第110話『ファイナルジャッジメント』
争奪戦決勝戦。
真奈vsアヤナ。
戦う競技はまだ決まってないが、両者緊張していた。
「ではでは! 今回も抽選で競技を決めさせてもらいます!」
司会進行のルーガの合図に合わせて解説の時真が抽選箱に手を突っ込んだ。
よく吟味してから時真は一枚の紙を取り出した。
「さぁ時真さん! 最終決戦に相応しい競技はなんでしょうか?」
「人狼ゲームですね」
人狼ゲーム。名前は有名だが、ルールを詳しく知らない人向けにざっくりと説明すると、多人数で行うロールプレイ型コミュニケーションゲームで、ランダムで決められた役職を元に村人陣営、人狼陣営に分かれ、村人は人狼を全て処刑したら村人陣営の勝ち、逆に人狼は村人を人狼の数と同じ数減らしたら人狼陣営の勝ち。
村人陣営には村人、占い師、霊媒師、狩人の役職がある。
人狼ゲームの流れは、夜の時間、昼の時間、夕方の時間があります。
夜の時間に村人陣営の能力者が行動し、人狼陣営は誰か一人を選んで襲撃します。
昼の時間は議論の時間です。誰が人狼なのかを話し合います。人狼は自分の正体を隠しながら嘘をつきます。
そして夕方の時間は投票の時間です。誰を処刑するかを投票で決めます。
投票で選ばれた人は村人、人狼関係なしに処刑されてしまいます。
これが1日の流れです。これを繰り返して村人は人狼を処刑して人狼を全滅させ、人狼は村人を人狼と同じ数に減らせたら人狼の勝ちです。
「……人狼ゲーム、やったことないのですが、たしかこのゲームって大人数でやるゲームですよね? 私とアヤナさん二人でやるのですか?」
「それもそうですね。GMも決めないといけないですし、GMは私ルーガが務めさせていただきます!」
とは言え、残りのメンバーはどうしたものか。
「せっかくですし、この場に居る秋歌、六波、特別に解説の時真さん、計5名でやりません?」
と、アヤナが提案した。
その提案に全員が承諾して、五人でテーブルを囲みながら人狼ゲームがスタートした。
◯
「なんでですかぁぁぁぁ!!?」
1日目の投票にてアヤナが真っ先に処刑されてしまった。
「昼の時間に散々議論したのに何故にワタシが処刑されなきゃならないですかぁ!?」
この時点で誰もアヤナが村人なのか人狼なのか分かっていないが、全員の意見によると。
「いや、お前、が、一番、厄介、だから」
「アヤナさんは探偵としての能力がありますからね。この手のゲームでは村人、人狼関係なく厄介な存在なので真っ先に選ばせてもらいました」
秋歌と六波の意見を聞いて頬を膨らませるアヤナ。
「ぐぬぬ、てか本当はこれってワタシと真奈の対決ですよね? ワタシが脱落しちゃって良いですか?」
「ご心配なく、アヤナさんが村人、人狼だったかは明かせませんが、もしもアヤナさんがどちらかの陣営に属していて、そのどちらかが勝利した場合はアヤナさんの勝利となります」
と、時真が解説してくれた。
「うげー納得できないデースが、まぁ良いでしょう、さっさとこんなゲーム終わらせたいデースからね。残った皆さんで頑張ってくださいデース」
少し不機嫌なアヤナは置いといて、残った四人で2日目に突入した。
夜の時間が終わり、昼の時間。
昨晩の犠牲者がルーガによって発表された。
「六波さん、貴女が昨晩の犠牲者です」
「……そうですか」
アヤナと違って冷静な態度を取る六波。
残りは真奈、秋歌、時真の三名であった。
「それでは議論を始めてください!」
残り三名で話し合う事となった。
これが最後である。三名残ったと言うことは、人狼は残り一人だけ、つまり議論の後の投票にて村人を処刑してしまった時点で人狼の勝ち、逆に人狼を処刑できれば村人の勝ち。
真奈の役職は村人。
