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零の武刀者  作者: OGRE
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聖刀騎皇

 木刀を振る彼の横には三人の人間が居た。監視の役目を任されたレイと龍、哲だ。レイは冷静沈着な性格で考察するには一番効果が挙げられる人間だからだ。性格で言えば哲は粗野すぎる。龍は心配過ぎて深く首を突っ込みすぎるからだった。龍とレイは何故か目を合わせるたびに喧嘩をする。そのため龍よりも簡易格闘では実力のある哲が『二人』の監視についているのだ。


「お前、体は大丈夫なのか?」

「至って健康……ゥグ」

「どこが健康だ。私の見ている限りでは貴様は全く健康ではないが」

「それは私も賛同するわ。だって、正君はもっと軽い動きをするもの」


 彼は苦い顔をするとトレーニングスーツを脱いで汗をぬぐう。その瞬間、目ざとく見ていたのは……流石は『親友』の哲だった。実は彼は寮を同じ寮に変更していたのだ。そのため、彼の誓文の変化にも気付いていた。彼の刀を先に取ると厳しい口調で言葉を継ぐ。


「お前、約束してくれないか?」

「何を?」

「俺がお前のことで解らないことがあるとでも思うか? 何年お前とつるんでると思ってる。辛いんだろう? もう、見てらんねぇよ。体がぶっ壊れる前に……」

「忠告は聞いている。だが、……」


そこに鬼神が現れた。


「そいつをよこせ。武」

「はいっ」

「おい!」


 剣を奪われた正人がすぐにその場からいなくなる。鬼神教官がため息をつき女子二人に追いかけるように伝えた。その後、哲にだけ彼の本当のことを告げるといい彼の隣に座り刀に特殊で一時的な封印を施して自分の眼帯を外す。日本人ではあるが……彼は少し特異な顔立ちをしている。顔は綺麗に整っているのだが、恐ろしく目が細いため怖い。見た目はカッコいいという部類ではあるが……。眼帯の中からは真っ赤に燃えるルビーのような瞳が出て来た。右腕のガードグローブをはずすと彼にとって恐ろしい物が現れる。まぁ、哲はそこまで気にならないが……。彼はとても気にしている。


「まぁ、お前にはいつか語ろうと思っていた。俺は奴に一人で惨い罪を背負わせたくないだけだが」

「惨い……罪?」

「お前も知っているとは思うが先天的な異能は血筋や血統などでほぼ確実に現れる形質なのは既に生物学上知れている。しかし……だ。言っておく、俺や県のように後天的な能力を持つ者は大体が危険な過去や思い出したくない過去の体験、肉体的ショックを消したいと思う心的防衛反応や肉体的防衛反応が引き起こすんだ」


 正人もそれらしい。まずは、教官のことから始まった。彼の場合は異質と言えばとても異質だ。彼の出生としては本当に……酷い。彼は過去を言ってしまうのも苦しい単語だ。『人体実験の実験検体(モルモット)』だったらしい。人として扱われたのは20歳を超えたころからだったと言うのだ。彼は人間以外の生物として定義されるような物を持っていると自白した。


「俺は『実験検体(モルモット)』だった。その時の記憶を抹消し消し去りたいがためにそういう研究所を破壊して回ったよ。俺の場合は後天的に自分の精神を守ろうと体が反応した異能……『付属機能(アビリティ)』だ。アイツもそれに関しては例外ではない」


 哲は軽いムードメーカーな性格と重いを真摯に受け止めることのできる二面性のある人物だ。彼の過去を聞いても真剣に口を開かずにいた。自分の教官が体験したことを素直に受け止めている。彼も少なからず差別を受けて生きて来たのだすぐに解るだろう。その辛さを……。


「ま、俺のことはいい。俺はそれで一般人を殺したわけじゃないんだ」

「どういうことですか?」

「アイツはな……誓文が……生まれつき存在したんだ」

「俺にはそれが重要なことかすら解らないんです。そもそも誓文とは何なんですか?」

「そうだな。お前には刺激が強いかも知れんが……人間に向けて作られた機関増強の印だ。『人体実験』をし、その過程で生まれた副産物で……その人間に確実な悲しみにくれた人生を与える狂気の産物」


