もさ子の黒歴史1
約半年前、中学3年の冬。
受験も終わって、残すは卒業のみ。
私には目下の悩みがある。
たぶん叶うことの無い初恋と言うものだと思う。
「はぁー」
「うっさい」
「んー」
由美ちゃんは懸賞ハガキを書いている。
デコると良いらしいから、親に頼まれたと言ってたなー。
すごい派手だ…。
「てかさ、もう学校違うの分かったんだからいいじゃん!」
「何が?」
由美ちゃんがデコるのをやめて急に立ち上がった。
いいって何が?
「そのもさ子に自信がないなら、私が変えてあげる!」
積極的だね、由美ちゃん!
どこに行くのかな、由美ちゃん!
嫌な予感しかしないな、由美ちゃん!
誰に連絡してるのかな、由美ちゃん!
連れて行かれたのは、由美ちゃん家でした。
メイク道具を揃えた由美ちゃん姉も待ち構えていた。
「もさ子をやめるって聞いたわ!」
「え、」
「もさ子をやめて綾子になるのよ!」
「え?」
どうしてそうなった?!
「あ、お姉ちゃんのしてる職場用メイクじゃなくてナチュラルね」
由美ちゃんのお姉さんは百貨店のサービスカウンターで働いていて、濃いめのメイクが決まりらしい。
「…あんなケバい中学生ダメよ」
選んでいたファンデーションの色が薄くなった。
グロスもうっすらピンクになった。
「状況は絶望的でも、記憶に残すくらいはできる!」
由美ちゃんがやろうとしていることは分かったけど、もさ子は変わらないよ。
「前髪はどうする?巻いて横に流す感じ?」
「切ると怒りそうだからそれしかないわね」
終わることの無い姉妹の会話に流されつつ、もさ子はイメチェンさせられた。
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