第99話『バッドエンドへの招待』
急★展★開。
二回戦一試合目の結果だけ伝えると真奈が負けた。
足相撲は拮抗したのだが、現役陸上選手の月名子相手には勝てなかった。
そして、装置が作動して真奈の服だけが爆発したのだが、健也が咄嗟に大きめなバスタオルを投げた事によって真奈は裸体を晒すことはなかった。
その事で会場の男子達からはブーイングがあったが、女子達は健也を褒め称えていた。
「うぅ、負けました」
ちょっと半泣きになってる真奈。無理もない、大勢の前で一瞬だけ素っ裸になったのだ。誰だって泣きたくなる。
そんな真奈の頭を健也が撫でて慰めていた。
と、不意に健也の携帯が鳴った。
「もしもし?」
『よぉ、久しぶりやな』
電話の相手は意思男であった。
「おじさん!? 良かった、無事だったんだね、母さんはどうなったの?」
『姉貴は生きとる安心せぇ、だがまだ終わってへん、お前の近くにヤソカが潜んどるやもしれん、温厚な姉貴をそそのかしたのもヤソカや』
「ヤソカ……電子複製体としてのもう一人のヤソカか」
『せや、誰か怪しい奴はおらんか? 今ワイは天ヶ屋さんと地上に向かっとる最中や』
「そう言われても、人が多すぎて誰か分からないよ……え?」
『どないした?』
意思男と話してる最中に一人の人物が近付いてきた。
今回の大会の解説役である『鈴木 ゴッドマン』が近付いてきた。
「えーと、ゴッドマンさん?」
「……」
健也だけでなく真奈も困惑していた。と言うか圧がヤバい、ゴッドマンは白人で身長2m越えで筋骨隆々の巨漢で、そんなゴッドマンが無言で健也の顔を見つめていて圧倒されてしまう。
「今の通話、荒捜 意思男からでごわすね?」
「え? 聞こえてたの? おかしいな、通話は漏れないようにしてたんだけど……?」
健也がスマホを見ながら頭を掻いていると、真奈が健也の袖を引いた。
「健也さん、この人ゴッドマンさんじゃない、雰囲気が全然違います」
「ほぉ、そんな些細な変化もわかるでごわすか? いや、分かるのか小娘?」
口調が変わった。
なんかヤバい感じがする。
咄嗟に真奈が健也の手を引いて無意識に逃げようとした時であった。
「ぐぁ!?」
背後からゴッドマンの巨大な手に頭を鷲掴みにされ、そのまま健也は持ち上げられてしまった。
「健也さん!」
ゴッドマンの腕にしがみついて健也を救出しようとした真奈をゴッドマンは突き飛ばした。
「きゃあ!!」
地面に勢いよく叩き付けられた真奈は気絶してしまった。
「なん……お前は……」
健也は必死に抵抗するが、全く振り解けない。
「茶番はここまでだ。地下の火盧理を無力化したのだろう? なら最早なんの脅威もない。これよりヤソカ・キャッスルハートを断罪する」
不意に健也の頭の中に電流のようなものが流れてくる。
「ぎゃあぁぁあぁあ!!」
激しい激痛に悲鳴を上げる健也に対して、ゴッドマンは淡々と語った。
「ふむ、やはり荒蒔 健也の中に潜んでいたか、いつまで寝ているフリをしてるのだ『マカヤ』。ヤソカに電子複製技術、正式名称『精魂複製技術』をヤソカに与えたのはお前自身だろ? ならば責任はお前が全て取れ」
◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ⚫️ ◯
「う……ここは?」
健也は目を覚ますと、そこは全く見覚えのない場所だった。
目に映るは果てしない荒野、草木は生えておらず、なんの街灯となる物はない、その代わり満天の夜空が綺麗に見える場所であった。
「ふむ、やはり我の占い通り健也しか連れてこれなかったか、あの強情者め」
声がした方を向くと、そこには僧侶のような格好をしたゴッドマンが立っていた。
「あんた、誰なんだ?」
