうどこに行ったのかアヤナ本人ですら分からないらしい。
現在は、健也の父親である健悟郎と警察関係者の天ヶ屋が意思男の行方を追ってくれているので、火盧理の方は健也達が捜索することとなった。
で、火盧理の行方を探るのに最適なのが、火盧理が理事長を務め、現在は真奈達が通っている学校『桜友海学園』に秘密があると考えた健也達は、2月から4月までの間にとある準備を進めていた。
それは――。
「はーい、今日からお前達も3年生だー、ちゃんと自分の進路を考えろよー」
真奈達が居る教室で、去年まで真奈達の担任をしていた男性教師がやる気無さそうに、そんな事を言った。
「本当は今年度も俺がお前達の担任になる予定だったが、急遽新しい教師がお前達の担任になることになった。入って来ていいですよー」
教室の扉がガラリと開かれると、そこから入ってきたのは、教師の格好をした健也とアヤナであった。
「あー、そのー、改めて君達と卒業までの1年間共にすることとなりました荒蒔 健也です」
「そしてワタシは副担任のアヤナ・F・ヴィジョールでーす! 担当は英語でーす!」
健也とアヤナの登場に教室がざわついていた。
(男の方はパッと見は普通?)
(でも顔は悪くないよな)
(副担任の人メッチャ美人! お人形さんみたい!)
なんとなーく教室がざわつくのは予想してたが、一番予想してなかったのは健也本人であった。
(なんで俺が教師にならなきゃいけないんだよぉ!)
二ヶ月前の2月。
「火盧理さんの行方を知るには、やはりワタクシ達が通ってる桜友海学園ですわよね」
「と、言っても、どう、する?」
健也、真奈、秋歌、美娃が悩んでいると、月名子がポツリと呟いた。
「うちの学校の教師で味方になってくれそうな奴が居れば良いんだけどなぁ」
「それですわ!」
美娃が立ち上がって健也を指差した。
「健也! 貴方教師になりなさいな!」
「は?」
今から信頼できる教師を見つけるより、誰かが桜友海学園の教師になって、内部を調査すればよいのでは?
と言う結論となり、健也が教師になる流れになった。
そのままトントン拍子で仕事を辞めさせられ、経歴を捏造されて、晴れて教師となったのであった。
しかも全ての元凶とも言えるアヤナがオマケで付いてきた。
(うっ……)
初めての教職で生徒達の前に立ってみたが、すごい緊張する。
真奈達を含めて約20名くらいだろうか?
20名全員の視線を一身に浴びるのは結構圧力を感じるなと思う健也であったが。
「はいはーい! ワタシ、アヤナは皆さんと仲良くなりたいと思ってマース! 荒蒔先生もきっとそう思ってるはずデースのでよろしくお願いしまーす!」
と、アヤナが助け舟を出してくれた。どうも信用できないから釈然としない。
○ ○ ○ ○ ○
「どひゃー、緊張したー」
無事にホームルームを終えた健也は職員室の自分の席で脱力していた。
まさか自分が教師になる日が来るとは思わなかった。
「お疲れ様デース。荒蒔先生♪」
そう言って、アヤナは健也にコーヒーを淹れてくれたようだが……。
「心配しなくても毒なんて入ってないデース」
「……アヤナさんってさ、よく信用できないって言われない?」
「もう慣れたので大丈夫デース。それより荒捜社長の件は本当に申し訳ないと思ってまーす。火盧理さんとの約束でもありビジネスでもあったのです」
「今更アヤナさんを責めたって、何にもならないよ、それよりこれからどうしよう?」
「まぁ、まずは他の教師の皆さんに挨拶が先でーすね。それから一緒に探索しましょう」
○ ○ ○ ○ ○
「とか言ってたくせに……」
放課後、アヤナが居なくなった。
何やら生徒達に質問責めに遭ってしまったので、健也が渋々一人で捜索することとした。
(さてと、まだ学校には教師と生徒が居るしなぁ、まずは母さんが働いていた理事長室でも行ってみるか)
そう言ってから行動しようとした時であった。
「あ、あのあの、荒蒔 健也さん、ですよね?」
「うん?」
後ろを振り返ると、そこには一人の女子生徒が立っていた。
オカッパ頭の物静かな感じの生徒だ。
「えーと、君は?」
「お、覚えてない、ですか? 10年前に約束したのに」
ん? 10年前、あれ? なんか嫌な予感がする。
「あ、あのあの! 荒蒔 健也さん! 私とけ、けけけけ結婚してくださいぃ!!」
「……はぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
なんかこの流れ、懐かしく感じると同時に、面倒な事になったと思う健也であった。




