第10話 滑って転んで大脱出
曰く、あの少女は新しい稽古事を始めるたびに、その才覚で師範の自尊心をへし折って辞退させている。
曰く、あの少女は既にいくつかの学問で博士を取得しており、社会勉強を兼ねて高校に通ってる。
曰く、あの少女は非公式に殆どのスポーツ記録を破ってる。
天才、神童、麒麟児。
どのような分野でもそう言った連中は存在するが、彼らの共通点と問われれば、度々突発的な行動で周囲を驚かす点であろう。
ドガアアアン
ゴオオオオ
バガアアアン
………はい、驚いてますとも。
「うわっ、ちょっ!?今の当たるところだったぞ!」
そこには、さっきステータス測定したばっかのクセに、何故か魔法で無双してやがるJK三人が立っていた。
最初こそ単純な放物線を描く魔法弾(?)を一発ずつ打っていたが、物の数分でマスターしたようで、今はカマイタチやウォーターカッターのようなブレード系、火炎放射に似た放射系のも出せるようになってしまっていた。
いつからJKは、AKやMGやRPGに類する重火器のアクロニムになったのだろうか?
蛇足だが、たった今フレンドリーファイアされそうになったのは、海老名が調子に乗って着弾と同時に小さな火炎玉を散布する、いわゆるクラスター式の魔法に挑戦したからである。
動機は、全く不明である。
「何ぼさっとしてるんだ春樹!早く逃げろ!」
チラチラとこちらを見る海老名。
「敵はここで食い止めます!」
チラチラとこちらを見る藤堂。
「私達の心配はしなくていいんだからね!………別に、『君達を置いて逃げることなんてできない!』とか、言わなくていいんだからねっ!」
本音を漏らす折原。
「いやいやいや、お前ら完全に遊んでるだろうが!」
俺は、フラグ回収の期待に満ちた視線を向けて来る美少女達に一種の虚しささえ覚えた。
多国籍企業の社長令嬢、厳格な旧家の息女、都市伝説にもなったスポーツ少女。
彼女らの英才教育にアニメや漫画が許されるかと問われたら、答えは否だ。
しかし、セレブがニューカルチャーに絶対好感を抱かないかと聞かれても、答えは否だ。
そして、一体誰が、高貴なお嬢様方に堕落の知識を与えると言う蛮行に走ったかというと、答えは、勿論、俺だ!
信じてくれ、そんなつもりじゃなかったんだ。
だが、彼女達には好奇心と金、金ぇ、金ぇぇ、があったんだ。
気がつけば、あっという間にああなってたんだ。
どうしてこうなったんだ。
そもそも、タイミング的に攻撃を仕掛ける意味が理解できない。
まだ話し合いで折を付けられる状況の筈だ。
ん?
一国の姫を人質にとっての話し合いは無いって?
小学校から勉強し直して来たまえ。
いや待て、ひょっとしてあいつらにも何らかの思惑があるのか?
どうしようかと迷う俺にJoshi Kommando は不満顔になる。常識的なツッコミがお気に召さなかったのだろう。
しかし、次の瞬間目を見開き、大きな驚きが表情に表れた。
「は、春樹、あんた」
「何だ?」
「その傷どうしたのよ!?」
「………はぁああ!!?」
悲鳴染みた声をあげながら、肩の傷を指差す折原。
横にいる藤堂も困惑気味にヘレンとキキョウ副団長を交互に見る。
海老名は……って、おいおい。ヘレンになんつー視線向けてるんだ。
「春樹君、何故肩から血を流しながら子供を抱えているのですか!?そして、何故キキョウ副団長が倒れているのですか!?私達がいない間、どんな美味しいシチュエーションを体験していたのですか!」
「お前らこそ、今まで何処行っていたんだ!?ずっとそこにいたじゃねぇか!!」
「春樹が危なそうだったから、魔力の使い方を掴むために集中してたのよ!辺りの様子なんて分かる訳ないじゃない!!」
「どんだけ集中してたんだよ!?相変わらず漫画の世界を生きでるな、おい!それで闇雲に攻撃するとかアリか?! 」
「これ以上にないほどの絶好なシチュエーションじゃない!空気読んで逃げなさいよバカ!」
「んな、理不尽な」
どうやら、俺は新文化の中毒性を甘く見ていたらしい。まさかこの土壇場でネタに走られるとは。
うん、こいつらが頼りにならないことだけは良く分かった。
もうこっちで状況判断するしかない。
オゥ、イエァー!チェキラー!
