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零の武刀者  作者: OGRE
2/4

熱炉溶鋼

 ある日の夕方。彼の居る道場で彼はとても驚いていた。


「正人は私が嫌いか?」

「嫌いではな……」


 その瞬間に顔を俯かせていた少女が両目に涙をためて彼に流暢な英語で話しかけた。彼女はアメリカ暮らしが長いらしく気持ちが高まったりすると英語になってしまうらしい。『鋼鉄軍女(アイアンメイデン)』とは呼ばれようが一応は人間で感情もある。


「Prease tell me, if you are acquainted with English」

『もし、貴様が英語を理解できていたのならば答えてくれ』

「Why are you refuse me?」

『お前が私を拒絶するのは何故だ?』


 涙ぐんで声が声にならず彼女のよく通るソプラノの声も濁りが入っている。正人の反応はこれまでとさして変わらないがトレーニング用のランニングとジャージのズボン姿で刀を納め地面についた。その質問に対して彼も英語で答える。彼がどこで語学を身に付けたのか知らないが彼も流暢に答えている。


「Nothing speciall」

『とくにはない』


 珍しく私服のレイが彼の寮に近い道場に居る。彼がそこにいることは皆に知られていたため時間さえ合わせればいつでも彼には会えるのだ。ただし、度胸と精神力が持てばの話ではある。


「So why?」

『なら何故?』


 彼がいつになく重い瞼を開き真剣なまなざしをレイに向ける。彼の目は元々細いためよく見ようとするだけでだいたいの人間は縮みあがるか失神してしまう。しかし、レイのような猛者と呼ばれる人間や恐ろしく鈍感、または感情の受けが緩い人間ならば問題はないが。


「I can understand what I hurt other」

『自分が人を傷つけることは理解できている』

「So,I have been alone in other not to hurt everything」

『誰も傷つけないために俺は一人でいる』

「You have reason……Thought I hope I want to be close with you」

『有るじゃないか……私はお前に近くに居てほしい、なのにか?』


 恋愛事情のような発言が彼女から出ても彼は表情すら崩さない。青い沈んだ瞳にさらに泣き色が強くなるレイ。正人は居づらそうに鞘をつかみ外の空を指して帰るように伝える。しかし、彼が出ようとするが彼の無骨な手をつかみ離そうとしない。そこに何時にない彼の感情のこもった深い声が響く。それに目を開いたレイにまだ彼は視線を合わせない。


「If you are indifferent existence for me,I let you free」

『お前がどうでもいいのであれば勝手にさせている』

「I'm away from you as I want not to hurt you」

『むしろ、傷つけたくないから遠ざけているんだ』


 間髪いれずに彼女にしては感情的な声量の言語が飛んでくる。彼の手首はさらに強く握られ動きが完全に制止させられていた。それでもあえて彼は視線を合わせないように前を向いているらしい。自身をどのように評価しているのか知らないが……彼の心は未だ彼女には開かれて居ないのだ。


「Don't be silly!!」

『バカを言うな!』

「I don't care even if you hurt you」

『お前に傷つけられても悲しくなんかない』

「I'm sad to be alone and refused than you do harm to me」

『一人でいることのほうが拒絶されたほうが胸が痛い』


 次は背中に抱きつき離そうとはしないらしい。そのために彼が一言だけつぶやいた。別に彼はそこまで困りはしない用件だったということで……。彼女にようやく振り返り鞘におさめた刀を右手に持ち替え左手を離させる。直後、彼は日本語でさらに深く言葉を告ぐ。


「ついて来い」

「n……」

「お前が拒絶されるのが嫌であるなら俺の近くに居たいなら俺の秘密を知る必要がある」


 その時、大きな警笛が鳴り始め島の各部にある軍関係の施設から完全武装するあわただしい音がたつ。彼も彼女の手を引いたまま寮にある彼の部屋に飛び込み壁にかけてある重装備にも程がある防具と大量の多種のナイフ、剣、刀を装備しそれを終えるとレイに向き直る。軍事科の彼女ですらその手際に驚きながらもそれを見続けていた。それが終わると彼がレイに彼女の寮の場所を聞いてくる。


