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俺女子高生に興味ないから、君達とは結婚できません!!  作者: 心乃助(Initium・Godpiece)
第一部
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第2話「俺はどうしたらいいんだ?」

 女の子と仲良くなりたい(切実)。

「ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ、お、おはようございます」


 俺は三人の女の子達から逃れて、なんとか会社の中へと避難した。


「おいおいどうした、そんなに息を切らして、珍しく朝のランニング出社か?」


「そ、んなわけ、ないだろ……」


 同僚の『周防(すお) 駿介(しゅんすけ)』が俺に近付いてきた。


「お、追われてるんだよ、昨日から」


「誰に?」


「そ、それは……」


 言おうかと思った。だがきっと信じて貰えないかもしれない。


 逆に信じて貰えたら貰えたで十中八九俺の責任だと思われるかもしれない。


 なんせ十年前に嘘の約束をしたのは俺自身なのだから。


「はーいはい、いつまでも入り口でくっちゃべってないで、さっさと朝礼の準備をしなさい」


「き、雲母(きらら)先輩……」


 俺の先輩にあたる『雲母 藍雅(あいか)』さんが俺達に注意する。


「てか荒蒔君、なんでそんなに汗だくなの? ちゃんと汗拭いて制汗スプレーをしなさい。汗臭いのは社会人としてのマナーがなってないわよ」


「す、すみません」


 そう言い残し、雲母先輩はさっさと朝礼をする会議室へと向かって行った。


「相変わらず雲母ちゃんきついよな~。だがそこが良い!」


「あー、お前雲母先輩狙ってるんだっけ?」


 周防は、入社した頃から雲母先輩に好意を抱いているようだが、まだ告白すらできてないそうだ。


 ……そう言えば、あの三人の女の子達はどうなったかな?


 さすがに会社の中にまでは入って来ないだr。


「とおりゃああああああああ!!」


 と、思っていたら会社の窓硝子を突き破って金髪の女子高生が入ってきて、上司の机の上に着地して仁王立ちとなった。


「んな!?」


 ここ二階なんですけど、どうやって入ってきたのこの子は!?


「おーほほほ! どこへ逃げても無駄ですわ荒蒔 健也! さぁここに判を……あぁ!?」


「ふがぁぁぁぁぁぁ!!」


 俺は一瞬で彼女との距離を詰めて手に持っていた婚姻届を破り捨てた。


「なんだなんだ!?」「今の音はなんだ!」


 今の音で会議室に居た職場の同僚や先輩、上司達が集まってきた。


「お、おい荒蒔、その女の子誰?」


 すぐ近くに居た周防が驚いた様子で問い掛けてきた。


 まずい! なんて言い訳すればいいんだ!?


「自己紹介が遅れましたわね。ワタクシは健也の妻、むぅ!?」


 俺は急いで彼女の口を防いで周囲に言い訳をした。


「し、しししし親戚の子です! 昨日十年振りに再会できて嬉しさの余り俺にもう一度会いに来てくれたんです!」


「むが、何を言って……」


 ちょっと黙ってて!


「す、すみません! 割れた窓は後で俺が片付けて弁償しますので! 皆さんお騒がせをして申し訳ございません!」


 俺が必死に頭を下げていると、残りの二人も入り口から入ってきた。


「ちょっとアナタ! そんな入り方をしたら健也さんや会社の人達に迷惑でしょ!」


「常識がない、自重しろ、パツキン女」


 真奈ちゃんと黒髪の子だ。


 二人の登場に再び周囲がざわつく。


「な、なんだ? また女の子?」「あの子達荒蒔とどういう関係だ?」「てか全員かわいいな」


 やめろぉ! これ以上俺の立場を危うくするなぁぁぁぁぁ!!


「ぜ、全員俺の親戚の子です!!」


〇 〇 〇


 あの後、俺は無理矢理三人を追い出して、上司にこっぴどく叱られながら窓の破片を掃除し、そして夜遅くまでの残業を与えられた。


「はぁ……久し振りの残業はきつかったなぁ……」


 現在23時。こんな時間まで仕事したのは2ヶ月振りだ。


 くそ! 俺は残業したくないし、コツコツ積み上げてきた職場の人間関係を壊したくなかったのに、あの三人が現れてから俺の運命は狂い出した!


 て、元はと言えば十年前の俺のせいか。


 ちくしょぉ! 恨んでやるぞ17歳の頃の俺!


 守れもしない約束なんてするんじゃねぇ!


 それで今の俺がどれだけ苦労してると思ってるんだ!


