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万物が神に定められし世界で芋ジョブが一人歩きしていた  作者: ツヅクリフクロウ
第二章 修行編、究極の肉体美を求めて
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第18話 Fitness Demotivation Pt.1

森:「『閑話 丑三つ時……』よりよっぽどホラーになってしまった件について」

「あら〜、ドラちゃんお疲れ。エリクサーの具合はどうですか〜?」

「うむ、上々じゃな。余裕で本日中に完成出来そうじゃ」

「わ~、流石ですね〜」


リビングに来たら先客としてラファエラが寛いでいた。

湯浴みでもしたのか、手ぬぐいで美しい髪を纏めて僅かに肌が上気しておる。

労いの言葉と共に入れてくれた飲み物をヘレンと共に有難く貰い受ける。


駆けつけ一杯。くぅ、同じ室内なのに矢張りここの方が開放感があって落ち着くのう。



………おかしい、何か重要な事を見落としてる気が………あ。



「って、何故汝がここでまったりして居るのじゃ、ラファエラ!!」


極当たり前のように出迎えられて思わず普通に返してしもうたわ!


「あはは〜、これは〜、かくかく云々の事情が御座いまして〜」

「ああ、なるほどなーーって解らんよ!?」

「ええ〜〜っ?!私とドラちゃん、心が通じ合ってると思ってたのに〜」


全く読めない事態に思わずツッコむと、どう言った理屈か逆に驚愕されてしまった。

マジショック、傷付きましたと悲しむラファエラ。

無駄に無垢な容姿の為、つい罪悪感に駆られ謝りそうになったが既で止めた。


彼女のその態度に経験から猛烈に嫌な予感がしたので、取り敢えず肝心な事から問うてみる。


「ラファエラよ、ハルキは何処じゃ」

「…………」


お、おい。何上そこで目をスッと逸らすのじゃ?

額から汗がツーって落ちてるし……え?

いやいやいや、よもや此奴もそこまで阿呆ではあるまい。

一世紀弱の付き合いじゃぞ?此奴の性格の悪さも裏にある計り知れぬ慈愛も知っておる。信頼もしておる。


信頼しておるから…………冗談だと言って、おねがい。


「ハルくんって〜誰のことでしょうか〜〜?」

「ラファエラあああああああああ!!??」


吾輩は、一先ず立ち上がって叫んだ。


「だ、だってほら〜、ハルくんって可愛いのに気が強いじゃないですか〜。反抗的で〜、なんか虐めたくなっちゃうじゃないですか〜。そうしたら〜、危うく堕天使そうになって〜」

「ヤったのか!?思わず手が滑って殺ったのか!!?」

「もう〜っ、私をなんだと思ってるのですか〜。ただ〜、お風呂……身を清めるために〜外に置いて来ただけですぅ〜」

「やっぱり殺ってんじゃねぇか!!何時からじゃ!何時から放置しておる?!!」

「………四時間くらい前から〜?」

「ルぁふァエラぁああああああああああぁぁ!!!???」


今度は掴み掛かって絶叫した。発音もやや怪しゅうなっとる。


「馬鹿じゃろう!馬鹿としか言えん!馬鹿ですと認めろ!!異領域じゃぞ!?四時間じゃぞ!?!?中途どころか初めから放っておいて何をしたいんじゃ己は!?骨を拾うにしてももう何も残っておらぬわたわけぇ!!!」

「つ、つい水浴びが長引いてしまいまして〜。それに〜、ハルくんったらいきなり身体強化、しかも耐性強化なんてしちゃうんですよ〜?だから〜、目を離しても大丈夫かな〜って」

「ああ、それならスプーン小さじ一杯分の遺灰が残るかもなぁ!」


一瞬、『初日で身体強化、すごいんじゃね?』と思ったりしたが前後の内容が強烈過ぎて全く感心できんわ。


もう聞くのに耐えかね、吾輩は居間に掛けられてる壁時計、【グラン・フォーカースト】を急いで操作した。

実はこれも例のからくり女王が編み出したレプリカであり、時刻以外に村全域と結界外周辺の環境情報も計測してくれる優れものじゃ。

縋るような気持ちで待つこと数秒、文字盤に計測結果が綴られた。



===============

天候: 吹雪(激強)

風速: 110km/h

気温: -76℃(激寒)

===============



「うんうん、大体放置してきた時と同じですよ〜。ハルくんも丁度いい身体強化の練習になりますね〜。全部計算どおり!さすがわたへみゃっ!?」


後ろでラファエラが何かのたまいてたので取り敢えずビンタを放っておいた。


って言うか、この極寒で耐性強化の修行出来るのは熟練者だからね?