「お前の寮はどこだ?」

「は?」

「お前も『は?』って言ったな」

「え、あ、いや、北の軍部関係者の学生寮だが……」

「来い。振りおちないようにしっかりしがみつけよ」


 正人がレイを抱き上げて屋上に上り走り出した。彼の身体能力は恐ろしいの一言に尽きる物だった。私服でスカートを着用しているため屋上を走らせると危険だと判断したらしい。驚いた蒼い目のレイが言葉を発する前に彼女の部屋についてしまい学生寮で彼女を探していたらしい女性の軍学生たちが正人を凝視している。本来男子禁制の場所に屋上から入ったために一応は下に降りなくてはならないからだ。屋上から飛び降りようとする彼を彼女が止めたらしい。


「水無月元帥! お探ししていました!」

「そんなことはいい! 現状報告をしろ!」

「イエス! マム! 現在未確認とはいえ小型攻撃艇と大型戦艦が管理水域を超えました。その後、我が船底の警告を無視し砲撃を開始こちらの被害は生徒に重傷一名、二名の行方不明者が出ています」

「解った。県。これからどうしたい?」

「今回は緊急事態だ。死人を出さないためなら俺はお前らにも協力は惜しまない」

「解った。ヘリに皆を乗せる! こいつも臨時に部隊に組み込み敵に奇襲をかける」


 そこで正人が首を横に振る。携帯電話を使い増援を呼ぶといい哲と龍の二人に連絡を取りヘリの中で軍事科の女生徒達に説明した。彼の神がかった兵法知識に驚いている様子だ。次々に動き出す彼ら軍兵型の生徒たち。それを指揮するのはいつも彼女『水無月 レイ』なのだが今回ばかりはそうならず認知されていたはずなのだが実力が未知数な正人だからだ。


「まずはヘリを三機に分けて俺と『鋼鉄軍女(アイアンメイデン)』のみの一機。これは囮だ」

「な、元帥を一人に!」

「俺が居るだろう」

「そ、それは……」

「コイツの戦闘能力は皆が知っているだろう? で? 続きは?」


 今回の作戦は囮の二部隊を使い敵を陽動する作戦だった。ヘリの横にヘリの操縦をしている生徒からの熱源反応を感知したと報告を受け正人が確認する。窓に映ったのはバトルスーツに身を包んだ龍だ。その反対側に羽音を立てる哲が居る。その後、さらに作戦を続けた。敵間はそこまで広くないため今は彼らの搭乗機意外は近隣の基地に待機させてある。もちろん哲や龍も異能を保持しているというが『人間』という際を超えることはできない。そのため能力の使用にはスタミナや何らかの代償を払うのだ。特に哲の場合は彼の一族的な特異な体質でなければできない体の変化……。それをするには寿命を削る。彼の一族は研究の結果から寿命が他の人間の三倍から六倍はある。だから、使える能力なのだ。龍の場合はもっと特異だ。体から炎を噴出し纏うことができる体は熱に強く熱循環やエネルギーの効率が科学の際を超えている。未だ解らないことだらけではあるが『スタミナ』の消費は免れない。疲れさせないために休息も作戦に含んでいるのだ。


「敵の戦艦はレーダーに感知される限りでは小型攻撃艇が三艇、中型砲撃戦艦二艇、空母だ。俺と『鋼鉄軍女』は最後尾の空母に奇襲をかける。後続二機は龍が小型舟艇を鎮めるのを補助した後に戦艦を占拠しろ。最後に哲の誘導を受けて迂回したら敵の戦艦を奪うんだ。そこからは哲の指揮に任せる」


 作戦の全容は島の形態を理解したものだ。軍部の生徒に気を利かせ実は他の離島に駐留しているこちらの大型砲撃艦三艇と中、小型の攻撃艦を島の裏に隠し戦闘機をレーダーに探知されないように協力なジャミングを使った上で放ち敵を包囲していたのだ。途中で打ち合わせ通りにヘリのメンバーを入れ替えレイと二人でヘリに乗り込んだ。


「どうして護衛まで断ったんだ?」

「俺の素性が知りたいなら他言は無用だ。俺の能力(ちから)単純には体得した力はこの世の中では特別な物なんだ」

「どんな能力(ちから)なんだ?」


 彼が操縦する中で説明しだす。彼の力は……政治的、宗教的にも大きな問題をはらんでいた。彼が隠しておかなくてはいけない力のため彼女と数人の気の置けない友人にしか言伝手いないのだ。彼が無線を受けているため言葉を止めている。無線機を置くと手の甲のいつもグローブを付けている手からグローブをはずし見せながら言う。


