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没作です

作者: 闇夜 霊

レヴィアタン誘拐事件


あれから10日がたちやっと筋肉痛が取れてきたころレヴィアタンはのんびりと

日向ぼっこをしてくつろいでいた。いつもはルシフェルといるのだが今日は休暇をもらったので

のんびりとすごしている。暖かい日の光が気持ちよくて幸せだったりする。

天界の森の開けたところで木に囲まれのんびりと日向ぼっこをしていた。

がさっ・・・・がさがさと近くの木が揺れる。驚いて飛び上がるように立ち上がって剣を構える。

今日はちゃんとした剣を持ってきた。心もとないがないよりはましだ。

だが敵は後ろから静かに現れて・・・・レヴィアタンはその日誘拐されたのだ。



ルシフェルの城ではレヴィアタンが1日たっても帰ってこないのでみな総出で探していた。

ルシフェルは部屋でベルゼブブと話あっていた。

「レヴィは勝手にどっかいくようなやつじゃないぜ」

ベルゼブブがそういうとルシフェルはたしかになとため息をつきながらいう。

そうすると結局誰かに誘拐されたということになる。天界で誰がレヴィアタンを誘拐するのだろう。

別にうらまれるような性格もしていないので正直心当たりがない。

「それはわかっているが天使でいったい誰がさらうというんだ?あんなやつ」

ベルゼブブも首をかしげている。ルシフェルをさらうなら理由がわかるがレヴィアタンは大して

強くもない天使だ。そんなやつをさらって何をしようとしているのか全く理解できない。

「・・・誰がさらうんだろうな?全く想像できないぜ」

ベルゼブブも頭を抱えている。この難事件どうやって解決しようかベルゼブブなりに考えていた。

犯人の目的すらわからないのでどうしよもない。

「そうだ。テレパシーとか使えないのか?」

ベルゼブブが聞くとルシフェルはため息をつく。

「できるならとっくにやってる。繋がらないんだ。死んだか・・・電波の届かないとこにいるかどちらかだな」

一瞬恐ろしい言葉を言うのでちょっと身体がこわばったがすぐ持ち直しため息をつく。

どちらにせよ危険な状態だということはわかった。

「電波が届かない所ってどういうところなんだよ」

ベルゼブブが聞くとルシフェルが答える。

「別空間だよ。エレメントの庭みたいなとこ。あそこには届かない」

「エレメントがさらったんじゃないか?それって。それならテレパシー通じない理由がかみ合うじゃないか。」

ベルゼブブがそういうとルシフェルは悩みこんでしまった。そういえばレヴィアタンがいなくなってから

少し元気がない気がする。気のせいかもしれないが。ベルゼブブはそう思っていた。

「そうだな。何も行動起こさないよりは起こした方が性にあってる」

ルシフェルはそういうとベルゼブブと一緒に城を出て、四大天使のところへ行くことにした。


「私は貴方の顔もみたくないのですが」

最初にミカエルの所に行くことにした。火のエレメントはものすごく不機嫌だ。

そりゃあ、きらっている双子の兄が君の庭を見せてくれと押しかけてきたら嫌だろう。

隣にいる双子の兄もとてつもなく不機嫌である。

ルシフェルも表情に思いっきり嫌なのがでている。

「その言葉そっくりそのまま返させてもらう」

ルシフェルが挑発的にいうとミカエルは剣を抜く。ベルゼブブは即座に止めに入った。

「ルシフェル様、今日は戦いにきたのではないでしょう」

敬語でそういうベルゼブブにルシフェルは不機嫌さをさらに強めたがわかったというようにうなずく

明らかにイライラしているのが見てとれる。

「俺の副官がさらわれたんで、お前の庭見せろ」

「・・・嫌です。当たり前でしょう。だいたいあなたの副官をさらう理由が私にはありません」

ミカエルは眉をひそめそう答える。どうやら警戒しているらしい。たしかにミカエルにはさらう理由などどこにもないとベルゼブブは思う。ルシフェル自体もそれには気がついているようだ。

