第3話「JKとの付き合い方」
JKと接するにはどうすべきなんだろ?
私、工業高校出身なので当時はクラスに女子が一人も居ませんでした。
悲しい高校生活だったなー(泣)
「ど、どうしたらいいんだ?」
昨日の夜、俺に十歳年下のJKの友達が三人もできた。
端から見たらこれ、絵面的に犯罪臭があるように見えるのだが。
これから先、彼女達とどう付き合っていけば良いのか皆目見当もつかない。
「いやはや、昨日は災難だったねぇ荒蒔君」
会社の昼休憩、俺は食堂で同僚の周防と心城の三人で昼食を食べながら二人に相談していた。
「あぁ、昨日は騒がしくしてすまなかったな心城。それでその、十歳年下の子達と上手く付き合うにはどうしたらいいんだ?」
勿論、この場合の付き合うとは恋人としてではなく、友達としてなんだが、会社の人達には昨日の三人の女の子は俺の親戚の子と言い訳したので、みんなそう思っている筈。
また俺は嘘をついてしまった。
だって言えるわけないじゃん。三人共俺に異性としての好意を寄せてるなんて。
何も知らない人から見たら援交だと間違われそうな気がするから辛い。
「しっかし荒蒔にあんな可愛い親戚の子が三人も居たとはなー」
「俺も十年振りに再会できて驚いたよ。みんな美人になってたから」
「ま、美人は美人でも雲母ちゃんの方が十倍美人だけどな! ……あいた!?」
「聞こえてるわよバカ周防。それと先輩相手にちゃん付けは止めなさい」
周防の背後から雲母先輩が現れて、周防の脳天にチョップをかました。
「あ、心城君、午後にまとめてほしい資料を君の机の上に置いといたから午後からよろしくね」
「はーい、了解いたしましたよぉ雲母先輩」
「はいを伸ばさない! 全く、もうすぐ30にもなる大人が子供みたいな返事しないの」
雲母先輩は俺達よりも二つ年上だ。年長者だからなのか、何かと後輩である俺達に口うるさく注意をしてくる。
真面目ではあるが、真面目過ぎて周囲からは煙たがられている。
それでも俺達三人だけは、こうして雲母先輩のことをうっとおしいとは思っていない。
なんせ美人だから。
「ところで荒蒔君、君に聞きたかった事があるのだけど」
「なんですか先輩?」
「昨日の子達って、本当に荒蒔君の親戚の子なの?」
「そ、そうですけど、それが何か?」
「えぇと、あの金髪の子が『妻』がどうとか言ってたような気がしたんだけど」
ふぅぅぅぅぅぅぅん!!
「あ、それ俺も気になってた」
「僕も気になっていましたね」
はぁぁぁぁぁぁぁん!!
しっかり聞かれてたぁぁぁぁぁぁぁ!!