「で?」

「単語だけでもこれは厳しいんだ。『聖騎士(パラディン)』って知ってるか? この紋章にも見覚えがあるはずだ」

「『聖騎士(パラディン)』だと?」

「義祖父がその職についていたんだ。だが、『堕ちた聖騎士』だがな」

「どういうことだ? 1997年に起きた僧院の教皇の崩御……あれは俺の義祖父が殺したんだ」

「ま、まさか……な」

「事実だ。俺の義祖父は教皇の暴挙に憤りその首をはねたんだ。俺に教えてくれたのは俺が七歳の時、それから俺は『聖騎士』になるために自ら鍛錬を積み今に至る」


 『聖騎士(パラディン)』の歴史……過去、二回の大戦中に政治的混沌に光を導いた英雄としてその血や伝統が密かに受け継がれている聖なる血統として世界には好評されている。その伝承はさまざまだ。一番有名なものは第一次世界大戦中に聖なる夜の中兵士をまとめ上げ敵味方を問わず神へ忠誠を尽くす者の身を救ったと言う。第二次世界大戦ではそんな聖人のような一面を覆し戦線的な面を持つ。白銀の鎧に身を包み聖剣を握りスターリングラードの攻防戦において敵の戦車をねじ伏せていると言うのだ。彼がそんなことを口早に型す中、ヘリ部隊の最初の彼らが敵の射程範囲に入り攻撃が始まる。彼がいうには人為的に射撃は行われていないという。弾道が明らかに機械的すぎると言うのだ。そして、レイにヘリの掴むバーを掴ませ恐ろしく荒い操縦を始めた。敵の砲弾と機銃掃射を掻い潜りながら敵の近距離まで詰め寄るが……。


「レイ! バーを離せ! 早くするんだ!」


 ヘリが撃墜されたのを合図に龍と二機目が隠れていた場所から飛び立つ。今回の作戦では敵の夜襲で戦力が解らないため通信を基本的にジャミングしている。そのためこちらも秘匿回線以外は使用できない。しかし、こんな小規模な戦闘でそこまですることはまずしてはならなかった。だから皆がそれを理解し、あえて二人の安否を確認しなかったのだ。哲の部隊には彼三種類の発光弾が渡されている。敵の陽動が見られていた場合、敵の完全投降、殲滅を意味する発光弾だ。


「まったく……ギリギリだな」

「いつまで抱いている気だ? もう、敵地の真ん中なのだぞ」

「よく言う。作戦中に放心しやがって……。小柄だったから良かったものの」


 彼女を下ろし作戦の進行を確認した。龍は炎を体から噴出させているため光を強く放ち目立つ。それに機銃や砲火が集中している間に彼らは艦船の内部に侵入した。彼女の愛銃を太股のホルダーから抜き取り構えてかなり厳しい表情だ。それもそのはず……、敵の艦船内部には彼らの侵入を予め想定していたかのような大量の監視カメラや無人の迎撃装置があったのである。しかし、正人はまったくどうじない。


「『鋼鉄軍女』は俺の背に隠れながら後ろの見張りを頼む。小柄なお前なら弾には当たらんだろうが後ろからの攻撃には注意すべきだ」


 言われるままに後ろに隠れるように二丁の拳銃を構えて正人の背後についた。敵の無人兵器の放つ銃弾が次々に正人の刀によって切り分けられガトリング式のそれらも前に急前進した彼に切り分けられ破壊されていく。その動きを見ているレイとともに敵の司令部にたどり着いた。そこには予想通りに人の影は見当たらない。この艦船がオートの操縦で空になっているということは……。


「エンジンに爆弾が仕掛けられているんだろうな」

「は? 何を根拠に……」

「いや、可能性にすぎないがこれも捨てきれない。今、操舵室のシステムは俺の知り合い達のクラッキングでシステムが崩壊しているはずだ。いずれ止まる。だから、わざわざ俺達が『囮』になったんだよ」

