第111話『推理ショー』
やっと争奪戦終わったぁぁぁ!!
「勝者! 村人陣営!!」
人狼ゲームの果てに勝利したのは真奈が属する村人陣営であった。
最後の投票で処刑されたのは秋歌であった。
秋歌が最後の人狼であったのだ。
「なぜ、わかった?」
負けたが悔しそうにしていない秋歌は真奈に尋ねた。
「最初の違和感は秋歌の態度でした。最初は私を人狼だと疑ってたのに、私が時真さんを疑いだしたら秋歌の態度が一変して私の味方になったのが不自然だと感じたの。もしかして、秋歌は私が村人だと知っていた。いや正確に言うと途中から知ったと言う方が正しいでしょうか」
「どういう、こと、だ?」
秋歌の問い掛けに答える形で、真奈は自身の背後に居るアヤナを指さした。
「アヤナさん。なんで私の後ろに居るのですか? しかも私と時真さんには見えず、秋歌にだけ見える位置に、何故居るのですか?」
その指摘に、アヤナは不敵な笑みを浮かべた。
「さぁ? 最初に脱落したから、たまたまこの位置に居ただけの話しデースよ?」
「本当にそうでしょうか? 六波ちゃんからはアヤナさんが見えていましたよね? アヤナさんは何をしてましたか?」
その問い掛けに六波は答えた。
「えーとそうですね。何やら首を回したりしてただけですけど? それ以外は特に何も」
「それが合図だったのです」
「合図?」
「本来人狼ゲームは人狼陣営はお互いの存在を認識でき、それを元に人狼同士が協力して村人陣営の数を減らすものですが、今回の人狼ゲームは、プレイヤー全員が村人なのか人狼なのか分からない特殊なルールでしたよね? しかもこのゲームは本来私とアヤナさんの対決だった。と言うことは、勝敗を分けるには私とアヤナさん、どちらかが村人か人狼にならなきゃならない、絶対被ってはいけないはず。つまり私が村人だったので、脱落したアヤナさんが人狼だったと考えるのが妥当でしょう」
自らの推理を披露する真奈。
「中々の推理デースね。でもおかしいですねぇ、それだと、今回のルールではワタシは秋歌が人狼だったなんて知りませんでしたし、仮に知ってても、真奈や時真さんが村人なのか人狼なのかも知りませんでしたよね? どうやってワタシがそれを知ったと?」
「不正行為です。最初に全員が顔を伏せて役職が示されたカードをルーガさんによって配られた際、アヤナさんは配られる瞬間を見てましたね?」
「んー? なんのことでしょう?」
とぼけるアヤナであったが、真奈は怯まず続けた。
「ルーガさん、不正防止の為にカメラが何台か設置されてましたよね? その映像を見せてくれませんか?」
真奈に言われて、ルーガはモニターとカメラを用意して、カメラに収めた映像をモニターに流した。
「ここです! 皆さん見てください!」
真奈が指さした方を見ると、アヤナは顔を半分だけ伏せていた。
「いやいや、だとしてもワタシの目線はテーブルの方を向いてますよね? これじゃ見たいものも見れないデースよ〜」
たしかに顔を全て腕で覆ってるわけではないが、これではテーブル全体を見る事は不可能だ。
「……! なるほど『周辺視野』ですね」
しかし、六波が周辺視野の存在に気付いた様子であった。
周辺視野とは、我々が普段モノを見る時に使う視力が固定視野、つまり視野の中心だ。それ以外の視野は周辺視野と呼ぶ。
周辺視野は固定視野に比べて視力は劣る場合もあれば、普段使う事はないが、鍛えれば広範囲の視野を獲得することができる。
「武道における『遠山の目付け』と呼ばれる技法に近いですね。普通の人は固定視野だけで相手のパンチやキック、武器を見ようとします。例えば固定視野だけで右のパンチだけ見てたら左のフックが見えなかった。これを防ぐ為に相手全体を遠くにある山を見るが如く、固定視野は動かさず周辺視野をフル活用して相手の姿全体を見る必要がある。これが武道における目付けです」
