第5話 脳内に二つの意識
【本日17時、第6話を連投】
春樹が暴漢に襲われた! レジに行き、様子を確認して、フライヤーの確認をして、お婆ちゃんとわんこたちの様子を見て、事務所の椅子に座った。その間ずっと頭の中を巡っていたのは……
『なんでなんで、いきなり暴漢襲ってくるの。春樹大丈夫なの。あさはあゆみは…みんな大丈夫か? 大丈夫なわけないか? 僕としては平和な日常のために、コンビニ経営始めたわけですよ。なら日本でやれって…? 流石に開店日に襲われるとは思わないわけですよ。開店日ですよ。大歓迎されて、お客さん詰めかけて、小さなトラブルが連発して、一日終わったらイートインでみんなでにこやかに打ち上げやってって、そういうストーリを思い描いていたわけです。それをなんですか、あのボロボロの服を着たオジサン。冒険者さんたちはもう少しマシなんだけど、気づけというにはまだ小綺麗だったかなぁ? 何者なの? 裏には誰がいるの?この後どうなるの…? 毎日の爆弾、ほんとはビビってんですけど……』
『春樹が襲われて、武士! 武士ですよ。すごいねぇ。秋山先生の颯爽とした登場。かっこよかったですねぇ。シュパッと切るとこ、画面越しだったけど、無外流の剣術、実物、初めてみました。泥臭い戦いではなく、一気に形がつく流派とは思ってたが、音が聞こえた時には、暴漢倒れてた。春樹に後でいろいろ聞かなきゃ。』
事件の前まで、僕がよくわからない奴とか思ってたでしょ。当たってるんですよ。危ない奴なんですよ。危険な目にあってるのに、冗談考えてたり、発言したり、真面目な発言の裏で悪いこと考えたり、危ない奴なんですよね。特に危機になると分裂するんです。俺…。誰かが自分のことを見てるつもりで話してたり、危ない奴なんですよ。
『なんでなんで……』と『武士!武士!……』。これ一度に両方考えてるんですよ。早口で捲し立てて慌ててる自分と、ふーんとゆったり構えてる自分。聞こえたでしょ、僕の走馬灯のように駆ける思考と、俺の坊主のように諭すような戯言。二重意識。『必死で、起こったこと、これからのこと、どうしよう、ああしようって考えてる自分』と『ふーん面白いことになってるねぇ、どうするの?』と事実には無関心に状況に感心している自分。本体と上から覗く別の自分。どう表せば伝わるだろうと悩む自分とアニメの時は声優さん大変だなぁと思ってる自分。一度に同居するんですよ。本体と上から目線の俺。漫画は並列で書けばいい?悩んでる方は小さな吹き出して…。
ほら、もう一人ふざけてる奴いるでしょ。
普通の人にはあまりないことなんですかね? この話すると大体理解されない。前に家によく遊びに来てた男の子が、学校行けなくなって、その子の伯父さんから「二重人格と診断されて、病院行ってるんだよ」と聞かされた時、具体的には?と聞いてみたら、勉強してると考えが二つに分かれるって言ってるんだ。と言われた。ピアノを弾いてる時にも色々言ってくるやつが現れるらしい。
「そんなの僕も高校生の時からたまにありますよ。」って話したら、驚かれたが、その人は理解してくれて、頭に入れておくと言われた。
本人からも聞いて、僕もだよって言ったら、ほっとした顔をした。自分がおかしいのかと不安だったらしい。それ、二重人格というより、二重意識じゃないかな?人格というほど違いはない。そう言ったら、そうだねと微笑んだ。
僕は高校の数学のテストとかで追い詰められると、「頑張ってるねぇ〜。もう終わるよぉ、大丈夫じゃん?間に合わない?頑張れぇ」と頭の上の方から実際別の意識が傍観してて、下では本人?が必死で数学解いてる。かと言って、間に合ってないわけではなく。順調であっても、そいつは現れる。きちんと別れてる二重人格の人にはそれくらいなの?と言われるかもしれないが、この状態になると、かなり気持ち悪くなる。俺としては脳が暴走すると、リミッターとして他の意識が出てきている気がする。一人称が『僕』が主でたまに『俺』なのは、そんなことも影響してるのかもしれない。
気分だけかもしれない。(笑)
さっきも襲撃に対処してる自分と、傍観を決め込んでいる自分。数学なら机の上で落ち着こうとすればいいだけだけど、さまざまな対処をしながら思考してたらだんだん気持ち悪くなった。その分冷静な対処ができてはいる。大人になった今、店長としての仕事が怒涛の如く追いかけてくる。心を休ませる暇がないのである。あ、いま事務所で一人でいるから、知らぬ間に対処してるのか?
