第67話「枯れ葉の玉座」
今回は珍しく第67話、第68話、第69話の3話分を投稿します。
しかし、今回の67話と68話には注意事項があります。
〇注意●
この作品はフィクションです。実在する団体、人物、思想、哲学、解釈とは一切関係ありません。全て架空であり作り物です。決して真に受けないようにお願いします。
「『枯葉坂 輪玄』お前達が倒さねばならない男の名だ」
健也の全身に緊張感が走る。
何故、このタイミングで出てくる? 自分達の宿敵が。
先程、秋歌と別れた直後に現れるなんて……。
いや、そもそもこの男は本当に枯葉坂本人なのか?
健也達は誰一人として枯葉坂の特徴を知らない。どんな顔で、普段どんな身なりをしているのか、どんな性格なのかも全く知らない。
今、健也の背後で拳銃を健也の背中に押し付けてる男は、本物の枯葉坂なのか?
顔を見たくても見れない。見た瞬間に背後から心臓を拳銃で撃ち抜かれる。
この距離だと回避は不可能だ。
振り返った瞬間に死がある、これだけは理解できる。
「緊張しているな、無理もない。立ち話もなんだ、今君が蹴っていたベンチに座ろうか、念のため言っておくが、決して私を見るな」
健也は言うとおりに公園のベンチに座り、健也が座るベンチの背後に設置してあるベンチに枯葉坂は座った。
丁度背中が向かい合わせとなる構図だ。
「さて、これでお互いの姿は見えないな」
「どうして、そこまでして姿を見させないようにする? 見られたくないなら、わざわざ来る必要なんてなかったろ?」
「そうしたかったのだが事情が変わってね。こうして健也、君と直接話し合う事になったのだよ」
どういうことだ? つまり枯葉坂が現れたのは、枯葉坂本人の意思ではないのか?
「ある人物から取引されてね。私と言う人間性を健也に伝え、私の目的も全て教えなくてはならなくなったのだ。全く忌々しい」
枯葉坂から苛立ちを感じるが、姿が見えないので、今どんな顔をしてるか分からない。
「そうだなぁ、まずは私の人間性……いや、この場合は私の哲学、思想と言ったところから話すか」
「待て、取引って誰が?」
「申し訳ないが口止めされてる。それに取引相手の事を話すと健也、君は絶望する。心が闇に堕ちるのではなく、完全に心が折れる。それでは私の目論見に反する結果だ。これだけは避けねばならない」
絶望……誰なんだ? 健也が知ってる相手なのか?
「……これはビジネスだ。取引相手の注文通り、私は今この限られた時間で話せることを全て話す。ちゃんと聞いておくれ」
威厳のある声ではあるが、どこか優しさのようなものも感じる声だ……いや、この男を優しいなんて感じたらダメだ。
「まずはそうだなぁ、何を話そうか……健也、君は『人の死』についてどう思う?」
「……」
「ふむ、答えられないか、こんな質問で即答できる人間なんて普通は居ないな。いいか健也、君は疑問に思わないか? ほぼ毎日のようにテレビ、新聞、ネットのニュースで『どこかの誰かが死んだ』『事故で死んだ』『殺された』そんなニュースをいつもいつも目にして疑問を抱かないか?」
「なんの疑問だ?」
健也は少しでも反抗する為に敵意のこもった声を出した。それが枯葉坂に届いたか分からないが、枯葉坂は続ける。
「死んでいった人達をよぉく見てみろ『まだ死ぬべきではなかった』『どうしてあんな優しい人が死んだんだ』『もっと明るい人生が待ってたはずなのに、どうして』残された者達の嘆きの声。大抵死ぬ人間は罪もない善良な人間ばかりだ。中には善人の皮を被った外道も居るかもしれんがね。それは置いといて妙じゃないか? 彼らのどこに死ぬ要素がある? 彼らの共通点はなんだ? 人が死なない1日が、人が死なない1年が何故訪れない? 私はこの疑問に思考を巡らせ、ある答えにたどり着いた、それは――」
――この世から必要無くなった人間が真っ先に死ぬのだ、無条件でな。
「ッッ!! お前、それは……」
「そう死者への冒涜だ。だが悲しき事に、私はこの答えしか出なかった。そうだな、仮に今この場で健也の手によって私が殺されて死んだとしよう。その場合、私がこの世から必要なくなったから死んだだけのことだ。逆に健也が私に殺された場合、健也の方が必要なくなった人間となるだろう……そんな人間は要らん、さっさと死んで残った者達に後の世界を託せば良い」
「……お前は、それで何とも思わないのか?」
「? 何故思う必要がある? 死んだ人間を嘆くか? それで我々の未来は明るくなるか? 答えはNOだ。死んだ人間の事をいつまでも考えるな、それこそが心の足枷となって未来に進むことができなくなる。そこに待ってるのは地獄だ。生き地獄だ。だからさっさと死者を切り捨てろ。生きる上で邪魔でしかない」
枯れてる。この男は、心が枯れてる。
あぁ、そうか、こいつが枯葉坂 輪玄を名乗ってる理由が分かった。
この男は今居る組織のトップになる為の坂道を登ってきたのだろう。だが、男の背後には大量の枯れ葉が積み重なっていて、こいつはその枯れ葉でできた玉座に座ってるだけなんだ。
「……枯葉坂、お前がどういう人間か分かったよ。しかし、それでも言う、お前は間違ってる、俺はお前を否定する」
「ほぉ?」
「確かにお前の言葉にも一理ある。死者を思い続けると心は暗くなってしまう。だが俺は切り捨てたりなんてしない、俺の場合『切り替える』ことが重要だ」
「切り替えるだと?」
「死んだ人間を忘れない。忘れないが気持ちを切り替えて、死んで逝った人達の為にも未来に向けて前進する。それが俺のやり方だ!」
「つまり何かね? 君は死んだ人間をいちいち覚えているのか? 私の組織に居た頃に多くの死を見てきたのに? やれやれ、哀れだな、流石は偽善悪の血を引くだけのことはある。まさに偽善者だ」
「なんとでも言え、それを言うならお前にも流れてるだろ、偽善者の血が!」
「遺伝子的にはな。だが私は血が薄かったらしい、偽善悪から見たら私は失敗作だ。さて、ここから私の目的を言おう」
今回なんで3話分投稿したかと言うと、この3話は1話にする予定だったのですが、文章量の関係で三分割せざるおえませんでした。