つまり秋歌か時真のどちらかが人狼。
ここは負けるわけにはいかない。
「まさか六波ちゃんが人狼に襲われるなんて恐ろしいですね。いったい誰が人狼なんでしょう。ちなみに私は人狼ではありませんよ?」
真奈は定番のセリフを言った後に秋歌が答えた。
「どう、かな、真奈も、怪しい、が、一番、怪しいのは、時真、だな」
「おや? 何故でしょう?」
「ずっと、ポーカーフェイスだし、言動も、ハッキリしていて、緊張して、ない様子なのが、ますます怪しい」
「ふーむ、僕は執事と言う職業柄、どうしても感情を表に出すことはできないですが、それを言うなら秋歌さんも怪しいですね。僕と同じで表情は変わりませんし、何よりその喋り方。歌手と言う職業柄、どうしても喉を守る為にわざとそういう喋り方をしてらっしゃるのはご存知ですが、このゲームだと怪しさを隠すのには持ってこいですね。そうですよね真奈さん?」
「……」
「真奈さん?」
「え? あ、はい!」
急に自分に話を振られて焦ってしまう真奈。どう考えても秋歌と時真と比べたら感情が表に出やすいタイプだ。
「え、あーそうですね、確かに秋歌も時真さんも見事なポーカーフェイスで全然分からないです」
本当に分からない。二人が今何を考えてるのか、さっぱりだ。
「なんだか怪しいですねぇ、もしかして真奈さんが人狼だったりします?」
「そ、そんなわけないじゃないですか〜ですよね秋歌!」
「うーん、真奈て、時々、おかしな、行動、をする、時があるし、なぁ、ちょっと、信用できない、かも、ごめん」
見放された。
このままでは自分が疑われてしまう。
どっちが人狼か分からないが、取り敢えずターゲットを絞ってみよう。
まずは時真から。
「時真さん、私を疑った事といい、アヤナさんに投票した事といい、この争奪戦に対して快く思ってないのではないでしょうか?」
「ほぉ?」
興味深そうにする時真の表情が少し動いた。
「いくら仕事だと割り切っても、やはり美娃が居なくなった事に思うところがあるのでは?」
「全くない、と言ったら嘘になりますね。これでも長い間美娃お嬢様の下に居ましたし」
「それでアヤナさんを最初の犠牲者にしようとしたのでは? だってアヤナさんが美娃の事を指摘しなければ美娃が居なくなる事はありませんでしたし」
「と言っても、仮に美娃お嬢様が優勝しても、結局のところ先程と同じような末路になっていた事は確実ですし、これでも美娃お嬢様の新たな門出を願ってるのですよ?」
うーむ埒が明かない。と言うか真奈はこう言う駆け引きが大の苦手だ。
そもそも人狼ゲームそのものが初めてすぎて全然分からない。
「真奈、ここは、ワタシに、任せ、ろ」
「秋歌?」
と言うと、秋歌は時真と議論を繰り広げた。
両者拮抗しているが、段々と秋歌が優勢になってきた。
「どうだ、真奈、これで、誰に投票するか、決まったろ?」
「う、うん?」
「どうした?」
真奈は違和感を感じていた。確かに秋歌と時真、どちらが人狼か分からないので、取り敢えず時真から攻めてみようと思ったのだが。
今の流れって秋歌が真奈の意図を読み取って時真と激しい議論を繰り広げたわけだが。
何故、秋歌は真奈の味方をした?
秋歌だって真奈と時真どちらが人狼か分からないのに……!
まさか、秋歌は真奈の役者を知っている? だとしたら反則では? いや、まさかアヤナが一番最初に脱落したのは……これはアヤナが仕組んだ策なのではないだろうか?
真奈が何かに気付いたと同時に時間切れとなり、ルーガによって投票が行われることとなった。
「それでは最後の投票を始めます! 皆さん顔を伏せて、処刑したい人の名前が出てきたら手を上げてください」
ルーガの言葉に合わせて顔を伏せる三人。
運命の瞬間、これで決着がつく。




