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俺女子高生に興味ないから、君達とは結婚できません!!  作者: 心乃助(Initium・Godpiece)
第一部
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第58話「ソロライブ 表舞台編」

 秋歌ちゃんのライブ回までめっちゃ時間掛かった気がする。

 秋歌のソロライブ当日。


「結構人が多いね」


 健也は真奈、美娃、月名子と共に秋歌のソロライブの会場まで来ていた。


 場所は野外で行われる。いわゆる野外ライブだ。


 この日の為に秋歌が一人で頑張ってきたのだ。しっかり見届けてあげよう。


「…………」


 そんな中、美娃だけは不安な気持ちでいっぱいであった。




 10時間前。


「秋歌、ライブ直前で申し訳ないのだけれど、今日のライブ中止にできません?」


「……無理、言う、な、これは、ワタシ一人で、主催してる、わけじゃ、ないんだぞ?」


 今朝の事だ。美娃が秋歌にライブを中止するように言ったのだ。


「なんで、急に、ライブを、中止しないと、いけない?」


「そ、それは……えーと……」


 秋歌に危険が迫ってるのを知ったのは、ついさっきなのだ。


 金で雇った探偵のアヤナの情報によって秋歌の身に危険が迫っているのだが。


 その事を秋歌に伝えてはいけないとアヤナに口止めされていた。


 アヤナは知ってるからだ。秋歌がどういう想いでライブに望むのか、もし命が狙われてると知っても秋歌の心は揺るがないかもしれないし、もしかしたら秋歌のモチベーションが左右されて本来のパフォーマンスを観客や健也達の前で発揮できなくなる恐れがあるからだ。


「……よく、分からんが、美娃が、ワタシの、心配してる、のは、分かる、しかし、今回のライブだけは、譲れん、ワタシが、ここまで、来れたのは、健也への想いがあったから、その想いを歌で健也に、伝えたいんだ、だから、ライブを中止にする、なんて、言わないでくれ」


 秋歌の意思は固いようだ。


 それはそうだ。彼女は健也に振り向いて貰う為に10年間を歌に捧げたのだ。


 今回のソロライブは、その集大成。


 それを邪魔するのは不粋なのかもしれない。


「分かりましたわ。こちらこそ、無理言ってごめんなさいね」


 そう言うと、美娃は秋歌の背中を軽く叩いた。


「思う存分歌ってきなさいな! 邪魔する輩が居たらワタクシが完膚なきまでに叩き潰しますから!」


「ふっ、言われなくても、全力を、出す、つもりだ」







 そして時間は戻る。


 司会の人物が会場を盛り上げた後、遂に特別な衣装に身を包んだ秋歌が会場へと姿を現した。


「…………」


 健也にとっては初めてである。ライブに参加するのもそうだが、10年前に出会った女の子が、大勢の観客で埋め尽くす会場で歌う姿を見るなんて初めてだし、10年前には想像できなかった。