そもそも耐寒防具無しだと熟練者でも普通に死ぬからね?

それ以前の問題としてあの殺人筋トレを治癒師抜きでこなすのは自殺以外の何でもないからね?


然し、確かにこれなら未だ生きておる望みが百万が一あるかも……と夢見ちゃった瞬間も吾輩にありました。



次の項目

===============

気圧: 0.2気圧(標高10000m相当、君に対するアタイの愛も10000m相当)

===============



製作者のお茶目なジョークはさて置き。


「「あ、死んでる」」


見事にハモった。

これはもうどうにもならんわ、身体強化出来るかどうかの話ではない。

酸欠、凍死、重りによる圧死。死因は言わばオーバーキルって言う奴じゃな。いや、殆ど隣の闇天使に殺された様なもんじゃが。ははは。


不謹慎にも乾いた笑いが漏れるが、正直言って笑いを禁じられたら泣くしかない。

じゃが、現状を笑い飛ばせない理由が直ぐ側にあった。


「え?」


それは、まるで深夜に見知らぬ森の中で目覚めてしまった幼児の不安気な掠れた声。

ばっと振り向いたら、その先には余りの衝撃的な出来事のせいで存在を完全に忘れてしまっていたヘレンがいた。

彼女は、何時もの無表情が崩れ落ち今にでも泣きそうな顔をこちらに向けていた。


続いて、我輩の顔からも長年親しんできた悪魔面が崩れ落ちる。どうなってるか解らんが、多分今ラファエラがしてる『しむぁったあああぁぁぁ!!!』的な血相だと思う。


「ハルキ……どこ、なの?ハルキ、死んじゃう、の?」


更に老練の漁師に一本釣りにされた様に頬が引き攣る。


「こ、こうしちゃおられーんっ!!!ラファエラ、今直ぐハルキを救出しに行くぞっ!!」

「イエス・マァムっ!!」


これ程の焦燥感に駆り立てられたのは何時以来か。

家から飛び出て、久しぶりに全力の筋力強化を身に纏い、その上幾つかの補助系魔術を施し異領域へ飛び立った。我輩の正真正銘の全速力、一瞬で大気の層が抵抗して来る。


「ハルくーん、死なないで〜〜〜」


それでも、そんな情けない声と裏腹に驚異的なスピードでラファエラが横から追い抜いて先に行った。

くっ、やはり性質上光属性の使い手の方が速度が上か。


まあ、今は張り合ってる場合ではないし治癒師である彼女が先に行くのが道理であろう。

奇跡と豪運の大盤振る舞いでハルキが生きていたら何とかしてもらわなければならん。ヘレンに嫌われぬ為に!

もし手遅れだったら………止むを得ん、我輩が禁術と下法とちょっと言えない方法で高位アンデッドとして蘇らせてやろう。ヘレンに嫌われぬ為に!


ああ、大事なことだから何度でも言ってやるっ!!


そう決意しながら瞬く間にメープル・スプラウトの外縁部に到着した。

勢いを殺さずそのまま突っ込み、外部を覆っていた氷山を吹き飛ばす。

一気に冷気と減圧が襲い掛かって来るが、もとより山より高い空を飛行するのに慣れておるので大した支障はない。

吹雪の中、直ぐ様ラファエラの姿を捉えたので慌てて駆け寄った。


何故か唖然と棒立ちで佇んでいた。


「ラファエラ!どうした、ハルキは無事じゃったのか?!」


我輩の問いかけにラファエラは何も答えず、言葉で表し難い感情を顔に見せ、ゆっくり前方一点を指差した。

促されるままそこへ向くと………



()ン゛戦覇(せんは)(ぴゃく)イ゛——()ッ!!!()ン゛戦覇(せんは)百二(ぴゃくに)゛———ッ!!!()ン゛戦覇(せんは)百惨(ぴゃくさん)———ッ!!!()ン゛戦覇(せんは)百死(ぴゃくし)゛———ッ!!!()ン゛戦覇(せんは)百轟(ぴゃくご)゛———ッ!!!」



