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俺女子高生に興味ないから、君達とは結婚できません!!  作者: 心乃助(Initium・Godpiece)
第一部
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第11話「秋歌の秘密」

 風邪治った時の爽快感は凄いですねー(スッキリ)。

 ピピピピ。


「う、うーん」


 目覚まし時計の音で目が覚め、健也は寝惚けながら目覚ましのアラームを止めようと手を伸ばすと。


「あ、ん」


「?」


 なんだ? 何か小さくて柔らかい、水風船のような感触が手に伝わる。


「ん、うぅん、健也、いきなり、胸を揉まれるのは、驚いたが、これはこれで、気持ちいい、あ、もの、あん、だな」


「……どぅええええ!?」


 健也は驚いて布団から飛び出すと、自分が寝ていた布団の中に『(ゆずりは) 秋歌(あきか)』が入っていた。


「な、あ、秋歌ちゃん? なんで……」


「ん、知り合いの、探偵から、鍵の開け方を、教えてもらってな、そのまま、一晩、一緒に、寝てた」


 知り合いの探偵さん、何教えてんだよ! と、心の中でツッコミを入れる健也であったが、美娃もそうだが、どうして彼女達は堂々と不法侵入しようと思えるのだろうか?


 愛か? 愛が成せる行為なのか?


「しかし、健也は、抱き癖が、あったの、だな、一晩中、ドキドキ、したぞ」


「俺は今別の事でドキドキしてるよ」


 今度から玄関の鍵を二重、いや三重にすべきだと思った健也であった。


〇 〇 〇


 『十月桜(じゅうがつさくら)高等学校』。


 そこが秋歌が通う高校だ。


 ここでの彼女の扱いは『観葉植物』であった。


 特に誰とも関わろうとしない、誰とも話さない、常に一人で教室の窓際の席に居続ける。


 故に観葉植物。ただそこに居るだけの存在。


 誰からも慕われる事も、尊敬される事も、イジメられる事も、弄られる事もない。


 『真路(しころ) 真奈(まな)』が見たら、まさに彼女が理想とする学校生活のように見えるが、高校一年生の頃はそんな秋歌をからかう為にクラスの同級生からイジメの対象にされていたのだが……。


 例えば、廊下を歩いてる時に突然足を引っ掛けられて転ばされそうになった時は、綺麗な前方回転受身を取って。


「ありがと、な、ちょうど、受身の練習を、したかった、ところだ」


 またある時はトイレに閉じ込められて、上からバケツ一杯の水をかけられた時も。


「ありがと、な、ちょうど、頭を洗いたかった、ところ、だ」


 と、数々のイジメを無表情でポジティブに返し続けていると、面白くなくなったのか、二年生になる頃にはイジメグループからのイジメがなくなり、完全に人ととの関わりがなくなったのだ。


 と、思われたが、そんな彼女の事が気になっている女子生徒が一人。


 『(はなだ) 深桜(みお)』。秋歌と同じクラスの同級生だ。


 深桜にとっては、秋歌は憧れの存在であった。


 誰とも関わらない、一匹狼でクールな女の子。


 そんな彼女の姿に何故か惹かれて、気が付けば毎日彼女の姿を目で追うようになっていた。


 深桜は謎だらけの秋歌に興味津々であった。彼女がどんな音楽が好きなのか、どんな番組が好きなのか、好きな人のタイプはなんなのか、根掘り葉掘り聞きたい、お話してみたい。


