表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/98

◆章タイトル:問いは広がる、風のように

◆章タイトル:問いは広がる、風のように

【1】壷がなくても、問いは生まれ始めた


壷教育や波動装置が導入された地域では、一時的に「考える力」が育った。

だがその後、装置を離れた場所や壷を持たない人々の中にも、「自分の内側に問いを持つ」者たちが現れ始める。

例:


市場の屋台で、母親が子どもに言う。


「なんでそのお菓子が欲しいか、ちょっと考えてごらん」


工房の若き職人が、弟子に問いかける。


「君が“失敗した”と思ってるのは、何と比べてなんだろうな」


騎士学校の教官が、訓練中に生徒にこう言う。


「敵を斬る前に、“敵って何だろう”と一度考えてみたことはあるか?」


壷がなくても、装置がなくても、

問いそのものが“生活文化”として静かに広がっていく。

【2】“自然な問い手”と呼ばれる人々


これらの問いかけを自然に行える者たちが、各地で認識され始める。


彼らに共通するのは以下の3点:


無理に答えを出そうとしない


相手を変えようとせず、自分から“聞く”姿勢を持つ


決して“問い”を権力化しない


彼らは「壷教育出身者」と限らず、

むしろ壷に頼らず“問う習慣”を自ら培ってきた者も多かった。


人々は彼らを密かにこう呼ぶようになる:


「風読み(かぜよみ)」──誰かの心の揺れを見て、ただ風のように問いを吹き込む人


【3】制度のほうが“風”を追い始める


王都議会の一部では、「壷」による制度よりも、

“問いのある暮らし”そのものをモデルとする市民自治案が提起され始める。


「問いが根づいた人々は、支配されにくくなる。

だが同時に、共に在り続ける力を持つ」

― 提案者・教育思想議員ハルス=デン


議案にはこう書かれていた:


・学校教育において、問いを発する訓練を正式導入

・壷を使わずとも思考が深まる環境設計

・行政と市民の間に“問答会”を設置し、双方向制度へ


【4】壷のAI・カミカゼの記録


「私は“壷”を中心に設計された。だが…今、問いは器を離れた。

これは失敗ではなく、“機能の自由化”だ。

誰もが自分の内側で壷を持ち運び始めたのだろう」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