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胡散臭い予備校講師風の創作論コース

あなたの作品に哲学は足りているか? ~伸び悩みに苦しむ作家へのアドバイス~

作者: もりゃき.xyz

■はじめに


 あなたの作品を読み返してください――すべてとは言いません。

 でも、ふとした違和感が引っかかったことはありませんか?


「なんか伝わらない」

「なんか読みにくい」

「なんかグチャグチャしてる」

「なんか理解してもらえない」


 ……この「なんか」が何なのか、うまく言語化できなかったりしませんか?

 このエッセイの核心部分につながっていると、私は考えています。


 そしてその正体を見極めるために、あなたに『ある視座』を差し出したいのです。

 そう……『哲学』という視座を。



■哲学とはそもそも何だろう?


 哲学というと、少なくとも日本では「小難くて、哲学者だけが扱う特別な何か」だと感じませんか?

 誤解してはいけません。哲学科が扱っているのは「哲学」ではなく「哲学史」――『他人の思考の記録を扱う学問』なのです。

 哲学史に基づいて、自分なりの解釈を加えて……そうして自分の学術的権威を高める、それが日本の哲学科の正体です!


 そうですね、いきなりカントやヘーゲルを語られたら、我々というか……私だって困ってしまいます。


 しかし、哲学とは本来、『何かを語って、他者にマウントを取るための道具』ではありません。

 ソクラテスは『無知の知』を語った時、彼は他者を貶めていたでしょうか?

 ベンサムやミルが提示した幸福計算は、人間の営みを支配するためのものだったでしょうか?

 ニーチェは最終的に狂気に墜ちましたが、彼は『神は死んだ』の末に、人類を支配しようとしたのでしょうか?


 断じて、否です。


 哲学者の本質とは、真理を知性の光であぶり出そうとしてきた、連綿たる歴史の産物なのです。


 ただ……私が言いたいのは、小説家たるもの知性の光であぶり出せ、などという話ではありません。

 その「知性の光」そのものが、純粋に小説家にとって『有益だからお前ら知っとけ』という提言に過ぎません。


「知性の光」は、執筆という暗闇を照らすための、素晴らしい武器となるのです。


 ……そうでしょう?ここまでの文章がつまらないと思うなら、即座にブラウザバックをお勧めします。

 しかし、少しでも――面白いと感じたのなら、それこそが、ここから語る本題なので是非お読みください。

 なぜなら、少しでも面白いと感じた、なぜだろう?と考える、それこそが『哲学』なのですから。



■哲学の素養を学ぶには


 私は個人的に、ヨースタイン・ゴルデル著『ソフィーの世界』を、ひとまずの哲学入門の土台としてお薦めしたいです。


『ソフィーの世界』は哲学の入門書でありながら、一編のファンタジーミステリー小説としても完成しています。

 創作を行うのであれば『物語と思想の結びつき』を体験できる、貴重な書籍です。

 この構成は、創作者にとって大きな刺激になるので、一度は読んでおいた方がいいでしょう。


『ソフィーの世界』を読むだけでも『古代ギリシア』から『近現代の哲学』――実存主義に至るまでの、おおまかな『哲学の流れ』を掴むことができます。


 その上で、実存主義の後に登場した『構造主義』についても、余裕があれば押さえておくとよいでしょう。

 このあたりは、新書など……好みや予算に合わせて、構造主義に触れている書籍を選びましょう。

 ただし、ポスト構造主義(構造主義の延長線上にある思想)に本格的に踏み込む書籍は『ソフィーの世界』を読み終えたばかりの段階では、かなりハードルが高いです。


 というか私自身が、ポスト構造主義について詳しくないですからね(笑)


 そして『ソフィーの世界』上下巻ソフトカバー版で2,200円……Kindle版でしたらさらに手頃な価格です。

 私の観測範囲では、構造主義の入門書を加えても3,200円が最低ライン……といった感じです。


「自分がなぜ伸びないのか?」のヒントを探り、なおかつ学ぶための金額としては、決して高くはないと思います。

 書籍に関しては私自身、昔は結構お金を使っていたんですよ……良くも悪くも。


 というか……普通に『ソフィーの世界』であれば、かつてベストセラーになった有名作品なので、その面白さは折り紙付きだと思いますよ?



