第39話「新たな因縁」
(特に書くこと思い浮かばねぇ)
「……あのー荒捜さん。少しよろしくて?」
「なんだよ美娃」
「なんでアナタは真奈にべったりですの?」
真奈と月名子の対決から2日後。
月名子はすっかり真奈になついていた。
「……荒捜さん、ちょっとこちらへ」
「おいおい、どこに行くんだよ美娃~」
〇 〇 〇 〇 ●
美娃に教室の外の廊下に連れ出された月名子。
「荒捜さん、前にも言った通り真奈が前の学校で何があったのか話しましたわよね?」
「あぁ、なんか良い人を演じてたら学校の人気者になってしまって窮屈な学園生活送ってたんだろ?」
「そこまで分かっていながら、なんで今日は真奈にべったりくっついてましたの?」
「真奈が好きだからじゃダメなのか?」
ストレートな物言いに頭痛を感じる美娃。
「て言うか美娃は神経質すぎ、アタシだってちゃんと真奈の許可を貰った上でスキンシップしてんだ。真奈が昔の事を思い出して嫌な気分になったらすぐ止めるよ」
「~~ッ、あの子はまだ自分からNOが言えないですの!」
「そうかぁ? 別に本当に嫌そうにしてるようには見えなかったな。美娃は真奈の保護者かっての、ほら、そろそろ教室戻ろうぜ?」
「ぐ、ぬぬ」
〇 〇 〇 〇 ●
「お前、平気、なの、か?」
「え? 何が?」
美娃と月名子が教室を出ていってから秋歌は真奈に問い掛けた。
「お前、他人に、好かれるの、嬉しく、ないだろ?」
「……あー、美娃も秋歌も私を心配してくれてるんだね。私も不思議なの、月名子ちゃんにあんなにベッタリされたのに前の学校のような嫌悪感は感じなかったんだよね……あ! 分かった!」
真奈の中で何かが得心したらしく、その事を秋歌に伝えた。
「月名子ちゃんは、犬に似てるんだ!」
「……え? 犬?」
「ほら、月名子ちゃん最初は健也さんの事で私達といがみ合っていたでしょ? でもその後に私達と和解して今日はあんな感じになってた。まるで人間を警戒していた犬が急に人を好きになったような。そんな感じがするの! だから逆に可愛く感じてるのかも!」
まさかの犬扱い、これには秋歌も頭を抱える。
「……………それ、本人の前で言うなよ?」
〇 〇 〇 〇 ●
昼休み。
「真奈、一緒に飯食おうぜ!」
授業中。
「真奈、教科書忘れたから見せてくれ」
放課後。
「真奈、また一緒に走ろうぜ!」
2日前からだと信じられないくらい月名子は真奈に対して甘えん坊になっていた。
元々人懐っこい性格だったのかもしれない。
健也絡みでなければ、いや健也のことで絡んだからこそ、結果的にここまでの信頼を得られたのかも。
「……なんですの? この仲間外れ感は?」
「あの、二人、すっごい、イチャイチャ、してる、よな? もう二人とも、健也の事、諦めて、結婚すれば、いいのに」
グラウンドで真奈と月名子が走ってるのを見ながら愚痴をこぼす美娃と秋歌。
「あ、そうだ、美娃、後一週間半だが、健也と同居する、決意は、あるか?」
「おーほほ! 当然ですわ! 健也がなんと言おうとルームシェアをするつもりですわ!」
「わたし、も、だ、もし、それが、実現、できたら、わたしの、ライブ、見に来て、くれ」
忘れがちだが、秋歌は『ユズルハ・リカ』と言う名前でソロデビューを果たした若者に人気の女性ボーカリスト。
時々その仕事関係で学校を休むことはあるが、この事を知ってるのは真奈、美娃だけである。
「確か、三週間後でしたっけ? 大丈夫ですの? もしまた健也に拒絶されたら、音楽活動にも支障が出るんじゃなくて?」
「出るな、絶対出る、だから、わたしは、月名子に、健也の説得を、頼んでるん、だ、上手くいくと、いいが……」
「いきますわよ、本当は荒捜さんって悪い子じゃないことはわかりましたもの、だからアナタは心配せずに本番に向けて頑張りなさいな!」
美娃は秋歌の背中を力強く叩いて激励した。
