朝起きて駅に行くまでの話
ハローエブリワン☆
新しい朝が来た希望の朝〜だ
喜びに胸をひらけ大空仰げ
そんなことを本気で思っているやつはどれくらいいるのだろう?
朝とはとにかく憂鬱なものだ。
特に月曜の朝は。
特に今日は特別だ。
あれは金曜の夜に遡る。
あの金曜の夜は俺にとって特別なものだった。
新入社員の入谷さやか。俺の世界で一番好きな女だ。
サラサラ茶色いロングヘアに透き通るような白い肌。ぷるぷる下唇。
推定Eカップのバスト、えぐれたウェスト。スラリと伸びたきゃしゃな脚。
153センチの小柄なボディ。
ふわふわした笑顔
その全てが、俺のどストライクだ。
30歳の大台に乗った俺だが、入社式でさやかに出会った時に俺は生まれて初めて、心臓に雷が落ちる感覚を味わった。
生まれて初めて、ナントカに乗り〜
みたいなナントカと雪の女王のBGMが頭の中で流れたのをはっきり覚えている。
新入社員の男どもにも、助平な課長にもさやかは渡さない!そう決意した俺は、彼女の教育係を率先して引き受けたんだ。
「セクハラするなよ」
課長に冷たい目で釘を差された。
(おまえほどじゃねーよ)
そんな悪態を俺は必死に飲み込んだ。
関係ないが、課長は経理の御局、百合子と不倫している。
47歳のしおれた乳の何がいいのかよくわからない。
ホルスタインのほうがまだ価値がある、と本気で思う。
さて、話は戻って金曜日はさやかの誕生日だった。
俺はこの日に覚悟を決めようとしていた。
つまり
さやかに結婚を申し込もうと。
予約したのは代官山のひらまつ系列のレストラン。
もちろん個室を予約した。
花束とケーキ。
もちろんサプライズの指輪。
金曜の夜、会社を一緒に出る。
さりげなくおれはさやかにささやく
「この後、大事な話があるんだ」
さやかは首を傾げながらもついてくる。
計算など微塵も感じないその純粋無垢な姿が俺の心臓を鷲掴みにする。
(大丈夫だよ、さやか。俺は君を不安にさせたりはしないから)
着いたレストランでさやかは不安そうに俺を見上げる。
「こんな高いところ⋯⋯私今日持ち合わせ⋯⋯」
こんなタイミングでさやかは割り勘を申し出ようとしているのだ。
やはりそのへんの女とはわけが違う。俺の見込んだ女だ。
「大丈夫だ、お金のことは気にしないで。さあ入ろう」
緊張した面持ちのさやかを連れ、いよいよ個室でコース料理が始まる。
アビリティブからスープ、メインと続く。
さやかはそわそわと不安そうだ。
いよいよデザート。一緒に添えられた薔薇の花束
『will me marriage?』
ケーキについているプレートをみてさやかが目を見張る。
「さやか、俺と結婚してください」
俺は指輪のケースをばかりと開いた。
さらに目を開くさやか
そしてようやく口を開く。
「あの、私たち付き合ってませんよね?」
ピンクの花びらがぽとりと落ちた。
その後のことは記憶にない。
(そうだよなあ、告白してないもんなあ)
俺はゆっくりとベッドから起き上がった。
気合いを入れて冷水で顔を洗い場を磨く。
お気に入りのアルマーニのネクタイを結ぶ。
徒歩3分の最寄り駅に着いた頃には憂鬱な気持ちはすっかり晴れていた。
「よし、まずは告白だ」
ポジティブなところが俺の長所である
〜了〜




