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俺女子高生に興味ないから、君達とは結婚できません!!  作者: 心乃助(Initium・Godpiece)
第一部
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第62話「名前の価値」

 今年最後の投稿です。皆さん、良いお年を。

「名前って、良いよねぇ~」


 意思男は組織の一人である名前蒐集家(ネームコレクター)を自称しているスーツで長身な女性と対峙していた。


「で? どないする? お前のお仲間さん全滅したけど、降参するなら今やで?」


 名前蒐集家の言葉を無視して意思男は降参するように勧めた。


 しかし、意思男との戦いで口から流れ出た血を拭いながら名前蒐集家は答えた。


「名前」


「……お前、さっきから名前名前うるさいのぉ」


「だから名前、名前で呼んでよ」


「お前の名前? まだ名乗ってないやろ?」


「名乗ってないねぇ、でも貴方が付けてくれたじゃないかぁ、あの名前で呼んでよぉ」


 意思男が名前蒐集家に与えた名前……『そのまま地面で寝てろや』から名前蒐集家が考えた名前『字瞑(じめん)練羅弥(ねろや)』……。


「いや、呼ばへんよ?」


「なんでぇぇぇぇぇ!!」


 耳を塞ぎたくなるような絶叫を上げながら、名前蒐集家は頭を抱えながら両膝を地面に付けて絶望していた。


「呼べよぉ! アンタがくれた名前だろうが! ほら、呼べよ! さぁさぁさぁ!」


「嫌やわ! そもそもあんなの名前でもなんでもないやろ!」


「はぁー?? 名前ですからー、貴方名前に込められた価値を知らないなー?」


「メッチャうざいな」


 早く帰りたいのに、この名前蒐集家は妙に強い。


 かつて荒覇芭木によって最強の兵器として育てられた意思男ですら倒すことも、ましてや捕まえて拘束することもできない相手だ。


 意思男は約20年振りに『手加減できない相手』に遭遇してしまった。


 幸か不幸か、本気で戦いたいと言う欲望と、うっかり殺してしまうのではないかと言う不安、二つの想いが意思男の中で葛藤していた。


(……あかんな。ワイはもう『荒覇芭木 縊死花(いしか)』には戻らないと決めたやないか、ワイは兵器でも道具でもあらへん、れっきとした人間や。だから目の前のコイツは絶対に殺さへん)


 意思男が心の葛藤に苦悩してるのを見て名前蒐集家はニヤニヤする。


「おやおや? 悩んでますね、戻れば良いじゃないですか縊死花に」


「断る、お前は絶対に殺さへんし死なせへん、必ず生きたまま捕まえたる!」


「……………」


「?」


 名前蒐集家は空を仰ぎながら呟いた。


「素晴らしい、それが『荒捜 意思男』としての貴方か、まさに名前の通り『強い意思を持った男』ですね。ここまで己が名前を体現するなんて、あの御方以来初めて会った、今宵の出会いは最早奇跡だ」


「あの御方? 枯葉坂 輪玄(りんげん)のことか?」


「その通りぃぃぃ!! あの御方はまさに名前の体現者! 名前に価値を見出だした御方! 名前ってさぁ、それぞれに何かしらの意味や想いが込められてるんだよ、だが悲しきかな、この世の中、自分の名前通りの人生を、名前通りの人間になってる人間は極わずかだ、名前に込められた価値とはそれだよ! あー惜しいなぁ、縊死花としての貴方を見てみたかったなぁ」


 それを聞いた瞬間であった。


 意思男の周囲の空気が冷たくなった。


「………お前、意味分かってて言ってるのか?」


「そりゃ勿論! 縊死花って『大勢の人間の首を絞めて血の花を咲かせる』でしょ? かつての荒覇芭木の総帥から聞いたことあるよー」


 更に空気が重く、冷たくなった。


「あのジジイが付けた名前が今でも気に喰わん、ワイにもっと人を殺せやと? 冗談やない、やからワイは縊死花を捨てたんや、誰がなんと言おうが、ワイは『荒捜 意思男』じゃ! 愛娘の友人の晴れ舞台を邪魔するバカ共は全員ワイが倒す!」


