第8話「デートの後」
友人「なんか、三人のヒロインと主人公にまったく魅力が感じないんだが」
私「すまない! 私の実力不足が招いた結果だ! 許してくれ!」
翌日の月曜日の朝。
「……はぁぁぁぁ、危なかったぁぁぁぁぁ」
危うく俺は未成年に手を出して捕まってしまうところだった。
昨日の観覧車での出来事。
「さぁ健也! アナタも脱ぎなさい!!」
「待て! 落ち着いて!!」
このままでは大事件に発展してしまう。
俺は必死に抵抗したが、美娃ちゃんは思ってた以上に腕力があって、そのまま俺の服を無理矢理脱がしてしまった。
「うわぁぁぁ!!」
俺は叫んだ。終わった。社会人として、何もかも終わってしまった。
そう思われたが。
「……健也の腹筋、胸筋、鎖骨……きゅう」
「え?」
美娃ちゃんは突然気を失って俺の上に覆い被さってきた。
「……よ、よく分からないが今の内に!」
その後、俺は気絶した美娃ちゃんに服を着させて、観覧車から降りた後に、外で待っていた美娃ちゃんの執事の時真さんに美娃ちゃんを引き渡して、俺はそのまま帰る事とした。
「危なかった、本当に危なかった」
昨日の出来事を思い出す度に寒気がする。冗談抜きで犯罪者の仲間入りしそうな状況だったのだから。
俺は何となく時間を確かめる為にテレビの電源をつけた。
『昨日午後3:00に〇〇市で27歳の男が、17歳の女子高生に猥褻な行為をしたとして、警察は無職の27歳の男を逮捕しました』
「ぶっ!?」
テレビをつけると丁度俺と同じ年齢の男が逮捕されているニュースを見て、俺は背筋が凍った。
俺もあの男と同じになりかけていたのか、怖!!
ピンポーン。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
インターホンの音を聞いて、俺はつい悲鳴を上げてしまった。
恐る恐る玄関の覗き穴を覗くと、そこには真奈ちゃんが立っていた。
「ま、真奈ちゃん……」
俺は玄関を開けて、真奈ちゃんを中へと入れた。
お、怒ってるだろうか? 秋歌ちゃんの事はバレてない筈だが、美娃ちゃんとデートする事を黙っていたのだから。
「健也さん」
「はい!!」
俺は緊張して背筋を伸ばしてしまった。
「そんなに緊張しなくても良いですよ。私怒ってませんから」
「ほ、本当に?」
「言ったじゃありませんか、健也さんが他の女の子と仲良くしていても諦めたり、嫌いになったりしないと」
真奈ちゃん心広すぎない?
「ですが、次からは前もって他の子と会う事を伝えてください。どうせ同時に連絡が来て同じ日に会う約束をしてしまったのでしょう? 健也さん優しすぎますから」
う、勘が鋭い。
「そ、その通りです。本当に申し訳ございません」
「まったく、あれだと誤解してしまうではありませんか。それで最後に確認なんですが」
「な、何かな?」
「小院瀬見さんとはあの後何もなかったのですか?」
「んんんんん!? ないよ! 何もなかったよ!!」
「本当ですか?」
「本当本当!」
つ、辛い、疑いの眼差しが辛い……。
「……では信じます。それでその、こちらからも謝って良いですか?」
「謝る? 何を?」
「ほら、この十年間何をしてきたのかハッキリ言いませんでしたよね?」
「料理の修行じゃなかったの?」
「すみません。あれは間違いではありませんが、真実ではありません。怖いのです、健也さんに話すのが、怖くてたまらないのです。話したら嫌われてしまうと思うと……」
美娃ちゃんは、この十年間でお金持ちになって、秋歌ちゃんは俺との約束を原動力にして夢の為に頑張ってきた。
だが、未だに真奈ちゃんだけが分からない。
真奈ちゃんは今まで何してきたのか全然分からない。
「……無理に話すことないんじゃないのかな? 話したい時に話せば良い。俺はいつでも待ってるから」
「それじゃダメなのです!!」
いつも大人しい真奈ちゃんが珍しく大声を出したものだから、俺はかなり驚いてしまった。
「健也さんは、まだ私の事を何一つ知らない! いつまでも自分の事を話せなければあの二人に追い抜かれてしまう!!」
「真奈ちゃん……」
「……ごめんなさい。ですが約束します。近いうちに私の事を全て話します。だから――」
と、真奈ちゃんが言いかけた時、玄関が乱暴に開けられた。
「おーほほほ! おはようございますわ荒蒔 健也!」
げぇ、美娃ちゃんが現れた。
昨日の事もあって俺は美娃ちゃんに苦手意識を持つようになってしまったのだが、どう顔向けすればいいんだ?