「まさか……」

「あぁ、俺の見解では三つの選択肢に敵は動くと踏んだんだ。敵の奇襲部隊を今頃、哲の部隊が撃破したところだろう。こちらの司令部を狙い貴正(たかまさ) 政都(せいと)教官を狙うのが定石。しかし。敵はあろうことか砲撃艦を数隻用意し包囲されているにも関わらず通信や交渉の動きも見せなかった……だから、安易に予想できた」

「しかし、それが外れていれば今頃私たちの仲間が……」


 そこに哲からの連絡が入った。発光弾は敵の奇襲と陽動を同時……どうやら敵も考えたらしい。敵の機動部隊はこの軍艦に帰還し体勢を整え各地に自爆を目的に機材をそろえて飛び立とうとしているらしい。ならば……こちらも向かい打つまで……と彼の動きがいきなり機敏になる。次々に帰還してくる機動兵やヘリの部隊。案外と敵の数が多い。そして、彼が動いた。


「お前は後方からの援護射撃を頼む。俺の刀さえあればたいていの武器は効果を上げない」

「解った」


 甲板に集まる敵の兵団に突っ込んだ正人。龍の部隊はヘリに銃弾を数発撃ち込まれ龍のスタミナも限界に近いため一度帰還。もちろん、哲の誘導した奇襲に奇襲をかける部隊はついでに行方不明の二人を回収しているためこれからの即時展開は不可能。応援もジャミングの関係で哲のように発光弾をもって居ない正人とレイの二人では何ともできないのだ。だが、無茶苦茶なことをするのが得意な正人の持つ刀で……。


「遅い……」


 敵のヘリを一刀両断し撃ち放たれる銃弾を腰から抜いた二本目の日本刀を駆使し全て弾き落とすか流す……または、当たっている軌道なのにあたっていない? 敵の攻撃に即時対応する程度の速度では勝てない。だから……何らかの体得した異能ということとなろう。


「な、なんで? 銃弾が……」

「『絶対的破戒空間(アブソリュートブレイカーエリア)……」


 彼のよくわからない言葉で周りに白い空気のようなものが現れ銃弾や刃物、炎が全て弾かれる。加え刀には白い気が纏われ長さや強度、他の付属事象が加算されている。彼、正人が体得した『聖騎士(パラディン)』の実質的な力。それを公表されている程度の知識で説明すると彼らが操ることができるのは『闘氣(とうき)』と呼ばれる人間が発する感情の延長線上にあるそれを体内でエネルギーとして増幅し大きくしながら纏う物だ。しかし、あくまでこれは公共に公表されていることでありそれが事実かどうかは解らない。加え彼は明らかに他の力を使うように刀から『闘氣』を放ったり体中から『闘氣』を集中させるなどもしている。彼が敵の機動兵を次々に切り捨てるなか……彼の背後、一段高いところでうめき声が聞こえて来た。どうやらレイが負傷したらしい。とっさに彼は半数以下に激減した敵を撃破するのを止め飛び上がりレイを抱き上げ何らかの処置をすると海に飛び込んだ。敵も予想外の展開らしく機銃を海面に向けて放つ者もいたが……。


「俺の教え子に手を出して……。生きて帰れると思うなよ?」


 敵の軍艦の上に黒い影が現れ敵の兵士が一瞬で蹴散らされた。それから彼は一瞬で居なくなり……その夜の騒乱は幕を閉じたのだ。死者零名、負傷者四名、設備被害、小型舟艇二隻、ヘリコプター一機。そして、その夜に緊急手術が行われ何とか一人が命を取り留めた。その病室には正人が剣の手入れをしながら座っている。


「うっ……。此処は?」

「気づいたか? ここは軍部の緊急搬送センターだ」

「うっ……」

「喋るな。心臓の真下と二か所を損傷してるんだ。呼吸することだって厳しいだろう」


 それから数時間し彼が部屋を出ていく。そのまま彼はその夜は帰ってこなかったようだ。翌朝になり教官達と共に花束を持って何事もなかったかのように病室に入って来た。その彼を見ているが教官達は彼女に気を失っている間の彼女の動きを伝えている。どうやら彼らは彼がどうしてこの学園に呼ばれたかを知っているらしく『聖騎士(パラディン)』の単語を何気なく話している。