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鑑定結果:
【味方側の被害状況】:
切創者: マスター
混乱状態の者: マスターの被害者多数
淫蕩者: マスターの毒牙にかかった幼女
【敵側の被害状況】:
死者: 幼女の餌食になった美女1名。下克上された王バカ1名。
軽傷者及び混乱状態の者: Joshi Kommando に被弾された者多数。
【マスターのキルカウント】:
幼女の貞操でゴダんす。
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意味わっかんねーよ!!
マスターへの悪意が滲み出て、何もかも真っ黒に染まってるよ!
俺をギフトに発狂させられた者としてリストアップする気か!万象鑑定!
いや、落ち着け。
そんなの無視して考えろ。
今ならなんとか謁見の間から逃げれそうだ。
『不良に遭遇した時にやること。一、逃げる。二、逃げる。三と四はなしで五は逃げる。六から最後まで、最果てまでずっと逃げる』
よし、逃げちゃお。
チェケラチェキー!チェケラッチョ!
だからテメーはすっこんでろっ!!
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鑑定結果:
謁見の間の付近に王族専用の緊急脱出転移装置がある、でゴダんす。
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新たな精神攻撃に身構える俺の視界に、そんな文章が記されたウィンドウが浮かんだ。
次に、現在地と目的地の示された二次元マップが表示された。
「緊急脱出……転移装置?」
予想外すぎるまともな情報を俺は思わず読み返す。誤字がないか確認するため。
次は、逆に読んでみる。おかしい、有意義な内容にしか見えない。
とうとう壊れたか、<万種鑑定>。それとも修繕されたのか。
そのように疑心暗鬼になっていた俺の袖をヘレンが引っ張った。
「それ、しっているよ」
「え!?マジであんの!? つーか、何で知ってんの?」
「だいにおうじょだから」
「いや、だって、お前ガキじゃん」
「むー、……つれていってあげる」
そう言いながら、姫様は拘束している俺の腕の肘あたりを突然ギュッと指圧する。
すると、なぜか肩から指先までドッと力が抜ける。
「あっ、ちょっと!」
「こっち」
いとも簡単に抜け出したヘレンは、俺の手を握り一緒に駆け出そうとする。
どうやら、行き先は王バカが入室した玉座の横の入り口のようだ。マップの表示と一致しているので、本当に脱出装置が存在しているのだろう。
無論、素直に着いて行く気は全くないが。
「あのぉ、人質さん?誘拐犯君をどこに連れて行く気ですかね?」
「ハルキ、いい子。にげるのてつだう」
「おかしいだろ!?お前の中のいい子判定基準はどうなってんだ!いや、それよりお前を連れて行くワケには ……」
ゾ・ワ・リ
「「!?」」
その瞬間、俺たち二人は脊髄の中を舐め回されるような悪寒に苛まれた!