………………。



「ラファエラ!どうした、ハルキは無事じゃったのか?!」

「いや、今現実逃避してもどうにもなりませんよ!?」


珍しく彼女から素のツッコミを受けた吾輩は、目頭を押さえながら天を仰ぎ何とか状況を整理する為に努めて冷静を保った。

深く深呼吸し、意を決して再びちらっとそこに視線を向…


「夜ン゛戦覇ッ百血゛ュ————」


直ぐ戻した。


「ラファエラよ、もしかしたら我輩が天に召される時分かもしれん。なんか、この極寒と吹雪と減圧下で、バカみたいな魔力を蓄えたグラブスティールの下敷きになって血の涙と呪いを叫びながら腕立て伏せをする魍魎が見えるのじゃ。あれは恐らく、我輩の悪魔としての生涯の内に背負ってしまった全ての業の具現化であろう。バルズークと出会って、少し真っ当な道を歩んだつもりだったのじゃが、そうか、あれが吾輩の最期か」

「ドラちゃん落ち着いて下さい。ドラちゃは、今も昔も全悪魔族の恥と言える程真っ白ちゃんです。全ての業は天使である私が払います。善人だろうと悪人だろうとあんなのが人の死であって良い筈がありません。って言うか、死じゃないです。ハルくんです。気付いて下さい」

「ウソじゃろぉ!!?!?」


えっ!?マジで!!?

ちょっと、荒んだってレベルの騒ぎじゃないんですけど!?

豹変したって言うか、最早ヤバイ何かに乗っ取られたって感じなんですけど!?

ある意味、死んでしまった以上に取り返しの付かない惨状になってるんですけどぉ!!!???


よく見れば、こちらに気付いてないのか腕立て伏せを続行しているハルキ(呪)は外傷もかなり酷い。

露出した皮膚に凍傷、駆使された筋肉の断裂 、重度な減圧症の症状。

耳に凍りついた血が伺える。こんな環境で力み過ぎたせいで鼓膜が破裂したのじゃろう。

同じく血走った目と血涙も毛細血管の破裂が原因じゃ。多分。きっと。


要するに、何を申したいかと言うと。


「ほれ、ラファエラ、出番じゃぞ。早うアレに治癒を施して回収して来い」

「いやいや〜、ハルくん何か邪悪な存在に憑依された様なので〜、悪魔族のドラちゃんに任せます〜」

「いやいや、心の前に身体を治すべきじゃろう。先ずラファエラが行け」

「いやいや〜、ここはドラちゃんが先に」

「いやいやいやいや」


暫し互いに貼り付けたような笑顔で見つめ合う。無論、見つめる眼は微塵も笑っとらんが。



「触手[ピーッ]でぇ![ピーッ]を[ピーッ]されて[ピーッ]になって堕ちてしまえええぇぇ!!!この[ピ—————————ッ]天使があああァァァ!!!!」



何か凄いのが聞こえた。


「名指しでご指名されたぞ!さあ、潔く逝って来い!!」

「ドラちゃんは私を殺したいんですか!!?今、あんなのに近付いてしまったら確実にクリーチャーを孕まされてしまうでしょうがっ!!ドラちゃんこそその牛乳を使ってエロを担当しに逝きなさい!大丈夫、バルちゃんの面倒は私が見ますから!!」

「だまれいっ!!元は全て貴様のせいじゃろうが!って言うか、先程さり気なく吾輩を全悪魔族の恥とか呼びおったな?丁度良い、その言葉、撤回させてやろう!!」

「いやだーーー!!」

「あっ、待てえい!!」


泣きながら逃亡しようとするラファエラを羽交い締めにする。

痛っ!?こ、此奴今噛んだぞ!?なりふり構わずだな!

