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万物が神に定められし世界で芋ジョブが一人歩きしていた  作者: ツヅクリフクロウ
第1章 異世界逃走劇
17/50

閑話 丑三つ時はお化けの時間なのです

???:「ふう、久しぶりの出番ですね。面倒臭いですが。え?私が誰かって?まあ、作者のスロー更新を見れば忘れてもしょうがないですね。………諦めます」

「ハアッ、ハアッ……くっ、…… ハアッ」

息をつくことの許さない、この焦燥感。

全力疾走しているにも関わらず、身体の芯がどんどん冷える、この不安感。


恐怖。


そう、私は間違いなくこの状況に恐怖している。


「なんですかっ、アレは!」


一目見ただけで、叶わないと知った。

対抗法を講じる先に踵を返し逃げていた。

国を守る騎士としての使命感、武の頂点に立つ戦士としての誇り。

それらが静止力として働く余地を与えない、恐ろしい気配に私は挫けた。


だが、仕方ないじゃないですか。


だって、剣はアレ(恐怖)に届かない。

だって、鎧はアレ(恐怖)から守ってくれない。


逃げても逃げても逃げたりない。しかし、身体は重くなるばかり。


「ハアッ、こっ、ここは?」


一心不乱に走っていたら、気付けば森まで来ていました。

夜の闇があたりを包み、僅かな月明かりが道を照らし出す。

アレは未だに私を追っている。ヒタヒタと、迫ってくる。

光にすがるように私は重い体を私は引きずった。


ズルズル ズルズル ズルズル


どれほど木々の間を徘徊したのか、身体が猛然と乾き始めました。

耐え難い強烈な乾き。

そこらの草汁を啜りたい思いに苛まれていると、運良く湖のほとりにたどり着き。

私は、獣のようにその黒い水を貪った。


「んぐっ、はあ、やっと……アレを振り切れた……みたいですね」


息も絶え絶えになりながらも思わず微笑みが溢れる。

そうして、朧気な月光に照らされたその場所で、私はようやく平和を見付けることに叶いました。


静寂を僅かにくすぐる水の音と夜風にさらされる木の葉の音。

全てが私を優しく包み込み、安らぎを与える。

もう、あの背中を圧迫するような緊張感はない。


「は、はは、あははははははは」



…………なら、なぜ


………なぜ、私の背中に…………少女が抱きついているのでしょうか



黒水の如く黒い髪に黒い瞳を持ち。

死体のような白肌と対象を成す朱の唇。

白蛇に似た細い腕が私の首に巻きつかれた姿が暗い水面に浮かんでいた。


「ぅ、っぁ」


その腕にはさほど力が込められてない一方、私は声を出すことができない。


水面の向こう側から、悍ましく美しい少女は淡く微笑む。

その表情は余りにも神秘的で、直接伺うべく私は不意に振り返ってしまった。

可笑しなことに、に背後に誰もいない。

再び視線を湖面へ戻すとやはり少女が、今度は口を大きく開けて笑う。


けれど、今度はさほど美しさを感じ取れませんでした。

彼女の歯茎は…………墨で塗り潰されたようにドス黒かった。


その姿は………まるで…………


「う、うわああああああぁぁぁ!!」


絶望。


途端、私の体は鉛より重くなり、少女に誘われるように水に落ちてしまった。

そして、終わりのない闇に、争う術もなく沈むのでした。




▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼




「うわああああああぁぁぁ!!!」


戦慄と恐怖に悲鳴をあげながら、私は飛び起きる。

たった今体験した物が夢、正確には悪夢であることに気付くのに十数秒。


王国最強戦力の一角である私を絶叫させるとは……久々にあんな大声出しましたよ。


いや、そもそもあれは本当に唯の悪夢だったのでしょうか?

なんか、並ならぬ悪意、的確な害意の類を感じましたが。

魔術による精神攻撃を受けた?この私が?


ヒュパッ


疑問に思った次の瞬間、鋭い風切り音と同時に私の書斎の愛椅子が上下真っ二つに分かれる。

元の形にくっつけたらそのまま使えそうな鋭利な切断面、並ならぬ使い手の仕業の証拠。

でも大丈夫、私はすでに退いていたので無事です。


………いえ、全く大丈夫じゃないですね。


「何をしているのですか、キキョウさん?具体的には、私と私の愛椅子に」


肩が凝らないよう、わざわざ職人に発注した一品になんてことを。

普段よりちょっぴり威圧感の篭った声で無断入室した挙句強襲してきた私の部下を問い詰める。


………部下、ですよね?