常に無表情なヘレンでも猫毛を逆立てる。
バッと振り向くと、そこには海老n……目を血走らせてこちらをガン見する『誰か』が立っていた。
「ひぅ」
ロリが怖がってショタの腰にしがみ付く。
『誰か』の鼻からドバッと血が噴流する。
「は、春樹。一歩もそこから動くんじゃねぇぞ?そこにいる吸いたいロリも怖がらなくて大丈夫だ、今そこに行くから」
「作戦変更!全身全力でここからズラがるぞ!」
「うん!」
今度は、こっちの方からヘレンの小さな手を握って全力で走り出した。
後ろから、「待てぇい」と奇天烈な雄叫びとか「杏花落ち着いてぇ!」とか聞こえるが、絶対に振り向かない。
『誰か』は、100メートルコースを9秒台で走破する珍獣女子高生だ。そんな余裕はない。
「ちくしょう!どうしちまったんだ、海老名の奴!?元からちょっとアレだったが、あんなヤベェ顔初めて見たぞ!!」
「ひょっとして、魔力がなくなってるのかも」
「え!?魔力がなくなると皆なああなるのか!?」
「ううん。あたまが、つかれるだけ。ハルキの友だち、へん」
「あんな友達俺は知らん!今日から赤の他人だぁ!」
言われてみれば、確かに彼女たちの攻撃の手が緩み始めていた。
レベルが50倍上の集団を食い止めてるんだ、いくらあいつらでも限界なのだろう。
とにかく、包囲網に生まれた僅かな隙間に二人で小さな体をねじ込んで抜け出す。
手負いだが、この程度の傷で動きが鈍るほどヤワではない。いや、ステータスのおかげでいつもより早く走れてる。
ヘレンの手を引きながら出口を目指す。
「おい、見ろ!変質者がヘレン様を連れ出そうとしてるぞ!!」
「何だと!?おのれぇ!姫が涙目になられてるではないかぁ!」
「追えぇ!!賊を追って殺せぇ!!」
「都合の良い目してんなぁ!?コンチクショウ!」
しかし、敵側もそう甘くない。理不尽で甘くない。
数人が飛び交う弾幕を掻い潜って迅速に回り込んで来る。
更に、俺の死角からもヘレンを奪還するために追加に数名迫る。
完全な挟み撃ちに舌打ちしそうになったが、そこで新たな援軍が参上した。
「う、うわああぁぁ!!」
「!? 柊!?」
「暁の勇者様!!?」
なんと、いつの間にか接近していた柊が崖から突き落とされたような掛け声を上げながら、眼前の騎士にタックルしてきたのだ。
「皆の者!柊君に続け!森君の退路を開くのだ!!」
「「「「「おうっ!!!」」」」」
「なっ!?や、辞めて下され勇者様方!!」
次に、一条の号令でクラスが一斉蜂起。
まるで棒倒し大会のような取っ組み合いがそこら中で発生する。
力量の差は歴然と言っても足りないくらいだが、俺と違って希少な職業持ちを傷付ける訳に行かない騎士団にとっては十分な足止めとなった。
「い、今の内だ!行ってくれ、森君!!」
「柊!お前らっ!」
柊は、ビクともしない騎士に健気にへばり付きながら先を急かす。
他の奴らも苦し紛れなサムズアップを送る。
その姿に不意に目頭が熱くなってしまった。
これはアレか!
青春時代の熱い友情のみで生まれる、ワンフォーオール・オールフォアワンって奴か!
「お前には貸しがあるからな、これ位当然だ!」
「贖罪の時は今!背中は、我々に任せたまえ!」
「森に何かあったら、折原さんが泣くしな!」
「森君が死んだら、藤堂さんが泣きますからね!」
「森がくたばったら、海老名ねえさんは俺が慰めてやるぜ!」
「フンヌオオ!!森君は僕のものだアアア!!」
うおおおおぉぉぉ!!
世の中上手く行かねえな、コンチクショウ!
途中までいい感じだったのに、俺の感動を返せ!!
「すまねぇ、柊!!恩に切る、柊!!」
「えっ、なんで二回!?」
ヤケクソになって柊の横を走り抜ける。
せめてもの妨害と騎士からも色彩豊かな魔法が放たれるが、全て折原と藤堂によって撃ち落とされた。
二人とも肩で息をしながら攻撃範囲を俺への援護射撃に絞る。もう時期打ち止めか。
だが、おかげで出口まであと少し!