「おーい、そこの二人ー! んな所に居ないで一緒に走ろうぜ!」
遠くから月名子が大声で手を振り、それに対して美娃も大声で返した。
「アナタのような走るの大好きなおバカさんの相手なんかしたくないですわよーだ!」
「言ったなこいつ~!」
月名子は笑いながら美娃に向かって走っていき、そのまま美娃とじゃれ合うのであった。
〇 〇 〇 〇 ●
「いやー楽しいなー」
三人と遊んだ月名子は満足気に帰路に着いていた。
「なんか兄ちゃんの事で勝手に敵視してたのがアホらしくなってきた。三人とも良い奴らじゃん……アタシと兄ちゃんとあの三人が一緒に暮らせば……もっと楽しいだろうな……うっし! 今夜兄ちゃんに相談してみるか!」
決意を新たに健也が住むアパートの玄関を開ける。
「たっだいまー! て、ん?」
玄関の靴を見ると健也ともう一足別の人の靴があることに気付く。
「お客さん?」
取り敢えず月名子は靴を脱いで居間へと向かうと、そこには健也と見知らぬ少年が居た。
「あ、おかえり月名子ちゃん。紹介するよ、さっき言ってた俺の従姉妹の荒捜 月名子ちゃんだよ」
「は、初めまして霧神 菜烙です」
少し気弱そうで前髪で目元を隠した一見根暗な少年が月名子に自己紹介をした。
「えーと、兄ちゃんこの人は?」
健也は霧神の事を簡単に説明した。
「へー、インターンシップねぇ。んで今日はお世話になってる兄ちゃんの所に遊びに来たと」
「え、と、あ、あああ荒捜さんとは歳は同じだと思いましゅ」
「はは、霧神君そこまで緊張しなくて良いよ、ゲーム配信の時はあんなにテンション高かったのに」
「あ、あれは、その、ゲームの時だけ気分がハイッになるだけです……はい」
健也は月名子と霧神が仲良くなれるようにと思い、一度一人で外出する事を考えた。
「二人とも同い歳だしすぐ仲良くなれるよ。俺が居ると邪魔だろうし、適当にお菓子とか買ってくるからさ。その間二人で話すと良いよ」
「じゃあ兄ちゃん! アタシにはプリン買ってきてくれ!」
「りょーかい」
月名子は健也が出ていった後に霧神と向かい合うように座った。
それから10分、何故か何も話さなくなった霧神。この沈黙に耐えかねて月名子が先に口を開いた。
「あー、えーと、改めてよろしくな! アタシの事は月名子で良いぞ!」
「うるせぇメスガキ」
「…………え?」
急に雰囲気が変わった。霧神は前髪を上げて鋭い目付きを月名子に向ける。
「先輩の従姉妹だかなんだか知らねぇけどなぁ、メスの分際でオレの先輩と仲良く暮らしてんじゃねぇよボケが」
「え……霧神?」
「気安くオレの名を言うんじゃねぇ!」
突然の出来事であった。霧神がナイフを取り出して月名子の目を突こうとしたのだ。
「うわ、あぶな!?」
持ち前の反射神経で避けて霧神と間合いを取る月名子。
「いきなり何するんだよ!? てか銃刀法違反!」
「あー羨ましい、お前が羨ましいよ荒捜さんよぉ」
(え、なに? 何なのこいつ?)
明らかに危険な存在であることを認識した月名子は霧神を警戒する。
「……………ハッ!? やっべぇ、嫉妬のあまり先輩の従姉妹殺すところだった……すんません荒捜さん、今のはちょっと驚かせようと思っただけですよ~。このナイフも玩具ですよ~」
「いや、今殺すとかハッキリ言ったし、そのナイフどう見ても本物なんだけど?」
「んも~冗談ですってば~分かってくださいよ~分かりました? 分かれよバカ」
感情の起伏が激しい霧神に不気味なものを感じる月名子。
「ただいまー、ごめん月名子ちゃん、プリン売り切れだった」
ちょうど健也が買い出しから帰ってきたと同時に霧神の手からいつの間にかナイフが消えていて、そのまま健也を出迎えた。
「先ぱ……荒蒔さん、お、おおおおおかえりです」
霧神が月名子だけでなく、真奈、美娃、秋歌の三人にも牙を向ける日が近付きつつあった。
ダメだぁ。霧神くんと他のヒロイン達が仲良くなれる未来が見えない。