 彼の体に浮いている偽誓文もその一つだと言っている。特に完成形だったのが正人の手の甲にあるそれだと彼はいう。誓文を植えつけられるの悪く言えば乞食や孤児など……その当たりの悪徳研究者から人として扱われない人だ。見つかり目を付けられれば哀れな運命をたどると決まった存在である。それを人と思わず連れ帰り『実験検体(モルモット)』として用済みになったり失敗すると廃棄していたという。身勝手で人道から外れた話だ。


「そんなことが……僧院で?」

「あぁ、だが、此処からが本題だ」

「はい?」

「言っただろう? 奴は、正人は『生まれつき誓文があった』と言った。それがどういう意味か解るか?」

「え?」


 彼は、人として育てられなかったのだ。しかし、奴らの誤算は人間として育てていれば後悔しない結果になったろう。その研究所は地下にあり人間が地上に住む場所……、そこで彼は暴走したのだ。彼の力は研究所でも未知数であり最高機密に属するものである。そのため、誤算だったのだろう。彼の……内部からの破壊でその研究所と半径五キロ以上のエリアが灰燼に沈んだのだ。しかも、一瞬で……。


「い、一瞬って……」

「事実だよ。俺も『僧院』に無理やり従わされている時に急行すると……その当時の県の育ての親にあたる『(みやび) 厳嶽(げんがく)殿』もそこで重傷を受け左腕を失っているんでな」

「な、あの人が!?」

「あぁ、1997年に起きた僧院首長の断頭殺害事件を知っているだろう。あれは県が彼にかくまわれていることを誰かが告げ口したことから端を発する。それに、公表されているのは彼が情報操作を行い作った虚偽の事実。アイツは……県 正人は教皇すら殺しているんだ」

「そんなって! アイツ何歳なんですか!?」

「いい事教えてやるよ。俺やアイツはな……人間として育てられはしていない。俺達は彼に保護されるまで冷凍保存されたりして身勝手に……検体として扱われ生きて来た。だから、もしかしたら、特に俺は戦前の人間かもしれないんだ」


 哲の顔が凍りついた。その後、すぐに、話題を切り替える。鬼神が違う言葉を発する。それからの彼の足取りと彼に関係する事象であった。人間として育てられるようになった彼は狂い出した。それまでうけなかった物を急に与えられたのだ驚くのも当たり前だ。加え、彼には五歳程度の時にやっと自我と感情と呼べないもYES or NO の選択ができるようになったのだ。そして、彼ら、友人と呼べる人間に出会えた。そのころから次第に人間としてなりたっているのだと……鬼神が伝える。


「これくらいだな。俺がお前に言えるのはあくまで客観的に見た奴の存在と経緯だ。少し、解ってやってほしいのはあれがアイツの精一杯なんだよ」

「解りました」

「よし、俺から言えるのはこれで本当に終わりにしよう。時間を取らせてすまない。飯は俺がおごろう」

「いえ、さすがに、食欲が……」

「そうか……解った」


 それだけのことを話されているのだ当然である。人扱いされたことのない人間に成りきれていない正人。それを知ってしまったのだ。解らなくもない。うすうす気づいては居たらしい哲はそのまま寮に帰る。そこにはダンベルを握る彼が居た。目があまり機嫌がよさそうではなかったようだ。彼が最初に放った言葉は……。


「刀は?」


 一瞬固まった哲が鬼神教官から渡されたそれを丁重に返す。その手つきに気付いたらしい正人は風呂に哲を誘った。それから自身の体験を伝える。


「ふぅ、鬼神さんに聞いたんだろう? 別にそれは間違っちゃいないがな。俺が誓文を持って生まれたことについて俺は気にしてはいない」

「だが、どうしてお前は此処に来る気になったんだ?」

「俺はな。この力は『誰かを守る』ために使いたいんだ。この黒刀は、俺の魂なんだよ。先代『聖騎士(パラディン)』にいただいた物。俺の腕は彼に仕込まれた」


 長い髪を洗う正人の横で地毛と言い張る哲もワシャワシャ洗う。湯気の立つ天然の温泉が使われた寮の風呂。そこで体を洗い終えると正人は目を閉じて湯船につかり口を開く。そこまで彼は重いと思っていないらしい。傷だらけの肉体を持つ二人は案外並ぶと怖い。やくざ映画に出来るくらいには迫力がある。そのせいか、話題もそこに見合っている気がした。