と、六波が説明してくれた。
「その目付けと言うのは今知りましたが、アヤナさんって傭兵である霧神君より喧嘩が強いのですよね? だとしたら腕っ節だけでなく目も鍛えられてる、そう感じたのです」
「真奈って、すごいデスね。普通の人間が周辺視野の存在に気付けるわけがないのに」
驚きを隠せないアヤナであったが、さらに真奈は続ける。
「この場に居る全員がアヤナさんの探偵としての実力は分かってます。だから真っ先に全員に選ばれるように最初の議論で注目を集めて脱落したのですよね? 脱落してしまったらテーブルを離れられるし、残ったプレイヤーはプレイヤー同士に注意がいきます。まさに死人に口なし、誰も脱落したアヤナさんの事なんて気にも留めてなかったのです。だからアヤナさんは私の背後に回って秋歌に合図を送ったのです」
「正解でーす。でもまだ足りませんねぇ、真奈が村人なのは秋歌に伝わるようにしました。ですが人狼である秋歌も気付いてたはずデース。人狼は自分だけで、残り二人は村人陣営だと。ワタシが何故に真奈の事をただの村人だと秋歌に伝えたのでしょう?」
「役職です。私が村人陣営の何かしらの役職であるかそうでないかが重要だったのです。ここで一番警戒すべきは『狩人』。狩人は夜の時間に村人を一人だけ人狼から守る事ができます。恐らく時真さんが狩人だったのでしょう」
そういうと時真は自分に配られたカードを見せた。
「はい、僕は狩人です。真奈さんはこう言いたいのですね。もしも投票の時間に三人全員がバラバラとなったら、投票は無効となり、そのまま夜の時間になります。そしてもしも僕が村人である真奈さんを守る事ができれば、翌日疑われるのは秋歌さんなのは明白」
「そう、と言う前提はほぼ賭けでした。投票が無効になるか分からなかったし、そのまま夜の時間で時真さんが私ではなく秋歌を守った場合は私が襲撃されます。でも一か八かの可能性で先程の可能性が現実になるかもしれない。アヤナさんは、それを警戒して秋歌に私が何の能力も持たない村人なのを伝えたのですね?」
しばしの沈黙の後、アヤナは答えた。
「そうですねぇ、実はイニティウムの運命操作を警戒してたのです。いや警戒しすぎたのが仇となりましたデース。もしかしてイニティウムが何か仕組んでるのではないか、あらゆる可能性を踏みにじって一つの未来を確約してくるのでは? もしかしたらワタシではなく真奈が優勝できるようにしてくるのではないか? そんな気がしただけデース。でも、その運命は覆せなかったようデース」
「確かに結果的に私が勝ちましたが……やはりアヤナさん的には、私がマカヤに近付くのは反対ですか?」
「まぁそうですね。このままイニティウムのシナリオ通りに動いて良いのかどうなのか考えあぐねていたところデースが、吹っ切れました! そもそもワタシ一人でマカヤとイニティウムをどうにかしようとしてたのが悪かったのです! てことで六波、真奈をサポートしてほしいデース。マカヤに何かされそうになったら全力で守ってくださーい」
そう言うと、アヤナは一人でどこかに行こうとした。
「どこに行くのです?」
「ワタシ個人でイニティウムを探ってみまーす。何かあったら六波さんにすぐ連絡しまーす。それより真奈ってばナイス推理でしたよ! マカヤと健也さんの事は任せたデース!」
そう言い残し、アヤナは去って行った。
「真奈、中々、良い、推理、だった、な」
と秋歌が褒めると真奈は膝から崩れて尻餅をついた。
「は、は、はひー、き、緊張したぁぁぁ、当てずっぽうな考えが上手く行くとは思わなかったぁ」
「当てずっぽう、だったの、か」
争奪戦決勝戦、勝者は真奈に決定した。
いよいよ、マカヤと対峙する時が来た。




