第31.1話 暴露、爆発
「では、これより第二回バルズーク家家族会議を始めるとしよう。皆の者傾聴せよ」
「ハルキ、トイレ行っていい?」
「ぴ〜よ」
昨日の『第一回バルズーク家家族会議』でロクな結果にならなかったヘレンは、それを聞いて真っ先にベタな口実で逃げようとする。
だが、その懸念は必要ないはずだ。今回の集まりは、多分俺の急成長に関する物だからだ。
先程のトL◯VEルの後株の様に引っこ抜かれた俺は、ちょっとバルズークさんをしばき倒してからザイズの合った服に着替えて、朝飯を作って皆んなで食べた。
皆んなで、食べたんだ………うん、外、雨降ってるなぁ。
メープル・スプラウトの空は神樹の紅葉で覆い隠されてる筈なのに、不思議だなぁ。
いや、話が進まないので現実逃避はよそう。ともかく、それぞれが食べ終わったタイミングでカッサンドラさんに呼び留められて、現在に至る。
食卓に参列するメンバーは、ヘレンにルナちゃん、カッサンドラさんにラファエラさん、たんこぶが目立つバルズークさん、永久咀嚼してるアリアちゃん。そして———
「あのう、家族会議って、私たちも参加していいの?あっ、でも、仲間はずれなんてイヤだなあ」
「そうだぜ!『ラーニャを愛でる会議』に改名しろよコラァ!」
「犬に同意する訳ではありませんが、右も同じく」
朝飯をたかりに来た、女主人公に下僕二人。
こいつらは………はあ。
朝から本当に………はあ。
お陰でカッサンドラさんの圧倒的な母性によって保養された元気を根刮ぎ持って行かれちまった。
もう、次行くぞ次!毎度ツッコムとキリがねぇよ。
「う〜ん、いた方が良いんじゃないですか〜?ロッツ君とリッキー君の見立ても欲しいですし〜」
「いいの?わーい!意見よろしくね、ローちゃん、リッくん」
「任せときな!」
「姫の仰せのままに」
「話がまとまった様じゃの。なら、本日の議題だが……口にする必要もあるまい。おい、ちょっと其処に立て覗き魔」
カッサンドラさんが棘を含んだ声で俺にそう命令した。
だが、全然効果的じゃない。だって、耳まで顔を真っ赤にして明後日の方向を向いてるんだもの。
思わず言葉攻めにしたくなったが、自分の体の変化の方が気になったので従順に席を立って、皆が良く見える位置に移動することにした。
すると、突然俺に集まる全員分の深刻な視線。何故かアリアちゃんまでこっち見てる。
ど、どうしたんだ、いきなり。
カッサンドラさんも先と打って変わって難しい顔で観察し来るので、不意に固唾を呑んでしまう。
それからたっぷり1分ほど経過したところで、示し合わせたかの様にユニゾンに結論が出された。
「「「「「「小さい(べ)(のじゃ)(です〜)(ね)(ですね)(な)」」」」」」
だった。
見事に語尾がばらついてんな。
………え?どういう事?
「ハルくん小さいです〜。まあ、元からですけど〜」
「うーん、確かに普通より小さいね」
「じゃが、魔力は確かに『覚醒』した【農家(辺境の)】の物じゃ」
「雰囲気も覚醒者のものですが……何か可笑しなのが混じってる様な」
「なんか臭うな」
「ハルキ変だべ」
「ちょちょちょちょっ、待てよ思らぁ!!?」
色々と感想と推論を交換し始めるテーブルに、俺は慌てて割り込んだ。
そんなの納得いくか!!
「小さいだと?俺が?前の俺じゃなくて、今の俺が!?目ぇ大丈夫か?180センチだぞ?ジャンプしたら太陽に頭焼かれる身長だぞ!」(焼かれません)
「………178.8センチです〜。誤魔化すのはメッ、です〜」
「二百ほど年齢サバ読んでるテメェに言われたくねぇよ!!」
そうだ!原因は知らねぇが、やっと克服できたコンプレックスなんだ!
それは誰にも否定させねぇ!!