「理由だったな。強いて言えばだ……。俺は、お前らを守りたいがために此処に来た。俺はここに来る前に幾分かのデータを閲覧し、すぐに見つけた。お前ら二人と、教官の名前に鬼神さん。そして、昔からの知り合いや土地管理者に先代の名を。俺は失いたくないだけなんだ」


 眉のひそめ口をへの字に曲げた後に哲が小さく口を開いた。彼も幼馴染の一人である。気にすることはあるのだろう。それに、心の内ではもっと言いたい事があるのだろうがすぐに言わないようだ。彼は長く居るのと同性の友人と言うことで空気が読める。それが解っているように正人自身もその話にうなづきそれ以上に話に触れようとしなかった。


「まぁ……部外者の俺が過去のこたぁ言えないが……。言わせてほしいのは、俺からしても龍からしてもお前は大切な幼馴染だし守りたいし心配もする。頼むから、背負い込まないでくれ。俺が危ねぇ時は全力で背中を守ってほしいが逆もあることを理解してほしい」


 二、三度うなづくとすぐに風呂からあがる正人。それに合わせて哲も上がり夜半過ぎまで静かに過ごした後、彼も就寝する。


「よし、この前から敵に実習をことごとくつぶされている訳だが……」

「どうやら今回もつぶされそうですよ」


 今回は戦闘機団と近隣外洋に待機している大型旗艦と空母が待機している。その時、鬼神がニヤリと笑い正人を見た。戦闘機は攻撃用格闘機が三機編隊を組み滑空している。爆撃機の到着を待っているらしい。こちらは鬼神教官が指示を出し航空機を出動させていない。今、空に出ようとすればすぐに叩き落とされるだろう。正人が刀をつかみ動きだした。すると、哲もつく。これも鬼神の指示らしい。強力な武装を据え付けられた二人がそこから消えるとまわりのメンバーが居なくなり始める。この戦況の状態でなら二人が居れば問題ないという鬼神の判断からである。加え、龍とレイには別の任務を与えられていたからだ。


「うぅ……何で、私の相手がレイなの?」

「同意」

「でも、作戦はしっかり成功させなくちゃ」

「うむ、で、どうする? 私は空を飛べん」

「それは任しといて! レイは今回、爆弾になるんだから。『鍛えて熱くなった鉄は……鋼鉄も貫く』んだからさ」


 龍の背中にレイを乗せ急上昇した。むろん、格闘機が後ろを取ろうと先回とひねりを合わせて後ろを取ろうとしている。しかし。肩に付けた金具をつかんでいる彼女を振り落とさないように後ろからの攻撃を回避しつずけていた。


「よし、此処からは私の管轄になろう。私は、任意の物を超硬質化できる。お前と私は今はダイアモンド並の高度を持っている。それに、だ」


 背中のバーにワイヤーをかけて体を起こしガトリング式の機銃を龍の背中に据え付ける。その後、彼女の銃を構え……、コックピットへ的確に撃ち込み次々に蒼い海に落としていく。


「きっもちい~~~~~ぃ!」

「ふふ、私も、こんなに気分のいい作戦は初めてだ。行こう!」

「うん、でも! 『鋼鉄軍女(アイアンメイデン)』はリスクが大きいはずだから無理はしないで! 正君も二人で帰るのを望むだろうから」


 正人と哲も作戦を決行した。哲は脚を水かきへ変容させて爪を巨大に、硬質化も進め敵の空母の船底を切り崩しをしているらしい。なかなか簡単にはいかないだろう。厚さ数メートルの鉄板を切り破ろうとしているのだ。そこに正人が恐ろしいことをしてくれた。哲に海上に上がるようにあがるように言っている。それは……。


