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万物が神に定められし世界で芋ジョブが一人歩きしていた  作者: ツヅクリフクロウ
第二章 修行編、究極の肉体美を求めて
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閑話 有らざる者


「ふあー、まあまあの夕食だったね。うん、褒めてやるわっ」

「まあまあ、とおっしゃる割には三回もお代りしてましたよねぇ〜。と言うかなんで家にいるんですかぁ〜、メプラさま〜?」


外面だけがいい外道天使がなにか言ってるけど知らないわ。

ホント、媚びたような口調が相変わらずムカつくわね。

大体、このメープル・スプラウトは全て私の一部みたいなものだから何処にいたって私の勝手よ。


「二百年ほどに住んで初めて知ったぞ。神樹本体から離れられるのだな」


外面だけ無駄にエロい清純悪魔ちゃんもなにか言ってるけど、べ、別にアイツの料理のために根性出したわけじゃないんだからねっ!

後、私だって未だドアにタライとか仕掛けてるアナタのことも理解できないわよ。悪魔族としてのアイデンティティー?何それ聞いたことがない。


「むむむっ、私とローちゃんとリッくんの結婚式には来てくれなかったのにっ」


外面に決して騙されてはいけないプレデーターも何故か悔しがってるけど、当たり前だよこの馬鹿野郎。

アナタ達夫婦を見てると、なんかこう、砂糖が吐き出る以前に得も言えぬ恐怖が湧いてくるんだよ。

あの二人のイケメンと話してる時だって、毎回なんの脈略もなくアナタの惚気話に話題が飛ぶし、いきなり揃って眼から光が消えるから怖いのよ。

アレも結婚生活の闇って言うやつかしら?闇には違いないけど絶対何か違う気がするわ。


怖いといえば、さっきの新人の男女君も怖かったわね。

畑仕事で何があったのか、乳首と股間がぎりぎり隠れる感じに服がボロボロになってて、終始血走った目付きで夕食を作ってたわ。

『しぉくしゅぅううう!!!』って殺気の籠もった怒声を上げながら包丁をまな板に叩きつけるし、何回家から逃げ出そうかと思ったことか。

他の面々も見て見ぬふりしてたけど、あれでどうやってあんな美味しい料理を作れるんだろう。

やっぱりあの子も【農家(辺境の)】に相応わしい謎生物ね。


うん、食後のコーヒー(ミルク砂糖たっぷり)も美味しいわ〜。


現在、バルズーク家のリビングには私とラファエラとカッサンドラとラーニャの四人しかいない。男衆……男達と微妙なのが一人……まどろっこしいわね、筋肉たちは既に夜の部の仕事に出払っている。

我が村の農家の一日は72時間。うん、彼らの話をすると文章が意味不明になるから嫌になるわ。

日が沈んだら魔物の活動も活発になるし、馴れない間は新人くんにはきついルーチンかもしれないわね………


『耕してやんよ、このウジ虫どもがあああ!!ウッラあああ゛!!!』


あら?幻聴かしら?

目の前も三人が手を取り合って震えてるけど、不思議だね。


「それで?相談したいことがあるって言ったけど、何?」


決して恐怖を誤魔化すためではないけど、帰りの際ここに呼び止められた理由を聞いてみる事にした。


男どもは見た目通りの脳筋だ。ロドリゲツとかはメガネでインテリ風に見えるけどそれもフェイク、伊達眼鏡である。元は近眼だったけど修行時代に内眼筋を鍛えて治したらしい。

無駄に懐が深く、大抵の問題は腕力で片付けようとする傾向にあるし、実際大抵の事はなぜかそれで片付いてしまう。

でも、それに任せっきりにするのを良しとするなら、そもそも彼女達は彼らと寄り添う道を選ばなかっただろう。

だから、度々こうして集まって助言を求められる時がある。

これでも私、高位存在だし?偉いんだからね!人間に解らないことも解るんだからね!


「はい、ヘレンちゃんについてです。今朝、何かを把握してるような発言をしておられましたよね?私たちはそれを知りたいのです」

「あー、あのちっちゃい子のことか」


ヘレン・なんちゃら・かんちゃら。かんちゃら王国から新人くんが攫って来たお姫様、だっけ?

もう二階に上がって寝てるけど、三人が何回もそれを確認してから下りてきたのはこの話をするためだったのね。

全力の隠蔽魔術とか使うから、てっきり何処かの大国に夜襲でも掛けるのかと思ったじゃない。


「神樹様も気付いたであろうが、あの子の気配操作は常軌を逸してる。我輩等もそれに幾度となく欺かれてしもうた。バルズーク達を含めた全員をじゃぞ。あり得ん。何者、否、何をされたのだ(・・・・・・・)、あの子は」