「たしかにそうだな。じゃあ後回しにしようか。他の所で見つかるかもしれないしな」

ルシフェルは淡々とベルゼブブにいう。ベルゼブブはじゃあそうしましょうかと答える。

するとミカエルが驚いたようにルシフェルを見ながら声をあげる。

「ど、どうしたのですか?ルシフェル。今日は妙に聞き分けが良いのですね。」

「い、いや。別になんでもないけど。今日はなんだかな。」

ルシフェルは目にいつものように闘志を宿していない。さっきあれだけいらだっていたのにそういうだけで済ませるのはルシフェルらしくないとミカエルも思ったのだろう。

「ルシフェル。熱でもあるのではないですか?」

「い、いや。じゃあ俺もう行くわ」

そういうとルシフェルはすごい速さで部屋をあとにしたのだった。

ベルゼブブはミカエルに一礼し、そのまま部屋を出た。


「次は・・・ウリエルか?」

ルシフェルはものすごい困った表情を浮かべる。

「そうですね。

考えて見えればレヴィアタンをさらうのはウリエルかガブリエルの可能性が高いと思われます。」

ウリエルは自分の欲しいものは力づくでも手に入れるタイプなので、たしかにさらっていく可能性は高い。

しかし、レヴィアタンにそんな魅力があるのかいささか疑問ではある。

ルシフェルはウリエルがあまり好きではない。・・・というか苦手というべきなのだろう。

嫌い好きではなく苦手。ウリエルは特殊な力を持つ者を好む。

その所為かルシフェルはウリエルに捕まりかけたことが何度かありそれからウリエルが苦手らしい。

またサリエルと違った恐怖があるようだ。とてつもなく行きたくなさそうなルシフェルにベルゼブブは声をかける。

「俺1人でいきましょうか?」

「・・・そうしてくれると助かる。俺はガブリエルのとこいってくるよ」

ルシフェルはそう言ってすたすたと逃げるように歩いていってしまった。

ベルゼブブは1人ウリエルの部屋に向かう。

ウリエルの部屋へ入ると庭への扉が開け放たれていた。

庭は部屋の中に扉を配置しそこから行くことができる。

庭の中は荒廃していた。枯れた木がたくさんあり、あまりに物悲しい。

「・・・かわいい」

ボーっとした表情をしてそうつぶやくウリエルは椅子に座ってレヴィアタンを幸せそうに眺めている。

うっとりとしているのかもしれない。あまり放っておくとレヴィアタンが酷い目にあっていたかもしれない。

どうやら眠らされているらしい。天界にしかない木が上手にレヴィアタンを縛り上げている。

「ウリエル様。」

ベルゼブブが背後から声をかける。すると幼げな茶色の瞳をこっちに向け

明らかにぽかんとした表情でこういった。

「ん?・・・・・君は・・・・だれだっけ?」

むかっ・・・こいつ俺のことわすれてやがる。ウリエルは特殊な力があるものを

愛しているのでそれが人だろうが物だろうが同じ扱いである。

「でも・・・君もいい力もってるね・・・。欲しい」

ウリエルが椅子から立ち上がると椅子が消える。それと同時に鎌が現れた。

・・・。たしかエレメントを下級天使が傷つけると裁判受けなきゃいけなくなるって

だいぶ前に聞いたな。ベルゼブブはそう心の中で呟きため息をつく。

剣を静かにベルゼブブは構える。

「・・・あ、思い出した。僕の愛しいルシフェルの部下だね」

愛しい????恐ろしいなウリエル。あいつを愛しいなんて・・・;;;