「ま、まさか荒蒔君、本当は親戚の子じゃなくて、そう言う……」
「違いますから! 彼女達とはそう言う関係じゃありませんから! 決して援交とかそんなのではありません!!」
「え、何もそこまで聞いてないんだけど」
ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
この後滅茶苦茶弁解した。
「つまり、本当にただの親戚の子なのね?」
「はい、そうです!」
「そ、そう、なら良かった」
雲母先輩がホッとしたような安堵の表情を浮かべる。
「それじゃ、私食べ終わってるから先に行ってるわね」
「は、はい……」
疲れた。昼休憩なのに疲れた。
「いやー必死になってる荒蒔君は結構面白いですねー」
「他人事みたいに言うなよ心城……そういやお前既婚者だったよな?」
「えぇ、五つ歳が離れた妻が居ます」
そう、心城は既婚者だ。つまり俺や周防と違い勝ち組なのだ。
「いいよなー心城、お前結婚できててさー」
「羨ましがるなら周防君、君もさっさと雲母先輩に告白したらどうなんだい?」
「バッ、おめぇ! それが出来たら苦労しねぇよ!」
大人である周防ですら、好きな人に告白できないのに、十歳も歳が離れたあの子達は堂々と俺に告白してきた。
あの子達の方が十分勇気があるな。そう考えると本当に凄いと思う。
「あ、それで心城、周防、結局年下の子と付き合うにはどうしたら良いと思うか意見を聞かせてくれ」
そう言えば本題からズレてしまったが、俺が聞きたかったのはこれだ。
「あーそうだなぁ、俺には六つ歳が離れた妹が居るんだけど、俺が過保護に接するせいか、うざがられてしまうんだよなぁ。昔は『お兄ちゃんお兄ちゃん』て可愛かったのに」
「つまりシスコンってやつか、なんで過保護になるんだ?」
「そりゃこの世でたった一人の妹だぞ! 大切に思うのは当然だろ!」
どんな風に接しているのか詳しく聞かないでおこうと思うが、大切だから過保護になるか。
そこには嫌われてもいいと言う信念すら感じる。
「まぁ俺から言える事は、本当に大切な相手なら嫌われてもうざがられてもいいから優しく接しろかな」
「そんなものか……心城は?」
「僕ですか? うーん、妻とは円満な感じですからねぇ。お互い嫌いになることなく愛し合っていますから、僕の意見が参考になるかどうか」
「うわ、惚気話か?」
「いえいえ、事実ですよ。そうですねぇ、荒蒔君の親戚の子達が荒蒔君の事どう思ってるかはよく知らないけど、僕からは相手がこちらに好意を抱いているなら、それに対して真剣に向き合うことですね。逃げる事は相手に対して失礼です。例え相手に興味がなくても真剣になるべきですよ」
「真剣……」
確かに逃げる事は相手に失礼だ。実際俺は二回も逃げてしまった。
あの三人が真剣に俺に好意を向けてくるなら、例えあの三人を異性として見れなかったとしても、俺は逃げずに向き合うべきだ。
なんせ俺はあの子達よりも十歳も年上なのだから。
「おっと、そろそろ昼休憩も終わりそうですね。では僕は先に行ってます」
「あ、俺も行くわ、じゃあ頑張れよ荒蒔」
「あぁ、ありがとう二人とも」
二人の意見を参考に俺は覚悟を決める。
俺はあの三人を異性としては見れない。
だがそれでも向き合うべきだ。彼女達の好意を。その上で彼女達に俺の事を諦めてもらう。
俺は決めた。彼女達には別の人を好きになってもらおう。
だってあの三人の内誰かと本当に恋人として付き合う事になったら、俺は彼女達を愛する事ができないから傷付けてしまう。
それだけは避けなければならない。短い間だったとは言え、彼女達とは十年前に仲良くなった間柄だ。
だから、彼女達には幸せになってもらうために俺以外を好きになってもらう。
そう決めた。
ピロリン。
「ん?」
俺のスマホからトークアプリの通知音が聞こえてきたのでチェックした。
『あの、健也さん。今度の日曜日水族館にでも行きませんか? もちろん二人っきりで』
真奈ちゃんからデートのお誘いが届いた。
『もちろん構わないよ』
『やった! ありがとうございます!』
まぁ、今は彼女に付き合ってあげよう。結婚できない代わりに思い出を沢山作ってあげよう。そう思った。
ピロリン。
「ん? また?」
今度は別の子から通知が届いた。
『健也。今度の日曜日水族館に行きますわよ! もちろん二人っきりで!』
ピロリン。
『健也、日曜日、水族館、行く、二人っきり、絶対だぞ』
「……………………」
断ろうと思った。だが、逃げるわけにはいかない。
なんて考えてしまったせいで、俺は他の二人からのお誘いを承諾してしまった。
「……ハッ!? 俺はいったい何を……」
こうして俺は三人と今度の日曜日デートすることになった。
なんか私が書いた別の作品に関係ありそうなキャラが登場しましたが、今作ではファンタジーな事は起きません(たぶん)