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婚約を解消して別の女性に走ったのは貴方でしょう?

作者: naturalsoft
掲載日:2026/08/27

連載中の小説の息抜きに書きました。

サラッとお読み下さい。


誤字報告ありがとうございます。

シオン・グレイブ公爵令嬢は、王太子レオン・シルバニアと婚約していた。


王太子レオンは無能ではないが、少し思い込みが激しいのを除けば、どこか秀でた所もなく、可もなく不可もなくと言う評価で、優秀なシオン公爵令嬢が王妃として補佐すれば問題なく国を運営できると言われていた。


政略結婚だが、2人は『愛』こそなかったが、お互いに尊重し合える確かな『信頼』があった。


そして、もうすぐ卒業というタイミングの、とある夜会にて歯車が狂い始めた。


ザワザワッ

ザワザワッ


「みて、リード伯爵よ」

「あのエスコートされている令嬢は誰かしら?」


リード伯爵は私達と同い年で同じ学年だった。銀髪の整った顔立ちのイケメンで、彼を狙っている令嬢は多い。そんな彼がエスコートしている令嬢に注目が集まる。


シオンは挨拶周りを一度終わらせてリード伯爵を見た。


『あれは………本当に大丈夫なのかしら?』


連れている令嬢の顔色が色白……と言うより顔色が悪くて身体が細い。どんな方なのかしら?


そう思っているとリード伯爵がこちらに向かってきた。


「こんばんわ。ご挨拶しても?」

「お久しぶりですね。リード伯爵が領地に戻って半月ぶりくらいですね」


カイン・リード伯爵は父親が病気で倒れて、学生ではあるが家督を継いで領地に戻ったのだ。


「ご無沙汰しております。こちらは私の『妹』でカレン・リードです。病弱でなかなか領地から出られなく、今回は『思い出作り』の為に無理をして夜会に出席させました。王太子殿下、一曲ゆっくりなダンスでお相手をお願いできますか?」


「そう言うことなら喜んで相手になろう」


レオンは目配せをしてシオンも頷いた。

2人が踊っている間にリード伯爵にカレン様の事を伺った。


ダンスが終わるとカインとカレンは何度も頭を下げて感謝を伝えた。


「とても楽しい、ひとときをありがとうございました」

「いや、こちらも楽しかったよ」


レオンとカレンが談笑している間、シオンはリード伯爵と詳しい話をしていた。


そして、その時は何事もなく夜会は終了したのだった。


問題はその後に出てきた。

夜会の後からレオンはボーっとする時間が増えた。

周囲は身体は大丈夫なのか心配したが、その原因はすぐに判明した。

一週間後、シオンはレオンに呼び出されたのだ。


「よくきてくれた」


王城のお庭にてレオン王子はシオンに話した。


「さっそくなんだが実は、この前のリード伯爵の妹であるカレン令嬢の事が忘れられないんだ。君に不誠実な事はしたくないから、相談に呼んだんだ」


目を伏せて自分が悪いと思っているように答えた。


「私は別に構いませんが、カレン伯爵令嬢を側室、または愛妾として囲いたいと言う事でしょうか?」


レオンは少し沈黙した後、重たい口を開いた。


「・・・いや、シオンとの婚約を解消して、出来ればカレン令嬢を王妃にできないかと考えている」

「それは───」


それは余りにも私を、グレイブ公爵家をバカにしている。

深いため息を吐いてシオンは冷静を装って答えた。


「正直に言いまして、それは現実的ではないと考えます。そもそも、カレン令嬢は身体が弱いと聞いております。とても王妃の激務に耐えられるとは思いません」

「それはわかっている。打診したリード伯爵にも言われたよ。とても王妃の業務どころか、普通に女主人として屋敷を取り仕切ることもできないからお断りしたいと」


「だったらなぜ?」

「カレン令嬢のことが頭から離れないんだ・・・」


ここ一週間ほど、ボーとしていたのは領地に帰ったカレン令嬢のことを考えていたからなのね。


「レオン殿下のお気持ちはわかりました。しかし、私からはとても『現実的ではない』と言う言葉しか申し上げることができません」

「君には大変失礼なことを言っていると自覚している。だが、君から父上の公爵に口添えしてもらえないだろうか?」


「私から父に伝えろ事はできます。しかし、今のままでは首を縦には振らないでしょう。例えば、殿下に好きな女性ができたので、王妃の座をその女性に変更したい・・・・どう思いますか?」


