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万物が神に定められし世界で芋ジョブが一人歩きしていた  作者: ツヅクリフクロウ
第二章 修行編、究極の肉体美を求めて
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第19話 Fitness Demotivation Pt.2

森:「先月、『第5話 測定器(仮)』が他の話と数日間入れ替わってた事故が御座いました。よく電話しながらお辞儀するサラリーマンを見るが、パソコンに向かって土下座する作家はどうなのだろうか………」

ゴトガタッゴト



「んで、香辛料や香り付けの薬味は最後に加える。じゃねぇと折角の香りが感じなくなるからな。簡単だろ?」

「解せん、やってる事は極一般的な調理法なのに一体何処からこの味の差が生じるのじゃ。もしや、これが匠の塩梅と知られる物なのか」


また大げさな。


よっ、久しぶり。だいぶ長くブラックアウトしていた主人公です。

色々大変でしたが、結果から言うと無事バルズーク家に生還する事ができました。

道中、クソ天使を見て破壊衝動に囚われ、殺され欠け、治され、クソ天使を見て破壊衝動に囚われ、カッサンドラさんに止められ、おっぱいを揉んで殴り飛ばされ、治され、マジ泣きするヘレンに出迎えられ、クソ天使を見て破壊衝動に囚われ、etc……的なカオスがあったりしたが。


ともあれ、一言にまとめて。


クソ天使、死ネ。


そして現在、何してるかと言うと勿論答えは昼飯を用意してる、である。

修行で疲れたと言うか死にかけた俺を労って、カッサンドラさんが自分がすると言ったが返すべき返事は決まっていた。


じっと目を覗き込んでから鼻で笑ってやった。


彼女にもマジ泣きされそうになったので料理を教える羽目になった。

クソて…ラファエラさん?家に着いた瞬間、自室に閉じ籠りましたが?



ゴトガタンッ、ゴッ



「それじゃあ、適当に盛り付けますか。バルズークさんは昼飯に帰って来ないよな?今朝ちゃんと弁当も持たせたし」

「い、何時の間にそんな物作っておったのじゃ。ああ、彼奴は何時も仕事仲間と適当な物を食ってるぞ」

「へー」



ゴトッ、ガタン



「………のう、ハルキ」

「ん?」

「それ、何時まで抱き抱えておるつもりじゃ?」


カッサンドラさんが物凄く微妙な表情で俺がずっと大事そうに抱えてるグラブスティールの鉄板を指した。

ドア程の大きさの分厚い鉄板は相応にかさばるし、重いので動かす度にガタゴト鳴るが、はて、何か不自然だっただろうか。


「それは午後の修行まで使わないし、何も常時持ってる必要もない。良かったら仕舞ってお…」

「誰に断ってぇ、人様の重りに手ぇ出してんだぁああ゛ぁん?!!臓物バラして闇肉屋に晒すっゾ、このメス豚ぁ!!!」

「ひっ!?!ご、ごめんなさいっ!!」


余りに非常識な申し出についブチ切れてしまった。


ったく、他人の重りを勝手に触ろうとするとか、意味解らねぇよ。

異世界人って一言で済ませる冒涜じゃねぇぞ。

カッサンドラさんは少なくとも常識人だと思ってたのに、全く失望したぜ。


オメェもそう思うだろ?なあ、エカテリーナ。


「ハルキ、エカテリーナって誰じゃ」

「はあ?エカテリーナはエカテリーナだろうが。目の前にいるじゃねぇか」


ゴトン!


「……………」


………んだよ、その既に手遅れな奴を見てるような目は。


「まあ、いっか。それじゃ、ヘレンと…………アンジェラさんを呼んで昼飯にすっか。な!エカテリーナ!」


ガタン


「そうだな!」

「ちょっと待て!!今、その重り勝手に動かなかったか!?!?」


やれやれ、これだから一般教育って言うのは大事なんだろうな。

恐怖するカッサンドラさんに憐憫の眼差しを向け、皿を食卓に運んだ。




食事の方は比較的に穏やかに過ごせた。

最初こそ、部屋から出たくないアンジェラさんを引き摺り出したり、ヘレンとカッサンドラさん達を仲直りさせたり、エカテリーナに胡乱な視線を向けられたりしたが、温かい食べ物が皆の心を和ませた。


つーか、何で皆エカテリーナの事ツッコむんだ?

こいつ、朝も一緒に………そう言えば居なかったな。


あり?

確か、こいつとは生まれた時から一緒にいた筈だが、向こうの世界でグラブスティールっつー金属なんて無かったよな?


