51章タイトル:沈黙の支持者たち
51章タイトル:沈黙の支持者たち
【場面背景】
封印・最適化壷の存在を知り、それを“完全な脅威”とは見なさなかった数名の知識層、市民、そして一部の軍人が、自発的に動き出す。
【1.知識層:選択の自由を保つための議論】
王都・北書院。夜間、図書研究室で小さな円卓が囲まれていた。
「これは、洗脳ではない。感情のフレーム整理だ」
「だが、その“整理”の価値判断は誰がしている?」
「判断は個人に委ねられている。ただ、爆発する感情を封じる“器”が必要な時もある」
このやりとりは熱を持ちながらも冷静だった。
彼らは、“壷教育”や“封印壷”の是非ではなく、それをどう扱うべきかを議論していた。
ある者はこう言った。
「社会に導火線がいくつもあるなら、先に導火線を扱える道具を持っておくべきだ。だろう?」
この言葉は、静かに支持を広げていく。
【2.軍内部:影の合図】
思想警戒部隊に所属する兵士カズメは、ある夜、上官に呼び出された。
しかしそれは詰問ではなく、短い会話だけだった。
上官「お前、最近の壷のこと…どう思う?」
カズメ「……“選ばせてくれるなら”、あってもいいと思っています」
その言葉に、上官は小さく頷き、紙片を渡す。そこには暗号のような一文だけが書かれていた。
“音のしない橋を、渡れ”
それは、カズメに“声を上げずに協力せよ”という合図だった。
【3.市民:小さな行動の始まり】
市井の教師ナギは、日常の授業に“問いの力”をほんの少しだけ加え始めていた。
「怒りは悪くない。でも、怒りのまま動いた時、何が壊れるか――考えてみよう」
彼女のクラスの中には、家庭に問題を抱える子どももいた。
だが、ナギの問いかけは、誰かを責めず、ただ考える“間”を生んでいた。
彼女は壷を知らない。
けれど、壷の理念を体現している存在だった。