大学時代 〜 電車と子供 〜
日本の電車の中では、静かにしていなくてはいけない。
なんか、そんな雰囲気ありますよね。
だから私も、イヤホンの音漏れとか、おしゃべりとか、過敏に反応してしまうのです。
……なんて、環境とか周りの空気のせいにしてます。単に私の心が狭いだけ。
実際私もそんなだから、マナーの厳しさとか寛容さについてとやかくいうつもりはないです。これから書くのは、ただ、そのときの私の心の反応を、ありのままに、覚えている範囲で文章にしたもの。今、同じことが起こったら、また同じ感情を抱くともかぎらない。それくらい、気まぐれなもの。
***
その日、私は電車の中で騒いでいる子供を見かけたのです。一人だったかな、二人だったかな……とにかく、シートに乗っかって騒いでいたのです。隣には、その子のお母さんとお父さん。
で、お母さんは一応、
「騒がないで、ほら」
と注意していました。
「うるせーなー……」
あ、この感じ悪いの、私です。「うるせーなー」とか心の中で言いながら、眉をしかめていたのです。まったく、なんていやな若者なんでしょうね。
でも、そんな気難しい若者を笑顔にさせる出来事が、目の前で起こりました。まさに奇跡です。それは……
「んもう、まったくう……」
お母さんが根負けして、騒ぐ子供とじゃれ始めたのです。
お父さんは、タブレットか何かをいじっていたかな? それとも読書だったかな? とにかく、お母さんや子供には目もくれずに、自分の時間を過ごしていました。
「あ……」
私は、伊坂幸太郎の『重力ピエロ』という小説を思い出しました。
はたから見たら「大人げない」とか、「適切とはいえない」となるのかもしれないけれど、
そういうのを平気でゆるしちゃう家族。なんか素敵だな、って。
たわむれる母と子。お父さんの無言の優しさ。
向かい側に座る、いやらしい若者(私)は、この微笑ましい光景を眺めながら、にやりにやりと、笑っていたのでありました……とさ。
ちなみに……
満員電車なんかで何かあるとすぐに怒り出しそうな疲れた人たちを見ると、同じく伊坂幸太郎の『グラスホッパー』を思います。