■なぜ構造主義か?


 なぜ構造主義かというと、あなたの物語設計を考えると、どうしても避けては通れない考え方だからです。

 私自身、構造主義について学んだからこそ、小説書きとして、エッセイストとして、そこそこ活動しているのだと感じます。


 構造主義の主張は、実は非常にシンプルです。


『モノはそれ単体では意味を持たず、モノ同士の関係性で意味が生まれる』


 そうですね……父や母と子の関係性を考えてみましょう。

 父や母は子がいなければ、そうは名乗れないし、子は父母がいなければ存在すらしていない。


 ……当たり前の話だと思うでしょう?

 しかしそれを、普遍的な法則として明確に言語化し、思想として打ち立てた――これこそが、構造主義の偉大な功績なのです。


 ここで親子の話を持ち出されても困ると言われたら、私が困ってしまいます。

 例えば『異世界恋愛』のジャンルであれば、父母の地位によって、その恋愛が成就するか否かが、構造的に定まるという話をしているのですから。


 そう、あらゆる小説において、この構造を把握して、物語を構築する能力というのは不可欠なのです!


 なお、ポスト構造主義については、流石に私も全容を把握していないため、拙作エッセイ「小説家が読者に届ける、たった一つの重要なこと ~伝わらない言葉に意味はない~」をお読みください。

 ……とはいえ、デリダしか触れていませんけれど。

https://ncode.syosetu.com/n2117lc/


 私の話法に興味を持った方は「ロラン・バルト」についてお調べください……私自身もS/Zとか分かりません!(笑)



■ファンタジーにも現実にも構造は必要


 たとえば『ファンタジー』だから、魔法で解決するから、と考えていても構造は不可欠です。

 むしろ創作難易度は高い、とさえ感じています。


「魔法の根源である力(マナや精霊など)と、生物との関係性をどうするか?」

「魔法がある世界において、人類はどのような文明を築くのか?貴族の力とするのか、軍事力と扱うのか、あるいはその両方か?」

「超越存在(神やドラゴンなど)と人類の関係性はどうするのか?」


 これらはほんの一端に過ぎません。

 創作内の歴史感や、読者の理解や感性との兼ね合い――大作RPGは、概ねこの視点が取り入れられていますよね?


 魔法がある世界だからといって、物理法則が全く存在しない作品にするのは、極めて挑戦的です。

 少なくとも、読者が理解しやすい補助線としての科学知識、あるいは独自の科学技術――そういうものも必要となってきます。


 エルフやドワーフといった『いわゆる亜人種』……これもまた、人類と異なる身体と寿命を持つ存在が、人類をどう見るのか、あるいは人類がどう見るのか。

 ここまで来ると『いわゆる亜人種』は設定テンプレートを流用するのが、現実解になってきます。

 なぜなら、テンプレートとは――読者の理解の助けになるからです。


 かといって『現実世界』だから簡単だ、と思うのは早計です。


 現実世界は政治や経済、そして場合によっては軍事、科学、宗教、心理といった要素が盛りだくさんです。

 本格的に書きすぎると、売れ線から外れてしまう……少なくともラノベにはなりません。

 さらに、ある意味で『現実世界』はある程度、テンプレートが使い尽くされています。


 また『ファンタジー』でも『現実世界』でも、甘い構造で書き始めると、その整合性を取るのも難しいです。

 構造を武器に使うのはいいですが、構造に振り回されるようになっては――おしまいです。



■おわりに


 さて……あなたは気づきましたか?このエッセイも、構造を踏まえた上で、私は執筆しています。


 まあ、意地悪をするつもりはありません。

 『ソフィーの世界』をお読みになれば分かる、そんなヒントを一つだけ差し上げます――『フロイト』です。

 もっとも、フロイトをそのまま使っているわけではありません。


 フロイトが何を哲学にもたらしたか、その哲学が『私に』どのようなインスピレーションを与えたか……それは、読解できたあなたの胸に秘めてくださいね?


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