だからルシフェルはこいつが嫌いなのか。

「はい、そうです。レヴィアタンを返してもらいましょうか」

ちらっとレヴィアタンを見た後、急に鎌で切りかかってくる。

その攻撃を避け、後ろに下がる。

「だめ。あの子は僕のものだから。特殊な力をもってるしかわいいし」

ちょっと口調が強くなる。どうやら怒っているようだ。

「お言葉ですが、あの子はルシフェルの配下のものです。勝手に手出ししていい人ではありません」

ベルゼブブも口調を強めながらいう。すると、庭のドアがばたんと閉まる。

「・・・逃がさない」

ドアは瞬時に消えまわりの情景が少しずつ変わっていく。

いろいろな場所から赤いマグマが溢れ出す。一瞬にして地獄に変わった。

庭はエレメントの領地。いくらでも土地自体を変える事ができる。

無防備に入るんじゃなかったな・・・。鎌を振りかざし、ウリエルが迫ってくる。

周りはマグマに囲まれていた。ウリエルはなぜか空を飛んでいる。

「君に・・・地獄を見せてあげるよ。僕これでも地獄で拷問とかしてるからさ」

「十分地獄を見せられてる気がするんですが・・・」

ため息をつきながらそういうと鎌がしっかりと自分の首を捕らえている。

少し引けば首が吹っ飛ぶだろう。とか冷静に判断してみる。

ウリエルはベルゼブブを殺すことは無い。そんなことをしたら愛しのルシフェルに嫌われてしまうから。

「・・・。ねぇ・・・君とあの子人質にとったらさ、ルシフェル来てくれるかな。」

ウリエルが何か思ったように急に呟く。恐ろしいこといってる。これはもう天使がいうことじゃない気がするが・・・。赤いマグマが一気に吹き上がる。こちらに向かってきたのだ。

ウリエルはボーっと考え事をしている。

「ウ、ウリエル様?助けてくれますよね」

「へ?あ、ごめん。君を生かしとかないとルシフェルがこないからね」

すると周りの情景が元に戻る。すごい力だ。

「呼んで来ますよ。」

「・・・んー・・・じゃあ呼んで来て」

ウリエルはそういうとドアの外にベルゼブブを勝手にワープさせた。

「お帰り。ベルゼブブ」

目の前にルシフェルが立っていた。誰もいないのを確認してからため息をついていった。

「ルシフェル?やっぱお前がいねぇと無理だわ」

ルシフェルは意地悪な瞳をし、挑発的に言葉をつむぐ。

「ベルゼブブはほんとにおれがいないとだめだな。やっぱりお前に任せたのが・・・」

「ルシフェル。ウリエルが嫌で逃げ出したお前に言われる筋合いはねぇと思うけど。」

ルシフェルの顔が困った表情になる。まさか忘れてたのか。

「身分的に違いがありすぎるんだよ。こっちは攻撃に出られないんだ。」

ルシフェルはそういえばそうだなとうなずく。エレメントに怪我などさせたら裁判にかけられて

牢屋の中でしばらく過ごさなきゃいけなくなる。たしかにベルゼブブがそうなると困るな・・・

レヴィの親離れが酷くなる。とルシフェルは思う。

「お前も来いよ。ベルゼブブ」

「あぁ、行くよ。」


「ルシフェルー。久しぶりだね」

・・・・ルシフェルの表情が一気に変わる。相当苦手なのだろう。

というか得意なやつなんているのか。

「レヴィを返してくれるか?ウリエル」

「いいよ。」

素直にルシフェルが言ったら聞いた。返してくれるらしい。

やれやれこれで一件落着だとルシフェルが思ったとき。

「その代わり。ルシフェルー・・・僕と暮らそう」

「・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!!!!!!!!!」

ルシフェルの目が余りに恐ろしいという色に染まっているので・・・

ついつい笑いがこらえきれなくなったベルゼブブが笑っている。

サリエルがいくら恐怖を与えてもあんな表情にならないだろう。

「・・・笑うな。」

ベルゼブブは笑いながら、言葉を返す。

「良かったではないですか。貰い手が現れてくれて」

ルシフェルの表情が一気に怒りの表情に変わった。

「ねぇ・・ルシフェル。だめ?」

うるうるとした目をこちらに向けてくるウリエルに一瞬負けそうな表情に

ルシフェルがなったが、残念なことにそれ以上にかわいいやつが目を覚ましていたのだ。

「あれ?ルシフェル様・・・。ここどこなの?」

レヴィはあたりを見回す。あれ?僕、森で日向ぼっこしてたのに。

何でこんな所いるんだろ?しかも縛られてるし。

レヴィはそんなことを考えていた。

「レヴィ。こっちへ来い」

ルシフェルが軽く呪文を唱えると黒い刃がレヴィを縛っていた木を切り裂く。

「え?あ、うん。そっち行く」

はしってよってくる姿はあまりに可愛い。それをとめようとウリエルが邪魔に入ろうとしたが

その瞬間ルシフェルの目に殺気が浮ぶ。ここまで怒るルシフェルを見るのはベルゼブブでも久しぶりだった。ウリエルはさすがに足を止めた。嫌われるのが嫌なのだからそういうことはしない。