 そう思っていたが、自分以外のクラスメイトは誰一人秋歌に話し掛けようとしない。


 話し掛けない事が暗黙の了解みたいになっていたのだ。


 だから話し掛けづらい。


『知りたい、杠さんがどげな女ん子なのか、知りたいちゃ、あぁ、どげにしてこないに興味を引き立てられるんか、自分(わが)でも分からんよー』


 そして放課後、今日は珍しく教室で秋歌と二人っきりとなった深桜はチャンスだと思い、勇気を持って秋歌に話し掛けてみた。


「ゆ、杠さん!」


「……なんだ?」


「あ、えっと(うは!? なんか、かっこいい)」


「?」


 赤面しながらも、深桜は秋歌に向かって話し続けた。


「あ、あああ、あの、あの、ゆ、杠さんは、ど、どどどどど、どのような音楽がしゅきでしょうか? (噛んだー! は、恥ずかしい……)」


「好きな、音楽、か? 私は、ロックが、好きだ、ぞ」


(あたい)も好きです! ……ハッ!?」


 緊張しすぎて大声で返事をしてしまい、言った後に恥ずかしさのあまり後悔してしまった。


「……ふ」


「!? (わ、笑われた!?)」


「お前、面白い、奴だ、な」


 分かりにくいが、秋歌は深桜に笑顔を向け、深桜はその顔を見ることができて感極まったのだった。


「あ、あああありがとうございまふ!」


 その後、ぎこちないが二人の会話は進んだ。


『う、嬉し! 憧れの杠さんとお話できて感激や!』


「ふむ、クラスの、誰かと、こんなに、話したのは、久し振りだ、せっかくだ、この後の私の、練習でも、見ていく、か?」


「え? 練習? 何の?」


「ん? 私の、正体に、気が付いた、のかと、思ったが、違うのか?」


『正体? 練習? 何の事なの?』


 何の事なのか分かっていない様子の深桜を見て、秋歌は鞄を持って席を立った。


「ふむ、知らないなら、付いてこい、特別だぞ」


 言われるがままに、深桜は秋歌の後を付いて行った。


 20分くらい歩いただろうか。日が沈み、辺りが暗くなってきた頃にはそこに辿り着いていた。


「ここ……音楽スタジオ?」


「うむ、私は、いつも、ここで、リハーサルしてる」


「???」


 訳が分からないまま中に入り、受付を済ませると、そのまま秋歌が予約していたスタジオへと入って行った。


「ここで、待ってろ、準備してくる」


「あ、はい……」


 今から何が始まるのか分からないまま、待つこと5分。


「よぉ、待たせた、な」


「ゆ、杠さん……その格好……」


 秋歌は、先程まで制服だったのだが、黒のカーディガンにロックTシャツ、黒スキニーの格好をして、普段かけている眼鏡を外して左目の下に星形のペイントをし、一本のエレキギターを引っ提げた状態で現れた。


 彼女はそのままエレキギターのセッティングをし、自分の前にマイクスタンドを立てて、深呼吸してから演奏を始めた。


「っ!?」


 信じられなかった。普段物静かな秋歌からは想像できない程の力強く、感情の込もった歌声とギターから発せられるロックな音色に心奪われてしまった。


 その姿、歌声、演奏、それらを見て深桜はようやく気が付いた。


『あ、そうか、(あたい)が杠さんに興味持っちょった理由は……』


 そして、深桜が気が付いた頃には演奏が終わり、彼女はぽかんとしながら拍手をしていた。


「ふぅ、どう、だった?」


「す、凄い! 普段の杠さんからは想像出来(でけ)へんくらいに心に直接訴えかくっよな力()え演奏じゃったよ!」


 なるべく人前では使わないようにしている鹿児島弁を使いながら深桜は素直な感想を言った後に秋歌に質問した。


「てか、杠さんって、もしかして『ユズルハ・リカ』本人じゃったりするの!?」


「いぇーい、その通り、私こそ、今人気の女性ボーカリスト『ユズルハ・リカ』本人、だよー」


 ユズルハ・リカ。


 三年前。スリーピースのロックバンド『皇帝×堕李亜(だりあ)』のメンバーとしてデビューし、今から一ヶ月前にソロデビューしたばかりの女性ボーカリスト。


 男顔負けの力強い歌声で、若者の心の悩みに直接訴えかけるような歌詞で人気を獲得している今話題のアーティストだ。


「あ、あわわわ、杠さんが、ユズルハ・リカだったなんて……」


「おう、驚かして、しまった、か?」


(たまが)った! と()かファンです! サインたもし(ください)!!」


「おっけー」


 深桜は嬉しかった。何故自分が秋歌に惹かれていたのか、ようやく理解できたからだ。


 学校では、眼鏡をして前髪で顔を隠すようにして、地味で目立たないようにしていたのは、自分がアーティストであることを隠していたからだったんだ。


「実は、今歌ったのは、今度の、ライブで歌う、新曲でな、誰かに、聞かせて、感想が欲しかった、んだ」


「えぇ!? そ、そんな、部外者の私にまだ発表していない新曲を聞かせて良かったの!?」


「本当は、ダメだ、マネージャーに、バレたら、怒られる、な、だが、どうしても、この曲を聞かせたい、人が、居るんだ」


「その人って、杠さんにとってどんな人?」


「私に、勇気を、くれた、人、何度も、挫けそうに、なって、泣きそうになっても、その人のことを、考えると、いつも勇気が湧いて、私に辛い現実に、立ち向かう、力を与えてくれた、大切な人、だ」


 その人の事を話している時の秋歌は、本当に嬉しそうだった。


 その人の存在が、秋歌をユズルハ・リカと言うアーティストにまで成長させた大切な存在。


 秋歌にとってのその人とは何者なのかを詳しく聞くことはできなかったが、秋歌は次のライブでその人を呼んで、その人への想いを込めた新曲を聞かせて自分の気持ちをぶつけたいと熱く語っていた。


「あ、私が、ユズルハ・リカなのは、クラスメイトには、内緒な」


「え、それって……」


「うむ、私と()()だけの、秘密、だ」


 今、初めて自分の名前を言ってくれた。


 憧れのアーティストと知り合いになれて、深桜はこの日を大切にするのであった。

 ここで小ネタ。


 秋歌ちゃんがしている眼鏡は伊達です。これは学校で目立たないようにするためのものです。


 彼女の視力は両目とも裸眼で1.5です。


 あ、最後に秋歌ちゃんの髪型は黒のショートヘアー(少し長め)です。

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