「意識が戻って何よりだ。水無月元帥」

「貴正……。ここで他人行儀はよせ。コイツもそんなキチキチした中では話しづらい」

「済みません」

「いい、気にするな。昨日のことは大体を県から報告してもらった。君に起きたことそして傷の箇所や応急処置は大体彼が処置してくれていたから結果的な推察として命を取り留めたこと……いろいろと話は積る。……が。今回は君や他の学生に急きょ集まってもらわなくてはならない」


 昨夜、彼は能力の一部を使い彼女を救ったらしい。軍艦の縁から身を投げ海水の中を泳ぎながら彼らが助かったのも彼が異能を体得していたからだ。そして、彼女が何故不覚にも銃弾を受けたか……それは事故といってしまえば一言だが詳細として伝えるのえあればとても複雑だった。こちらのシステム科の学生が敵の砲撃艦内の無人警備装置のシステムを弄ったときにミスをしてしまい機能を回復し……彼女の背後から数発のガトリングの銃弾が当たったのだ。幸い対人用の兵器だったため危険水域にとどまり即死は避けられた。それに加え正人の機転の効いた攻撃でガトリングのコンピューターと接続しているコードと金具を波動のようなものでたち切ったのだ。それにより彼女が被弾したのはたったの九発。心臓の真下に一発、右肩から肘までに二発、右の太ももに二発、左右の脇腹に四発。計九発。全て摘出され傷も心臓の真下の物以外は綺麗にふさがると言う。しかし、心臓の真下の物は……。あと数ミリずれれば命を奪いかねなかったらしい。


「運のいいやつだ」

「ふん……。だが、助かった。礼を言いたい」

「素直に言え。それから、お前も前線にでるなら防弾装備くらいしておけ。今回は対人用の兵器だからよかったが……お前のように対戦車ライフルを人間に向けて放つ用な輩が居ないとも限らないんだからな」

「人聞きの悪いことを言うな」

「だが、事実だ」

「お前だって何なんだ。あの力は……私の知識では『聖騎士(パラディン)』には人を治癒する力はないはずだ。だが、どうやって……」


 彼がそのことについて口を開いた。彼の力『聖騎士(パラディン)』の『闘氣』とは空間や対人に作用する物らしく彼の意思でどうとでも成るという物だと言っていた。攻撃性、安定性、防御力などなどが完全に調和しているのだ。それを応用したに過ぎない。彼の掌には誓文と呼ばれる金色の古代文字と十字架の描かれた紋章があった。それを見るだけならただ単に張られているだけ……または、刺青などにも見れる。しかし、レイがそれに触れようとすると結界のような物に弾かれすぐに手を引っ込めた。蒼い瞳が驚いている。それもそのはずだ。この世界には確かに魔術や魔法と呼ばれる物は多く確認されている。……だが、おかしなことに彼には魔術も何も反応はない。それが強力な結界風の何かを保持しているからだ。


「お前……まだ、気づいて居ないのか? お前も既に俺達の仲間入りなんだよ」

「私に何か起きているのか?」

「お前には俺と同じく強力な異能が感じられる。狩りにだがな俺が能力でお前を治癒できても……簡単にはお前は助からなかったろう。異能……俺の知識では本当にお前は『鋼鉄軍女(アイアンメイデン)』になってしまったんだ」

「嘘をついても意味はないか」

「あぁ、俺もそうだったように突発的に体に習得することが多いんだ。人間は生命力の限界を迎えると危険を察知して特異な力をその身に受けることが稀にあるんだ」


 異能を習得する。その間に彼はどんな経緯を持っているのか知らないが彼は多くの修羅場をくぐってきているらしい。手の甲には誓文そして、異質な性格と立ち振る舞いなど……。それを数日だが見ている彼女にも『こちら側の人間』になったのだと理解したらしい。強力な異能を体得するにはそれ相応のリスクを伴い体にもダメージを負うのだ。特に……例をあげて一番負担があると言えば龍だ。彼女も由緒ある家柄の出であり『焔群家』の血統。そして、異能の中でもトップクラスのレベルを持っているのだ。


「で? 何でお前は俺の秘密基地に居るんだよ」

「お前はまだ理解できんのか?」

「何をだ?」

「マァ……いい。私の心を理解してくれるまで私はお前に付きまとうからな」

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