第50話「悪の血筋」
もう50話!? 正直ここまで続けられるとは思わなかった。
我々『偽善悪』は全人類から争いを排除するために、全人類の争いの目を全て我々に向けることによって、全ての責任を我々が背負うはずだった。
だけどねぇ、ムカつくことが起こったんだよ。
我々を『悪』ではなく、偽善悪の思想は全人類の救済に繋がると信じこんだバカな信者が現れたんだ。
最初は10人、次は100人、次は1000人、日に日に我々に『善』の目を向ける虫けら共が増えてきたんだよ。
僕を含めた最初の五人は、そいつらを排除しようとした。
だが、我々の誓約の内の一つ『人を殺害してはいけない』が含まれていたからねぇ、殺すには他者の力を借りざるおえなかった。
なぜ殺害してはいけないのか、簡単だよ。我々はあくまで全人類の『悪』として認知してもらわなければ、いけないからね。
その認知対象を殺しちゃったら、誰が僕達を『悪』と見てくれるんだい?
だから信者どもを殺すのにもバランスを重要視した。
僕以外の四人が死んだ後、僕が信者達の管理を任された。
いやぁ、見てると本当に気持ち悪いよ?
僕達を本当に世界から争いが無くすことができると、本気で信じてる連中の姿、あれをどう表現したらいいか……あぁ、そうだ、一つのケースの中に1000匹以上のアレが蠢いてるのを想像してごらん? アレが何かは敢えて言葉にしないけど、アレを見たときと同じ嫌悪感を抱いていたんだよ。
あー気持ち悪い。
僕はねぇ『悪』として見られたいんだよ。全ての人間に悪として認知されたいんだよ。
でも虫けら達は何百年も経つうちに増え続ける一方。
その管理を一人で任された僕にとっては地獄でしかなかった。
その信者の中に荒覇芭木も居た。荒覇芭木は不老不死の研究を長年してたからねぇ。何百年も生きてる僕は彼等にとっては、まさに長年の悲願そのものだったろうさ。
だから、僕が生き長らえている技術のほんの一部だけ与えたんだよ、あまりにもウザったいからね。
まぁ、結果的に火盧理ちゃんと意思男くんと言う成功例を出した事に関しては褒めてあげるか。
次に心城夫妻だ。
彼等もまた信者であった。偶然にも僕と同じ苗字だったから多少の親近感はあったけど、やっぱ他の信者と同じでウザったかったよ。
それでね、僕はとある都合で荒蒔くん、君を監視する事になったんだ。
なので僕は夫の『心城 億抖』に成り代わる事にした。
こうして僕は晴れて心城 億抖になって、この会社に就職したんだよ。
でもね、本当の夫を失った妻の『雪恵』からは憎悪の眼差しを向けられたけど……そう! これだよこれ! 羨望の眼差しではなく憎悪にまみれた目! あの目で僕を見てほしい! それが全人類からその目で向けられたら、どれだけ気持ちいいんだろう!
僕はそれを夢見ながら何百年も生きたわけ。
● ● ● ● ●
「……俺を監視する目的ってなんだ?」
ヤソカの価値観を無視して、なぜ自分を監視していたのか健也は尋ねた。ヤソカは一種の宗教の教祖みたいな存在。そんな存在がどうしてわざわざ部下とか信者を使わずに自ら監視役になったのかが気になる。
ヤソカは、自分の価値観を無視された事に少し不機嫌になったようだが、いつもの作り笑顔をしてから答えた。
「最初は半信半疑だったが、君と三年間仕事をして気付いたんだ、君は今後の僕の計画において邪魔になる。ならどうすべきか考えた。そして出た結論はこうだ。君には幸せになってもらう」
「……は?」
何を言ってるのか分からず首を傾げる健也。
「誰でも良い、君は誰かと結ばれて幸せな生活を手にしてほしい。これは嘘じゃないよ? なのに君を誘拐した組織のトップである枯葉坂さんが、君から幸せを奪おうと企んでる。それだけは、なんとしても阻止したいんだよ。その点で言えば、僕は君の味方さ」
「どうして、俺の幸せを願う? さっき言ったみたいに、もうじき悲願とやらが達成されるとか言ってたが、それと何の関係がある?」
少し間を置いてからヤソカは口を開いた。
「……僕が君の幸せを願う理由、それはだね……君がかつての同志達の内の一人の血を引いてるからだよ」
「なに?」
「そいつが厄介でねぇ、そいつの血を引く者の心が完全に闇に堕ちるとめんどくさい事が起こるんだ。過去にそれで邪魔されたことがある。あぁ、何が起こったかは言わないよ? あまり君を刺激したくないので」
邪魔された? 仲間なのにどうして? そいつの血を引いてると何が起こるんだ?
