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嫁いでみたらなるほど確かに酷かった。
思ったよりボリュームのある外見で、あぶらとり紙が何枚あっても足りなそうなほどテカっているその顔にシミ一つないのは苦労しらずの引きこもりの証しか。
こちらを見る目はなんというか、新しいメイドが来た、程度の認識だと言うことがあからさまで、地位と年齢から考えるとわかりやすさと愚かさが際立つ。
どんだけ子育て失敗すれば新進気鋭の男爵家嫡男がこうなるのかいっそ不思議な程に、私の旦那様になる人は大衆がイメージする『貴族のボンボン(但し35歳)』だった。
「初めまして、エドワルド様。シルフィニア=スーリラと申します」
こっちが格は上だから、でもこれから私は嫁ぐから。
そんな権力のねじれを上手くまとめただろう私の挨拶に、エドワルドというイケメン風の名前を持つ旦那様は、鼻をならしてこちらを一瞥。
「ああ。よく仕えよ」
何様か、と思える返しに青ざめたのは男爵家の使用人一同で、怒りに顔を真っ赤にしたのが私付きの侍女軍団。
一触即発の空気が一瞬にして出来上がったが、お互いに使用人の教育は行き届いているようで、主である私とエドワルド様を差し置いて発言をする愚か者はいなかった。
そんなピリピリした空気を意に介さないエドワルド様はある意味大物、とあきれ混じりに感心した私は別に大物ではない。
ただ、
「はい、誠心誠意、お仕えいたします」
この結婚に何の期待もしていないだけで。