ただ、いつでもルシフェルを狙っていることだろう。

「レヴィ、無事でよかった。お前、誘拐されてたんだぞ?」

「え?・・・あ、あれ?ウリエル様?」

レヴィはただただよくわからない表情を浮かべるしかなかった。


いろいろ説明してもらったけど結局何がなんなのか全くわからなかった。

レヴィアタンは自分の荒れた部屋のベッドでそう思う。

でも、まぁたすかったしいっか。と心の中でいい眠りに落ちた。


ガブリエルとミカエル


「お久しぶりです。ミカエル」

ガブリエルはミカエルの所に遊びに来ていた。ミカエルの庭はとても綺麗で

白い薔薇が咲き誇っている。真ん中にはお茶ができる建物がある。

あまりに白一色な光景。ルシフェルが見たらすごい嫌な表情をするのだろう。

「久しぶりですね。ガブリエル。何の御用ですか?」

とても不思議そうな顔をするミカエル。どっちかといえばガブリエルはミカエルと話すことより

ルシフェルと話す事の方が多いのだ。だからミカエルには敵情視察にも見えなくもない。

「ルシフェルのことでお話があります。」

「あの者の名前を出さないでいただけますか?」

ミカエルは口調を強めもせず普通にそう言い放つ。

「貴方も疑問には思うでしょう?いつも引き分けなこと」

ガブリエルは静かにそういう。するとミカエルはたしかに疑問だと思った。

毎回、毎回、引き分けになる。それのだいたいの理由はルシフェルの奇怪な行動だった。

急に腹痛がとかいいだしたり、仕事があったと戦ってる途中に言い出したり、来客があったとか

いろいろあった。それで最終的には毎回引き分けになってしまうのだ。

「思います。ですけど・・・」

「ルシフェルは貴方に手を抜いています。」

ガブリエルはまるで確信があるかというようにそう言った。

手を抜いている?あの男が私に?なぜ?

