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エピローグ

20XX年 11月11日14:00 グアム島 陸自特殊作戦群 第1中隊 戦争終結から1年後

戦争終結1周年ということで、オスカーチームのメンバーは息抜きにグアム島の射撃場を訪れていた。やはりグアムは暖かく、気温も雰囲気も寒々しい東京とは大違いだ。


「タンッ、タンッ!」

射撃場から銃声が鳴り響く。オスカーチーム隊長が愛銃であるMP7で的を撃っていた。的には死亡したかつての中国国家主席の顔写真が貼り付けてあり、既に額あたりは穴だらけになっている。マガジンの弾を撃ち尽くし、爽快な顔をしてマガジンを抜く。

「うーん、やっぱマシンガンといえばMP7だなあ。どうせなら日本にあるやつ持って来たかったが、国民から買ってもらったやつだしな」

部下が銃の手入れをしながら呟く。

「それにしても残念でしたね。主席の野郎を始末できなかったうえに、中華野郎すら殺してないですよ?」

「まあな。でも特別ボーナスのおかげで、こうしてグアムでぶっぱなす金も貰えたからな。俺はこれで満足かな」

1年前、任務から開放されて日本へ戻ったときの絶望感は尋常ではなかった。東京には幾度も行ったことがあるが、あんなのは初めてだった。終戦後だったとはいえ、その光景を見た隊員たちは改めて中国人への恨みが燃え上がった。しかし数ヶ月前には首相が中国との国交正常化を宣言し、紛争の終結宣言も行われた。


その後の中国だが、戦後の総選挙で台湾の中国国民党が第一党となり、中国共産党および中華人民共和国は事実上崩壊した。国名も「中華人民共和国」から「中華民国」となったが、かつての共産党員や支持者らが抵抗を続けており、鎮静化するのには時間がかかりそうだ。とりあえず樹立された中華民国政府は、日本など周辺国との関係改善を第一とし、外交に努めている。中華民国政府は日本との関係改善のため「尖閣諸島の管理を日本に認める」とした。今回の戦争の火種でもある尖閣諸島問題を片付けるためではあるが、日本領だと認めたわけではない。簡単に言うと「資源については日本の管理下で共同で分けあおう」ということだ。日本側もこれで折り合いを付けようと、同意した。普通なら「対応が甘い」と非難されるのだが、現在は平和ムード絶頂期であるため非難は少なかった。


世界中で今日11月11日を“2大戦終結記念日”として祝っている。第一次世界大戦が終結したのもこの日なのだとか。記念日といっても、1000万人以上が死んだ日なのだが。

今回の戦争では、日本で民間人400万人、自衛隊員1万4000人が戦死。中国で民間人260万人、軍人60万人が戦死した(内戦での戦死者を含む)。米軍でも3000人近くの戦死者を出し、短い戦闘日数から考えると第二次世界大戦以来の大損害となった。核兵器などの大量破壊兵器を平気で使うような戦争であったため、世界中が震え上がった。




日本国内での中国人殺害事件および尖閣諸島問題から発展した今回の戦争であったが、日本人の予想とは全く違った展開となった。「世界に誇る自衛隊」が初戦から完敗したのだ。仕舞いには日本本土に核ミサイルが発射され、迎撃しきれずに着弾。多数の死傷者を出した。


日本国内では、早速自衛隊批判が始まった。「これほど税金を払っても国すら守れないのか」と。自衛隊員である我々からすれば言うまでもないが、我々は悪くない。罪を擦り付けるとかそういうことではなく、単純に我々は悪くない。兵士たちの能力不足だったなら批判されるべきだが、そうではないのだ。「悪いのは誰か?」と訊かれたら、自衛隊員なら迷わず「政府と国民だ」と答えるだろう。