 意思男は突貫し、それに応じて名前蒐集家も突貫し、二人の拳と拳が衝突した。


「おおおおおおお!!」


「はははは! 押し通せるかな!? 貴方の意思を!」


「押し通せるかじゃない! 押し通すだけじゃボケェェェェ!!」


 意思男が腰を1㎝だけ回転させて、そこから足と腰を使った全身運動をよういて拳の威力をさらに増幅させた。


「なぁ!?」


 名前蒐集家は押し返そうとするがビクともしない。


 この12歳の子供の外見をした小柄な体格のどこから、これほどまでの力が発生するのだろうか。


「おおおおおおおおりゃああああああああ!!」


「ちょ、ま、拳が、こわれ」


 そのまま意思男は名前蒐集家を殴り飛ばして、名前蒐集家は自分達が居るビルの屋上の柵に背中を叩き付けられた。


「がっばぁ!!」


 血を吐き出しながら、名前蒐集家はビルから落ちそうになった。


 それを見た意思男は急いで駆け寄って、名前蒐集家の腕を掴んだ。


「……なぜ、助ける?」


「言ったやろ、死なせへんってな。それに女が死ぬところなんか見たくないわ。夢見が悪くなるわい」


〇 〇 〇 〇 〇


「ほれ」


 意思男は座りながらタバコを吸い、隣で鎖でグルグル巻きにされた名前蒐集家にタバコを一本勧めた。


「……では、いただきます」


 手が使えないので、意思男の手で口に咥えさせてもらい、ライターで火を着けてもらった。


「……まずっ、よくこんなの吸いますな」


「ははは! この味が分からんとは、お前さん見た目に反して子供やのぉ」


「ふーんだ、子供ですよーだ」


 不貞腐れてる名前蒐集家に意思男は尋ねた。


「なぁ、お前の名前なんて言うんや? そもそも何故、名前蒐集家になったんや?」


「無いからだよ、私には名前が無いんだ、貴方やあの御方のような意思、信念、想いが込められた名前がない。だから探してんのよ、自分に誇れる名前を、仮に名前を得られても名前通りの人間になれない有象無象の一人になんてなりたくない。だから私は名前を探してんだ」


「……そっか、ちゃんとした理由があったんやな。さっきは悪かったのぉ、適当な名前付けてもうて、もう一度お前さんの名前、真剣に考えていいか?」


「良いけど、さっきまで私達敵同士だったのに、随分と親しげじゃない?」


「そりゃそうや、拳を交えた、お互いの想いをぶつけ合った。なら後は仲良くなるだけやろ」


 ふー、と紫煙を吐きながら意思男は答え、名前蒐集家は笑みを溢した。


「はは、なにそれ、貴方変な人だなぁ」


「伊達に一企業のトップの椅子に座ってるわけやないからな」


「……くく、はー負けた負けた、私って結構強いと自負してたのになー」


 口に咥えたタバコを吸いきって、名前蒐集家も口から紫煙を吐き出して月を見上げる。


「ねぇ荒捜 意思男、貴方が信念を貫く男と見込んで頼みがあるんだけど」


「なんや?」


「どうせ私達は任務に失敗した身、組織にはもう戻ることができない。だからその、私達を貴方の元で働かせてくれないかな?」


「良いよ」


「即答!?」


「まぁ、ワイの会社もつい最近、人員が一人減ってしまったけぇの、ちょうど穴埋めしたかったところや、うちで働けや、異論は認めん」


 意思男の寛大な心に胸を打たれた名前蒐集家は意思男に惚れそうになっていた。


「……あ、やばい、貴方に惚れそうかも、ねぇチューしてもいい?」


「ワイ既婚者やから無理、浮気はもうしないと決めたけぇの」


「ケチー」


 こうして、長い夜は終わった。

 一年あっという間だったなぁ、来年も頑張って書き続けます!

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