頭の中に次々と疑問が浮びミカエルは混乱する。

「なぜですか?手を抜く必要などないです」

「貴方が弱いからです。」

ずばっとガブリエルは何の感情も込めずにいう。

ミカエルは少し表情が出る。純粋な怒り。とてつもない怒りだ。

「私は弱くなどありません。」

「では、ルシフェルに勝って見せてください。証拠があれば私は納得しますわ。」

挑発はうまくいった・・・と心の中でガブリエルは思う。さて、ルシフェルはどうでるのでしょうか

とても楽しみです。いつも読めないあの方が本当の表情を出す姿が。


「ルシフェル!!今すぐ剣を抜きなさい」

ミカエルはルシフェルの仕事場に鋭い声をあげながらすごい勢いで入ってくる。

ルシフェルはちょうどレヴィと紅茶を飲んでいたのでただただ驚き何が起こったかわからない

表情を浮かべている。

「な、なにかあったのですか?」

レヴィが声を絞り出す。驚いて混乱した表情を浮かべている。

「ルシフェル、貴方は私に手を抜いているそうですね」

え?それってたしかラファエルさんが言ってたような。

レヴィは心の中で思う。でもなんでそんなに起こってるのだろう。

「私が弱いから、手を抜き、引き分けに持ち込んでるそうですね」

レヴィがルシフェルのほうを見ると驚いた表情を浮かべたまんまだった。

たださっきと違うことで驚いているのだろう。

「手を抜いたりしてないんだが・・・。」

ルシフェルが困ったようにいうとすぐにミカエルから言葉が返ってくる。

「じゃあ。私と決着をつけてください。引き分けに持ち込まないで下さい」

「そんなこと急に言われてもせっかく仕事をまともにしていたのに」

ルシフェルはわざとらしく書類を指す。確かにめずらしく仕事をしていた。

「何をそんなに焦っているんだ?」

ルシフェルはただただわからなさそうに首を傾げるだけだ。

どうやらその態度は一層ミカエルを怒らせたらしい。

「黙ってくださいますか?とりあえず貴方と決着がつけたいのです」

少しルシフェルは考えた後、「別にいいぜ。俺は仕事をしなくていい理由ができるんだからな」と

落ち着いた口調でそう言った。


「レヴィ、どうしたんだミカエル様?」

ベルゼブブは焦ったミカエルをみて何が起こったのかわからない表情をしている。

「僕もわかんないよ・・・すっごくびっくりした。最近戦ったばっかりなのに」

レヴィも困った表情を浮かべる。今日は中庭に来ていた。

この前、レヴィとベルゼブブとルシフェルで剣術稽古をしたところだ。

「ルシフェル・・・決着がつくまで帰りませんから!!」

すごい速さで剣をルシフェルに向け突進してきた。ルシフェルはそれを避けると

よろめいたミカエルに柄で強烈な打撃をあたえる。

「ほぇ?ミカエル様はいったいなにをやってるの???」

「どうやら焦ると力が出せないタイプのようだな。」

ベルゼブブがそう呟く。ルシフェルは大きな声でつまねぇと叫んだ。

見てた二人はびくっとする。

「ミカエル!俺は強いお前が戦い甲斐があっていいと思ってんだ。

どんなに嫌いだろうとな。俺は強いやつと戦えるやつといると楽しいんだよ。

今のお前は戦う価値もねぇんだ。さっさときえろ!!!」

ルシフェルはめずらしく表情が表に出ている。これが本当の表情かはわからない。

だが何かに怒っているのはたしかみたいだ。

「・・・。わかりました・・・・。貴方の目の前から消えましょう」

そういってさっさと歩いていってしまうミカエル。さらに険悪なムードになった。

「ルシフェル、大丈夫?」

ルシフェルは複雑な表情を浮かべていたがその声を聞いて

はっとしたように答える。

「あぁ、大丈夫だ。たくっ。つまらねぇ。もっと楽しませてくれると思ったのによ。」

中庭はしんと静まり返っている。ルシフェルはすたすたと部屋の方に歩いていったので

ベルゼブブとレヴィアタンはそのあとを追った


「レヴィ、紅茶を入れてくれるか。あ、ベルゼブブはチェスの相手をしてくれると嬉しい」

ルシフェルはさっきの事が無かったかのように笑顔を見せそういう。

レヴィとベルゼブブは顔を見合わせたあと言われた通りに動き出した。

「ちっ・・・ガブリエルか・・・あいつを駒みたいに扱いやがって」

「ルシフェル?」

ベルゼブブはチェスの駒を見ながら声をかける。

「大丈夫か?サマエルに邪眼受けたときみたいに独り言言い出して」

ルシフェルは笑顔を見せ「大丈夫だと」いう。