レオンは下を向いて何も言えなくなった。


「レオン殿下、私は殿下のお気持を尊重いたします。しかし、周囲がそれを認めません。せめてカレン令嬢に何か突出して国に有用な技術などあれば相談材料になりますが、昔から病弱で王妃の業務もできない。ましてや、殿下の子供を産むことすら難しい状態では、温厚な国王陛下ですら許可されないでしょう」


「そうだな・・・その通りだ。すまなかった」


レオンは非現実的だとようやく理解して頭を下げた。


「わかって頂ければ良いのです。それでも殿下の初恋を応援したい気持ちはあります。ダメ元で父に相談してみますわ」


!?


「いいのか?」


驚いた顔でシオンを見るが、シオンは微笑んで答えた。


「話すだけです。流石に王妃にするまでは無理でも、側室などは可能性がございますので」

「本当にすまない。感謝する!」


レオンは気づいていなかった。

シオンの目が笑っていなかったことに。



──帰りの馬車にて──


「あれはもうダメね」


同じ馬車に乗るメイドに愚痴のように話した。


「さようでございますね」


あの様な話をする場合は側仕えを下がらせてから話すのが常識でしょうに。あれでは誤魔化しができない。

だから良き理解のある令嬢を演じなければならなかった。お城のメイドは国王陛下や王妃様の目だ。

あの会話は筒抜け状態なのである。


元々、思い込みの激しいところはあったけど、自分の事でいっぱいでそんな当たり前のことを忘れるなんてね。

恐らく、あの後国王陛下に呼び出されるわね。王子は3人もいるし、順当に行けば第二王子が王太子になるでしょう。残念ながらすでに婚約者がいるから、私は他国へ嫁ぐ事になるかしら?国内には身分に釣り合った男性はすでに相手がいて無理ですものね。


はぁ、せめてもう少し早い時期だったらよかったのに。

学園の卒業前だなんて最悪よ。

だいたい、あの様子だと、絶対に同じことを繰り返すでしょうに。

無能な王子なら扱い易いと思って優秀じゃない方の王子と婚約を結んだのに。


自宅に戻るとすぐに両親に話した。


「はぁー、無能ではないと思っていたのだがな・・・」

「これは予想外ね~」


父親は呆れてため息を吐き、お母様はおっとりしているが、かなり怒っているようだ。


「シオンちゃん、そのカレン伯爵令嬢はそんなにやり手なのかしら?」


流石のお母様も、滅多に領地から出てこないカレン・リード伯爵令嬢の情報を持っていないようだ。


「いえ、本当に今回はレオン殿下の空回りなんです。実は───」


夜会の時、兄であるリード伯爵から聞いた話を伝えた。


「まぁ!そうだったの。リード伯爵にはお気の毒様としか言えないわね」

「まったくだ。王子の片想いであり、カレン令嬢は無論、リード伯爵も関与していないとはな。ますます残念王子になったな」


父は頭を抱えた。


「傷は少ないうちの方がいいだろう。隣国に嫁ぐ気はあるか?」

「やはりそうなりますよね?良い殿方が残っていればすぐにでも打診をお願い致します」


隣国には我がグレイブ公爵家の親類が住んでいます。そちらの方に調べてもらいましょう。

シオン達、グレイブ公爵家が動き出した時、レオン王子は国王陛下から謹慎処分を受けていた。

その間にシオンは、隣国の第三王子で、王族から臣籍降下して新しい公爵家を起こすクロード公爵と婚約する話が進んだ。元々婚約者がいたが病気で亡くなったそうで、同じく身分に釣り合う女性を探していたとのこと。