浅くも職場上それなりに濃い付き合いですが、彼女の言動行動は部下と言う概念の根底を揺るがすものがあります。


それはさて置き、上司の言及の前でキキョウさんはしばし俯き、次に汚物を見るような視線を投げつけてきた。

目鼻立ち麗しい女性にそんなことされたら興奮…ゲフンゲフン!


いかがわしい邪念を振り払うように私は抜剣で答える。

すると、読み通り手に握った剣は何時の間にか放たれた彼女の一撃を防いでいました。


相変わらず読み辛い太刀筋ですね。この私でもほとんど勘任せの防御を強いられる程です。


「ヴィクトル、仕事しろ。寝たいのなら寝ながら仕事しろ。今、寝かせてやる」

「それって、永眠させて永久労働しろということですか?」


鍔迫り合いになりながら横暴な言明を受けるが、勘弁してほしいものです。

確かに勤務中にうたた寝していた私に非はありますが、召喚術式の準備に追われ五日間徹夜して、その後始末に先程まで徹夜していた身にもなって下さいよ。

しかも、あの性別不明な少年のおかげで結果は中途半端。

同じ少年が起こした騒動を収めるのに一苦労。

玉砕を食らって一苦悶。


「あなた、手伝いませんでしたよね?『姫に打たれて心痛』とか言いながらさり気無くあの場を抜けましたよね?」

「当然、私はヘレン様を探さないといけなかった」

「確かに貴方はヘレン殿下の教育係ですが。私、一応じゃなく実質上に貴方の上司なんですけど」

「どうでもいい。ヘレン様は何処?転移装置の調査はどうなった」


うわお、ここまではっきり否定されると怒る気もしませんね。

ダメですね、キキョウさん、相当追い詰められた様子です。

普段から言葉に衣を被せない御方ですが、こんな猪突猛進な振る舞いはしません。

まあ、仕方ないでしょう。彼女にとって、教育係としての責任を問われる以前に姫殿下は特別な存在なのですから。


ここは、年長者として井戸より深い度量でその激情を受け止め………政治的な嘘を付くとしましょう。


「研究員の解析結果によると、あの少年が姫殿下と脱出するために使った次元飛躍系アーティファクトは輸送量過剰の原因で破損したようです。そのせいで本来の座標設定に狂いが生じ、全く別の場所へ飛んだのことです。行き先は未だ特定されてません」

古代遺産(アーティファクト)が誤作動、した?」


表情に困惑が現れるキキョウさん。

よし、そのすきに大太刀を捌いて距離を取っちゃいましょう。

流石の彼女もこの自体は想定してなかったようですね。まあ、実の所私もなのですけど。


『乱世の暦』の超技術で創造された古代遺産(アーティファクト)

プログラムされた魔術を発動する道具と言った点は一般的な魔具と相違ないですが、その構成材質も保有術式規模も制作技巧も最早比較対象にすらならない。

出力上限なし、使用回数無限、半永久的に作動する物体化した奇跡。それこそが古代遺産(アーティファクト)の筈。


一体何をどうすれば壊れるんでしょうね。


「【双極の虚路】はオリジナルの古代遺跡だった筈。適当なこと言うな」

「私も全くの同意見ですね。一体誰が国宝破損の責任を取らされるのやら。かなり気が滅入っているので、剣を構えるのは辞めてくれません?」

「ふざけるな。ヘレン様の転移先はどこだ」

「さあ?」


ズパンッ!


………机が。


「……無論、現在も捜索中ですが、何せ物が古代遺産ですからねえ。正常状態で解析不能の代物が壊れたからって何か解るものじゃないでしょう」


私の言葉にキキョウさんは俯き、普段から想像できない苦々しい表情を浮かべる。

端から見れば、男の前で悔しげに武器を下ろす異国の美女。

さてはて、どうやったら戦意喪失した彼女を思い通りに出来るのでしょうか。


………なんか、怪しげな言い回しですね。


「と言っても、あの少年が姫殿下と同行してるのなら、現在の居場所は国外でしょう」

「?」

「忘れたのですか?アレには位置特定機能が付与された隷属魔具が嵌められてるのですよ?そして、国内に反応がないとすれば必然的に彼は国外に飛ばされた………と、言う事にしときましょうかね」