 ……なんて、いくら言ってももう遅いか。


 俺は帰り道を警戒しながら自宅のアパートまで向かう。


 いや、こんな時間に女子高生が外に居るわけないか。


 警戒すべきは明日の朝か、また待ち伏せされてるかもしれない。


 その時こそは逃げずに三人に謝罪しよう。あの約束は嘘だったと。


 そうすれば、俺に幻滅して諦めてくれるだろう。心は痛むが仕方のない事だ。


 なんせ俺は年下に興味ないのだから。恨んでくれてもいい。


 そう覚悟を決めた後に自宅のアパートの扉を開けると。


「あ、お帰りなさいませ健也さん」


「遅かったですわね健也。今朝はその、悪かったわ。反省していますわ」


「まったくだ、このパツキンビッチ、健也に迷惑かけるな」


 扉を開けると中には真奈ちゃんと金髪の子と黒髪の子が制服の上からエプロンをかけて俺の帰りを待っていてくれていた。


「……君達、不法侵入って言葉知ってる?」


〇 〇 〇


「さぁ健也さん。私が作った晩御飯をどうぞ」


「あぁ、ありがとう、てか君達こんな時間まで外に居て親御さん達が心配しない?」


「大丈夫です。両親には『将来の夫の元に向かう』と言いましたので」


「ワタクシもですわ」


「私、も」


 親公認。逃げ場が狭まってくる。


 いや、もう逃げない。俺は彼女達に面と向かって伝えるんだ!


「みんな、よく聞いてくれ、俺、むごぉ!!」


「あーん、ですわ! あぁん、これこそ夫婦ですわ~」


 金髪の子が箸で摘まんだ肉じゃがを無理矢理俺の口に押し込んできた。


「ま、負けてられません!」


「私、も、やる」


「ちょ、ま、むごごごごご」


 三人のお口へのあーん攻撃が始まった。苦しい、息ができない。


「むが、もぐもぐ、み、みんなよく聞いてくれぇぇぇ!」


 俺は口の中の食べ物を飲み込んだ後、三人に改めて告白することとした。


「君達に謝罪しなければならない事がある」


 俺の真剣な眼差しを見て、三人は正座をして耳を傾けようとしていた。


 みんなが固唾を飲む中、俺は土下座しながら三人に謝罪した。


「すまない! あの約束は嘘だったんだ!」


「「「え?」」」


 きょとんとする三人。それを気にせず俺は十年前の事を話した。


 あれはその場逃れの嘘で、当時7歳だった君達では覚え続けることは不可能だと思っていた事を、そして十年間も俺の事を想い続けてくれた事に感謝し、謝った。


「だから俺、君達とは付き合えない。十年分の想いを踏みにじるような結果になってしまい本当に申し訳ない!」


 俺が深々と頭を下げると、三人の手が俺の頭を撫でてくれたのだ。


「そういうことでしたのね」


「確かに冷静に考えたら子供の愛の告白に本気になってくれるわけありませんものね」


「理解した、健也は悪くない、勝手に告白した私達のせいだ」


 思っていたのと違う反応だが、三人は許してくれたようだ。


 良かった。やっぱり誠心誠意を持って謝ればこちらの思いが届くんだと俺は知った。


 さて、誤解はとけたところで、三人を家に送ろう、彼女たちの親御さん達には後日俺が直接謝りに行こう。


 そうすれば俺は再び何事もない社会人生活に……。


「わかりました。ではお友達から始めましょう!」


「はぇ?」


 え、なんて言った? 友達?


「それもそうでありますね。ワタクシ達の好感度がいくら高くても、当の健也がワタクシ達に対する好感度が全くないのでは話になりません」


「だから、まずは友達から、始めて、好感度を稼いでいく」


「ちょ、ちょちょ! 君達何勝手に話進めてるの!?」


 俺の事を諦めてくれたと思っていたのだが、そんな事は微塵(みじん)もなかった。


「それではこれは」


「えぇ、どちらが先に健也の心を手にするかの」


「競争だね、私、負けない」


「あ、あのー君達?」


 俺の声が届かず、三人はそれぞれ宣戦布告をした。


「私の愛は本物です! この想いに偽りはございません! 『純粋』さにおいて言えばお二人には負けません!」


「あーら、ワタクシはアナタ達よりも『経済力』がありましてよ、ワタクシが居れば健也をペット……働かせずに養う事ができますわ!」


 おい、今ペットって。


「私は、二人のような特徴はないが、そうだな、私の『活動』を知って貰えば健也の気持ちも変わるかも」


 活動って何? いやそもそも、何この状況。


「では、お互い恋のライバルとして」


「全力で潰し合いましょう! おーほほほ!」


「私が負ける、要素など、ない」


 この夜を境に、俺は彼女達の友達からスタートすることとなった。


 俺はどうしたらいいんだ?

 セーラー服+エプロンって最高じゃない?


 私だけかな?

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[一言] 常識破りの3人組笑。 常軌を逸しているどころの騒ぎじゃない! 嘘だったと謝罪しても諦めない、まさかの友達から始めましょうって……、奴らは本気だ! 殺されかねない勢いで無理やりご飯食わせるあた…
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