もさ子その25
カフェの話からどうして藤牧君?
私が困っていると、谷野君が謝ってきた。
「すまない、どうも意識してしまう。俺が注文してこよう」
サンドイッチのセットとハーブティを頼んだら、谷野君は注文に向かってしまった。
あの様子だと藤牧君の話は避けた方が良さそうだよね。
窓際の席だったから外を眺めて谷野君が戻ってくるのを待ってよう。下の方はたくさんの人が歩いているのが見える。
あの話から何話せばいいのかなー……。
「待たせたな」
「ううん、ありがとう」
それほど待たずに料理を持って谷野君が戻ってきた。
何を話そうか全然考えてなかったからとりあえずご飯食べちゃおう。
結局、食べ終わっても話さないままだった。
駅ビルを出て、近くの公園に来たけど居づらいし、プレゼント渡して帰ろうかな、谷野君もその方がいいよね。
「あの」
「困らせるつもりはなかった。この前の話の続きをしないか?」
引き止めるように真剣な眼差しで言う谷野君に私も居ずまいを正した。
この前って言うと、帰り道の時かな。でもあの時は続くほど話してない気がする。
「中学の時の話なんだが……」
あの黒歴史!
そうだ、最初に会った時は話さなかったね。
すごい恥ずかしいけど、話してもいいかな。
私は、その時のことを話した。
好きな人がいたこと、その人に彼女がいたこと、頑張って告白しようとしたこと。
「でもね、こんな私が頑張っても何も残らないんじゃないかって思ったら、あの時の格好が恥ずかしくて逃げちゃった」
たぶん、その時に谷野君は見かけたんじゃないかな。
失恋した訳じゃないけど、それからはそんな思いをしたくなくて心に蓋をした感じ?見ない振りをしてた。
だってもさ子な私に見向きする人なんてほとんどいないでしょ。
いないって思ってたけど、田崎君が現れて、谷野君と藤牧君が話しかけてくれて、あの時のあったかい気持ちが戻ってき始めてて困っちゃう。
私が話してる間、谷野君はずっと聞いててくれた。
私の言いたいこと分かってくれたかな?
ていうか、顔赤い?何で?
「あー、いや、そんなに意識されてるとは思っていなかった」
意識してた?無意識のうちに意識してた?
なんかおかしい気がするけど……。
「俺はもさ子な岡沢でも気にしない。少しでも一緒にいて泣き顔にはさせたくない」
そんなこと言われたら顔が赤くなってドキドキだよ!
あ、これが意識してるってこと?
「田崎からは反対されたが、クリスマスプレゼントだ」
谷野君から渡されたのは細長い箱。
田崎君と買いに行ったんだ。やっぱりいい人なんじゃないかな。
開けていいとのことで、中身はネックレスだった。
ハートのモチーフでピンクの石があしらってある。
ネックレスって高いんじゃないの??
「そんなに高いものではないが、大切にしてくれると嬉しい」
高くないんだよね、そう言ってるし。
学校は校則で禁止されてるから休みの日の外出とかで使えるかな。
「ありがとう。じゃあ私からはつまらないものだけど……」
とりあえず持ってきたクッキーの袋を渡しておく。
金額差が……すごく申し訳ない気持ちになる。
「もらえるとは思っていなかった」
中身は手作りでいびつなクッキーだけどね。そんなに感動しないで……。
その場でクッキーをひと口食べた谷野君は美味しいと褒めてくれた。
谷野君も藤牧君も優しいなぁ。
その後も夕方になるまで公園のベンチに座っていろいろ話した。
寒かったけど、自然と繋いでた手は温かかった。
「岡沢……綾、子と呼んでもいいか?」
「え?えー……いいんじゃない、かな」
あれ、なんか近い。近い。
私がドギマギして固まっていると、繋いでない方の手が上がって髪をするりと撫でていった。
「家まで送る」
柔らかく笑った谷野君を見て、私も自然と笑顔になった。
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