「朝食はまだ? まだよね! でしたら昨日のお詫びとしてワタクシが作ったゴージャスな朝食はいかが?」
昨日の事を悪く思っているのだろうか?
昨日のお詫びとして美娃ちゃんは勝手に部屋に上がって大きな弁当箱を机の上に力強く置いた。
「さぁ健也、ワタクシが不慣れながらも作った愛情弁当を召し上がれ!」
「……小院瀬見さん! 私が今大事な事を言おうと思ったのに邪魔しないでください!!」
「あーら居ましたの? えーと、真路なんとかさん」
「わざとね! わざとですよね!? 本当に色々と失礼な人ですね! 今までよくそれで上手くやっていけましたね!」
「おーほほほ! 当然ですわ! ワタクシやろうと思えば何でもできる天才ですから!」
「むきぃぃぃぃ!! 嫌味も通じないのですか!? 頭の中どうなってるのか一度解剖してみたいですね!」
あぁ……真奈ちゃんの口調が段々乱暴になっていく。この二人はどうやら犬猿の仲のようだ。
二人の喧嘩を見ていると、突然視界が真っ暗になった。
「え、何!?」
「だーれ、だ」
背中に柔らかい感触と聞き覚えのある声で俺は背後に誰が居るのかを言い当てた。
「秋歌ちゃん?」
「せいかーい、ご褒美に、私が、作った手料理を食べさせて、やろう」
俺が振り返ると、そこにはいつの間にか秋歌ちゃんが居て、俺の口の中に卵焼きを押し込んだのだ。
「「あー!?」」
それ見た真奈ちゃんと美娃ちゃんが喧嘩を止めて両者手に箸を持って俺に料理を食べさせるのであった。
「負けません!」
「負けませんわ!」
「ちょっと、待っ、むぐぅ!?」
なんか前にも似たような光景を思い浮かべながら、俺は思った。
俺はまだまだこの三人の事を何も知らないな。そして逆にこの三人も俺の事を何一つ知らないだろう。
一目惚れと十年前の約束で繋がれただけの関係。
こんな関係、いつまでも続くはずがない。
俺の正体を知れば、今度こそ俺を諦めてくれるだろう。
それを打ち明けるには、まずこの三人の事を知るべきだと。
俺は思うのであった。
〇 〇 〇
「荒蒔 健也?」
「えぇ、その人が真奈の許嫁だと本人が言っていました」
「確か27歳だったか? いくら何でも真奈とは歳が離れすぎてる。直接本人に会ってみたいものだな。娘が騙されていないか心配でならない」
「……うちの美娃が夢中になってる荒蒔とはどんな男だ? 事と次第によっては、斬り捨ててやらねばならないなぁ」
「会長、小院瀬見財閥のトップが犯罪を犯してはなりませんよ」
「会長はよせ、あの子が成人するまでの仮初めの会長なんぞ誰が従うものか、私はさっさとラーメン屋の店主に戻りたいのだ。その前に、荒蒔と言う男を見定めねば気が収まらぬ。もしも軽い男だったら首と胴を分けてやるからな!」
「ぶはぁ、あー酒うめぇ、秋歌の奴、急に十年間好きな奴が居たとかぬかしやがったが、夢の為に感情を失ったアイツが惚れた男か、ははははは! 会ってみたいものだな! その時は一緒に酒を飲み交わしたいものだ!」
「……私は認めませんからね。あの子が血反吐を吐くような想いでやっと手にした夢の妨げになるような男。誰がなんと言おうと許しませんから」
それぞれの親の想いが交錯する中、荒蒔 健也と三人の女の子達の親が直接対面するのは時間の問題であった。
なんと言いましょうか、元々連載する気がなかった作品を無理矢理連載させてるような状態だからなのか、一体どうしたら一人一人のキャラの魅力を引き立てられるのか全然分かってない状態です。(言い訳)
次回からは、少しでもキャラの魅力を伝えられるように一人一人にスポットを当てた感じで改めてキャラを紹介していこうと思っております。