「・・・・チェスが終わったらちょっと出かけてくる。」

ベルゼブブはうなずくしかない。なんだかすごく恐ろしい感じがする。

「紅茶、入れてきたよ。」

「ありがとう。レヴィ。」

そういうとルシフェルは紅茶に口をつけながらチェスを続ける。

少しするとチェックメイトと声がかかる。

「また、負けたぜ。やっぱお前は強いな。ルシフェル」

「いや、そこまで強くないぞ。お前とレヴィが弱いだけだろ」

冗談がましくそう口にする。ベルゼブブははぁとため息をついた。

「んじゃ、出かけてくるわ。」

そういうと出かけていった。

「ねぇ・・・様子おかしかったよね?」

レヴィが恐る恐るベルゼブブに聞く。ベルゼブブはゆっくりと深くうなずく。

「あぁ、おかしかった。いつもと違う表情をしてたしな。

あとをつけてみるか?心配だしな。自殺とかしてなきゃいいが」

「それはしないでしょ。ルシフェルは」

レヴィはそう言って笑う。

「あぁ、じゃあ後を追おう。」

ベルゼブブもちょっと微笑みルシフェルのあとをつけたのだ。


「ガブリエル。いるか?」

ガブリエルの城の兵士達はルシフェルがなぜきたのか全くわからなかった。

めったに訪れることが無いのだ。

「はい、庭にいるかと・・・」

「そうか、1人でいける。ついてこなくていいからな」

ルシフェルがそういうと兵は頭をさげ、道をあける。

庭の中にガブリエルが立っていた。背景には一面の百合。

「ガブリエル。お前だな。ミカエルをけしかけたのは

何を考えてやがる。いわないならこちらも相応の手段を使わせてもらう。」

ルシフェルの鋭い声。

「やっぱり、可愛いですか?ミカエルは」

ルシフェルは怒りの表情を色濃く出し始める。

「俺は聞いてるんだ。答えを返せ」

「私も聞いています。答えを返していただきましょう」

ガブリエルは落ち着いた表情でそういう。沈黙という張り詰めた空気。

少しして口を開いたのはルシフェルだった。

「あぁ、別に嫌いじゃねぇ。あいつが俺を嫌ってるから嫌ったふりをしてるだけだ。

それが何か悪いか?」

「素直になればいいのですよ。ミカエルも貴方を本当に嫌っているわけではないのですから」

「お前には関係の無いことだ。その関係に手出ししないでもらおう。」



次々と積み上がっていくデーモンの亡骸。あまりに恐ろしい光景だとレヴィアタンは思った。

目の前ではウリエルが淡々とデーモンを粉々にしていく。デーモンというのは悪魔の一種で

鎌を持っていて、黒いこうもりの小さめな羽を持っているやつだ。

性格はいたって凶暴。たまに天界を襲ってくるのだ。なので定期的に退治をしている。

「ルシフェルはいっしょじゃないの・・・・・・?」

ウリエルは戦いながらいう。そう思っているレヴィアタンも一生懸命戦っていた。

「えっ・・あ、ルシフェル様は仕事があるからといっていました。」

目の前のデーモンが鎌からの斬撃を放つ。それをレヴィアタンは避けて、剣で真っ二つに叩き割る。

黒い血を浴び、うっと困った表情を浮かべるレヴィアタン。隣では無表情の天使が無情な鎌で敵を粉砕していた。正直、レヴィアタンはこなくてもよかったんじゃないかと思う。

「ルシフェルの副官なのに・・・弱いのね・・・」

小さく無情な声を発するウリエル。ウリエルの前には破滅の風が吹いてる気がする。

「申し訳ないです・・・ウリエル様」

レヴィアタンの腕は悪魔の血を浴びて焼け爛れていた。

どうやら悪魔の血という不浄な物に触れると肌が焼けたようになるらしい。

ウリエルが片付いたのかそばによってきて簡単な治癒術をかける。

ウリエルは癒しの術をそれほど持ってはいない。簡単な治癒術しか掛けられないのだ。

「ルシフェルにあいたいの・・・どこにいるの?」

女の子みたいな口調だが一応男の子である。見た目は憂いを帯びた少年という所か。

でもきっと年齢は相当高いのだろうなとため息をつきそうになりレヴィアタンはあわてて止める。

そんなこと口が裂けてもいえないのだから。

事の発端はちょっとさかのぼる。本当はルシフェルの仕事だったのだけどルシフェルはウリエルが

あまり好きではないらしくレヴィアタンにその命をやらせることにしたのだ。

「え・・・・えっと・・・それは・・・申し訳ないです・・・しらないんです。」

もともと嘘をつくのが苦手なレヴィアタンは困った表情を浮かべ、ウリエルの目を見ている。

「嘘・・・つかないで。教えて。お願い。ルシフェルに言うなっていわれたの?」