……………ま、いっか。


「んで、今日の異領域マジで寒いんだよ。吹雪もすげぇし、いやあ、俺でもアレは正直キツイわー。ヘレンは、カッサンドラさんと何してたんだ?」

「ん、いほうやくぶつ、作ってた」

「ほー、そうかそうかぁ。カ〜ッサ〜ン〜ド〜ラ〜さ〜ん〜?子供にナニさせとるんじゃ、屠殺すっぞこの女ぁ!!」

「!!? ち、違うんじゃハルキ!誤解じゃ!」


こんな感じで食事を楽しんだ後、一休みした所で午後の修行に移るかどうか話し合った。

何せ、誰かさんが仕事ほっぽり出したせいでかなり本気で死にかけたんだ。

今日一日休んで明日から本格的に鍛えたらどうだとカッサンドラさんに提案された。


けれど、中学の頃はよくあれ位虐められてたので個人的にはまだまだ大丈夫だ。その上、治癒魔法なんて便利な物があるんだ、休む理由なんてない。

そう説明したらドン引きされた。


後、エカテリーナもやる気満々にしてる。

彼女の熱い意思を伝えたらもっとドン引きされて、距離を取られた。なぜじゃ。


兎に角こちらには十二分の覚悟があったのだが、ここで猛烈反対する者が一人いたのだった。


「嫌です!ハルくんと二人きりなんて絶対嫌です!!なんで私がそんな危険な事しないといけないんですか!!そんなに修行したいのなら一人でやればいいじゃないですか!!」

「阿呆抜かせ!貴様が側に居なかったせいでハルキはこうなってしもうたのではないか!!責任持って見届けよ!」

「ドラちゃん本当は私のこと嫌いなんでしょう!見て下さいあの目!!今度こそヤられますよ!?私、今度こそ混沌生物の苗床にされちゃいますよ!!?」


猫被るのも忘れて断固拒否するラファエラさん。

カッサンドラさんもだいぶ失礼なこと言ってる気がするが、一体何の話してるんだ?

あの新性癖開眼級の筋トレに逃げずに挑もうとする俺達に何の文句があるんだ?


「おいおい、勘弁してくれよラファエラさん。今朝と態度が真逆じゃねぇか。折角やる気出してるのにそれはねぇだろう。なあ、エカテリーナ」


ゴト


「ほらあ!やっぱり変ですよう!何で魔力の気配もないのに重りが動くんですかあ!!」

「……ラファエラ、あれ、本当にグラブスティールなのか?どっかのダンジョンで拾ってきた呪われた遺品ではあるまいな?」

「グラブスティールの鉄板でしたよぉ、今朝まではぁ」


この後、総掛かりでぐずるラファエラさんに言い聞かせて修行継続となったのだった。

何時もやんわりとした笑みを絶やさない天使の肩を落とす後ろ姿を見るのは………胸がすく様な気分だなぁ、マジで。


「ハルキっ」

「ん?」


家を出る寸前、ヘレンに呼び止められた。

さっきは、相当心配かけてしまったな。まさか泣かれると思わなかったのであの時本当に驚いた。

今は元の眠そうな表情に戻っている。

彼女は、上手く出て来ない言葉を俺の顔を覗き込見ながら探してるようだった。


「死んじゃ、だめ」

「はは、心配すんな。そう簡単にはくたばらねぇよ」

「……でも」

「だあいじょうぶ、大体この変態共にお前を任せて逝けるかっての。ちゃんと帰ってくるよ」

「……うん、わかった」

「それじゃあ、言ってきます」

「! うん、行ってらっしゃい」


少し微笑んで見送ってくれるヘレン。

その僅かな笑顔を守る為にも、情けないザマは見せられねぇな。

おっし、頑張りますか。




▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼




「ああ゛あ゛、頑張ったー。俺、本っ当に頑張ったー」


夜、バルズーク家。

午後の筋トレ地獄ハードモードを終えて、更に皆の分の夕食も作った俺は一人リビングで溶けていた。

他の奴らは風呂に入ったり食器を片付けたりしている。


え?いきなり飛び過ぎだって?

いやいや、今更この人達の扱きの異常性を語っても不幸自慢にしかならないだろう。


簡素に報告すると、先ず、あれだけ降ってた雪がパタリと止み、気温もかなり上がっていた。

その代わり風がバーサーカーしてたがな。

どれだけバーサーカーだったかと言うと、異領域に到着して気付いたら上空50メートルを飛んでいた。ラファエラさんにキャッチされなかったら、そのまま人生サヨナラホームランになっていたに違いない。


午後のメニューは上体起こしだった訳だが(勿論、あの関節破壊ストレッチをしてから)、当然マトモな方法ではなく、鉄棒から逆さ吊りにされた上、脇から通した鎖にエカテリーナを繋げると言った、もう泣く程斬新なやり方だった。

しかも、豪風に体が攫われないよう追加でジェニファーちゃんも括り付けられた。首に。


勿論、講義したさ。具体的には、『ん゛ぅー!んがんぉッッ、ん゛ぇぁーっ!!』(訳: ちぎれるぅー!大変な物が千切れるだろうがあ!!)て言ってやったさ。

絞め技の対策として喉を鍛えないと行けないから何とかと言われてキッチリ締められたが。


クソっ、あのドS天使、人が動けなくなった途端調子こきやがって。


それでも、今回はちゃんとヒーラーも居たので変な事にならずに済んだのだった。


はあ?ジェニファーちゃんが誰だって?

