第22話 三日目(2) 元いじめられっ子は神にいじめられる
チョロ悪魔:「ふむ、さっきぶりじゃの。では、本日2話目じゃ。内容的には問題ないが、三日目(1)を未だ読んでないのならくれぐれも読むように」
気が付いたら台所でカレーを作ってた。
「なんでやねん」
勿論すかさずこの意味不明な状況にツッコんだ。
いや、成り行きは大方想像できるがな。また“オートパイロット”が起動したんだろう。
あのハードを通り越してマッドな訓練を始めてから(今日でまだ二日目だが)しょっちゅう自分を見失う事がある。よくはないが、諦めよう。
でもさ、何でカレー?
時間は昼だし、修行から生還して昼食を作ってたんだろうけど………何でカレー?
確かに、ライス、うどん、パン、スパゲッティー、そば、豆腐、一捻りしただけで数多な品に変貌する、忙しい時に最も頼りになる万能料理だ。が、肝心のルーの元がない。
必然的にバルズーク家のパンドラの倉庫を網羅して地球と似た香辛料を探し出す作業から始めなきゃいけないが………どうして、そんなしちめんどくせぇ事してるんだろう、俺。
数秒、煮え立つ混濁液を眺めながら自問に浸ったが、まあいいかと観念して鍋から視線を外した。
すると、直ぐ隣に床でorzポーズになってる角を生やした濃色美女の姿が目に入る。
密室に意識のなかった自分と死体(死んでない)が一体。ふむ。
「か、カッサンドラさん!!どうした!ちくしょう、誰にやられたんだ!!」
一先ず、白を切ることにする。
切羽詰まった声にピクリと反応したカッサンドラさんがノロノロと立ち上がった。
暫し俯いていたが、やがて顔を上げて哀愁溢れる自嘲じみた表情を浮かべた。
どうしたんだ?
「ハルキよ、汝………バルズークの嫁になる気はないか?」
「………解った、致命傷だな。頭が致命傷なんだな。今すぐラファエラさんを呼びに行くよ」
「ふふふ、吾輩は正気じゃよ。汝のそのカレーっと言う品を食して………悟ったのじゃ、吾輩が一生厨房に立つ資格を得られぬ真実を。じゃが、腐っても吾輩はバルズークの正妻じゃ。夫に美味い飯を食わせる義務があるのじゃ」
「カレー一つでどんだけ心折られてんだ、あんた!!?」
え!?なに!?
ちょっと手の込んだ料理作った途端、何このリアクション!?なんか、『お前があいつを幸せにしてくれ。俺には………その資格がない』みてぇなドラマチックな感じになっちゃってるんですけど!??
カッサンドラさん、そこまで料理できなかったの!?
俺は、試しに今作ったカレーを味見してみた。
………………うんめぇ。
口内で弾け飛ぶ無数のスパイスの風味。一見何の調律もないそれらは、味わえば味わうほど色取り取りなコンビネーションを生み出し、無限大に広がる味の星空を幻視させる。
続いて底を見せない豊潤なコクと旨味による慈悲溢れた抱擁。
それは宇宙、正に誕生と終焉の全てがそこにあった。
おう、流石異世界の食材、食いもんでこんなに詩的になれるなんて料理漫画限定の話だと思ってたわ。
無意識にヘレンの事も考えたらしくちゃんと甘口だ。うん、グッジョブ俺。
でも、ここまでしたのならもう一押し欲しいところだな。
そう考えながら、調理台に掻き集められてたシードやリーフを嗅ぎ分けて適当な奴を加えてみた。
ビカァァアアアアアアアアァァァァァァ
…………………鍋が超光ったんですが。
『パラパッパラパーっ
鑑定結果:
【超次元料理=森羅万象】:
食材、調味料、調理法の聖なる三原則。その無量大数の如き接続の果て、終に導き出された一つの真理。至った者よ、汝に食の神の祝福あれ。』
「もうカレーの解説でも何でもなくなってるんですが!!?」
『カレー』の『カ』の字もねぇじゃねぇか!
