第53話「ついに出会う四人」
今回は過去作『心城さんちの変な家族』に繋がるネタが含まれてます。たぶん今回だけかな? 心城さんに繋がる話は。
「飽きたぁ~」
ここは、とある探偵事務所にある一室。
そこでテレビゲームのコントローラーを放り投げて退屈そうにする少年が一人。
霧神 菜烙だ。
ここに連れてこられてから早一週間が経つ。
この事務所の所長は時々顔を見せるだけで殆んど帰ってこない。
外に出たくても監禁されているので事務所から出ることはできない。
その間、ゲームに没頭していたのだが、流石に飽きが来たようだ。
「あのイカれ探偵女、いつになったらオレを解放するんだよ~、欲しい情報は全て教えたろうによ~、早く荒蒔先輩に会いてぇ」
愚痴をこぼしていると、背後にあるドアからノックの音が聞こえ、一人の探偵風な少女が入ってきた。
ここの事務所の所長にして自称探偵のアヤナ・F・ヴィジョールだ。
所長と言っても、彼女一人しか居ないのだが……。
「イェーイ! 霧神さん、ワタシが頼んだゲームのレベル上げは順調デースか?」
「あぁ、もうクリアしといたぞ」
霧神がテレビ画面を指差すと、そこにはエンドロールが流れていた。
「うぇぇぇ!? まさかワタシのデータでですか!? レベルだけ上げといてって言ったじゃないですかぁ!」
「知るかバーカ、オレをここに閉じ込めてるのが悪いんだよ」
中指を立てて嫌味たっぷりに言う霧神を見て不貞腐れてしまうアヤナ。
「そんなぁ、楽しみにしてたのにぃ」
「つーかよぉ、いつになったらオレを解放するんだ? ヤソカさんはとっくに捕まえたんだろ?」
実はヤソカを捕まえてから一週間が経過しているのだ。
それに霧神はアヤナと意思男に捕まった時点で、すでに組織を見限っているのだ。
自身が尊敬する健也が居ない組織に居ても彼にとっては無意味なだけだからだ。
なので彼は、かなり協力的に組織やヤソカの情報をあっさり提供したのだ。
「霧神さんのお陰でヤソカを捕まえられたのは感謝してまーすが、まだ安心できないですねー」
アヤナが霧神から聞いた情報が正しければ、ヤソカを捕まえただけでは彼を止めることはできないからだ。
ヤソカは偽善悪としての悲願、そして己の願望でもある『全人類共通の悪』になれる最終兵器を隠し持っていて、それが今どこにあるのか謎だからだ。
ヤソカは元々、生物の遺伝子を組み換えることによって、その生物を別の生物に変えてしまう技術に長けていた。
荒覇芭木を利用して、ヤソカは究極の生物兵器を完成させてしまっていたのだ。
それがどんなものかは不明だが、その兵器のコードネームは『魔王』。
それを目覚めさせたら、本当に人類にとっての脅威になりかねない恐ろしい生物兵器だそうだ。
「そもそも何故に魔王? 最近の異世界ブームに乗ったのでしょうか?」
「さぁ? 全人類共通の悪と言えば魔王じゃね? でも最近は魔王が主人公の作品もあるし一概には言えねぇが、魔王を名乗らせるぐらいに自信たっぷりな兵器なんだろうな。ま、今のオレには関係ないが」
霧神の情報によると、魔王が目覚めるのは13年後だそうだ。
13年も時間があるからゆっくり探せばいいんじゃね? とのこと。
「……ワタシの推理ですと、恐らく現在の魔王は普通の人間と同じ姿をしてると思いまーす。現に荒覇芭木が作った荒捜 意思男社長や双子のお姉さん荒蒔 火盧理さんは人の姿をしてますが人間ではないですからねー」
「だろうな、あの双子が人の姿をしてるのは奇跡だよ。他の生物兵器はみんな人の姿を失って理性を失う獣になり果てるって聞いたぜ? オレは見たことないけどな」
「なんだかさっきから生物兵器とか聞くと某バイオなホラーゲームを連想しますねぇ」
なんて呑気な事を言ってはいるが、13年以内に魔王を見付けられるのか自信はない。
何より、アヤナが恐れているのは、仮に魔王を見付けても、もしも魔王の製造方法が外部に漏れたり、あるいは既に漏れていた場合、第二、第三の魔王が誕生して、それを探して処理する方が大変なのだ。
それを聞いた霧神によると、昔ヤソカから聞いた話だと「僕以外で魔王を作るのは不可能だよ」と言っていたので、情報漏洩に繋がっても問題はないとは言ってたが、果たして信じてよいのか謎である。
「もう充分だろぉ? 早くオレを解放しろ」
「まぁまぁ、そう焦らないでくださーい。一旦、魔王の件は保留にしましょう、今考えても無駄ですし。それより霧神さん、例の件覚えてまーすか?」
「……ここから出たければアンタの助手になれって話か?」
「イエース! このまま解放しても霧神さんは組織に狙われる身! このワタシが護衛も兼ねて霧神さんの傍に居てあげまーす!」
「ハッ、オレはメスが嫌いなんだよ。他を当たれ」
「……あーそうですかー、残念です。ワタシの助手になれば素晴らしい特典がありましたのになー」
「どうせクソくだらねぇもんだろ? オレ一人でもオレ自身を守れるからさっさと……」
「特典と言うのは荒蒔 健也さんとのルームシェアでーす」
それを聞いた瞬間、霧神の目の色が変わった。
「なん……だと……?」
「想像してみてくださーい。健也さんと一つ屋根の下で一緒に食事をして、一緒にお風呂に入って、一緒に同じベッドで眠れるチャンスが盛り沢山なのですよ~? こんなおいしい特典を無下にするなんて、霧神さんってば勿体無いデースねー」
「わかった。アンタの助手になってやるよ」
態度が一変して、霧神は険しい表情から爽やかな笑顔で了承した。
アヤナは心の中で「ちょろいデース」とは思ったが、口には出さなかった。
「でもその前に、霧神さんには会わないといけない女性が三人居まーす」
「あ? なんで?」
「それは会ってからのお楽しみデース。もう事務所に来てますから、早速親睦を深めましょー!」
半ば強引に腕を引っ張られて部屋を移動し、事務所の応接室に入ると、そこには三人の少女が居た。
霧神はその三人に見覚えがあった。
情報と写真でしか知らなかったが、この三人は健也に好意を持つ三人。
真路 真奈。
小院瀬見 美娃。
杠 秋歌。
霧神にとっては、健也にまとわりつく害虫として認識しているメスガキ三人衆である。
三人の顔を見た瞬間、霧神は物凄く嫌な顔をした。
「ではでは、これよりこの四人で、健也さんと同じルームシェアをする仲間としての親睦を深めましょう!」
「…………………はぁぁぁぁぁ!? おいコラ! 聞いてないぞ! 先輩とルームシェアするのはオレだけじゃないのかよ!」
「えー? そんなこと一言も言ってませんけどー?」
悪そうな顔でニヤニヤするアヤナに苛立ちを感じる霧神。
こうして、三人は初めて霧神と対面し、お互いを理解する……ことができるのだろうか?
不安だらけな親睦会が始まろうとしていた。
次回どんな感じにしようか悩む。