俺は、減速もせず戸を蹴り破る勢いで突っ込む………
『お遊びは、そこまでです』
………ことは出来なかった。
「グッ」
「ハルキ!」
唐突に来た、心臓を抉り取られる激痛に息を詰まらせ倒れる。
「グアアアッ!!く、苦しい!!」
「きゃああ!」
「いてぇ、いてぇよう!!」
床に這い蹲ると、辺りから苦痛に悶絶するクラスメートの声が耳に届いた。
飛来していた砲弾もパタリと止み、折原達も跪く姿が目尻に映る。
一瞬で波乱していた空間が凪ぐ。
側で心配そうに覗き込んでいたヘレンが背後から現れた男に抱き抱えられた。
「いや!はなして!くさい!たまなし!はなして!」
「せっかく助けに来た白馬の騎士に向ける言葉ではありませんね。……あれ?なぜか涙が……兎も角、おイタが過ぎますよ、ヘレン様」
憎たらしいほど平坦な声の持ち主は、言うまでもないがヴィクトル団長だった。
隷属具の機能で一気に騒動を収めた彼は、一層余裕を見せ付けながら俺を見下していた。
ヤロウ、何時の間に動きやがった。
一番の障害物としてずっと意識の一片で警戒していたのに。
クソ団長はジタバタ暴れるヘレンを持ち上げたまま、痛みに襲われる異世界組に視線を移す。
そして、その芋虫のように蠢く彼らにわざとらしい呆れ顔を向けた。
まるで、無駄足掻きするガキでも見てるように。
それを目にした少年少女は悟る。
怒涛の出来事に認識が麻痺していた彼らは、本来の人生で味わうことのなかった「痛み」によって初めて「恐怖」を感じ、現実という名の冷や水を浴びせられたのだった。
日本のような平和な国、しかもその上流社会で決して経験することのなかった暴力。
それに対して己が無力だという事実が、絶望と化して静かに胸に浸透したのだ。
「やれやれ、可能ならば腕輪を使用したくなかったのですがね。ご覧下さい。やはり、血の気の多い貴方方にそれはひつy「チィエストオオゥゥ!!」」
苦しさと悔しさで顔を歪めるクラスメート、騒動の鎮圧に安堵する騎士団。
全員にその光景が行き渡った!
平伏した姿勢から兎の如く飛び上がり、動作のエネルギーが両脚から腰へ、腰から拳へ完全伝達する!
全身の体重と速度が相乗した俺の突きがっ!
ローアングルからっ!
眼前で勝ち誇った面下げてるクソ野郎のっ!
右玉袋にぃっ!!
…………チーン(何処か遠い場所から、お鈴の音色が届く。南無。)
「な……ぜ、動けるの……で………」
近衛騎士団団長ヴィクトル・アリア・ゲラルヴァン(金)は、上ずった呻き声を漏らしながら崩れ落ちるのだった。
なぜだって?
ハッ!そんなもん、決まってる!
「根性!」
心臓を締め上げられる痛みがなんだ!
ナメるなと言っただろ、クソ団長!!
その答えに、騎士団はもう人間とは別の何かを前にしるてように戦慄していた。
「折原! 藤堂! 海老名! そして柊!」
「何よ!」
「はい!」
「はっ!?あ、アタシは何を!?」
「えっ、ぼ、僕!?」
俺は、構わず声を張り上げる。
折原と藤堂は、激痛のせいで脂汗をかきながらも強気に答える。
何故か黒焦げで気絶していた海老名は忙しく辺りを見回し、柊は呼ばれたことに動揺する。
後者二名に少し苦笑いを浮かべるが、暫く会えなくなるのだ。挨拶くらいしとかないとな。
「俺はチョックラ行ってくる!そっちは任せたぞ!」
尊大な約束などせず、簡素で気軽に。
そう、こんなのどうって事ない。サラッと乗り越えてまた会おう。
不敵に笑い合ってから両開きドア蹴り開けて、ヘレンと謁見の間を後にした。
直ぐに騎士達が追跡を図るが、寸前で折原が造った岩の壁で出口がふさがれた。
そして俺は、視界に映るマップとヘレンの案内に従って廊下の奥へ進むのだった。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
走る。
走る。
走る。
「いたぞ!賊はここだ!」
「止まりなさい!」
「妃殿下は返してもらうぞ!」
俺達の行き先に立ちはだかる城内を守護する戦闘員。
近衛騎士とは明らかに劣った動きを見せる兵士と両手にダガーを構えたメイド数名だ。
どうやら、最精鋭の戦力は謁見の間を固めて、他の箇所は一般城兵といった配列のようだ。
実に好都合。
それより皆さん!
戦闘メイドですよ、戦闘メイド!
おばちゃん下女じゃなく、ピチピチの若くて綺麗なメイドですよ!
凛とした声で「曲者!」って叫んで、長いスカートに手を突っ込んでガーターベルトをチラ見させながら武器を取り出す戦闘メイドですよ!