まず、政府は判断が鈍かった。憲法を守ることを優先にし、交戦する許可が曖昧だったのだ。事実、憲法を停止してから我々は戦況を盛り返した。

次に国民。国民は自分たちが安全に暮らしたいと願いながらも、軍事組織である我々と距離を置こうとした。東京への迎撃ミサイル配備にも反対し、結果たくさんの人が死んだ。軍事組織を賛美してほしいというわけではないが、距離を置こうとする理由は何だ?私が思うに、筋道の通った考えを持った者は少ない。“平和”について深く考えたことのある国民が少ないのだ。日本という国は大きな戦争も経験し、戦争の恐ろしさも経験した。体験者はその経験を次の世代に伝えようと、子どもや孫に「戦争は酷いものだ」と伝えてきた。それ自体は良いことなのだが、我々はその影響のせいか、“平和”について考える機会がなくなった。祖父母が言っているから、なんとなく「軍隊は平和の敵だ」とおおざっぱに考え、それを筋道の通った正論だと思い込んでいるのではないか?そして「平和主義国家」という名のもとでなんとなく団結し、なんとなく平和を訴えているのではないか?


平和主義だから軍隊を持たない、軍隊は平和とは真逆の組織だというのは間違いだ。平和を維持、実現するために軍隊があるのだ。確かに、全世界が軍隊を破棄し、争いも話し合いで解決するというのが綺麗で理想的かもしれない。だが、そんなことをする国はまずない。利益を独占しようと必ず裏切る国が出てくる。だから軍隊で自分たちを守るのだ。全員が武装し抑止しあう。汚い方法かもしれないが、これが人間が唯一達成可能な“平和”だ。言うまでもないが、理想と現実は別物である。実現すればハッピーだがまず叶うことのない“綺麗な平和”を求めるか、実現できるが道徳的ではない“汚い平和”を求めるか、平和には最悪の2択しかない。


人には悪い特徴がある。それは「事が起きてからでなくては行動しないこと」だ。これは日本人にも言えることだ。災害は恐ろしいものだと分かっていながら、備えをするのは災害を体験して恐怖を覚えてからであろう。原発の事故…耐久性が低い、原発は危険だと分かっていながらも知らないフリをし、事故が発生した後に原発の本当の恐ろしさを知る。


非常に困る人間の特徴ではあるが、これは仕方のないことだと思う。人とはそういうものなのだ。今回の戦争も例外ではない。憲法9条が邪魔になること、グレーゾーン対応策が不十分であること、敵基地攻撃能力がないことなど、戦前から分かっていたし、戦争になれば酷い結果になることなどは目に見えていた。しかし知らないフリ。400万人も死なせておいて言うのもなんだが、仕方ない。これでようやく教訓はできたはずだ。これからは、少なくともこの世代の人間は同じ間違いはしないだろう。

大切なのは、未経験の状況下でどれだけ未来を予知し行動するかということだ。戦争について、日本は予知できたものの行動しようとしなかった。この未経験のものに対して「予知・行動」をできるかどうかが「賢い」ということなのではないだろうか。



…そんな誰に訴えて良いのか分からないモヤモヤを消すため、ひたすら愛銃をぶっぱなす。

「このチャーハン野郎。この俺をモヤモヤさせるとは、なかなかやるじゃねえか」

「えっ、隊長モヤモヤしてるんですか?珍しいですね。いつもならモヤモヤする前に殺すじゃないですか」

「やかましいわ。見ろ、この道徳心溢れる姿を」

主席の顔写真の、丁度眼球のあたりを撃ち抜いた。

「ハハハハッ!こりゃ凄い道徳心ですね!二代目ガンジーになれるんじゃないですか?」

「なれるんじゃないですか、じゃなくてもうなってるって。中華野郎なんて、ガンジーでも殺せって言うだろ。まあ、俺らも中華野郎とは戦わなかったが、キムチ野郎は倒したぜ」

「そうですね。自衛隊員50万全員ガンジーじゃないですか」

「その通り。まあ、俺には及ばんがな」

自分を含め、日本は平和のために戦ったのだ。そしてそれに貢献できたことを誇りに思い、改めて喜びに浸っていた。

閲覧ありがとうございます


自分の予想にも反し半年も続いてしまいました(^_^;)

更新が不定期だったり、わかりにくい文章があったりもしました。失礼しました…


今回のお話で『日本防衛戦! ~中国の西太平洋侵攻~』は最後になります。長い間本当にありがとうございました!




※宣伝になりますが、是非こちらも閲覧よろしくお願いします。日本の安全保障について書いてみました。短いですが…

http://ncode.syosetu.com/n6705dc/

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