ウリエルは無表情なままそういう。本当に表情が無い。

「え、はいそうです。」

「大丈夫、君が言ったってことは教えないようにするから」

ウリエルはそういうと鎌を持ったまま詰め寄ってきた。これはある意味脅しではないだろうか。

うわぁ・・・助けて・・・誰かと心の中でレヴィアタンは呟き・・・あきらめてすべてを話すことにした。

あとでルシフェルにどやされるだろうなぁ・・・。

「えっと、書斎におられます。」

「そう、ありがとう。じゃあ帰ろうか」

ウリエルはすたすたと歩き始め、その後ろをゆっくりとついていった。


「ウ・・・ウリエル?」

ルシフェルには戸惑いの色が明らかに出ている。何故ここがばれたのだという表情。

「ルシフェル様。どうして僕をお避けになられるのですか?僕は貴方を愛してます」

ウリエルはとても幸せそうに言葉をつむぐ。

愛してるという言葉に身体に一瞬にして鳥肌がたつルシフェル。

「だ、だからさ・・・お前男だろ?な?な?」

「性別などいくらでも変えられます。ルシフェル様」

天使には性というものが無いのだ。だからどちらでもありどちらでもなかったりする。

痛いところついてきやがる・・・。ウリエル・・苦手だ。

ルシフェルはため息をわざとらしくつき、とりあえずの手立てをどうしようか考える。

「俺は、仕事が今忙しいんだ。まだ書類がこんなに残ってる。」

わざと終わった書類の方を指差しそういう。仕事はほとんど大半終わっていたのだ。

「・・・わかりました。じゃあまた今度。ルシフェル様愛していますから」

恐ろしい言葉を残してウリエルは部屋を出て行った。レヴィアタンだな・・・俺の居場所を教えたのは。

「レヴィアタン、どうやら地獄の特訓をもう一度受けたいらしい。しかも連続で30回ぐらいな」

ドアの外ではレヴィアタンがその言葉を聞いていて、怖い思いをしていたのだけどルシフェルはそれを知らない。とりあえず逃げようとレヴィアタンは走り出した。


「ベルゼブブ。レヴィの居場所知らないか?」

ルシフェルはベルゼブブに聞く。ベルゼブブは首を横に振ってこういった。

「俺はしらねぇぞ。さっきあっちの方にいたって兵士がいってたけどな。」

ベルゼブブからみて左手の廊下を指す。ちなみにベルゼブブの後ろにも廊下がある。

「本当だろうな??」

ルシフェルの目が恐ろしい形相になる。ベルゼブブは苦笑しながら「そんな目の怖いルシフェルに嘘つくかよ」と言う。ルシフェルはその言葉を聞いて信じたのか左の廊下をすごい速さで走っていった。

「もう・・・大丈夫かな?」

「もうちょっとそこにいろ。あいつは勘がいいからな」

ベルゼブブの後ろの廊下にある柱の影にレヴィアタンは隠れていた。

ルシフェルはベルゼブブが言うように勘がいい。というか廊下の前に立ってあっちだと指差されれば

間違いなくわかると思う。絶対こっちに来るだろう。

「おねがい・・・ベルゼブブ助けてよ」

胸の前で手を組み、なきそうになりながらベルゼブブに言う。

「そんなこといわれたってな。俺、ルシフェルと戦っても勝てないし。」

なにか悩みこんだ表情のあと「あ、そうだ」と思いついたようにいって、続けてにこにこと微笑みながら言う。

「そうだ、サタンのとこいってみたら?あいつ結構優しいし、ルシフェルには強かったはずだ」

レヴィアタンはサタンとあったことが無い。レヴィアタンはこの中で一番位が低い。天使の位なのだ。

サタンは座天使である。めったにあうことは無い。見かけたことはあるが声はかけない。

「サタン様って階級にうるさいってきいたんだけど・・・」

うわさではよく言われている。階級が低いものがサタンのところに訪れるととって食われると。

「大丈夫だ、そんなやつじゃねぇよ。ちょっと横暴だがな。サタンはこの城の裏手の森に住んでんだ。

名前呼びながらさまよっていれば出てくると思うぜ」

「う、うん。怖いけどルシフェルよりはきっと怖くないよね」

レヴィアタンはそう言って、走り出した。裏手の森に向かって。


「・・・くらい。怖い。サタン様ー」

レヴィアタンは森の中でサタンの名前を呼ぶ。

暗い深い森だ。誰かいる訳でもなさそうなこの森に本当にサタンが住んでいるのかいささか疑問である。

ぐるると目の前の草むらから声がした。レヴィアタンは草むらをじっと見る。

「ひっ・・・狼?」

たしか、人間界にしか住んでないはずじゃ・・・・どういうことなんだろ?