そう声を荒げる俺を宥めに入ったのは、例の如くカッサンドラさんだった。
「落ち着け、これは世間一般の意味では無い。農家(辺境の)としてじゃ。しかし、うーむ……農家(辺境の)の絶対数の少なさに加えて汝は異世界人じゃからの、これはどう判断すべきか。ロドリゲツとリッチャールドが覚醒した時は、明らかにもっと伸びてた筈じゃし、バルズークもそれが”普通”じゃと言っとったし」
「二人もいきなり急成長したことがあるのか?俺とどう違うってんだ」
「今の汝じゃあ、1メートル程足りん」
「人間辞めてるだろ、それ?!」
「そりゃあ、最終目標が……」
そこで、嫁グループは総じてチラッと旦那グループに目配せする。
すると、三人とも一斉に立ち上がりながら半裸になって、並んでポージングし出した。
バルズークさんは、ダブルバイセップス。
リッチャールドさんは、サイドリラックス(右)。
ロドリゲッツさんも、サイドリラックス(左)。
もりもりもりもりもりムッキーン!!(X3)(巨大化X2)
即席のギリシャ彫刻ならぬグロテスク彫刻が出来上がった。
……………。
俺は、口元を手で覆って俯きながら、思い詰めた面持ちで座った。
「………先生、どうにか助かる術は無いのでしょうか?」
「……取り敢えず、汝が何故急成長を遂げた理由を説明しよう」
俺の不安には答えず、難病を患った病人を誤魔化す医者の様にカッサンドラさんは説明してくれた。
大方の内容は、以下の様になる。
まず、俺こと森春樹、ピチピチ十五歳のホヤホヤ日本人。
そんな俺が異世界なんてエキゾチックな場所に飛ばされて、身体になんの影響も受けないかと問われたら、答えは勿論受ける、である。
地球でも南米や東南アジアを旅行する際、予防接種とかしないといけないんだ。常識的と言えば常識的だが、俺に言わせてもらえば、F@CK YOU、だ。
散々FANTASYに苦しめられてる身として、そこは異世界補正でなんとかしてもらいたい所である。
まあ?その影響とやらが細菌云々ではなく、発現した【ステータス】や魔力による肉体の最適化と言う、なかなかFANTASYな代物なので、今回は片目を瞑るとしよう。
加えて、最適化と言っても表に出るのは髪や肌の変色くらいの変化らしい。
因みに、これには俺以外の異世界人、つまりクラスメートの奴らも当て嵌まるそうだ。
次に、名前から手抜き感が滴る謎の超絶職業、【農家(辺境の)】。
以前もこの曲者職業、というか下手物職業には、保有者を例外なく3メートル半の凶戦士に変貌させる呪いが憑いてる事は聞かされていた。
知っていたが………まさか昨日の今日で起こる現象だったとは。
この『覚醒』とか『開花』とか呼ばれる急成長で、レベルも関係なく身体能力と魔力が劇的に向上するらしい。
つまり、二つの原因を掛け合わすことで今の俺が出来上がる………のか?
うーん、何か。
こう、記憶の隅にある何かが引っかかるな。
それがかなり致命的かつ重大な何かである予感がするんだが、厄介な事に具体的に何だか確然としない。
その上、皆さんのお顔も一向に晴れないままだ。
「えっと、どうせ成長ホルモンに嫌われてる俺のことだし、深く考えなくていいんじゃねぇか?」
「ダメだよ!」
空気を和らげる為に冗談っぽく言って見たが、キッパリとラーニャさんに咎められる。
「ハルキくん、覚えておいて。万物万象は魔力から生まれる物で、本っ当〜になんでもアリなんだよ。いい方向にも、そして勿論悪い方向にも。だから、魔力が関わる未知の現象って絶対軽視しちゃダメなんだよ!」
「ラーニャの言う通りじゃ。そもそも、汝が覚醒したと言う事実さえ定かでは無い。修行の四日目なんて幾ら何でも早過ぎる。普通は一月は要る」
「解ったが……じゃあどうすんだよ?縮めと言われたら泣くぜ?」
「ひとまず〜、バルちゃんとタイマンしてくださ〜い」
その言葉を聞き、意図せず全力のダブルバイセップス状態のバルズークさんと目が合ってしまった。
「かかって来いべ(ムキムキ、ビキキッ)」
瞬間、俺は脊髄反射で出口の方へ逃げた。
しかし気づけば、アリアちゃんに首根っこを咥えられながら元の場所にいた。
ノォオオオオオオオオ!?!?
「なんでダァ!?」
「力の上昇具合を見極めるためじゃ」
「死ぬだろうが!!」
「大丈夫ですよ〜。ミンチになったら〜ちゃんと治しますよ〜」
「ハッ、バルズーク先輩とハルキのガチンコか!こりゃ、見ものだな!」
「期待の新人ですしね」
こちらの抗議をよそに、皆なぜか物凄く乗り気になってゾロゾロと裏庭に出る。雨が降ってるが御構い無しだ。
続いて、子猫の様にアリアちゃんに運ばれる自分。
前々から思ってたんだけどさ、ここの人達って俺を殺そうとしてませんかね?
修行でなかなかくたばらないから痺れを切らして、遂に最終兵器を投入してませんかね!?
ああ、でも別に良いですよ?こう言う鬼畜極りないデスゲームには慣れてますから………元中でよく強制参加させられましたからっ!
赤鬼:「次は0時だべ」