「哲! あがれ!」

「うおわ! 何で飛行機……そういうことか……。な、正人? その振りかぶった刀は……ぶった切る?」

「おう」

「そうか、それならそれでいいが早く済ませてくれ!」


 龍とレイは既に第二作戦に移行していた。上空の爆撃機団にレイが飛び乗りエンジンを破壊しつつ退却させる。すると、レイが飛び降り落下を始め……最後に、正人がキャッチして顔を強ばらせた。上空の龍が何かと戦闘をしていたのだ。黒い波動と龍の紅い炎がぶつかり……。


「哲! 『鋼鉄軍女(アイアンメイデン)』!」

「解ってる! 龍がやられた!」


 真っ逆様に落ちてくる龍を正人が空中で抱きしめ哲が預かりレイが周りのメンバーが避難を呼びかけ鬼神が彼を止めにかかる。正人がしようとしていることが何かしてはまずいことらしい。……形を抑えようとする鬼神を振り払い正人が力を発動する。これまでは誓文に頼らず自らの力で体得してきたことだけで闘っていた。その彼が『聖騎士(パラディン)』の力を解き放つ時がきたのだ。


「我、生命の使者を『拒絶』する者。全てを拒絶し自らの信ずる道をただひたすらに力を振るう白き罪人なり。黒き騎士の守護を受け、我は新たなる世界の代弁者とならん」


 吹き飛ばされた鬼神教官を生徒が発見し哲や龍、その近隣の島々の人々が立会人になり彼の覚醒を見守っていた。彼が何故、このタイミングを選んだのかは謎だ。しかし、彼はその道を選んだらしい。破戒の騎士として立ち上がる。


「ま、正君……」

「正人……」

「あの馬鹿……」

「正……」


 『闘氣』が鎧に変化し黒刀も『聖剣アンビシオン』に変化していく。そして、背中に白い翼が生え、一瞬で空高くに上がっていく。そこには黒いオーラを纏った女性の騎士がいた。そこから二人の話が始まる。話はかみ合わないまま抜かれた剣どうしがぶつかり合う波動が光空を覆い始めた。そして、敵軍が次々に動き出しレイの指示で軍事化が総動員されていく。その指示に合わせるように次々に異能者や魔法関連の学生達が召集に応じ現れ、鬼神教官や貴正教官の指示で陣張りが始まった。


「お前は何者だ?」

「『聖騎士(パラディン)』か……」

「その剣……」

「来ないのか?」

「……会話が」

「行くぞ!」


 黒い波動を帯びた剣と白い剣がぶつかり合いお互いに傷を作りあうと鮮血が海に降り注ぐ。正人が敵の黒騎士に斬り付け腕を切り落とすが……瞬時に腕が再生してしまい全く意味を為さない。その間に下でも全体が大きく動き出した。重傷を負っている龍の看護に魔法科からの推薦で『聖女(セイント)』が回復魔法を使用し高速回復をしている。最高速の回復をして龍が戦場に立てるだけの体力を作っているのだ。そこに完全武装に異能を解放した最高位の力誇る教官二人が前線に立った。


「鬼神、無理だけはするな」

「お前こそ、前衛線には出るなよ」

「解っている。俺はお前の背を守りお前は俺の盾になるんだからな」

「懐かしいな。何歳のころの話だよ」

「ん? 確か、30くらいじゃなかったか?」


 鬼神教官が黒いオーラを出しながらハルバートを振り回し右肩に小柄なレイを担ぎ海面を駆ける。走るというよりは高速で滑っているに近いところがあるが味方の軍艦が砲撃を開始した時点でレイと鬼神が敵の軍艦に到着していた。こちらは防備戦だ。船体の横面を見せ砲撃を開始する。魚雷を撃たれれば大損害を受けかねないがこちらには回復した龍がいた。彼女も実は能力解放の許可が下りている。一度落とされたことを根に持っているのと上で戦っている正人の手助けに行けないもどかしさでとても機嫌の悪い龍。その彼女が……四方八方に炎の縄を打ちつけ敵艦を鎮める補助をしていく。加え、砲撃してきた増援の航空部隊を全滅させるべく再び上空に上がり彼女の本来の力を打ち放つ。


