もさ子その9
というわけで、スーパーです。
夕方に近いからか、奥様方がお買い物に来てます。
母のメモには、特売の醤油、特売の野菜ジュース、特売のキャベツ…重いものしかない。
弟に行かせるべきだった…!
マジで重い!!
両腕がもげそう!
母はなぜ私に行かせたんだ、きっと「あ、貴志に渡すんだった」とかリビングで言ってるに違いない。
私が顔を真っ赤にして歩いていると、後ろから声がした。
「もさ子さん、重そうだね。手伝おうか?」
クラスメートの男の子でした。
名前が出てこない。
今の状況を見られるのは恥ずかしい。
だって、重いものもって、顔は真っ赤だし、手のひらも真っ赤だし、鼻息荒いし、
頭の中がぐるぐるしてたら、片手が軽くなった。
重い醤油と野菜ジュースの入った方。
「あ、ありがとうござい…ま、す」
「今日は特売日だっけ。うちの母さんもなんか言ってた」
えーっと、すごく気不味い。
普通に話しかけてくるし、並んで歩いてるし……………
とりあえずキャベツを抱え込んでおこう。
「あ、岡沢さんって呼んだ方がいいかな」
「別に、もさ子は自分でも言ってるし、あだ名です」
「うん。じゃあ岡沢さんって呼ぶね」
ニコニコ楽しそうですね。
すんごいフレンドリー!!
どうしよう、何が起こっているの?!
そして名前が分からない!!
半年も同じクラスなのに名前が分からないなんて…由美ちゃんといるせいかな?
「岡沢さんは工作が得意なの?」
「え、最近流行ってるDIY女子ってものです」
「そっか。学園祭の時にすごく上手かったから気になってたんだ。じゃあ道具もいろいろ持ってるんだ」
「あ、あるよっ、今日は新しいサンダー買って…サンダーって分かる?電動のやすりなんだけど」
思ったより話しやすい。
けど、名前はまだ分からない。
DIY談義をしていたら家の近くに来ていた。
「持ってくれてありがとう。うち、そこだから」
「それなら玄関前まで行くよ」
結局玄関前まで送ってもらってしまった。
名前が分からないのはバレてたみたいで、去り際に教えてくれた。
「俺、藤牧柊だから、よろしくね」
くそぅ、藤牧君はジェントルマンだった。
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