俯瞰した日常
掲載日:2025/11/18
目覚ましの音に、僕の意識だけが引きずり起こされた。
身体はむくりと起き上がり、反射のようにアラームを叩く。
布団を剥ぐと、足は勝手にリビングへ向かっていく。
頭の奥は霞がかかったまま。
起きているのか、夢の中なのか、判然としない。
それでも身体は、いつもの朝の儀式を滞りなく進めていく。
パンを咥え、顎は律儀にそれを噛み続ける。
そのたびに霧がわずかに晴れていく。
けれど僕は心の中で「眠りたい」と叫んでいる。
意思は確かにここにあるのに、肉体は決して従わない。
逆らおうと布団へ戻ろうとすれば、身体は小さく震えて訴える。
「早く、いつもの流れを続けさせろ」と。
観念して主導権を返すと、ふと思う。
何なのだ、この身体は。
飢えれば食べ、疲れれば眠り、惰性の川を流れるような日々を繰り返す。
僕の意思はその岸辺に立ち尽くすだけだ。
水面に触れようとすれば、虚無や焦燥が押し寄せ、あっという間に思考を呑み込んでいく。
残るのは、ただ見ているだけの、
「俯瞰した僕」
その視線の先で、肉体という獣は今日も勝手に歩き出す。
僕はその背に縛られ、どこへ行くのかも知らされない。
結局、僕という意思は、ただそこについていくだけの影なのだ。