「業焔演武!」


 炎の球体が航空部隊の全滅をきした。破壊力抜群の熱線爆弾が空中で破裂し航空部隊はパーツを分解バラバラにされておちていく。戦艦に残る二人も各々の力を解放して的を穴あきの使い物にならない金属の塊にしていく。鬼神の力も未知数ではあるが彼も黒い波動を持っていた。そして、彼は何かを気にしている。空中に浮いている二人の姿だった。そこに流れ弾が向かいレイが拳ではじき返す。


「教官らしくもない」

「すまない。少し気になるところがあってな……」

「解りました。ですが、彼の力にしては落としていませんか?」

「そうだな。確かに……。俺達も退こう。此処も時期に落ちる」

「了解しました」


 レイと鬼神教官の退避を確認すると島の一番高いところからライフルらしい銃を構えた男が敵の最期を告げる弾丸を的に撃ち込んだ。金属を容易に貫く特殊弾で打ち抜きその戦艦を沈め被害を最小に抑えるためにこちらの軍も撤退し『聖女(セイント)』率いる回復魔導師の部隊がけが人の手当てを始めた。これはやはり戦争であり学生や本職の軍人にも死者が何人もでている。悲しいことだが、これを前進し変えなければ彼らは報われない。遺体を回収する作業はおそらく上の二人の攻防がやまなければ始まらないだろう……。


「終わったな……」

「え?」

「行ってくる」

「教官!」


 それから数分後、ずぶぬれになった鬼神教官が二人の人間を担いで帰って来た。正人と黒い鎧を身に付けた同年代らしい少女を近くに寝かせると警戒している面々に言葉を告げると黒い騎士を抱き上げて帰って行く。追うようなしぐさを見せる軍関係の生徒を止めたのは……哲だった。彼は鬼神の特殊な過去を聞いている。そのため絶対に引けないと鬼神をかばったのだ。『鋼鉄軍女(アイアンメイデン)』ことレイもそれが理解できたらしく軍事科の生徒に厳しくその先に触れないように話をした。


「お前たちにも触れられたくない過去の一つや二つあるだろう。あの教官は私と共に任地に居られる時から上の二人には気をかけておられた。お前たちも野暮なことはするでない」


 正人が起き上がり何か重そうなことを思っているような目をした。そこにこれまで戦闘にかかわった者が皆集まる。特に上のクラスのメンバーは全員だ。


「どうしたの? 正君」

「あの女、鬼神教官に所縁のある人物だ」

「そんなことは誰でも解っている」

「レイ様? そんなことはおっしゃられずに気づついた正人様の事をお考えください」

「『聖女(セイント)』さんまでこちらの仲間か……。何だっけ? シュバルツェン……」

「シュバルツェン=エレシレナ・マクシンミリア。回復、介護魔法科主席学生でシュバルツェン家のお嬢様」

「その声は瀧蓮寺さんですか? これで、あの方ともう一人以外は僧院の求めた形ですね」

「それはそうと、そろそろ教えてくれてもいいんじゃないのか? あの人の事」

「解った。あの人は本当は結婚して幸せな家庭を築いているはずなんだからな」


 鬼神の過去に含まれるくらい部分がさらに明らかになる。正人が助けられたころには彼は独り立ちし本来なら絶対に彼とは会わなかったはずだったのだ。彼は……奥さんと娘を死ぬ気で守り抜き先代の元に逃げ込んできたという。僧院にマークされていた彼はどうにも守り切れなかったと言っていたのだ。


「彼女はその娘さんだ」

「それ……ホント?」

「形式上は俺達と同じ年齢区分に分類されるはず」

「ん……。私は、僧院を許せんのだが……同じ意思の者は居るか?」


 レイが憤りを顔だけにとどめられず小さく声を漏らした。そこに、鬼神が帰ってくる。


「俺は、お前らを束縛する気は毛頭ない。だが、死んでほしくはない。だから、できればお前たちが外に出ないで済むなら……俺一人で事を済ませようとしたんだ。だが……」


 正人が口を開き鬼神の肩に手を置いて答える。彼も先代に助けられた口であり

兄弟のような関係だからだ。


「哲と俺もそうですが……頼ってほしいと思います。俺もあんたに助けられたところが大きい。いや、これからも教官として助けてもらうところはたくさんあるんですから……頼りにしてくれないと困ります」

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