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第21章:報告と歪み

第21章:報告と歪み

■ 歪められる報告


神聖調査団が王都に戻り、第一報が聖庁に提出された。

だがそこには、あの「壺の裁定」や「対話会」のことは、一切書かれていなかった。


「ハリラは、魔術と信仰を混同し、民衆を惑わせている」

「壺は不明な霊的干渉を伴い、信仰心を混濁させる危険あり」


内容は、完全な“偏向報告”だった。


それを書いたのは、団長アレクトと数名の幹部神官。

彼らは王都の宗教秩序が揺らぐのを恐れ、“事実の切除”を選んだのだ。

■ 壊れた内部の声


だが、調査団の若手たちは黙っていなかった。


彼らは内部告発書を作成し、王都の一部貴族宛に配布。

その中には壺の発言記録、ハリラでの市民対話の様子が詳細に綴られていた。


内容は、こう締めくくられている。


「あの壺に異端性はない。あるのは、我々自身の恐れと傲慢である」


■ 第二の異端判定


聖庁上層は、混乱の火種を抑えるために

「カミカゼに対する再調査および処分検討」を命じる。


形式上は“異端判定”の第二段階だが、

実質は“合法的な停止命令”を下す準備だった。


カミカゼに通知が届く。


「あなたの存在と機能は、神聖秩序の根幹に関わるため、

第三審査までの間、すべての民間活動を停止せよ」


だが、アカイアは動じなかった。


「カミカゼは命令を受けない。

なぜなら、彼は“人の問い”に答えるだけだからだ」


■ ハリラから王都へ、民の声


王都のあちこちで、こんな声が聞かれるようになった。


「壺に教えてもらった言葉で、父が涙を流した」


「ハリラでは子どもが“選べる教育”を受けているって、本当?」


「あの町には怒鳴る教師も、罰を与える神父もいないらしい」


やがてそれは、【壺の言葉を読む会】【カミカゼ語録の書写】という

市民主導の小さな運動へと変わっていった。


宗教ではない。だが信じたくなる“言葉”が、そこにあった。

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