「全く、藤堂の所の奴らにも見習って欲しいものだ。取り敢えず通してもらっていいか?」
「抜かせ!貴様なんぞの要求を受け入れる道理は……おい、待て。その壺を離さんか。それは陶芸神と謳われたアントン・カノヴァレスの代表作なのだぞ!こらっ、それを振り被るなっ!……えっ?マジで?ちょっと、冗談だよね?お、落ち着けっ、アーーーッ!」
俺は、段階的に青ざめる兵とメイドにスカッとした笑顔で廊下を飾る絵画や壺を投げつけた。
おおよそ、常人なら触れることすら躊躇する美しさと奥ゆかしさを秘めた芸術作品。
予想通り、向こうは乙女じみた悲鳴をあげながら身を挺してそれらを受け止める。
「ふっ!」
そこにヘレンの幼女パンチと幼女キックが連続ヒット!
懐をガラ空きにした奴らは、あのキキョウ副団長すら昏倒させた一撃で仲良く沈んだ。
わざわざ救出馳せ参じたというのにこの仕打ち。哀れだ。
「やっはー!」
「YAHAAA!」
可笑しな掛け声でハイファイブを求めるヘレンに、正直不安を感じずにいられなかったが、一応応えておいた。
ノリノリに聞こえるが、断じて違う。楽しんでるわけではない。本当だ。
唯まあ、肩の凍傷がそろそろ解凍して、著しく出血し始めているので少々興奮状態になってるのかもしれない。
「んと、ここね」
「あれ?行き止まりか?」
城兵の亡骸(心は死んでるかもしれない)を華麗に踏み越えた先は行き止まりだった。
しかし、マップはこの先が目的地だと示している。
ヘレンが、何やら壁のタイルをペタペタ探っているが……ああ、なるほどね。
「隠し通路か。はい、ポチッと」
「ぁ……」
ヘレンの触れていた辺りにあった、何となーーく怪しいタイルを押したら、見事に壁の一部がスライドして狭くて薄暗い廊下が現れた。
おお!ヨーロッパの城にこう言うカラクリがあるってテレビで見たが、実際使ってみたら想像以上にわくわくするな。
何か、隣の幼女が消え入りそうな声を上げてこっちを恨めしそうに睨んでいる気がするが、気のせいに違いない。
「ハルキ、ずるい、やりなおし」って、聞こえたような、ないような。
「ヘレン、追手が来たら面倒だ。中から扉を閉める仕掛けはないか?」
「うん!これを押せばいいの!」
「おお、ヘレンは頼りになるなー」
フッ、これでよし。一石二鳥。
隠し通路の奥にあったのは、正に想像通りの装置だった。
円型の台に同心状に掘られた無数の魔法陣。
いかにも、上に乗ったら何かが起きますよって雰囲気を醸し出す代物である。
戦闘メイドに隠し通路にコレ、さっきの謁見で裏切られたファンタジー感を取り戻せた気分である。
「つーか、この転移装置とやら、何処に繋がってんだ?」
「えっと、きたの、おしろの、近くのいせき」
北の城?砦か?
「まあ、行ってみたら解るか。さて、どうやってコレを起動するかだが……」
「王のもんしょうを使うの」
「紋章?おいおい、そんなもん持って……」
そこで、ふと思い当たった俺は懐からある物を取り出す。
王バカに投げ渡されたプレミアム感溢れるトイレットペーパー。
注意深く観察すれば、封に使用された蝋に猛禽類と花の緻密な装飾が施されてた。
そう言えば、クソ団長が羽織っていた豪華なマントにも似た刺繍があったな。
…………いや、まさか、ね。
…………いやいやいやいや、ありえねーって。あり得ないし、ある訳ないし、ある筈ないし、全部同じ意味だし。
…………うん、その、でも、なんだ。万が一試しに、
「ハルキ、これ、使うの」
「お、おお。お前そんな物持ってたんだ」
手に持ったトイレットペーパーと台座の縁に掘られた窪みを交代に見ていたら、ヘレンが巾着から取り出した指輪をそこに押し当てた。
何か、それの中石にも猛禽類と華の絵が垣間見えた気がするがきっと見間違えだ。
青白い光の粒子が暗い空間を照らし、難解な模様が無数に積重し光の扉を構築する。
この中に入ればいいのか。
「じゃあ、この先は俺一人で行く。助けてくれて有難うな、ヘレン」
「?」
「おいおい、何でそんなに不思議そうな顔するんだよ。これ以上付いて来る意味ないだろう」
「ゆうかいはん、いっしょにいく」
「待って、それ、色々オカシイからね?大体、フリだから。マジで姫様を拉致ってどうする」
ビシッと俺を指差すヘレンは、残念そうに俯いた。
おかしいな、俺、こいつに懐かれることしたか?