「そこまで分かってるのなら私も教えられる事は少ないわよ。それこそ、あのマッドサイエンティストの本領じゃない?」


この世界は、神、つまり私の創造主が定めたルールに基づいて成り立っている。

完璧から程遠く、完成すらしてなく、然し最低限の土台は築かれた理りだ。

そして、【農家(辺境の)】はさて置き、そのルールの上ではこの三人が到達した境地は正に最高峰、並び立つ事は出来るが超えることなど原理的に不可能と言っても良い。


世界のルールその物を破らない限りは。


それは悪魔の所業。狂気じみた外方。運と偶然が介入する余地など一片もなく、明確な意図がない限り起こり得ない冒涜(エラー)だ。


「私から言えることは一つしかないわ。ヘレンちゃんのことは彼、ハルキに任せなさい。彼女を救える人間は、恐らくこの世界では彼一人しか居ないよ」

「ハルキ君が?いえ、確かにヘレンちゃんが隠れちゃった時には真っ先に見つけてましたし、隠密の影響を受けてなかったみたいですけど……」

「それより〜、『救う』ってどういうことですか〜?」

「……皆んな、ちょっと誤解してるようね。あの子は身を隠すために気配操作を使用してるんじゃない。最初からそんな事する必要ない。他人の前で『姿を現す』ために使ってるのよ」

「………おい、ちょっと待て、まさか」

「そう、アナタ達が『隠れてる』とか『姿が見えない』と思ってるのは彼女の『ありのまま』よ」


部屋に降りた沈黙の中で、だれかが息を飲む硬い音がはっきりと聞こえた。


自分は、神に創造された存在だ。当然人間ではないし、人間として生きたこともない。

けれど、千年余り人や他の生物の営みを見続ければ分かってくる事柄もある。

子供とは、親や大人から色々な物を受け取りながら育つものだ。それが愛情であれ悪意であれ、そこから彼らは始まるのだ。

なら、誰からも認識されない彼女は、何者からも手を差し伸べられない彼女は、自分から請わないと何も与えられない彼女には世界はどう映ったのか。

遠い異世界から来た少年がお節介を焼くまで何を思って生きてきたのか。


「『ヘレンちゃんの世界』に初めて入って来れたのは、ハルくんだったのですね……」


ポツリと、沈んだ声でそう言ったのはラファエラだった。何時もの陽気な雰囲気はない。

カッサンドラも苦い顔で黙り込んで、ラーニャなんて涙を浮かべていた。


そんな彼女達を見てると………なんかムカムカするわね。


「何よ、もう!年増が揃いも揃ってしおらしくしちゃって、似合わないのよ! あの新人君を見習いなさいよ。今だって文字通り血反吐を吐きながらお姫様のために頑張ってるのに、年長者が落ち込んでてどうするのよ!」

「「「誰が年増ですか(じゃ)!!」」」

「そこ!?」


あれ、気にするのそこなの!?

もう百年単位で生きてるのにまだそんなこと気にするの?


「なんの話ですか〜?私は〜永遠のティーンで〜す〜」

「愛に年の差なんて関係ないんですよ!むしろあった方が燃えます!」

「そもそも一番長生きしてる神樹様だけには言われたくないぞ」


訳の分からない事と分かりたくもない事を堂々とシャウトされてげんなりする。

後、私、寿命をログラムされてないから年なんて関係ないんだけど、それを言ったら益々怒るのかしら。謎だわ。

って言うか、さっきまでの話と全然関係なくない?

まあ、元気になったみたいだから良いんだけど………べっ、別に励まそうなんてした訳じゃ、ないんだからねっ!


「じゃが、これしきで挫けておられんのも事実じゃな。あの二人はまだ我輩等の庇護が必要じゃ」

「あは、そうですよね。私だって、ヘレンちゃんの先生なんだから!」

「……ヘレンちゃんはともかく、ハルくんは別に放置しても大丈夫なんじゃないですか〜?」

「「「………」」」


ねえ、何でそこで三人とも無言なのかな?


「と言うか、確かにヘレンちゃんは特殊だけどあのハルキは更にとんでもないわよ?そこん所は気にならないの?」

「神樹様、自分が言うのもなんですが、世の中には知らない方がいい事と知らない方が幸せな事と知った所でどうにもならない闇が存在するのです」

「闇って何よ」

「深淵を除けば深淵に除き返される、正にそれです。私たちは、己の心の平穏の為にもその暗がりには近寄らないと決めたのです」


再びキャラを捨てて真顔で語るラファエラに思わず、ああ、うん、としか答えられなかった。

何だろう、言葉だけならこちらの認識と概ね内容が合ってるのに根本的なニュアンスが違う気がするんだけど。


はあ、創造主様はどうしてるのかしら。

こいつらに散々怪しい農薬や怪しい肥やしを使われて、畑だと言い張るダンジョンで怪しい生物を育ててるせいか、もう大分昔に主従の(リンク)が切れて独立しちゃったけど、そんなの無くてもハルキの事を知れば卒倒する姿が目に見えるわ。

【農家(辺境の)】は千年前の黙示録で何時の間にか発生して、以来なぜか神権監理(システム)の修正を受け付けない珍妙な職業。

それを寄りにも寄って【⬛⬛⬛】が継いだのだから。

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