気付けば、書斎の戸は開け放たれておりキキョウさんの姿が何処にもいません。

まあ、私の目にはとんでもない速度で走り去る彼女が見えましたけどね。

察するに、大急ぎで暗部に捜索部隊を編成、またはその虚構(・・)を作りに行ったのでしょう。

他国で行方不明の王族なんて表沙汰に出来まさんからね。


適切な処置と言えるでしょう………あの者等が存命である場合なら。


勇者諸君に着用した隷属魔具、あれは実のところ準アーティファクト級の性能を誇る副製品(レプリカ)だったりします。


オリジナルには遠く及ばずとも、現代技術の髄を込めた強固な作りに王国領土内ならどこからでも居場所を割り出し命令を下せる能力。

それが機能しなくなったということは範囲外、考え難いが破壊。最後に、想像を絶する膨大な魔素により信号の妨害を受けていることを意味する。


そして、これは本当に意図せぬ偶然ですが、私はあの少年から最後の発信を受けることに成功したのです………王国北部に存在する【異領域】からの発信をね。


最早彼らの安否は日を見るよりも明らか。


「悪く思わないで下さいね、キキョウさん」


私は、誰もいない部屋で形だけの謝罪を口にする。


もしこの事実を知れば、貴方は立場も身分も殴り捨てて手遅れと解りながらも姫殿下の救出に向かうでしょう。

残念ながら、この段階で事を荒立てられるたら大変不都合なのですよ。こちらの計画にとってね。


「ふう、さて、問題児な部下は何とか誤魔化せました。勇者のお子様達は明日その場で言い包めるとして………やっぱり問題はコレですよねぇ〜」


残った仕事を再確認しながら床に散乱する書類を拾い上げると、つい誰かに助けを求めたい気持ちが漏れる。


古代遺産(アーティファクト)の損失。


先程冗談半分で責任云々と言いましたが、ある意味これが最も想定外で重大な案件かもしれません。

何せ、国力そのものに影響する国宝を破壊されてしまったのです。寄りにもよって、私の責任下で。

例えるなら、暴走状態のキキョウさん五十人に匹敵する厄介さですね。どうやって降格を間逃れましょうか。


それと同時に、どうしても気になるのが……


「………物理的に破壊されたのでは無く、輸送量オーバーでショート、ですか」


鑑定を行った研究員の仰天っぷりがふと脳裏に蘇る。


『むっほぉぉ〜〜〜〜!?解析不能現象キターーーー!!!』


………いや、アレは仰天と言うよりも知識欲が刺激され興奮してましたね。

鼻息を荒げ目が血走る有様は、研究者の技の深さを語ってました。と、言うか、ドン引きでした、ハイ。


ともかく、物理的に壊されたとなればギリギリ想像出来ますが、古代遺産の魔術回路が短絡なんて、一体何の冗談でしょうか。


魔工学において、“量“とは物理的な“質量“と形而上学的な“存在“を合わせて定義されます。

従って、全ての移動系の魔術はこの事を考慮しなければなりません。


解りやすく言えば、全く同じ体格の人物同士でも保有魔力が多い方、LVが高い方、種族の位か高い方が“重い“のです。

もっと解り安く言えば、王国最強たる私が転移魔術使いに移動を依頼すればそこらの雑兵の何倍の労働費を支払ってやらなければならないのです。ド畜生ぅ。


話を戻しますと、ヘレン殿下は鬼才と表して過言ではない実力者でしたが決して人間をやめた怪物ではありませんでした。

残る少年は、確かにある意味化物と呼んでも化物に失礼な、人間どころか生物の域を超えた思い出すだけで内股になってしまう悪意の化身でしたが、彼はただの【農家】だった筈。


とても【双極の虚路】を破壊する程の潜在能力を持ち合わせてると思えません。


彼が異世界人だからでしょうか?考えれば考えるほど不可解です。


「……まあ、既に死んだ人間について危惧するのは不毛で無意味……無意味なのですが………何でしょうねえ、この胸騒ぎ……」


軍服の袖をまくり上げ、腕にはっきりと浮かぶ鳥肌を眺めながら私は呟いた。

これは、今しがた見た悪夢が原因か、それかまた別の何かか。


あの少年、モリ・ハルキの生存確率は一割にも満たない。

例え奇跡の多発のおかげで生きていたとしても、この私には到底叶わないでしょう。

然しながら、直感が胸中でひっきりなしに囁くのです………お前はとんでもない化け物を取り逃したぞ、と。


疲れのせいだと頭を振り、残った仕事に私は没頭する。

けれど日が昇る時分になっても、そしてその後日もこの胸のつっかえが消えることはありませんでした。

更に、この日依頼私は妙な夢見に苛まれることになります。


何処かで見たことのあるような、忌々しい少女が出て来る夢に。


森:「主人公は閑話でも活躍しねぇといけねぇから疲れるぜ。……ん?どこで登場してるかって?それは…………お前の後ろにだあああアァァ!!!」

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