「楽しかった」
「うわーお!これはこれは、何ともお転婆姫なことで」
「また、会いにきてくれる?」
「おう、仲間の事もあるしな。なるべく早く来るよ」
「帰ったら、みんなにおこられちゃうかも」
「そこは、まあ。俺のせいにして誤魔化しとけ」
「うん、ぜーんぶハルキのせいにする」
幼女の余りの強かさに思わず苦笑を漏らし、最後に頭を撫でてやる。
そして、ひらひら手を振りながら俺は光の扉に足を踏み入れた。
一瞬、フラッシュを炊いたような眩い閃光に空間が塗り潰される。
魔法陣の光も霧散して、暗闇が窮屈な通路を再び支配する頃にはその場に誰の影も存在していなかった。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
強力な引力に引かれる感覚を覚えながら、俺は光の向こうの場所に放り出された。
……って、速い速い速い!
ちょっ、速過ぎますよ運転手さん!
ブレーキ!ブレーキ!
だが、こんな空想的装置に操縦士がいるはずもなく、俺はそのまま地面を転ぶことになった。
しかも、アスファルトより何倍も荒いおろし器のような表面を、だ。
学生服が長袖であることを天に感謝する。でないと、今ので全身挽肉になってただろう。
「イッテー。何だ、今の、誤作動か?つーか、何処だよここ」
体中を擦りながらあたりを見回すと、そこは遺跡なんかとは掛け離れた光景が目に飛び込んで来た。
溶岩石に似た地面とそれを割りながら疎らに生える草々。ただの草ではない、地球の成木の背丈の草である。
更にそれらをも遥かに追い抜く巨木がぽつりぽつりと立っていた。二百メートルは確実にあるだろう。
おいおい、あれって本当に転移措置だったのか?
物資極小化機械じゃないだろうな。
これ以上背を低くされたら泣くぞ?呪うぞ?
「この世界の森、か?だったらスゲーな、色々と」
「ちがう。こんなに高い木、見たことない」
「ほう。でも、どう見ても遺跡じゃないよな?ここ」
「うん、まちがえちゃったみたい。どうしよう」
「………」
「………」
この時、俺は滝のような冷や汗をかいていたと思う。
傷が痛むからではない。ましてや状況が不明だからではない。
いや、確かに不明だ。意味が解らん。
覚悟を決めるために一度深呼吸して、バッと横を振り向く。
隣に立っていたのは、猫のようなくせ毛に褐色の肌の幼女。
黄金の瞳が感情なく、けれどちょっと嬉しそうに俺の姿を映していた。
「ついてきちゃった」
…………………………マジでどうしよう!!??
森:「久々に出勤したら、感想あったどーーー! …………でもよく見れば、先月のやつだったどーーー!(汗)。 ヘタレコミュ症の著者は挙動不審になり、ノートパソコンをパタンと閉め、ぱかっと開け、パタンと閉め、隙間だけちょこっと開けて中を覗いてる。もはや使い物にならん。なので、本日はスペシャルゲストとして折原アンジェラ様をスタジオにお呼びしました〜(パチパチ)」
天使:「ちょっと、何で【天使】なのよ」
森:「【乳】か【ツンデレ】の方が良かったか?」
乳:「ぶっ殺すわよ!!」
森:「はいはい。じゃあ、コメント一言お願いします」
天使:「こほんっ………べ、別に嬉しくなんてないんだからねっ!(ぶるん)」
森:「らしいです。でもまあ、著者の野郎がマジでキモいんで程々にね」