健也の問い掛けにゴッドマンは答える。
「ゴッドマンとは仮の名。我の名は『イニティウム・ゴッドピース』。偽善悪を作った占い師と言えば分かるか? かつてヤソカから聞いたであろう」
そう言えば言っていた。だがあの時は偽善悪の話だけで、全ての始まりである例の占い師の名前は聞いてなかった。
「正直お前に何を話しても無駄か、もうすぐお前は消えるのだからな」
「いやいや、何の話? てかここ本当にどこなの?」
健也の疑問に対して溜息まじりにイニティウムは答えた。
「……ふむ、雑談程度に話しておくか、ここはお前の血に刻まれた場所、そうだなぁ、お前の中に眠ってる男の心象風景とでも呼んでおこうか、そこに我が精神だけの状態となってお前の中に入ったのだ」
「???」
何言ってんだコイツ、みたいな顔をしてる健也にゴッドマンは続けた。
「案ずるな、ようはヤソカの電子複製の応用だと思え、それより今から我はお前の中に居る強情者を叩き起こす作業に取り掛かる」
と、イニティウムがゆっくり近付くと、健也は思わず後退りした。
「何するか知らんが近付くな」
「お前は二歩下がった後に転ぶ」
「は? うぉわ!?」
イニティウムの予言通り、健也は本当に転んだ。地面を確認しても石ころも何もないのに。
そうこうしてる内にイニティウムに間合いを詰められ、イニティウムは健也の頭に指を一本置いた。
「教えてやろう、お前が今日この日まで生き残れたのは全て我のお陰だ。本当なら何度もバッドエンドを迎えていたはずなのに、そうならないように我が今日この日まで誘導してやったのだ」
「なに?」
「ん? まさかここまで生きれたのは全て自分の運と周囲の助けのおかげだと本気で信じてるのか? 哀れよな、お前の人生、お前の物語は全て我が作ってやったのだ。我は占い師だぞ? 未来に起こる悲劇など全て手に取るように分かる。それを回避する為のシナリオをいちいち用意してやったのだ。ありがたく思え」
目の前の男は何を言ってるのだ?
「その証拠として、もしも我が何もしなかったらどうなっていたのか、その本来ありえた筈の未来を見せてやろう。全て見終わった頃、荒蒔 健也はこの世から消滅する。ここまで生かしてやったのだ、もう充分であろう?」
悪寒を感じた健也はゴッドマンの腕を掴もうとする。
「待て、やめろ!」
だが間に合わなかった。
瞬間、健也の中に無数の映像が流れてきた。
今から健也が見るのは、本来有り得た筈のバッドエンドの数々である。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ⚫️ ◯
これは複数の未来の可能性の一つ。
「ここは、組織の基地?」
健也の眼前に広がるのは、かつて枯葉坂の組織にいた頃の基地の廊下であった。
「なんでここに? そうか、俺の記憶から作った幻か」
かなり呑気な事を口にしていると、背後から誰かに口を押さえられて喉に冷たい感触を感じた。
「?」
喉を触ると、大量の生温かい液体が溢れ出ていた。
「が、ぼ?」
口の中まで液体で満たされて、上手く声が出ない健也、そのまま地面に倒れる健也は最後の力を振り絞って背後を振り返ると、そこには血に染まったナイフを手にした霧神の姿があった。
「うぜーんだよアンタ、いつもいつもオレに殺させて自分は手を汚したくないってか? アンタみたいな偽善者要らないんだよ。じゃーなアラマキさん」
高笑いしながら去っていく霧神の姿を見て健也は思った。
――あーそっか、そう言えば俺、組織に居た頃に霧神君に殺されかけたことあったな。そうか、本当ならこうなっていた……のか……。
健也の意識が途絶えた瞬間、次のバッドエンドの映像が健也を襲った。
来週『健也 死す!』デュエルスタンバイ!