まあ、気持ちは解るが。


後、近くで騒いでいるのに未だ腕立てを続けているハルキに驚き。とっくに気絶しても可笑しくない体なのに。


「解った、よう解ったから落ち着け。争ってる暇などない。なら、こうしよう。先ず遠くからラファエラが治癒と浄化の魔術をかけるのじゃ。その反応を見てから共に近づこう。これで良いな?」

「………解りました、一緒にですからね?裏切らないでくださいよ?絶対裏切らないでくださいよ!?」

「………いや、それはどちらかと言えば吾輩の心配じゃろうに」


吾輩の言葉に説得されて、渋々と言った感じで詠唱を唱え始めるラファエラ。

本来、どんな治癒魔術でも患部の様子を正確に把握する必要がある為間近で行えばならん。しかし、彼女程の使い手となれば広範囲内の負傷者を全て認識下に置き同時に治療することも可能なのじゃ。


相変わらず繊細な術式構築と広がる指向性を持った治癒の光に感嘆する。

これで傷と痛みが無くなれば、悪鬼も大人しく成仏してくれるだろう……………と思っていました。


「シャッ!」


今の今まで吾輩達に見向きしなかったハルキが突如グリンッとちょっと有り得ない角度で顔をこちらに向けた。

どうしよう、目がバッチリ合ってしもうた。

そして、次の瞬間、グラブスティールを脇に抱えて四足歩行で術の範囲から機敏に逃れたのだった。


……………え?なんで?


「キシャアアアアアアア!!!カァアアアアハァアアアアア!!!」


………………。

重りを退けられたのなら何故そうなってしまうまで筋トレしてたのか、みたいな至極常識的なツッコミはちょっと置いといて。


「くっ、どうやらこれまでの様です。では、私は失礼します」

「いや、待て待て待て待て!どこに失礼するつもりじゃ!!」


やっぱり、真っ先に裏切ろうとしとるでは無いか此奴め。こんな意味不明な状況に吾輩を取り残すなど許さんっ!!道連れじゃ!!

ありったけの勇気を振り絞って、威嚇にしては気味悪過ぎる叫びを上げる人だった何かと対立する。


「っ!!ハルキ!落ち着け!!吾輩じゃ!カッサンドラじゃ!!」

「そうです!ハルくんの大好物のおっぱいです!好きに使って良いですから!私だけ見逃してください!!」

「ちょっと黙れよ貴様ぁ!!ハルキ!頼むから正気に戻ってくれ!!ちょっと訳が解らんがソレに飲まれてはあかん!家でヘレンが心配して待っておるぞ!!ヘレンが寂しそうにしてたぞ!!ヘレンがお腹空かせてたぞ!!!」


兎に角必死に声を掛け続ける。


ううっ、でも怖いのじゃぁ。光の消えた目で舌をウネウネさせる形相が夢に出て来そうなのじゃぁ。


じゃが、ヘレンの名を連呼したことが功を奏したのか、焦点の合ってなかった瞳に段々と知性が宿って来た。

うむ、効果ありか。昨日見た限りこの少年は彼女になんとなく甘かったからな。

良し、これから何かあればヘレンの名を出してやろう。いっそヘレンを前に出してやろう。

あ、いや、そんな事したら一生口聞いてもらえんかも。


「あ?あれ?カッサンドラさん?こんなところで何してんだ?そんな薄着だと風邪引くぞ?」

「………戻って来ての第一声がそれか。はあ、取り敢えずお帰り。汝こそ早よ傷を癒さんと死ぬぞ?」

「??? って、うわっ、なんだこれ。ボロボロじゃん。声もよく聞こえねぇと思ったら片方の耳がイっちまってるよ。うわぁ」


よ、良かったぁ、ちゃんと元に戻ってくれた。正直諦めるところじゃったわい。


漸く何処かから帰還して体のあちこちを確認するハルキ(常)。

いつも通り振舞ってるが身体中の筋が千切れてる筈じゃ。至急処置を要するが痛くないのか。

はあー、ともあれ、結果的には無事(?)救助に間に合ったので結果オーライか。


吾輩は、思わず安堵の溜息を漏らした。


「も、もしもし〜?ハルくん、触って大丈夫でしょうか〜」

「野生動物じゃあるまいて。ああ、何とかなった。ハルキ、汝も早う治療してもら…」

「カァアアアアアアアア!!!!」

「ぎゃああああああ!!!???」

「……………」


事故の元凶を視界に入れた途端、再び奇怪な咆哮を上げながらハルキ(呪)がラファエラに飛び掛った。

彼女から滅多の聞く事のない悲鳴と加減を忘れた光弾が炸裂。

雪空の彼方へ吹っ飛ぶ少年お小さな姿を見ながら、吾輩は心からもうどうにでもなれと思うのだった。


森:「読みやすさを考えて、投稿済みの長い話を前編後編に別けたぜ」

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