何をしたか知らんが兎に角やってしまった感に冷や汗を流してると、横からカッサンドラさんが神妙な面持ちでカレーだった何かの味を見た。
「ぐふぅっ」
満面の笑みで吐血しながらぶっ倒れやがった。
やめて。毒殺シーンに見えるからやめて、お願い。
暫くの間思考停止に堕ちかけたが、最終的にはファンタジーだからと無理矢理納得した。
ファンタジー、うん、実に都合の良い言葉だ。これからも多用しよう。
現在進行形で側にいたファンタジーが死に掛けてるわけだが、そんなの無視無視。
さて、ライスは作ってなかったので米でも研ぐか。
シャー、じゃぶじゃぶ、ジャー
シャー、じゃぶじゃぶ、ジャー
………うん、何だか、地球でやってた事と何も変わらんな。逆に落ち着けたわ。
「そう言えば、今更だが普通に蛇口とかコンロとかあるんだな。トイレもナチュラルに水洗式だったし、魔具ってやつか?この世界、意外と生活水準高いんだな」
実は、初日から不思議に思ってたのだが周りの馬鹿共がも〜っと不思議過ぎて保留にしてた事だ。
勝手に流行りのド○クエ風の世界だと決め付けてたけど、よくよく考えたら俺、まだヘクサドラゴンの城内とここしか見てないんだよな。魔法とかある訳だし、技術的に進歩してたとしても可笑しくないのかも。
地球と違う歴史を辿った魔法文明に勝手に感心してると、カッサンドラさんから訂正が入った。床で寝たまま。
「それは勘違いじゃー」
「勘違い?ああ、やっぱりこの村が変なのか」
「それもそうじゃがなー。こんな日常生活の為だけに使う魔具ぅー、貴族しか所有できん贅沢品じゃからな。じゃが、それ以前に作成者によれば、これらは従来の魔具とは異なるらしい」
おっ、自慢話が回ってきて少し自信を取り戻せたのかな?話し方が引き締まってきた。ゴロンと寝たままだが。
「魔具じゃない?」
「ああ。まあ、生み出す結果は同じじゃから、吾輩としては些細な違いじゃがの。あのからくり女王曰く、魔具は文字道通り魔力を用いて動く道具、対してこれらは使用者の魔力を必要としない様に設計されておるらしい」
「へえ、なんか分からんが凄そうだな。人からの魔力が要らないって、かなり改革的じゃねーの?」
「いや?魔力を魔具に込めるくらいなら童にでも出来るし、この程度の効力なら使用量も微々たる物じゃ。使用者からでは無いってだけで、結局魔石と言う高価な鉱石から魔力を抽出する事じゃし、ハッキリ言って不経済で蛇足な性能じゃよ」
「は?じゃあ、何でそんなもん使ってるんだよ」
「仕方無かろう。吾輩とラファエラ等は良いが、【農家(辺境の)】は如何なる形の魔術も使えんのじゃから」
「はーん」
…
……
………
……………
………………え゛?
なんか、たった今、『サンタさんは実在しないよ』と同じくらい夢を壊す無情で非情な真実を告げられた気がしたが…………いやいやいや、聞き間違えだよな!きっと!
「農家(辺境の)は魔術を扱えん。適性が低いとかではなく、皆無なのじゃ。道具を使おうが研鑽を積もうが無理な物は無理じゃ」
「ぐふぅっ」
俺は、カッサンドラさんの横で仲良くぶっ倒れた 。
「もうちょっと………オブラートに、包めよ……バカ野郎」
「いやいや、決して料理しか取り柄のない無能めざまあみろ、とか思っておらんよ?」
「いやいや、今完っ全にこっちを見て言いやがったろ!?」
ひょっとしなくても根に持ってんの!?
その執念、もっと料理に注いだらどうなんだ!
「あれ?でも、おかしくね?俺、身体強化ちゃんと使えてたよね?」
「あー、身体強化魔術はちょっと毛色の違う魔術じゃからのう。魔力を使うが術式などないし……いや、厳密には己が肉体を術式にしてるのか?兎に角、アレはどちらかと言うと武術に偏るのじゃ」
「おい、まさか料理の当てつけに適当な事言ってんじゃねぇだろうな?」
「違う違う。ただ、この類の説明は汝が一通り力を付けてからするつもりだったのだが…」
そう前置きしながらカッサンドラさんはゴロンと寝返りを打って俺と向き直った。
いつも通り、黒を基準にしたドレスを着てるので非常にセクシーです。
お陰で溜飲は下がった。溜飲は、な。
「先ず、この世界には物理現象と異なる神秘の力が存在する事はもう知っておるな。汝の世界には無かったと言ってたが」
「ああ、だから俺、ずーっと楽しみにしてたんだがな」
「【魔術】以外にも【呪術】、【精霊術】、【龍術】、【天術】、【仙術】などなど数えてたら切りが無い程じゃ。どの種族も多少は扱える術もあれば、種族限定の固有の物もある。されど、それら全てに通底する根底の要素が三つあるのじゃ。【魔力】と【術式】と【ギフト】じゃ」
「うわぁ、なんか、話の流れからすれば【ギフト】か【術式】とやらに問題でもあるとか?【魔力】は普通に使えてることだし」
因みに、今朝より更に増えてます。
「うむ、察しが良いの。【術式】とは、詠唱やら儀式やら、後、魔具に刻まれた魔術回路の事を指すのじゃが、【農家(辺境の)】は己の魔力をどの形の術式にも接続させる能力に欠けておるのじゃ。よって、魔術は発動しない、魔術系統の【ギフト】も得られない。唯一使えるのは魔力運用のみで使用できる、身体強化と言う事じゃ」
「マジかよ」
つーか、農家(辺境の)って【職業】だよな?文脈からだと、もう人間とは別の生物にカテゴライズされてる気がするんだが。
でも、そうかあ、魔術使えないのかあ。
俺も、折原たちや柊の様にかっちょいいギフト欲しかったなあ、【無詠唱】とか。
…………ん?ギフト?なんか引っ掛かるぞ。
『デレッデッデ〜
鑑定結果:
《森春樹のステータス》(略式)
【ギフト】:<滅星拳法> <魔法> <男の娘> <豊穣の男の娘> <万象鑑定> <全言語理解>』
「それだああアアァァァ!!!」
「うわっ!なんじゃ、藪から棒に叫びおって」
思い出したくない物も思い出させられたが、とにかく一縷の望みが見えたぜ!
