第63話「新たな名前」
新年明けましておめでとうございます!
今年も「俺女子高生に興味ない、君達とは結婚できません!!」をよろしくお願いしますm(_ _)m
秋歌暗殺未遂事件から二週間後。
季節は12月中旬。
「えー、もうすぐ今年の仕事納めが近付いてると思いますが、今日は新入社員を紹介したいと思います」
健也の職場での朝礼。この時期に新入社員が入社したらしいく、健也の職場の上司に当たる人物が、その新人の紹介をしてくれるそうだ。
「それじゃ、自己紹介よろしく」
「はい! 本日付けで皆様の元で働くこととなりました『荒捜 零卦』と申します! 皆様よろしくお願いします!」
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「へぇ、零卦ちゃんって荒捜社長の奥さんの妹なのか」
昼休み。いつもなら、健也、周防、心城の三人が集まって昼食を食べていたのだが、その心城にはもう会えないし、会いたくもない。
表向きには転職扱いになってるそうだ。
心城と入れ替わるような形で零卦が心城がいつも座っていた食堂の席に座っている。
零卦は長身でスタイルもよく、スーツが似合うクールな感じの女性であった。
「いやー、前から健也君のこと知ってたけど、こうして会うのは初めてな感じなんですよー」
クールな感じなのは見た目だけで、中身は超フランクな女性であった。
「零卦ちゃんも美人だけど、俺の彼女の方がもっと美人だから零卦ちゃんにも紹介してあげるよ!」
「あれれぇ? 周防さん、いきなり惚気ですかぁ? ヒューヒュー! 熱いですな!」
「…………………」
零卦はコミュニケーション能力が高いのか、今日会ったばかりの周防や他の社員と仲良くなっていたが、健也だけは違った。
「おーい荒蒔、さっきから黙ってどうしたよ?」
「あ、悪い、ちょっと考え事してた」
「………そうだ周防さん、私、健也君と二人っきりでお話がしたいなぁ、私達親戚同士なのに今まで顔すら合わせたことなかったから、一度二人になりたいけど良いですかぁ?」
「ん? そうか、んじゃ俺は雲母ちゃんとイチャイチャしてくるぜ! じゃあな!」
気を使ってくれたらしく、周防は席を外してくれた。
「さてと、ようやく二人っきりになれましたね、荒蒔 健也」
「……久し振りだな名前蒐集家、事情は意思男おじさんから聞いてるよ」
「おやぁ? 三年振りに会ったのに微妙な反応、そういや君が組織に居た頃は一度しか会ってなかったから印象薄いか」
そう、荒捜 零卦は二週間前に意思男が戦った名前蒐集家のことである。
つまり、健也達と敵対する組織の一員だ。
元、ではあるが。
「その零卦って名前はおじさんが付けたのか? しかも親戚なんて設定まで作って」
「意思男様には恩義があるからねぇ、私を含めた五人全員は組織に戻れないから、それぞれに仕事を与えてくれたし、組織に狙われないようにもしてくれている。本当に寛大な御方でマジ助かってるよー、私達任務に失敗したら自決するのがルールだから死なずに済んで良かった良かった」
「……はぁ、まぁお前が仲間になってくれただけでも有り難いか、お前組織の幹部だったしな」
「あー幹部だったのは二年前の話で、ちょっと前まではただの構成員だったわけだし、残念ながら、健也君達が求めてる情報は期待できないから、ごめんちょ」
謝る素振りを見せる零卦。
「それで? 今はおじさんの家に住んでるのか?」
「もちのろん! 意思男様の奥様やお子さんの月名子ちゃんは優しくて感激しちゃってるよん!」
「………」
「私が住んでるのが、そんなに不安? 大丈夫大丈夫、奥様や月名子ちゃんには迷惑かけないよ~、まぁ夜な夜な意思男様には手を出してるけど」
それを聞いて健也の血相が変わった。
「お前……おじさんに負けたからって暗殺を……」
「いやいやいや! そんな物騒なことしてないよ! 私、あの夜に意思男様に敗北してから……その……」
少し恥ずかしそうにしながら零卦は答えた。
「既成事実を作って意思男様の浮気相手になりたいだけだよぉ、でも意思男様はガード固すぎて未だに手を出せてない……ここまで抵抗されると逆に女として燃えてきちゃってもぉぉぉぉヤバい!」
コイツ、意思男に恩義を感じておきながら、意思男の家庭を滅茶苦茶にしようとしてる。
それに呆れた健也は席を立った。
「お前が無害なのは分かったよ、それじゃ、そろそろ昼休みも終わるから仕事に戻るぞ、霧神君の時もそうだったけど、なんで俺は新人の教育担当になってるのやら」
「むっふっふ~、昔は私が上司だったのに変な感じね~」
そう言って、零卦も席を立ったと同時に、何か思い出したように口を開いた。
「あ、そうだそうだ、健也君」
「なんだよ?」
「名前呼んでくれない?」
「は?」
「ほら、昔私に与えてくれた名前、もう一度君の口から聞きたいなーと思ってさ」
「え、普通に嫌だ」
そう言い残して、健也は食堂を出ていった。
「むぅ~、初めて会った頃より明るくなったと思ったのに素っ気ないなー、まぁいいか。今は意思男様一筋だしね~、今夜こそ既成事実作ってやる!」
決意を新たに、零卦も食堂を出ていった。
〇 〇 〇 〇 〇
三年前。
健也が組織に居た頃の話。
これは零卦こと名前蒐集家が健也に初めて会った時の印象である。
第一印象は生きた死体、この世を恨んでる負の塊。
とても名前通りの人物には見えなかった。
「ハロハロ~、君が荒蒔 健也君? グッドな名前だねぇ」
「……どうも」
軽い挨拶だけをして、健也は名前蒐集家に背を向けたが、名前蒐集家はそのまま話を続けた。
「こうして会うのも初めてだしさぁ、記念に私に名前くれない?」
「……アンタの名前?」
「そうそう何でも良いよぉ~」
名前蒐集家は期待していた。名前通りの人間ではないが、負の塊のような目の前の人物からどんな名前が出てくるのかワクワクしていた。
「……ひひぬてげお」
「………え?」
「アンタの名前は『ひひぬてげお』だ。じゃあな」
「ちょ!? え、なにその意味不明な名前!?」
「子供の頃、ゲームでキャラクターに名前を付ける際に目を閉じて偶然できた名前だよ。なんか良い名前でも期待したか? 残念だったな。このふざけた名前もお前達に対する侮蔑の意味が込められてんだよ。誰がお前達の言いなりになるか、気に入らないなら俺を殺せば良い」
「えと、うーん……いや、これはこれでレアネームかも、私に素敵な名前をくれて、ありがとう!」
名前蒐集家のポジティブ思考に呆れた健也はその場を去っていった。
その後、この『ひひぬてげお』と言う超ふざけた名前を他の人にも呼んで貰おうと名前蒐集家は試みたが、一度も誰にも呼んで貰えることもなく、後に健也にとっての黒歴史となるのであった。
『ひひぬてげお』
これの元ネタは、小学生の頃にゼル◯の伝説ムジュ◯の仮面で主人公の名前を決める時に、目をつむって、コントローラーのスティックガチャガチャしたら偶然出てきた名前です。
ちなみに、この名前にしたらアイテム画面が全て時のオカリナで埋め尽くされるバグが起こって焦りました(笑)
今後の予定は、秋歌暗殺未遂で捕まえた後に仲間になった五人がどうなったかを紹介した後にラブラブコメコメします。
それでは、次回もお楽しみにです!