レオン王子が謹慎を解かれたのは二週間後のことであった。

すでに学園の単位も取得して卒業を待つだけの状態だったので長く拘束されたのだ。


「さて、謹慎も解けた事だしお前に伝えておかねばならん」

「なんでしょうか?」

「お前は王太子の座を剥奪された。次の王太子は第二王子になり、王妃もその婚約者がなる」


!?


「な、なぜですか!?」

「それがわからぬからだ。長年お前を支えてくれたシオン令嬢を差し置いて、好きになった病弱な令嬢を王妃にしたいなど、世迷言を吐くお前に国を任せられる訳がないだろう!」

「そ、それは!シオンには悪いと思い、誠意を見せるために胸のうちを明かした訳で・・・」


「せめて、周りのメイドや執事、護衛を下がらせてから話すべきだったな。これでお前が女に惑わされて簡単に長年支えてくれた婚約者を捨てる者と知られてしまった」


「あっ・・・」


「お前の足りない所をシオン令嬢が補ってくれると思い様子を見ていたが・・・せめてシオン令嬢は側室や愛妾なら許すと言っていたのに、何もできぬ者を王妃にしたいなどど、よくも言えたものだ。お前はシオン令嬢にどれだけ失礼で最低な言葉を吐いたのか理解しておらぬ!それがわしの、いや、わしと王妃の逆鱗に触れたと知れ!」


レオンは国王の言葉に震えた。そして隣に座る母である王妃を見た。

その目は父親より冷たかった。


「貴方は何がしたかったのですか?病弱な王妃の仕事をすることのできない女性を王妃の座につけて?癒しを求めるなら愛妾で十分でしょう?」

「しかし、愛した女性を日陰に追いやるのは嫌だったので──ひっ」


王妃の威圧が増した。


「貴方はお飾りの王妃を据えて、実務はシオン令嬢にさせようと思ったのではありませんか?」


!?


レオンの顔を見て心底失望した顔をした。


「やはり貴方に王の座を任せることはできません」

「母上!?」

「貴方は『自分の事』しか考えていない。少しは考えてみなさい。愚か者が!例えば、貴方がその令嬢を王妃の座につけたとしましょう。貴方はシオン令嬢を側室に迎えて、王妃の実務だけさせる。・・・これを聞いてどう思いますか!」


レオンはようやくシオンを蔑ろにしている事に気づき真っ青になった。


「愛する者を王妃という最上位の椅子に座らせ、仕事だけ他の女性にさせる。もしそれがまかり通るなら我が国はすぐに滅ぶでしょう」

「そ、それは言い過ぎではないですかっ!」

「本当にそう思いますか?」


どんどん王妃の絶対零度の威圧は増していく。


「お前はそこまで愚かだったのか?秀でたところはなくとも、信頼には信頼で応えることのできる者だと思っていたのだがな・・・」


国王もすでにレオンを見捨てた。残念だと首を振った。


「はぁ、バカで愚かな貴方に一から十まで説明しないといけないなんて。良いですか、本来王妃になる女性を冷遇して、仕事だけさせていれば、家臣がついてきません!どんなに尽くしても簡単に捨てて冷遇する国王に誰がついていきますか!すぐにあなたを引き下ろそうとする勢力が出てきます。さらに、隣国との交渉もうまく行かなくなり、戦争もあり得ます。そんな愚王のために命をかけて戦う兵も少なく国が滅ぶでしょう」