「カッサンドラさん!あったよ!そう言えば、俺持ってたんだ!」
「な、何をじゃ?」
「ギフトだよ!魔術系統のギフト!」
「……はぁああ!!?」
一瞬ポカンとなってからそっ頓狂な声を上げるカッサンドラさん。信じられんと言った顔だ。
「う、汝、それは誠か!?そんなの前代未聞じゃぞ!!?魔術の使える農家(辺境の)って、なんじゃその最強生物!?」
「ああ!説明があまりにもふざけてたんで忘れてたが、確かにステータスに乗ってる。<魔法>って言うギフト!」
「…………………ぁぁ」
あ、あり?
なんか、一気に物凄くかわいそうなやつを見てる表情をなさってますけど………どして?
だって、これで魔法使えるんですよね!俺も、ちゅどーん出来るんですよね!先生!
「あの、じゃな、どうやらハルキは【魔術】と【魔法】を同一の物と捉えてるそうじゃが、実は違うのじゃ」
「え?そうなの?」
「まあ、魔術を扱う者を魔法使いと呼ぶ一般人もおるし、語彙的には大差ないのじゃがな。古の伝承によると、魔術は人の神秘、魔法は神が振りかざす御力と残されとる」
「いきなり神様!?チートじゃん!主人公最強じゃん!ヤッホーい!」
「そして、世紀に一人二人、<魔法>と言うギフトを持って生まれる者がおるそうなのじゃが……其奴らは、例外なく魔法と思わしき力を発現しなかったと聞く」
「ORE TUEEE………は?なんで?」
「そりゃあ、汝。人の身で神の御技を使える筈が無かろうて」
「…………」
「後、<魔法>のギフトを宿した為か、その者らは【農家(辺境の)】でないにも関わらず生涯普通の魔術も使えなかったらしい。正に、神の過ちと言うやつじゃな」
「…………」
「ハルキ?」
「もう嫌だ!!ボクおうちに帰る!みんなボクをいじめるんだあああぁぁ!!」
くっそおおおぉぉ!!何だよ、なんで何処もかしこもFANTASYなのにそこだけ常識的なんだよおおぉぉ!
いいじゃん、神でいいじゃん!今時、超ヤサイ人もゴッドしてんのに俺だけハブられるなんてオカシイじゃん!?
ブルーやらブラックやら、界○拳と合わせ技やらでもう訳が分かんねぇんだよおぉ!!
俺は、神とやらに最上級の抗議をするべく手足をジタバタさせた。
「まあまあ。確かに魔術を使えんのは色々不便じゃし、それを知られたら難癖付けて来る阿呆共もおるじゃろうが、ハルキが今やってる修行で目指すのはバルズークの様な豪傑じゃ。吾輩の旦那様を見てみい、最上級の魔術も紙切れの如く打ち破るぞ、あれは。彼奴に背を任せながら戦場を馳せた時は、もう……えへへへ」
「あのさ、慰めるか惚気るか、どっちか一つにしてくんない?」
手を頬に当てていやんいやんするカッサンドラさんを放って天井を見つめる。
はー、結局魔術使えねぇのか、ちくしょー。
今頃、折原と東堂と海老名の奴ら、思いっきり楽しんでるんだろうなー。あいつら、ヤバそうなギフト持ってたし、召喚初日から魔術ぶっ放してたし。
……………あの城、今もちゃんと建ってるかな?