春樹も同じ血を引いてるから、そのうち相談に乗る必要があるかもしれない。脳筋の兄貴はともかく、弟は似てるかも。親父は?…ほら、さらに3つ目の意識が色々考え始めてる。話を聞くのは、悩んで話して来たらで良いかな?お節介してもしょうがないよな。
こんなだから、異世界に巻き込まれたのかもしれないと思っていると、「そうなのぉ」と構えてる自分が現れそうだな。
はてさて
ちょうど良い機会だから聞いてもらえる? あ、大丈夫。時間加速すると思うから。みんなにはバレない。自分の中で自分に聞いてもらうだけだからさぁ、すぐ終わる。
こっちに来ることになったのは、クロちゃんがうちの庭に突然現れたからなんだよな。クロちゃん、猫。庭に住みついてた白黒老猫。いなくなったから死んだと思ってた猫のことだけど、あの時も焦って対応してる自分と、面白い「なろうだぁ」、「ラノベだぁ!」って思ってる自分がいた。
「あれ?ここ、覚えある。あの兄ちゃん、確か、りおん、りおちゃんの庭だ。」
「ゲっねこ!え、人?服着てる?剣闘士? プレデター? クロちゃん柄? クロちゃん?
あさちゃ〜ん、クロちゃんが人間になったぁ〜」
ありえないだろ、猫獣人、ここ現代日本だよね。夢夢……………
「なに叫んでるの?近所迷惑よ。」
「わん、わんわん、キャン」
「ほら、クロちゃんそっくりの猫さん。」
「ほんとだぁ〜っきゃ〜」
玄関から出て来て叫ぶあさ、慌ててあさの口塞いだ僕。予想してたからね。危機の時の冷静な奴が出て来てる。二重意識のメリット?
「静かに…」
うんうん、首振るあさ。
あさは、そんなのなった事ないと言ってたけど、対応できている。これは心の図太さ?
「こんにちは、あささん、いつも煮干しありがとうでした。クロです。覚えてます?」
「覚えてないです。似た柄の猫のクロちゃんは知ってるけど…」
「あ、多分俺、そのクロちゃんです。この庭に来て思い出した記憶ですけど。」
「えっ、クロちゃん?しばらく前からいないから、私、心配してたんだよ。クロちゃんなの?」
「猫の獣人さんですよね。クロちゃんは可愛い猫ですよ。」
「この地球、少なくとも東京の足立区で獣人見た事ないわよ。」
あささん、地球のどこにもいません。それと猫のクロちゃんはドスの効いた黒白猫です。可愛くはなかったです。
「そうですよね。クロの時の記憶を思い出しても、毛のない人間以外出てこないです。」
「クロちゃんなのぉ、元気してタァ〜。煮干し食べる?」
「あ、はい。いただきます。元気に58歳のオジサンしてます。なんで1年前いなくなったクロの記憶があるのかわからないけど、クロとして隣の屋根の上やこの庭にいたのを覚えてます。名前呼んでくれたのはお二人だけです。」
「そうね、りおちゃんと私だけよね。」
「あの枇杷の木の実を食べようとした小鳥捕まえて、ここに置いといたの覚えてます? 捕まえときましたよぉ〜って。」
「あれ、怖かったんだよぉ〜。人間には衝撃だったんだよ。もうやめてね。」
「人間はバラバラになった亡骸は怖いんだよ」
「猫の時は好物だったので、喜んでもらえるかと…。今は女性に持っていったら怒られるってわかってます。」
その時、遠くで原付バイクの音、夕刊だ!
「ひとまず、家に入って、新聞屋さんに見られたら、わけわからなくなりそう…」
第5話は前半は著者の経験した事象をもとに創作しています。この話したら、思いっきり否定されたことある。そういうのもあるんだって、知ってもらえたら嬉しいです。ご意見、ご感想、お寄せください。