 1ヶ月半前の水族館のデートで彼女が流した涙を思い出すと、秋歌がこの10年で、どれだけの努力を重ねてきたのかが理解できる。


 このライブが終わったら、もう一度秋歌の頭を撫でて褒めてあげようと思う健也であった。


「……えぇ……全員配置に着きましたわね? えぇ、ライブが終わるまで気を抜かないように頼みますわ」


「? 美娃ちゃん、誰と話してるの?」


「ふぇ!? な、なーんでもありませんわ! それより健也! 始まりますわよ!」


「あ、うん?」


 美娃が誰と話してたかは知らないが、いよいよ秋歌の人生初のソロライブが始まった。


 秋歌が歌い出すと、会場は熱狂の渦に包まれた。


 本当に秋歌こと『ユズルハ・リカ(秋歌のアーティスト名)』は10代~20代の若者に大人気なんだなと改めて実感させられる。


「―――」


 健也は秋歌の曲に聞き入っていると言葉を失った。


 力強い、なんて力強い歌声なんだ。体の奥底にまで響き渡るような歌だ。


 普段の彼女がたどたどしい喋り方をしてるのは、なるべく喉を痛めないように気を使ってるかららしい。


 つまり、本番で全力で歌えるようにする為に力を温存していたのだ。


 隣で真奈と月名子がペンライトを持って盛り上がっている。


 健也もペンライトを持ってるが、秋歌の歌を聞き入ってしまっていて、ペンライトを振るのを忘れていた。


 歌でここまで心を揺さぶられたのは初めてだ。


「……(ぶつぶつ)」


 美娃だけ一人でインカムマイクに向かって誰かと話し続けているが、健也達は気付いてない様子であった。


 最初の一曲目が歌い終わり、二曲目に入ろうとした。


 その時である。


「あ、危ない!」


 観客の誰かが叫んだと同時に、秋歌の真上にあった照明が秋歌に向かって落ちてきたのだ。


「ッ!?」


 秋歌が照明を間一髪で避けると、それに連動してなのか、次々とステージ上の照明が落ちてくる。


「しまった!? すでに細工されてましたのね!」


「え!?」


 美娃の叫び声に困惑する健也達、照明が全部落ちて夜の暗闇にステージが包まれてしまい、秋歌の安否が不明だ。


「秋歌ちゃん!!」


 健也は慌てて人混みを掻き分けてステージに向かおうとした。その時であった。


「大……丈夫……」


 ステージから、マイクを通して秋歌の声が聞こえた。


 会場スタッフが慌てて予備の照明を秋歌に向けると。


「―――!!」


 秋歌が頭から血を流していた。幸い致命傷にはなっていないようだが、血を流して衣装もボロボロになっていた。


〇 〇 〇 〇 〇


『リカ! ライブは一時中止だ! 応急処置を!』


「いらない、このまま続ける」


 痛い、痛くてたまらない。でも止まれない、止まるわけにはいかない。


 血を袖で拭ってから、秋歌はマイクを強く握り締めた。


「みんな! アクシデントが起こったけど、ワタシの歌は、ワタシの想いは、この程度では止まらない! 終われない! だから聞いてくれ! ワタシの歌を!」


 秋歌は二曲目の曲を流すように手でスタッフに合図を送る。


 本当は止めたいが、言うことを聞いてくれないと判断したスタッフとプロデューサーは、そのまま二曲目を流した。


 痛みを我慢しながら激しく歌う姿に会場は大いに盛り上がった。


 その後、特にこれ以上のアクシデントは起こらず、無事にライブは終了した。


〇 〇 〇 〇 〇


「い、ててて」


 ライブが終わった後、秋歌は手当てを受けながら水を飲んでいた。


「全く、好きな人の為に歌いたい気持ちは知ってるけど、もうあんな無茶はさせないぞ」


「悪いな、プロデューサー」


 秋歌のあどけない笑顔を前にして、プロデューサーはこれ以上怒るのは止めた。


 全てを出し切った顔だ。もしかしたら健也に怒られるかもしれないが、自分は全力を出し切った。


 もうこれ以上ないくらい満足している。


「……ありがとう健也……ワタシがここまで来れたのは、全部お前のお陰だ……本当に……本当にありがとう」


 秋歌は思わず涙を流した。


 自分の想いが健也に届いたか分からない、それでも良い、自分は胸を張って誇れる存在になれたんだと、改めて実感したのであった。


〇 〇 〇 〇 〇


「つ、疲れたデース」


「もーやだ、こんな仕事もーやだ」


 アヤナと霧神が事務所のソファーでぐったりしていると、そこに美娃がやって来た。


「二人ともお疲れ様、あなた達のお陰で秋歌は最後まで歌えましたわ」


「よぉ、金髪金持ち女、金払ってるからって無茶苦茶な注文するんじゃねぇぞ、コラ」


 霧神が美娃に対して悪態をついていると、美娃は霧神に高級スナック菓子をあげた。


「本当にお疲れ様、まさかあそこまで組織が用意周到だったなんて思わなかったですもの、なるべく健也達にバレないように指示を出すのも大変でしたのよ?」


「はぁ、人使いが荒い女だな。なんでオレってこんなにも女運が悪いのやら」


 ライブの間、アヤナと霧神達が裏で何をしていたのかは次回明かされる。

 次は裏舞台編となりまーす。

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