「あの〜、何してるんでしょうか〜?」
妙な不安に駆られてると、頭上から声がした。
見るとラファエラさんが床で転がってる俺らを目を点にして見てた。
……………うん、昼飯にすっか。
「これで、実は戦闘系の【ギフト】も取れんと知ったらどうなるか」
「なんだ?今、すんげー不穏な呟きが聞こえたんだが」
「き、気のせいじゃよ!?」
天使(本物):「だから!なんで私が天使なのよ!(本物)とか意味わかんないわ!」
変態:「そりゃあ、”ダメ天使”が登場してるからじゃねぇか?被らねぇようにな」
委員長:「ついでに、おっぱい(本物)も登場したようですので、いい加減その駄肉捥いだらどうですか?」
天使(本物):「ちょっ、捥ぐってこれも本物だから!だから、そんなに、強く、いやああぁぁんっ!」
変態:「ちょ、待てよお前ら!マジかよ、なんでこんなハンドルネームのあたしがマジメに報告なんざ、いや、別に恥じてねぇが?むしろあたしのアイデンティティーだがっ!…………こほん!あーっと、注目!設定の見直しやら色々な大人の事情で第5話と第6話の登場人物のステータスがちょこっと変わりました。本作に置いてステータスはあまり意味ねぇので、あくまで細かい矛盾点を修正するためです!下に何がどう変えられてるか記されてます!以上!………こんな感じか?これでいいんだよな、柊?」
勇者:「………」
変態:「……ダメだ、鼻血に溺れて死んでやがる」
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【名前】: フェデリッチ・ベル・アーモンス
【歳】: 32
【LV】: 98
【種族】: 人族
【職業】: ロイヤルナイト
【生命力】: 9000
【魔力】: 9100
【攻撃力】: 4550
【防御力】: 5050
【敏捷】: 4050
【精神力】: 5000
【ギフト】:
<ヘクサドラゴン式槍術・四段>
<ヘクサドラゴン式近接格闘術・三段>
< 土・爆・属性魔術> CHANGE!
<詠唱省略> CHANGE!
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【名前】: セイヤ・ヒイラギ
【歳】: 15
【LV】: 1
【種族】: 人族
【職業】: 暁の勇者
【生命力】: 1000
【魔力】: 1200
【攻撃力】: 350
【防御力】: 350
【敏捷】: 350
【精神力】: 300
【ギフト】:
<双短剣術・皆伝>
<徒手空拳技・皆伝>
<心眼>
<光・無・氷・鉄・属性魔術 > CHANGE!
<詠唱省略> CHANGE!
<後述詠唱> CHANGE!
<上級鑑定>
<全言語理解>
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【名前】: カイト・クロギリ
【歳】: 15
【LV】: 1
【種族】: 人族
【職業】: 深淵の黒騎士
【生命力】: 1000
【魔力】: 1000
【攻撃力】: 300
【防御力】: 350
【敏捷】: 300
【精神力】: 200
【ギフト】:
<槍術・皆伝>
<先読み>
<気配操作>
<気配察知>
< 爆・雷・闇・属性魔術> CHANGE!
<詠唱省略> CHANGE!
<混合詠唱> CHANGE!
<上級鑑定>
<全言語理解>
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【名前】: アンジェラ・オリハラ
【歳】: 15
【LV】: 2
【種族】:人族
【職業】:天護之神盾
【生命力】: 2100
【魔力】: 2600
【攻撃力】: 580
【防御力】: 760
【敏捷】: 670
【精神力】: 910
【ギフト】:
<対戦略兵器防衛術>
<地・海・属性魔術> CHANGE!
<固有詠唱> CHANGE!
<上級鑑定>
<全言語理解>
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【名前】: サクラコ・トウドウ
【歳】: 15
【LV】: 2
【種族】:人族
【職業】: 兆星之巫女
【生命力】: 1800
【魔力】: 3400
【攻撃力】: 540
【防御力】: 530
【敏捷】: 580
【精神力】: 1020
【ギフト】:
<万里時空掌握>
<全・属性魔術> CHANGE!
<固有術式> CHANGE!
<上級鑑定>
<全言語理解>
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【名前】: キョウカ・エビナ
【歳】: 15
【LV】: 3
【種族】:人族
【職業】: 鬼女大帝
【生命力】: 2200
【魔力】: 2700
【攻撃力】: 780
【防御力】: 670
【敏捷】: 780
【精神力】: 900
【ギフト】:
<対龍群闘争術>
<無・陽・天・属性魔術> CHANGE!
<固有詠唱> CHANGE!
<上級鑑定>
<全言語理解>
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