「さっきから何の話をしてる? 俺が、お前達の血を引いてる? じゃあ、母さんや父さんのどちらかも?」
それを聞いてヤソカは眉をひそめた。
「………………………? ………………………あー、なるほどなるほど、荒蒔くんは勘違いしたまんまだったのかー、こりゃうっかり」
何かを納得したらしく、ヤソカはわざとらしく自分の頭を軽く叩いた。
「おい、どういうことだ! 俺が何を勘違いしてるって言うんだ!」
「いやー、これ言って良いのかなぁ? 君はもう知ってると思ってたんだがなぁ~」
ヤソカの胸ぐらを掴んで問い詰める健也。
「良いから言え!」
「ちょ、ちょ、怖いじゃないかー、仕方ないなぁ、じゃあ言うけど、僕を殴らないでね?」
胸ぐらを掴む健也の手を掴みながらヤソカは答えた。
「君は荒蒔 健悟郎と荒蒔 火盧理、二人の子供ではない」
「ッ!?」
「いやー、てっきり君が枯葉坂さんの組織に居る間に気付いていたのかと思ってたけど、知らなかったとは……て、おーい、聞こえてるかーい?」
自分が、父さんと母さんの子ではない? じゃあ、自分は、自分は。
「俺は……誰……なんだ? 誰の……子供なんだ?」
「うわへぇ、なんか想像以上に動揺してて僕もびっくり。そんなに落ち込むかな普通? 自分が誰の子供とか、どうでもよくない? ぐぇ」
「答えろ! 俺は誰なんだ! 誰の子なんだ!」
興奮してしまってヤソカの首を絞めてしまう健也。
しかし、ヤソカの苦しむ姿を見て正気に戻った健也は手の力を抜いてヤソカを解放した。
「げほ、げほ、殺されるかと思ったぁ、じゃあヒントあげるよ。枯葉坂さんは、どうして君に固執する? 君が荒覇芭木の血を引いてないことぐらい、彼だって気付いてるはずだ。なのに、何故まだ君に執着するか、考えてごらんよ?」
健也は、それを聞いて思考を巡らせて、ある結論に至った。
「嘘だろ……まさか!?」
健也があることに気が付いたと同時に健也とヤソカが居るオフィスの窓ガラスが勢いよく割れた。
「とおりゃあああああ!!」
聞き覚えのある声と、窓から飛び込んで来た少女の姿を見て、健也は驚愕する。
「おーほほほ! ここの窓ガラスを割るのはこれで二回目ですわね! 観念なさいヤソカ・キャッスルハート! これ以上、健也を惑わす行為は他者が許してもワタクシが許しませんわ!」
そこに現れたのは、日の光でキラキラ輝く金髪をなびかせた美娃であった。
「美娃……ちゃん?」
「おやおや、これは想定外の闖入者だね。もしかして僕達の会話を盗聴して聞かれてた?」
美娃の登場に驚いてる様子のヤソカ相手に、美娃は高々と宣言した。
「ヤソカ! あなたが危険な存在なのは、とある人物から聞きました。なのであなたを拘束致します!」
「拘束? 君が? どうやって? 会社の外には僕の信者達が見張ってたはずだが?」
「あー、あの頭がおかしい人達の事ですの? ご安心を、既に警察と我々『小院瀬見財団』の手によって身柄を拘束しました」
「……………………まじ?」
あまりにも用意周到すぎる。こちらの動きが読まれていたのかと驚くヤソカ相手に美娃は指を差した。
「ヤソカ、あなたが健也の幸せを願うなら、今すぐ我々に同行しなさい、さもなくば」
「さもなくば、なんだ小娘」
一瞬で雰囲気が変わったヤソカ相手に健也と美娃は身構える。
「ボクが、ただただ何百年も生きただけのボンクラだと思ってるのか小娘? ならば見せてやろう、ヤソカ・キャッスルハートと言う『悪』を目指した男の力をなぁ! ハハハハ!」
この作品終わったらミステリーに挑戦したい(フラグ)




