第30.2話 主人公のいつもと違う豹変
「フゥワハハハハ!!神々は死に絶え、遂にワガハイの時代がやって来たのだぁ!!フゥワハハハハ!!」
「………おー」
神とは別に、遠くの誰かがくたばった気がしたが、まあ気のせいだろう。
俺は今、歓喜と狂喜の絶頂に立っていた。
あまりの嬉しさに奇妙な奇声を上げてる程だ。
つーかヘレンよ、朝っぱらから叩き起こしたのは悪いと思ってるけど少しは付き合えよ。せっかく肩車して、この高みからの美しき光景を魅せてやってるのにさ。
成長ホルモン大如来様の冷遇を受けて早十五年。
時には祈り、時には呪い。
時には牛乳をガブ飲みし、時には一日中鉄棒にぶら下がり。
時にはショタコンのお姉さん達から逃げ回り。
それでも超えられなかった標高150センチ。
それが何故かガラスの雨に打たれて世が明けたら、冷蔵庫の全てを展望できる160センチ地点を素通りして、食器棚のてっぺんまで手が届くとされる170センチのベースキャンプまで乗り越えていたのだ。
やべぇ、これ、ひょっとして大気圏ブチ抜いていやしないか?………ないな。
これから外出する時、熱狂的な登山家に警戒した方がいいか?………ないな。
とにかく、これで踏み台とは無縁の日常生活を送れそうだ。ざまあみろ成長ホルモン!!
さて、そう言う事だから早速ワガハイ、おっと間違えた、俺の新しい肉体の点検をしようじゃないか。
まずは四肢から。
おお……っ!長い!長いぞっ!手足が長いぞっ!!
元から俺は(全身と比べて)長かったので、その比率を保ったまま拡大した感じだ。
フゥワハハハハ!!見よ、この腕を!
何処までも伸びるぅ!何処までも届くぅ!まるで某ゴム人間の様ではないか!!
見よ、この長足!歩幅が広い!人類にとっても俺にとっても大きな一歩を踏める!
そして何より、この、筋・肉・美っ!!
初な奴らめ!この四日間散々共に戦ったと言うのに、今頃姿を見せるか!だが美しいので許す!
さて、興奮し過ぎて正直頭が可笑しくなりそうだが、一旦心を落ち着かせてメインディッシュと行こうか。
即ち…………身長だ。
ドキドキしながら、鉛筆を持ってリビングの壁際に立つ。
本当は、生コンクリに型を取ってハリウッド・ウォーク・オブ・フェーム見たいに飾りたい所存だが、残念ながら他人の家なのでそれはしない。
癖で爪先立ちになりそうなのをグッと堪えで印を付ける。皆んなもやった事あるよな?
さて、目測になるがこれは大体………
『OH YEAH!
鑑定結果:235cm』
「んな、アホなっ!!」
何だ、そのぶっ飛んだ数値は!そんなの頭と人工衛星が衝突事故を起こすレベルじゃねぇか!!(そんな訳ありません)
「どっ、どう言う事だ!?まさか知らない内に猫型ロボットにライトでも当てられたのか?それとも変なもの食った?いや、ここ最近変なものしか食ってねぇけど……………あ」
ヘレン、肩車したままだった。
…………あ、あはははは。…………こほん、ちょっと失礼。
ヘレンを下ろして再度測定。
『RETRY!
鑑定結果:178.8cm』
ヘレンを担ぎ直しながら俺は思った………つまり、四捨五入して180cmって事だな!
『NONONO
鑑定結果:いえ、178.8cmでゴダんす』
黙れい、細かい奴め!靴を履けばそんなの関係ねーんだよ!
そうやって大方の確認を終えて、大いに満足した俺だったが、突如強烈な嫉妬の眼差しを受けた。
反射的に振り返ると、リビングの入り口には燃える様な赤髪に燃える様な赤髭に燃える様な目付きで俺を睨む三メートル半の筋肉生命体、バルズークさんが立っていた。
まさか……身長が伸びたから、不法侵入者とでも思われてるのか?
だったら不味いぞ?いくら【異領域】で筋トレしたとはいえ、俺がこの人とバトルして生き残れる自信が全くない。
は、早く誤解を———
「羨ましいべ」
「へ?」
と、思ったが、訳の解らん物言いに思考がと切れる。
「ヘレンちゃんに肩車するなんて、羨ましいべえええぇぇぇ!!」
「あんた、それまだ引きずってたの!?」
初めて会った時、顔面凶器と人見知りのせいでヘレンに肩車を断られてたが、諦めてなかったんだ!?
鬼も泣くツラしてどんだけ子煩悩なんだよ、あんた!?
「うおおおおお!!」
「ちょ、まっ」
バルズークさんは、雄叫びを上げながら凄まじい速度で接近して俺の両足を掴んだ。
全く反応できなかった!デケェくせになんつー速さだ!
ん?って、足の間に頭を突っ込んで何を………まさか!?
「かたぐるまあああ!」
「それ俺にやってもしょうがねぇだろぉおおお!?」
アレか?間接キスならぬ間接肩車?何じゃそりゃ?
いや、呆けてる場合じゃねぇ!
慌ててヘレンをソファーの方向に緊急パージさせる。
ふわりとクッションに安全着地したのを見て一安心。……すげーな、これだけ騒いでるのにまだ寝てるぞ、あいつ。
で、ここで後の為に算数の問題だ。昨日の俺と今日の俺、バルズークさんに肩車されてどちらが天井にぶち当たるでしょう?
答えは………
ゴッ、バキャッ
「………今日の俺です、くそったれ」
「きゃっ!?な、何じゃ!?」
「あれ〜?ハルくん、何してるのですか〜?」
「知らねぇよ。……まあ、とりあえずお早う、ラファエラさん、カッサンドラさん」
成る程、どうやらリビングの上は丁度夫婦の寝室だった見たいだ。
ああ、想像通り、テンプレよろしくそこの床から首を生やしてる所だよ。全く。
一言付言させてもらえば、この家はバルズークさんの様な巨人が住む為にゴツく作られてるので、床板一枚で二階を拝む事は出来ない筈なんだがな。どんだけ勢いつけたんだ、あの筋肉怪人は。垂直跳びか。
さてと、自力で降りれない訳じゃねぇが……ふむ。
………ふむふむ。
………ふむふむふむ。
………ふむふむふむふむ……オゥ・マイ・ガッ。
「全く、今朝はやけに騒がしいと思えば、何をやっとるんじゃ」
「お陰で起こされちゃいましたよ〜。って、ハルくん、肩幅広くなってませんか〜?」
「ああ、それについて聞きたい事があるんだが、先ずはコレ何とかしてくれよ。家壊したくねぇしさ」
「ああ、ちと待っとれ……」
「いや〜、急がなくて良いぜ〜?慎重に〜、安全重視でな〜?出来たらもっとこう、前屈みに」
「? 何を言っておるのじゃ、汝。らしくもない」
そう訝しみながら、堂々と下着姿で目の前に立つカッサンドラさん。そして、笑顔のままさりげなく自分だけシーツに隠れる同士ラファエラ。
紫色のレースブラに包まれたKカップのチョコ巨乳は、まるで強風に晒された超高層ビルの様に何もしなくてもゆったりと揺れて、俺はただその振動数をふむふむ数えるのに必死だった。
その後俺は、自分のあられもない格好に気付いたカッサンドラさんの慎重なかかと落としによって、一階の方の床に埋まる事のなるのだった。
一年生になったら♪一年生になったら♪
ブクマ100件欲しいな♪
森:「え!?何この歌!?」




