第75話『書店へレッツゴー!』
「なんでさ……」
それが健也の一言であった。
健也は書店の中で立ち尽くしていた。
まだ正月休みが続いてることもあってか、書店は多くの客で賑わっていた。
「なんで……俺がこんな目に……」
それは数時間前の話である。
「ヤソカ・キャッスルハートとの面会が可能になったで」
意思男が直接、健也達の家にやって来て、健也の部屋で健也と二人で話していた。
「おじさん、あの男のことだ。何か要求されたんだね?」
意思男の表情を読み取って直感で答えた健也。
あんまりよろしくない表情なのが見てとれる。
「……こんなこと、お前に頼みたくないんやが、ヤソカはお前を指名してきたんや」
「そうか、仮に三年間仕事した間柄なのか、もしくは俺が『マカヤ・ハームレス』とか言う奴の血を引いてるからなのかは知らないけど、どうやら俺はアイツに気に入られてるみたいだな」
「すまん、本当にすまないと思ってる」
「俺は大丈夫だよ。おじさん、少しでも真実に近付くためだ。覚悟は決まってるよ」
健也の顔を見て、更に申し訳なさそうな顔をする意思男は、ヤソカからの要求を健也に伝えた。
「……このメモに書いてある物を買ってきてくれ」
「こ、これは!?」
そして現在。
ヤソカが要求してきた物。それは……。
エロ本であった。タイトルをこの場で言えない程に卑猥な物であった。
しかも10冊。これを健也が一人で買ってこいとのこと。
別の誰かが買っても構わないが、それが判明した瞬間に自害して真実は未来永劫わからないままとなる。
と、脅迫してきたらしい。
どんだけエロ本に命賭けてるだ、あの変態野郎。
これ絶対に嫌がらせだ。今が正月休みな事ぐらい知ってるはず。
それを見越して、こんな要求をしてきたのか? もし目の前にヤソカが居たら北○百烈拳のバーゲンセールをして「お前は俺を怒らせた」と言ってやりたい。
いや、面会した時に殴ろう。アイツの事だから逆に喜びそうだが知ったことか。
今は目の前の問題に専念しよう。
まずは状況の整理だ。
健也が居る書店には客で溢れかえっている。この中でエロ本をバレずにレジまで持っていくのは困難だ。
一応、バレないようにする策はあるにはあるんだが、問題は……。
「うわー、人が多いですねー」
真奈が付いてきたのだ。
家を出る時に見付かって、どこに行くのか聞かれたので素直に書店に行くと言ったら付いてきたのだ。
美娃と秋歌は実家に帰っていた。
なので意思男が出ていった後、家には健也と真奈しか居なかったのだ。
「えーと、真奈ちゃんは欲しい本でもあるの?」
「はい! 一昨日に美娃と秋歌と健也さんと将来の事を話したじゃないですか、あれ以来、私将来やりたいことが沢山あることに気付いたのです。ですから、それらの参考書を試しに買ってみようと思ったのです!」
「図書館じゃダメだったの?」
「今は正月休みで閉館中です」
「oh……」
どうしよう。好きな女の子の目の前でエロ本買うとか最悪すぎるんやが。
別に自分が読みたいわけじゃないのに買わされるとか、どうしよう。
よし、ここは一旦真奈と別れて一人で買おう。
そう思ったが。
「健也さん! あっちのコーナーに行ってみましょう!」
真奈に手を引かれてアダルトコーナーとは別の所へと移動することとなった。
(くっ、こうなったらプランBだ!)
〇 〇 〇 〇 〇
「うーん」
真奈が悩んでる。よし今のうちだ。
「真奈ちゃん、しばらく考えてて、俺他に見たい所があるから」
「うーむ、そうですね、10分後に合流しましょう」
よし、これで真奈と別行動ができる、制限時間は10分!
健也がアダルトコーナーに向かおうとした時であった。
「あ、れ? 荒蒔先輩?」
なんと、今度は霧神と遭遇してしまった。
「き、霧神君!? えーと、インターンシップ以来だね」
「先輩……いや、荒蒔さんはどうしてここに?」
「えーと……そうだ!」
健也は霧神の両肩を掴んだ。
「あ、荒蒔さん?」
「霧神君、いやクレイ! お前に頼みがある!」
「!? 今、クレイって… 」
霧神は混乱していた。かつて健也が組織に居た頃は一年間行動を共にしていたわけだが、その時の霧神のコードネームが 『クレイ』だったのだ。
インターンシップの時は正体を隠していたのだが、気付いていたようだ。
「せ、先輩、いつから気付いて?」
「お前がインターンシップに来た時からだよ、変装してたようだけど、一年間行動を共にした相棒を忘れるわけないだろ?」
気付いていたんだ。自分が尊敬する人物に覚えて貰えてただけでなく、変装に気付いていたことに霧神は涙を流しそうになった。
「お、おぉぉぉ、そんな、オレ感激です」
「泣くのは後だ、時間がない、今俺には重大な任務がある、お前にそれを協力してほしい!」
「もちろんです! 先輩の頼みならオレなんでも聞きますよ!」
ここから、健也は10分以内に霧神と協力してエロ本10冊買うことになるのであった。