おいおい、カッサンドラさん並みの大ボケか?

ジェニファーちゃんはジェニファーちゃんだろうが、エカテリーナの妹。第一話からずっと登場してるだろう。ちゃんと登場人物紹介に乗ってるぞ?

今も俺の隣にいる。


とまあ、以上の経緯で現在に至る。


余談だか、夕食の為に帰ってきたバルズークさんに今日の修行の結果を話したら……バケモノを見る様な視線を向けられた。


うん、オカシイよね?聞く限り、あんたも同じことをした筈なのにどうしてそんな顔されなきゃならねぇんだ?

寧ろ、その産物であるマジモンのバケモノのはあんたの方だろうが。


だが、食卓を挟んで交わした個人の経験談によると、バルズークさんは当時の先輩に扱かれた時、一日目は開始十分で再起不能にされたらしい。

信じ難いが、バルズークさんはメープル・スプラウトに来る前はちょっと体の丈夫なだけの普通の貧しい農家だったそうだ。いや、彼だけに限らず他の者も同じだと言われた。


皆、ある日ふとした事で異領域に迷ってしまい、その度村に在籍してた先輩農家(辺境の)達に助けられて一人前の農家(辺境の)に魔改ぞ……指導して頂いたのだとか。

俺と全く同じ境遇。しかも、全部偶然の出会いと言う点が恐ろしいな。


話がそびれたが、つまり全員元は一般人である故、あの修行の初期段階では例外なく地獄を見るのだ。

痛みに慣れなければいけない、傷に慣れなければいけない、過酷な環境に慣れなければいけない、死にかける事に慣れなければいけない。

「覚醒」と呼ばれる域に辿り着くまで トラウマや夜逃げがある意味正常。

にも関わらず、初日で一日分のメニューをやり尽くし、事もあろうに皆の分の料理とか作る余力のあった俺はバルズークさん曰く、『過去に見ない超ド級のハードコア変態野郎にしか見えないべ』だそうだ。


物凄く失礼な評価である。

ったく、魔法で体が治るのなら何回も壊れるまで筋トレしても平気だろうが。

ふふふ、お前らもそう思うよなあ、エカテリーナ、ジェニファーちゃん。なでなで。


「まっ、要するに今日の成果は上々ってことか。確かに今朝より魔力が膨れ上がってるしな。明日も全力で頑張りますか。ははっ、つーか頑張る他ねぇよ。死んじゃうもん」


よく、『実際数秒だが、何時間にも思える苦しみ』って言い回しするじゃないですか。それを数時間単位で味わうんだ。解る?


風呂に入った後、こうしてラファエラさんに入れてもらったコーヒー牛乳を飲んでいると大仰かもしれないが本気で生きてて良かったと思えるなぁ。

初めは、毒でも入ってるのかたと疑ったがめちゃくちゃ美味しい。あの人もたまには天使らしい事するんだな。


「はー、でも、これじゃあ明日全身筋肉痛決定だよなあ。いや、ラファエラさんに治して貰えばいいのか。魔法様々だな」

「良し、ハルキ、休憩終了じゃ。夜の鍛錬開始じゃぞ!」

「は?」


既に意識が布団に潜り込んでいた為、外出準備万端で現れたカッサンドラさんに何を言われたか理解できなかった。


「何をボケっとしておる。やる気はあるんじゃろ?」

「え?いや、だって、もう夜だぞ?」

「汝は、何を常識的なこと申しておるのじゃ?」


ねえ、その俺が非常識なような言い方、やめてくんない?

そんな不思議そうに首を傾げても困るんですが?


「ひょっとし、てラファエラから聞いておらんのか?【農家(辺境の)】の修行は、最低でも二週間24時間朝夜不眠で行うのじゃ。吾輩とラファエラで12時間交代制で面倒見る予定じゃから、今日の夜は吾輩が受け持つ」

「………前々から思ってたんだけどさ、あんたらマジで頭のネジぶっ飛んでんじゃねぇの!!??」

「じゃが、用意は出来てるんじゃろ?」


用意って何さ!?

何をどう用意すれば人間がコンビニに進化するんだよ!?

ぶっ飛び過ぎて、『夜の修行は吾輩が受け持つ』のセリフに全然興奮できないんだが!?!


『ALERT ALERT ALERT


鑑定結果:


【ムーンシードのコーヒー牛乳】:

ムーンシードの豆を絞って作られたコーヒー。超高濃度の魔質興奮剤。一口飲めば一ヶ月一睡も出来なくなる。


因みに牛乳は普通、でゴダんす』



「……………カハッ」



クッッソオオオオオオオオ!!!やっぱり毒盛られてたあああああああ!!!!


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