狼はレヴィアタンに襲い掛かってくる。うわぁ・・・僕を食べてもおいしくないよぉ

「フェイ!おとなしくしろ。」

その途端狼が急激に大人しくなる。レヴィアタンは気が抜けて地面に座り込む。

あー・・よかったぁ。

「俺様になんか用なのか。天使どもにはいったはずだが。俺様はルシフェルの言うことしかきかないと」

森から出てきた男は白い羽を持ってはいるがとても悪魔らしい感じだった。

頬には黒い不思議な文様が描かれており、目は鋭い光を放っている。

髪はディープブルーで瞳は緑がかった黒。

「なんだお前は。がきか?」

腰を抜かしているレヴィアタンを見てあきれた表情を浮かべる人。

多分この人がサタンさまなのだろう。

「あ・・・あの・・・助けてもらえませんか?」

「はぁ?急になんなのだ?俺様にたすけろだと?そんなの四大天使どもにたのめばいいだろう」

「う・・・話と違う。」

レヴィアタンは小さく呟く。それを聞いたサタンが急に首根っこをつかんで持ち上げる。

「うぁ・・・」

く・・・・苦しい。う・・・全然優しく無いじゃんか・・・ベルゼブブの嘘つき。

「話と違うだ?誰から聞いたんだよ。答えないと・・・・怖い思いするかもな。蜘蛛の餌にでもしてやろうか?」

「う・・こほっ。ベルゼブブ様・・・からです・・・」

「ベルゼブブ?」

手から力が弱まる。地面にどんと大きな音を立ててレヴィアタンは落ちる。

う・・いたい。苦しい。

「じゃあ、お前ルシフェルのとこから来たのか。そうか、てっきり神の使いかと。」

「神の使い??」

レヴィアタンは首をかしげる。そんなの知らない。

「そう。最近、森を荒らしにくるのだ。俺様を城に連れ戻そうとな。

俺様はここを気に入っている。だからここから出る気はない」

きっぱりとサタンは言い、腰を抜かしているレヴィアタンに手を貸す。

「立てるか?」

結構大きな手をしてる。どっちかといえばがっちりとしていてたしかに森に住んでいそうな人という感じがする。しばらく、城の中で見かけていないので随分と長く森に住んでいるのかもしれない。

「あ、ありがとうございます。実はルシフェルに追われててつかまると地獄の特訓を受けなければならないです。助けてください」

「あー、あいつならやりそう。部下いじめるの好きらしいから。俺様も昔よくいじめられたものだ」

「部下だったんですか?」

「あぁ。今でもあいつよりは階級下だから部下といえば部下なんだと思う。」

さっきまでは鬼のような形相だったのに急に優しい感じになる。

多分ルシフェルとは仲がいいのだろう。

「くっくっくっ・・・地獄の特訓を受けなくてすむようにしてやるよ。さっき、酷いことしてしまったしな」

「本当ですか?!?うれしいです」

レヴィアタンが幸せそうな表情を浮かべるとサタンは目を細め少し笑う。

「あと。敬語やめてくれ。面倒だ。俺様が階級を気にするとか言うやつがいるがどっちかといえばあまり気にしないほうなのだ。」

「え、あ、うん。わかった。」

「さて、ルシフェル焦るだろうな・・・お前が俺様のとこに逃げてきてもう戻らないといってると言ったら・・・」

「へ?それで十分なの?」

レヴィアタンのきょとんとした表情を気に入ったのかサタンが楽しそうに言う。

「あぁ、それで十分なんだ。あいつは一応部下を大事に思ってるからな。クスっ。

楽しいものが久方ぶりに見られそうだな。」

俺様というわりにはくすっと笑うらしい。なんだか女らしい。

だけど1人称は俺様なんだよね・・・;;;と心の中でレヴィアタンは思っていた。


「・・・ベルゼブブ?お前だろ」

ルシフェルは書斎で手紙を読み終わった後、ベルゼブブに威圧的に言葉をかける。

「そんな怖い顔してどうしたんだ?俺何かしたか?」

とぼけるベルゼブブにどうやらルシフェルはむかついたらしく、剣を抜く。

相当怒っているらしい。まぁ、レヴィがサタンとこ行ったからだろうけど。

ベルゼブブはため息をつく。結構短絡的だからな。こいつ。

「そんなに怒らなくてもいいじゃねぇか。お前がレヴィをいじめるからだぞ?」

ため息をつくルシフェルに真剣なまなざしを向けるベルゼブブ。

どうやらルシフェルが根気負けしたらしく先に言葉を発した。

「少し、サタンのところに行って来る。」

「はぁ。行ってらっしゃい」

気のない返事をして手を振るベルゼブブの腕を無理やりつかんでルシフェルは

外へ連れ出そうと引っ張り始めた。さすがのベルゼブブも引っ張られ、連れて行かれる。

「お前もこい!」

「え、ルシフェルがいじめるからじゃねぇか・・・なんで俺まで。」

ルシフェルに引っ張られ無理やりベルゼブブもついていかされた。


「サタン!いるんだろう?」

サタンはくすっと笑いルシフェルの前に姿を現す。

木々の背景がよく似合っている。









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