レオンは王妃の説明を聞いて何も言えなかった。


「な、なら、シオンを王妃に、カレン令嬢を側室に──」

「愚か者がっ!!!!!!!」


国王の余りの怒りに尻餅をついた。


「お前は所詮その程度の気持ちで、何も考えなく王妃の座を渡したいと言ったのだろう!だからこそお前を長年支えてくれたシオン令嬢にも見限られたのだ!」

「どういう事ですか!シオンに何が!?」


国王は目配せすると、兵士が書類をレオンに渡した。


「お前とシオン令嬢の婚約は王族側の非で解消された。グレイブ公爵家の後ろ盾のない貴様を王太子にしておくメリットもない」

「そんなバカな!シオンは、シオンは納得しているのですか!?」

「安心しなさい。シオン令嬢は隣国に嫁ぐことが決まりました。向こうの第三王子で臣下に降り、新たな公爵の地位を授かる方だそうです」

「そんなバカな・・・」

「もうこの国を立ったからな。お前とはもう会うこともないだろう」


レオンは婚約解消の書類を見て呆然と立ち尽くした。

国王と王妃はため息を吐いて最後に言った。


「お前は何がしたかったんだ?」


自分の一言で全てを失った。

レオンはかすれる声で言った。


「・・・一目惚れしたカレン令嬢を妻に迎えて、シオンと一緒に国を盛り立てていけたらと」

「お前は最初から間違えていたんだ」

「最初から・・・?」


国王は王妃に視線をやり、続きを王妃から話させた。


「夜会の時、シオンはリード伯爵から話を聞いていました。貴方も後日リード伯爵から話を聞いたのではないの?病弱でとても王妃の業務どころか、普通に女主人として屋敷を取り仕切ることもできないから放って置いて欲しいと」

「それは聞きましたが?」


まだわからないのかと何度目かのため息を吐いた。


「いったい何を勉強していたのかしら?リード伯爵が言った『普通に女主人として屋敷を取り仕切ることができない』という意味をどう思っているのですか?」


「えっ?」


「これには二つの意味があります。無能過ぎて女主人を任せることができないという意味と、そこに病弱がつけば『長く生きられない』から余生を静かに過ごさせたいので放って置いてということに」


「まさか・・・」


「貴方が謹慎している時にカレン令嬢は亡くなったわ。リード伯爵は最後の思い出にと強い薬を服用させて夜会に参加させたそうよ」


ウアアアアァァァァッッッッッッ!!!!!!!!!


レオンは絶叫した。


「シオン以外にも多くの方が顔色の悪いカレンさんが大丈夫なのか心配されてたそうだけど、貴方はそんなことも気付かなかったのね」

「一目惚れした女性の体調すら気付かない者にこれ以上付き合うことはない。お前は急病に倒れたことにする。北の離れで一生過ごすがいい」


レオンは兵士に連れて行かれた。

すでに国王と王妃の目にはレオンは映っていなかった。


数ヶ月後、レオン王子は闘病の末に病死したと発表された。





──隣国にて──


「シオンは優秀だな。すぐに我が国に溶け込むとは」

「親類がいたので軽く根回ししただけですわ」

「そういうことができる事がすごいんだけどね」


新しい公爵領は肥沃な大地と鉱山に恵まれていた。

シオンは新しい夫であるクロードと一緒に領地を巡り、当初『鉄鉱石』が取れる鉱山と思っていた所に、川で砂金が取れる事を突き止め、その上流の山から『金』が採れることを突き止めた。

そのため、新たな金鉱山として、多くの人が出稼ぎに来ている状態である。


「君は僕の幸運の女神だよ」

「あら?私も貴方と出会えた事が幸運でしたわ♪」



クロード公爵の元婚約者は病死と聞いているが、本当は浮気をしたことによる制裁を受けたのだ。

まったくバカなことを。

でも、おかげで私に運が向いたのでよかったと思う。


「私の力を存分にお使いください」

「君も僕の力をなんでも使って欲しい。そして君の愛を僕に」


「まぁ♪」


シオンとクロード公爵はおしどり夫婦として隣国で幸せに暮らしたのでした。






最後までお読み頂きありがとうございました。

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