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5.むかつく敵ギルドと誇りと栄光の戦い

「おい、なんだこのポスター……」

 朝の広場で、星くずギルド一同が貼り出されたポスターに視線を集中させていた。色鮮やかな装飾とともに、やたらポーズをキメたナルシスト風の男のイラストがでかでかと印刷されている。

 《緊急開催! ギルド対抗・料理×バトルコンテスト in バルタス町!》

  テーマ:「星をイメージしたスイーツ」

  優勝者には、“誇りと栄光”の証、星屑メダルを授与!

  主催:赤獅子団ギルド(代表:シリウス・クレイド)

「うわぁ……名前からしてむかつくな」

  「顔つきもむかつくな」

  「あと、“星屑”かぶってるのが一番ムカつくな」

 大輔たちは口々に毒を吐いた。が、その中で、ただ一人、美依が静かに手を挙げる。

「やるしかないね」

「え? 今の流れで“やらない”じゃないの!?」

「だってさ……“星をイメージしたスイーツ”だよ? これ、私と妙彩ちゃんの得意分野じゃない?」

「確かに……美依さんの和菓子技術と、妙彩の西洋パティスリーが合体したら、最強では……」

「ってことは、俺たちバトル担当ってことか……?」

「当然でしょ」

  美依がにっこり笑う。

  その笑顔に逆らえる者は、いなかった。

 バルタス町に着くと、もう会場は大盛り上がりだった。

  中央広場には巨大な調理台と、魔法障壁付きの特設リング。観客席には町人たちがぎっしりで、頭に“星型カチューシャ”をつけた子どもたちが跳ね回っていた。

「ギルド戦ってこんな文化祭ノリでやるの……?」

 そこに現れたのが、主催ギルド「赤獅子団」の面々。

  そして、そのリーダー――金髪、オールバック、白い軍服のようなコスチューム、なぜか肩に黒豹を乗せた男――シリウス・クレイド。

「ふっ、君たちが……話題の星くずギルドか」

  「名前に“星”ついてるから、気にはなってたが……うん、やっぱ雑魚感あるね☆」

「むっかつくなオイ!!」

「ねえ、美依ちゃん、今なにか反応した? この人、美依ちゃんの知り合いとか?」

「ううん。知らない。でも……初対面で肩ポンポンしてくる人、苦手」

「うわぁそれ一番嫌なやつじゃん!」

 大会の進行役がテンション高く叫ぶ。

「それでは開幕です! 対戦ギルド、双方準備せよ!!

   まずは【料理フェーズ】! テーマは『星をイメージしたスイーツ』!」

 調理台の前に立ったのは、美依と妙彩。

  真剣な表情で材料を選び、手際よく火を扱う。

「妙彩ちゃん、黒蜜とカシスソースの混合比は?」

「3:2で。酸味を活かすよ。あと、星団型のゼリーは温度下げすぎないで」

「了解!」

 2人の動きは一糸乱れぬ連携。

  和洋折衷をテーマにした「星団もちケーキ」が着々と仕上がっていく。周囲の観客たちも、次第にその見た目と香りに魅せられはじめていた。

 一方、赤獅子団のブースでは――

「ふはは、見よこの芸術的マシュマロタワー!!」

「……スイーツというか、建築物じゃね?」

「てか、お前ら普通に既製品使ってない?」

「黙れ! 星型ってだけでOKだろうが!」

 味見した審査員が顔を引きつらせた瞬間、美依と妙彩が完成したケーキを提出。

 美依「“星団もちケーキ”。七種類の果実を星の色に見立てた寒天と、もち米ベースのあんこフィリングを重ねました」

 妙彩「背景にはミルキーソースの天の川。和と洋の、星に捧げる合作です」

「うっまッッ!!!!」

 審査員、即落ち。口いっぱいに頬張りながら、目を潤ませる。

「これぞ……誇りと栄光の味……!」

「やった!!」

  「勝ったぞこれ絶対!!」

 だが、次の瞬間。

「では、後半戦【バトルフェーズ】に移ります!!」

「え!? まだあんの!?」

 戦場は料理台の隣に設けられた魔法リング。観客席がザワつく中、赤獅子団からは筋肉モリモリの剣士、魔法少女風の女の子、そしてなぜかモノクルをつけた詠唱担当が登場。

「うわ、あっちも構成バランスいいな……」

「こっちは誰が出る? あたしは拳でOKだけど」

「よし、康策頼むぞ! 回復頼んだ!!」

 康策は「任せろ!」と張り切って前に出たが――

「いくぞ、“自己犠牲系ヒール魔法”――全回復、対象:全員!!」

「お前らごと敵も全回復すなああああ!!」

 バッキャアァン!!!!

 魔法の衝撃で全員吹っ飛んだ。

「な、なんだと……全員を一撃で……」

「いやこれ勝負になってねえ!!」

「康策……! あんた、やっぱすげえよ……!!」

「褒めてねぇぇええええ!!」

 最終的に審査員たちは満場一致で「料理部門の圧倒的勝利」によって星くずギルドの勝利を宣言。

  シリウス・クレイドはキラキラポーズで敗北を認める。

「認めよう……君たちは“味”では勝っていた……だが、僕の美しさには到底届かないッ!」

「帰れぇぇぇええ!!」

 勝利の星屑メダルが大輔たちの手に渡ったその夜、拠点に戻った一同は焚き火を囲みながら笑い合っていた。

「なあ……俺たち、なんでこんなバカみたいな展開ばっか経験してんだろうな」

「でも、面白いでしょ?」

「……うん、面白い。てか、だいぶ好きになってきた、こっちの世界」

 満天の星空の下。ギルドは一歩、また“誇りと栄光”に近づいた――

  たとえ、ツッコミとドタバタで毎回ぐちゃぐちゃでも。

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